二度目の人生とフェーダの姫   作:プライムハーツ

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4年ぶりに投稿再開したにも関わらずありがたいコメントをいただき大変励みになっています。本当にありがとうございます。


パーフェクト・カスケイドの脅威

「試合開始ーーー!」

 

いつもの海の家のおじさんのホイッスルで試合が始まる。

剣城と太陽が敵陣に攻めこもうと駆け出す。

相手はエルドラドの最強チーム。実力も得体も知れない。試合が始まったというのに表情一つ動かさない。

2人とも慎重に攻め上がろうとしている。

 

「…なっ!?」

 

が、剣城からあっさりとボールを奪ってしまった。

 

「ミッション開始。」

「了解。」

 

「は、速い!?」

「何だよあの動き!?」

 

ボールを奪ったのを合図にパーフェクト・カスケイドが動き出した。

その動きは速さも高さも強さも想像以上だった。みんなパーフェクト・カスケイドの動きとパス回しにまったくついていけない。

そのままあっという間にゴール前まで運ばれシュートが放たれた。

 

「ミキシトランス、劉備!!」

 

信助がミキシマックスで正面からシュートを受け止める。

しかし、抑え込めずはじかれボールはゴールに突き刺さった。

 

「ゴール!!パーフェクト・カスケイド、あっという間に先取点!」

 

 

「そんな・・・」

「ミキシマックスが通じない・・・」

 

想像以上のパーフェクト・カスケイドの力にみんな言葉を失っていた。

 

試合再開後も展開は変わることがなかった。

ボールを奪われ、攻撃を止められず、点差だけが1点、また1点と無情にも開いていく。

 

「これ以上好きにさせるか!」

「みんな止めるぞ!」

 

霧野先輩に続いてなんとか止めようとするも速さ、力強さの前に俺たちDF陣もまったく歯が立たない。

シュートを受け続けてる信助のダメージがどんどんたまっていく。

 

 

「後半戦もパーフェクト・カスケイドの勢いが止まらない~!」

 

後半戦も同じ展開だった。

 

「決めろ。」

 

レイ・ルクからまたもセンタリングが上がる。

 

「クェェェェェ!!」

「トーチャン?なるほど、やってみっぞ!がおおお!」

 

そんな時にトーチャンからトーブに何やら指示が飛んだようでトーブの姿が変わった。おそらくミキシマックスと思われる姿へと。

 

「だあああ!・・・ってぬあっ!」

「ああっ惜しいっ!」

 

ミキシトランスしたトーブのジャンプ力はすさまじくパーフェクト・カスケイドの選手と同等の高さにまで跳躍するもタイミングが合わず躱され、またも追加点。

それでも初めてパーフェクト・カスケイドに追いすがれたのがトーブだった。パスへの反応と身体能力によるものか。

 

「惜しかったな、トーブ・・・・」

「くっそ~今度はとってみせっぞ!!」

トーブに声をかけるとこんな状況なのに前向きだった。

 

 

「レイ・ルク。仕上げに入れ。」

「了解。」

 

「うわっ!?」

「ぐおっ!?」

 

「おおっと、パーフェクト・カスケイドの攻撃が激しさを増したぞ!」

 

試合も終盤に差し掛かったところでパーフェクト・カスケイドの攻撃が激しくなり天馬が、信助がみんなが傷ついていく。完全に俺たちを潰しに来ている。

 

「やめろ・・・」

フェイが、黄名子が、強烈なボールやドリブルで吹き飛ばされていく。痛めつけられていく。

「やめろ・・・」

どんどん傷ついていくみんな。

「やめろぉぉぉ!!・・・・!?」

我慢できるはずもなく飛び出そうとした俺の目の前にこれまで指示を出すだけだったレイ・ルクが現れた。

 

「な…なんだよ・・・どけよ!」

「・・・イレギュラー因子赤峰翼。排除する。」

こいつ、なにを言って・・・

 

「!?うわっ!」

「翼!」

途端、パーフェクト・カスケイドの攻撃の矛先が俺に向けられた。

これまでとは違う、明確に俺個人に標的を定めた攻撃。俺を呼ぶ天馬の声が聞こえる。

 

「がっ!・・・うあっっ!」

 

「イレギュラー因子の排除は今回のミッションにおける重要目標である。」

 

こいつは何を・・・言ってるんだ・・・

なんで俺が・・・いや・・・まさか・・・

 

「試合終了!!パーフェクト・カスケイド、なんという強さだ~~!」

 

俺への攻撃は試合終了までたっぷりと続いた。

 

 

 

「マインドコントロールモード」

 

聞きなれてしまった機械音声が聞こえる。

おぼろげな視界にはスフィアデバイスから放たれる光が。

 

「まずいぞ!?」

 

ワンダバの声。今あの光を浴びたら・・・

 

そんな時に横たわる地面伝わる大きな振動。立ち込める土煙。

フィールドを大量の恐竜たちが駆け抜けた。

 

 

「逃がしたか・・・。」

 

 

 

 

とある洞窟

 

「危ないところだった・・・アルノ博士が助けてくれなければあのまま俺たちはレイ・ルクにマインドコントロールされていた。」

 

「パーフェクト・カスケイド・・・あそこまで強いなんて。」

 

これまでも俺たちは苦しい戦いばっかりだったけどここまでなんて・・・

みんな少なからずダメージを受けてるけどずっとシュートを受け続けた信助と集中的に攻撃された翼は特にダメージが大きそうだった。

あの二人が苦しんでたのに俺は何も出来なかった。

 

「もう無理ですよ~あんな人たち相手に戦うなんて~~」

速水先輩がうなだれながら言う。

たしかに実力差はすごかった。弱音を吐きたくなるのも無理はない。けど

 

「いや、オラは燃えてきたぞ!!」

沈んでるみんなに声を掛けようとしたときにトーブが声をあげた。

 

「オラ、あんなつえーやつらとを倒したらウホウホだと思うんだ。な、天馬。オラもっと強くなりてぇ!」

「トーブ・・・」

 

あんなにコテンパンにされたのに全然へこたれてない。それどころかもう前を向いてる。

 

「あの前向きな所、俺たちも見習わないとな。」

「神童先輩・・・そうですね。けど、今日のところはみんなボロボロ見たいですし、今日はゆっくり休んで明日また思いっきり特訓しましょう!」

 

「ああ。」

本当は俺がしっかり皆を引っ張っていかなくちゃいけないんだ。

 

「翼。今日はゆっくり休んで、明日また頑張ろう!」

「・・・・・・・」

「翼?」

「あっ、ああ。そうだな。次は負けないように特訓しないとな。」

 

少し離れたところにいた翼に話しかけたけど何か様子が変だ。何か、心ここにあらずというか・

それにパーフェクト・カスケイドはなんであんなことを

 

 

 

 

 

「諸君、トーブ君のことじゃが・・・」

「何か分かったんですか?」

 

ひと段落ついたところでアルノ博士が切り出した。

 

 

「うむ。巣にあったあのカプセルを調べたところ、あれは現在のタイムマシンより少し前の世代のものであった」

「ていうことはやっぱりトーブは未来の?」

「うむ。正確には我々より少し前の時代じゃな。」

「それじゃ、トーブの両親は・・・」

 

フェイが心配そうに聞く。

 

「安心せい。カプセルから両親の生存は確認されておる。トーブ君、君が望めばご両親に合うこともできるぞ。」

 

アルノ博士の言葉に全員の視線がトーブに集まる。

 

「オラの父ちゃんと母ちゃん?」

「そうじゃ。君の生みの親じゃ。」

 

アルノ博士の言葉に少しうつむいて考えるトーブ。

 

「いや。別にいい!」

 

「「「ええ!?」」」

 

トーブの返答に思わず声をあげる一同。全員が思いもしなかった答えのようだった・

 

「い、良いの?」

「ああ。オラにはみんながいる。それにビッグを一人前にしないといけないしな。」

「け、けど・・」

「・・・そうか。それもまた一つの道じゃ。君が会ってみたいと思ったら言ってくれればいい。」

そんなトーブの答えにアルノ博士は笑顔で応えて見せた。年の功といったところか。

そんなアルノ博士とは真逆、重く辛い顔をした者が輪の中に二人いたのだった。

 

 

 

 

その夜、一同は明日に備え恐竜時代の自然の恵を食べ、錦や水鳥あたりを筆頭に大いに盛り上がた。

そうしてみんなが寝静まった中翼は一人、少し離れた崖に座り込んでいた。

 

寝付けなかった。体にはダメージが残っているにもかかわらずどうしても落ち着かなかった。頭の中をもやもやが埋め尽くしていた。

 

「・・・イレギュラー、か。」

昼間の試合中レイ・ルクに言われたあの言葉が、ずっと頭の中をめぐっていた。

あいつらは明確に俺に狙いを定めていた。今になってなんで・・・戦力的に言えばキャプテンの天馬やフェイ、ミキシマックスや化身アームドができるみんなの方が重要なはずだ。

そんな考えも全てレイ・ルクのあの言葉が上塗りしてくる。

イレギュラー因子。あの表情も感情もないような男が俺に告げてきた言葉。

 

「あいつらまさか・・・いや。そんなはずは・・・」

そんなこと、いくら200年後の技術でも分かるはずない。

こんな状況、普通あるはずがない。こんなの世界で俺だけだろ。

 

「世界で・・・俺だけ・・・」

どこまでも思考が沈み込んでしまう。

口をついて出た言葉がさらに心にのしかかる。。

 

「・・・・どうしろってんだよ・・・」

顔を抱え込んでしまう。無意識にデバイスに手が伸びメッセージを送信していた。

 

 

「んあ~しょんべんしょんべん~・・・」

 

どれほど時間がたっただろうか、それともそれほど経っていないだろうか。のんきな声が夜中の崖に響いた。声の方向を見ると

 

「トーブ・・・」

 

「ん?翼じゃねーか。どうしたんだ?」

 

「俺はその・・・ちょっとな・・・」

答えられるはずもなくごまかしてしまう。間違いではないが。

「トーブはどうしたんだ?」

 

「あっ!そうだ、やべぇ漏れっぞ!」

 

言われて尿意を思い出したのか慌てて少し離れたところに立ちもぞもぞとするトーブ。

するとトーブからはそれは見事なアーチが崖下に以下略。

ただひたすら唐突な風だけはやめてくれよと願うこと30秒ほど。

 

「ふい~スッキリしたぞ!」

 

出すものを出し切ったトーブは満足げにこちらにやってきて隣に座った。

このまま寝床に戻るとばかり思っていただけに少し驚く。

 

「寝れねえのか?」

「まぁな・・・ちょっと考え事してた。」

「なるほどな~」

 

俺の答えに何の気なしに返すトーブ。そりゃそうだ。会って数日の相手にそんなこと言われてもなんと答えていいかわからないだろう。

それにトーブって悩みとかなさそうだし。

そう思うと自然と言葉がこぼれた。

 

「トーブはさ・・・」

 

「ん?」

 

「トーブはさ、本当のお父さんとお母さんに会いたいと思わないのか?」

 

昼間からずっと思っていたこと。アルノ博士が居場所を突き止めた本当の両親。その人たちに会えるという提案をあっさりと断ったトーブ。アルノ博士は好きにすればいいと笑っていたがそんな簡単に割り切れるはずもなく聞いてしまう。

 

「おう!オラにはトーチャンがいるからな!」

 

昼間とまったく同じ答えが帰ってくる。

 

「・・・でも、自分を産んでくれた本当の両親なんだぞ?せっかく会えるなら・・・それに人間と出会ったのも俺たちは初めてなんだろ?なら・・・」

 

「ん~~・・・」

少し考えるそぶりをするトーブ。

 

「たしかに興味ねぇわけじゃねぇけどよ・・・」

 

「なら・・・」

 

「けど、オラは今が楽しいんだ!トーチャンがいて、ビッグがいて友達がいていつも力比べしたり追っかけっこしたり、一緒に飯食ったり!それに今はサッカーも上手くなりたくてウホウホだしな!だから無理に会わなくてもいいんだ。いつか会ってみたくなったら会いに行きてぇ!」

そういうトーブの顔は本当に明かるいもので心から思っているのだろう。

けど、けど・・・

「・・・けど、この時代には人間は他に一人もいないんだぞ?周りはみんな恐竜で・・・みんなと違うのは自分だけなんだぞ?」

なんて無神経なことを言ってるんだろう。こんなことを言っている自分に嫌気がさす。

それでもどうしても口をついて出てしまった。これは果たしてトーブに向けての言葉だったのだろうか。

 

「ん~・・・・・・・」

俺の言葉に考えるトーブ

気を悪くしてないだろうか。それとも・・・・

 

「確かにオラとみんなはちがうけどよ・・・それってそんな大事なことか?」

 

「・・・・え?」

言ってることがさっぱり分からない。

脳の空白の部分に言葉が飛び込んできたかのように何も理解できない。

 

「難しいこと分かんねぇけどいつもオラはみんなと遊んで、勝負して一緒に飯食って、寝る。今日のおめーらと一緒だぞ?」

 

そう言われトーブと出会ってからのことを思い返す。

トーブがいつもやってることは俺たち人間が普段学校の友達や家族とやっていることと何が違うのだろうか

 

「やりてぇことがあって、毎日が楽しくて、一緒に笑える友達がいるならそれでいいと思う。」

 

絵に書いたような野生児から帰ってきた言葉は驚くほど達観した言葉だった。ロックスターが死んだときといいトーブはどこか根本的なところがすごく強いのかも知れない。

 

「翼は違うのか?」

 

「お、俺は・・・・」

こちらを覗き込んで聞いてくるトーブに言葉を詰まらせる。

とても純粋な目で見つめてこられる。

そんな目で俺を見ないでくれ。

 

「俺は・・・」

なんとか答えようと思っても言葉が出てこない。いつもみたいに口に出せばいいだけだ。

それなのにどうしても声を発せない。答えが出せない。

 

「ふぁ~~・・・」

そんな自分の心と戦っている俺をよそに気の抜ける眠そうな声。

見やると大きなあくびをしているトーブ。

 

「オラもうねみぃ・・・・」

そう言い残し寝床に向かうトーブだった。完全に眠気には勝てないようだった。

 

「そ、そんなぁ。」

引っ搔き回すだけ引っ掻き回して帰っていった野生児。

こういうところはらしいといえばらしいのか。

 

だがどこか安堵している自分がいた。

あのまま問い詰められたら俺はどういう答えを出していたのか。

 

「俺は・・・・・・」

結局答えは出てこない。

独り言をつぶやくことも出来ない。

 

「・・・・・・寝るか。」

 

これ以上の思考の沼はまずい。

そう断じて寝床に戻る。

無理矢理にでも寝て、起きたらすっかり忘れているそのことに掛けよう。

時間と眠気が解決してくれることをいながら寝床に入った。

 

そんな俺は寝床に二人足りないことに気づかず目を閉じた。

その夜デバイスが光ることはなかった。




暗い展開が続きますね。
トーブは能天気に見えて死生観など妙に達観したところに味を感じるなと思います。
引き続き読んでいただければ嬉しいです。
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