二度目の人生とフェーダの姫   作:プライムハーツ

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どうも。今回はこの作品を投稿し始めた時からずっと考えていた話になります。



決壊、そして

一夜あけて天馬たちはトーブに連れられ草原にて特訓をこなしていた。

その中には雷門のメンバーに加えトーブの姿もあった。

 

「トーブ、ボールだけじゃなくて相手の動きもしっかり見るんだ!」

 

「おう!」

個人練習をする者、ペアになって連携を確認するもの、こうしてトーブと実践的な練習を積むものなど様々だ。

トーブには天馬や翼、黄名子と信助がついていた。

トーブは拙いながらも昨日初めてサッカーを体験したばかりとは思えないスピードでサッカーの動きを身に着けていっていた。最初は戸惑うことも多かったが持ち前の運動神経と、この恐竜時代で生き抜いてきた適応能力がなせることか。

 

「ふふ~ん♪行くやんね!」

 

「んん~~たぁっ!」

 

「ほっ!こっちやんね~」

 

「くっそ~!!」

 

今は黄名子がオフェンス、トーブがディフェンスでの1対1での練習中。

こういう時に全てのポジションをこなせる黄名子は心強い。

ちなみに天馬ではさすがにドリブルのレベルが高すぎて一回でクビになった。

加減というものを知らんのか。

 

「1対1の時は相手のへそのあたりをよく見るんだ。目線やボールだけだとフェイントに引っかかるからな。重心をしっかりとらえていれば反応できるはずだ。」

 

ディフェンスに関しては大介と霧野から翼に一任されていた。

 

「腹のあたりだな!よ~~し・・」

 

「もう一度やんね!」

 

さきほどはひらりと躱されたトーブだったが今度はなかなかフェイントに引っかからない。

黄名子も左右にゆさぶりを掛けるがなかなか攻めあぐねている。

 

「なら・・・とう!」

 

平面のゆさぶりに引っかからないため黄名子はヒールリフトでの縦の変化で抜きにかかった・・・が

 

「たぁっ!」

 

素早く反応してみせたトーブがジャンプ一番、ボールを奪取したのだった。

 

「すごいよトーブ!」

 

「その感じだ!」

 

「あちゃ~やられたやんね~」

 

「ウッホ~~~とめたぞ~」

 

本職ではないとはいえ黄名子のドリブルを止めて見せたトーブに天馬や翼が声を掛ける。

トーブはトーブで元来の気性からも気分が直にパフォーマンスに影響が出るタイプなのか好循環が生まれていた。

 

「大介さんが言ってたようにトーブはDF向きかもしれないね!」

 

「ああ。」

 

特訓開始前に大介がトーブにディフェンスを重点的に教えてやれと言っていた。

持ち前の身体能力に加えて並外れた野生の直感で相手の動きを先読みする能力はまさにDF向きといえる。特に今見せたように縦の変化にはめっぽう強い。

 

「うちも翼もうかうかしてられないやんね、翼」

 

サッカー選手、皆負けず嫌い。教える立場とは言え対抗心を燃やす黄名子が翼に声をかける。

しかし翼から返事は帰ってこない。

 

「・・・翼?」

 

「!・・・あ、ああそうだな。」

 

覗き込まれて我に帰ったかのように慌てて返事をする翼。

 

「どうしたの?寝不足やんね?」

 

「ま、まぁそんな感じかな。そろそろ昼飯だし一旦集合しよう。」

 

「お昼ごはん!うちおなかペコペコやんね~」

 

「うほ~~飯だ飯~~このあたりの飯はうめぇぞ~~!」

 

「ごはんって木の実だよね・・・あ、あはは・・・」

 

苦笑いの信助。木の実が似合いそうな気はするが。

声を掛けみんなのもとに戻っていく翼。

そんな背中を天馬が見つめていた。

 

 

甘く実った果実と熟れた木の実、そして焚火で焼いた何かの肉。ワイルドな昼飯をみんなで囲んで食べていた。

錦先輩に自分の分をつまみ食いされてつかみかかる水鳥先輩。謎の肉を恐る恐るほおばる速水先輩。

いつものごとく笑いあって食べる天馬や信助。なぜか餅を炙ってる黄名子。

非日常のなかに流れる日常。そんな喧噪を俺はなぜか入りこめずにいた。

いつもみたいに天馬や信助、葵の輪に入ればいい。少し間の空いてる剣城の隣に座ればいい。霧野先輩と神童先輩と戦略の話をすればいい。

なのにそんな日常が、喧噪が、風景がどこか遠くに感じる。

昨日からずっとだ答えの出ないもやもやに飲みこまれていく。頬張る食べ物の味もよくわからない。

何も変わっていないはずなのに何かが違う。いや、違うのかすら分からない。

 

「・・・さ・・・翼!」

 

「はっ!!」

 

背後から名前を呼ばれて気づく。天馬が肩に手を掛け呼んでいた。

 

「みんなもう練習に戻るよ。俺たちも戻ろう。」

 

「あ、ああ・・・ごめん、腹いっぱいになってうとうとしてた。」

 

「そう。・・・なんか元気ないけど、どうかした?」

 

一瞬言葉を飲みこもうとして、けどこらえて聞いてくる天馬。

 

「・・・ただの寝不足かな、昨日眠れなくてさ・・」

 

 

「そうなんだ。・・・何か悩みがあるなら俺、聞くからさ。何でも相談してよ。」

 

「大丈夫だって。昨日あんな風にやられて悔しくてさ・・・だから、・・・行こう。待たせちゃ悪いからさ。」

 

何とかして切り上げてこの場を終わらせる。

 

「・・・うん。そうだね。」

 

そういって練習に戻った。

そうして気が付いたら午後の練習も終わり、日も暮れかかっていた。

 

 

今日の翼は何かおかしい。練習の時もトーブにちゃんとアドバイスはしてたけどどこか心ここにあらずって感じだ。様子がおかしいのは今日だけじゃないここ最近。それこそこの時代にタイムジャンプしてくる前の日も。いや、三国志の時代から帰ってきたときから少し変だった。幕末時代でのこともあるし。

翼だけじゃない、フェイもだ。ロックスターのことがあって、夜に一緒にサッカーしたときフェイが話してくれたこと。僕にはサッカーしかない。フェイはサッカーが大好きで、サッカーを守るために200年後からやってきて一緒に戦ってくれて。けどあの言葉はそれだけじゃない。

みんな悩んでる。もがいてる。俺はキャプテンなんだ。俺がみんなを支えなきゃいけないのに。

「もっと、しっかりしないといけないのに・・・」

 

 

 

個人練習、全体練習、トーブの特訓や恐竜たちとのバトルなど目いっぱいの一日を過ごした俺たちは源泉で疲れを癒し(もちろん男女別、水鳥先輩の鉄拳制裁付き)就寝前に今後について語り合っていた。

 

「ここ2日で我々は確実にレベルアップしている。トーブもメキメキ力をつけている。だがまたいつパーフェクト・カスケイドが現れるか分からん。はっきり言って今のままで奴らに対抗できるかというと厳しいものがある。」

 

「7と8の力も結局めどがたっていないしな。」

 

大介さんとワンダバの言う通りである。この時代に来た時よりも確実に強くはなっている。恐竜たちにも負けないスピードと判断力も身についてきてる。

けど、パーフェクト・カスケイドのあの圧倒的な強さは計り知れない。それに戦っていた違和感の正体。ミキシマックスの力だって誰が受け取るのか、そもそも誰から受け取るのかすらも分からない。

そういつまでも奴らの目をかいくぐれるとは思えない。

 

「時空最強イレブンの力を秘めた恐竜は必ずどこかにいるはずじゃ。何とかして探し当てるしかない!」

 

「けど一番強かったロックスターはもう・・・」

 

「きゅぅぅぅぅ・・・・」

 

ロックスターの名前を聞き悲しそうになくビッグ。

 

「速水!!」

 

「ご、ごめんなさい!でも・・・」

 

「トーブ何か心あたりは無いの?ロックスターやデスホーンみたいな強いやつ。」

 

信助がトーブに尋ねる。

 

「ん~~つえー奴はいるけど・・・あいつはなぁ・・・」

 

「あいつって・・・この間言ってたデスホーンより凶暴っていう?」

 

ロックスターのもとへ向かう際に言っていたやばいやつのことか。

 

「ああ。ジョーっていうんだけどあいつは暴れもんで手が付けられねぇからなぁ。」

 

聞いたことのない名前。トリケラトプスのデスホーンみたいな固有の名前かはたまたまったくしらないやつなのか。

 

「トーブがそこまで言うなんて・・・そんなに凶暴なの?」

 

「おう。狩りで獲物を仕留めたやつもジョーが現れたらすぐ逃げ出すんだ。戦ったらぜってぇ勝てねぇからな。」

 

「そ、そんなに・・・ならそいつの力をもらえばいいんじゃぁ・・」

 

速水先輩が言う。確かにそこまで強いならふさわしいかもしれない。

 

「いや時空最強イレブンの力は強さだけではダメじゃ。サッカーとはプレーを通じて心も鍛えるもの。

悪い心を持っているものはたとえ強いやつや恐竜でもダメじゃ。」

 

しかし大介さんはそうはいかないらしい。これまでの人たちも一時は対立することはあっても歴史を多く動かしてきた人たち。俺たちの時代を作り上げた人たちだった。強ければいいってもんじゃないらしい。

 

「まぁミキシマックス相手に関してはワシたちに任せて、お前たちは戦いに備えてゆっくり体を休めい。」

 

「「「はい!」」」

 

 

 

『・・・・〇!・・・・〇!!』

誰かが俺を呼んでいる。顔は見えない。

前からも後ろからもいろんなところから呼んでる声がする。

振り向くと。」

 

「イレギュラーは排除する。」

 

感情が見えない坊主頭のあの男。

 

「!!!・・・はぁはぁ・・・くそ・・・。」

もう何日まともな夢が見れてないんだか。

 

周りを見渡す。どうやらみんな寝ているらしい。起こさなくてよかった。

けどこのまま寝れるはずもない。

 

昨日と同様寝床を抜け崖のほうで景色を見渡す。

俺たちの時代と違って空は透き通ってて、あたりは静かで、けど虫や動物たちの声がどこからか響き渡って。

今日はトーブも熟睡していた。今は完全に一人だろう。

目を閉じる。

浮かぶのはさっきの夢、いやあの時あの男に言われた言葉。

 

「・・・イレギュラー。そうだよな。俺はみんなとはどこか違う。」

天馬たち雷門のみんなとも、未来から来たフェイとも、この時代で育ったトーブとも違う。

今まで気づかなかった。気づかないふりをしていた。

けど突きつけられた言葉。

イレギュラー

この世界で俺にしか分からないこの感覚。

違和感、郷愁、孤独感。

雷門のみんなは俺の大事な仲間だ。一緒にホーリーロードを戦って、ゴッドエデンに行ったり、ともに練習して、日々を過ごした仲間だ。

けど

ポケットの端末に目をやる。そこにはメッセージの受信はない。

 

「俺は・・・ひとりぼっちだ。」

 

ついに口をついてでた言葉。ここ最近抱えていたこと。

誰にも聞かれない。聞かせられない。そう思っていた言葉が漏れた。誰も聞いていないから。

そう思い口に出した。

 

 

 

「一人じゃないよ。」

 

背後から声がした。誰もいないと思っていた。気配も感じなかった。

そこに居たのは

 

「翼・・・」

 

これまでずっと同じ屋根の下で生活し、同じ教室で学び、一緒に戦ってきた、松風天馬だった。

 

 

 

それは偶然だったのかもしれない。虫の知らせというやつかな。翼が目覚めるほんの少し前に俺は目を覚ました。あたりはとても静かで、夜空はきれいで。虫たちのささやかな鳴き声に包まれてもう一度寝ようとしたとき、翼が小さく声をあげ目を覚ました。うなされていたのか息が荒い。

 

「・・・くそ」

 

絞り出すように言い、翼が寝床を出ていくのを俺は気づかれないように薄目でみていた。

少し歩き崖のほうに向かい視界から外れた翼を、俺は皆を起こさないようにそっと俺は追いかけた。

悟られないように気配を消して。壁に身を隠し、盗み聞きするようで気が引けるが様子をうかがっていた。

 

「イレギュラーか・・・」

 

(イレギュラー?)

 

かすかに聞こえてくる翼の声。それは聞いたこともないようなかすれるような、弱り切った声だった。

そうして覗き見ていると翼はポケットからなにかを取り出した。

それは携帯のようなものだった。けど翼のものとは違う、俺たちの時代ではみたこともない。

そう、フェイやワンダバが使っているような機械だった。

 

(どうして翼があんなものを)

 

そうしてふと思い当たったのが幕末の時に見た女の子。幕末にはどうも似つかわしくないような、見たことないきれいなラベンダー色の髪の女の子。翼に親しげにしていて、けど翼は話してくれなかった女の子。あの子はもしかしたら

そんなことを考えていたらまた翼の声が聞こえてきた。

 

「俺はひとりぼっちだ。」

 

何を言っているんだと思った。翼は俺の親友で、大切な仲間で、雷門のみんなも翼の仲間で。そんな翼がひとりぼっちなんて。

けど、ここ最近の翼の様子、隠していることが今の言葉に込められていた気がした。

そう思ったらもういてもたってもいられなくなって俺は歩み寄って声を掛けていた。

 

「一人じゃないよ。」

 

 

「天馬・・・どうして・・・何してるんだよ。」

 

突然のことに頭が回らない。

 

「それはこっちのセリフだよ。今の、どういうこと?翼がひとりぼっちって。」

 

「い、いやそれは・・・聞き間違いじゃ・・・」

 

「それに、それは何。そんなもの持ってるの初めて見たけど。」

 

「あ、これは「俺たちの時代のものじゃないよね」・・・うっ」

 

手元のデバイスを指さす天馬。

誤魔化そうと、取り繕おうとしても言葉が出てこない。

 

「翼、ずっと隠し事してるよね。幕末で会っていたあの女のこととか。話してよ。」

 

「そ、それは・・・」

 

メイアと会っていたのをまさかみられていたなんて・・・これまでとは違い確信を持って聞いてくる天馬。その目はまっすぐに俺を見据えていて、そんな目を俺は見つめ返せず目を逸らしてしまう。

 

「別に隠し事の一つや二つ誰にでもあると思う。けど、翼はそれで悩んでる、苦しんでる。だったら話してよ。俺は翼が悩んでるなら力になりたい、何とかしたい!」

 

「いや、でも・・・」

 

「俺たち仲間じゃないか!親友じゃないか!・・・それとも俺ってそんなに頼りないかな・・・」

 

「そ、そんなことはない!天馬はよくやってるし、俺のし・・・しん・・・」

 

言葉が出てこない。いつもならすんなり出てくるはずのあの言葉が。

 

「・・・翼ってさ、みんなをどこか一歩引いた所から見てるよね。」

 

「・・!!」

 

「別に仲間と思ってないとかじゃないのは分かってるよ。けど、心のどこかで線を引いてるっていうか、一歩踏み込んでくれないっていうかさ。ずっとどこかで引っかかってた。けど、一緒にサッカーして、お風呂入ったりごはん食べたり、宿題写しあったり、笑いあったりするのが楽しくてどうしても言い出せなかった。けど、三国志から帰ってからそれが強くなって・・・」

 

俺は黙って聞くことしかできなかった。天馬がここまで気づいていたなんて。

 

「けど、俺はもっと翼と分かりあいたい!抱えてるもの全部知って本当の仲間に、親友になりたい!・・。だから話してよ・・・力にならせてよ・・・何とか・・したいんだ・・・」

 

「分かったよ・・・」

 

天馬の心からの言葉が、本音が、想いが伝わってきて、もう嘘なんてつけなかった。隠し事なんてできなかった。

 

「・・・俺さ、記憶が・・・無いんだ。」

全てがあふれだした。

 

 

 

「俺には今年の春、雷門中入学式以前の記憶が無いんだ。正確には赤峰翼としてのそれ以前の記憶が一切無い。」

俺は全てを話すことにした。赤峰翼としての人生を送り始めてから、いや。

 

「俺はあの日、あの校門の前に至るまではどこか遠くの世界にいたんだ。」

 

「遠くの世界?それってパラレルワールドってこと?」

 

天馬が返してくる。その疑問は至極まっとうなものだろう。けど違う。

 

「いや、パラレルワールドは俺たちが生きているこの世界とほとんど一緒だけど少しだけ違う世界のことだろ?俺がいた世界はこの世界とはまったく違う世界だ。」

 

「元居た俺の世界のサッカーには必殺技や化身なんてものは無かった。フィフスセクターなんてものも無かった。サッカーは元の世界でも世界一人気なスポーツだったけれどここまでじゃなかったよ。俺はそんな世界で、サッカーが好きでサッカー部に入って今みたいに生きていて、けど今とは確かに違う生き方をしていたんだ。」

 

「じゃ、じゃあなんで今翼はここにいるの?」

 

「・・・・俺は元いた世界での部活の帰り道で、もうすっかり日も暮れてたかな。その帰り道、友達と一緒に帰ってるときに・・・交通事故で・・・死んだ。」

 

「そ、そんな!?」

 

俺から告げられた衝撃の事実に天馬が思わず声をあげる。そりゃそうだろう。目の前にいる人間がもう死んでるなんて。

 

「そうして気が付いたらあの日、入学式の朝の雷門中にいたんだ。」

 

「本当に訳が分からなかったよ。見たこともない場所で、さっきまで着てた制服とはまったく違う服を着て、そして生きてるんだから。」

 

「自分が誰なのかも分からなかった。俺の意識はそこにあるのに、名前もそれまで何をしてたかも分からなかった。身元は携帯や財布に入っていた生徒証でなんとか分かった。そうして俺は赤峰翼になったんだ。」

 

 

「そこからは周りに流されるままに入学式に出席して、その日を終えた。木枯らし荘には、お母さんから送られていたメールでたどり着いた。そして天馬、お前に出会ったんだ。」

 

あの日、入学式を終えてメールに従うまま木枯らし荘に流れ着いた時のことを思い出す。

掃除していた秋ねえが、木枯らし荘の前で戸惑う俺に話しかけ、両親から話は聞いているといって中に招き入れてくれて。そして少しして天馬と初めて出会った。

 

『初めまして!俺、松風天馬!君、一緒のクラスだよね!・・・え~と』

 

『あ、赤峰、翼です・・・』

 

『そうだ!赤峰君だ!出席番号1番だったから印象に残ってたんだ!赤峰君もここに住むの?これからよろしく!』

 

初対面で目を輝かせていた天馬の顔は今でも忘れない。

二度目の人生で最も印象に残っていることのうちの一つだ。

 

「そこからは天馬も知っての通りだ。大変だったんだぜ。見たこともないようなサッカーをするやつばかりで、すごいパワーだし、必殺技なんてものもあって、挙句の果てに化身なんてもんもあって。けどがむしゃらに生きてるうちになんとかなってて。そして今に至るってわけだ。」

 

「つまり俺の、赤峰翼としての人生はあの入学式から今に至るまでの分しかないんだ。そして俺は人生が二度目でこの世界の誰とも違うってことだ。」

 

「そんなことが・・・」

 

あまりの情報量に唖然としている天馬。

 

「いや、そもそも俺は赤峰翼ですらない。なぜなら赤峰翼には両親がいて、赤峰翼として雷門中入学式の朝まで生きてきた、本来の赤峰翼という人間がいたはずなんだ。俺は、元の赤峰翼の人生を奪って今を生きてるだけの、別人なんだ。」

 

そう。あの日俺がこの人生を歩み始めた瞬間からそれまでの赤峰翼という人間は消えてしまった。

俺のことを息子として接してくれている両親も、本当の親ではない。そして俺もあの人たちの本当の息子ではないんだ。だからこそどう接していいか分からず他人のように接してしまう。

フェイがこの時代に来る前の休み、初めてこの世界の両親に対面してそれがはっきりわかった。

 

「さっき天馬言ってたよな。俺はみんなを一歩引いて見てるって。・・・その通りだ。俺は天馬や信助、雷門のみんなとは本質的に違うんだ。仲間だと思っていても、心のどこかで自分とみんなとは違うって感じてたんだ。この世界で俺だけが違うんだ。みんなとも、未来から来たフェイたちとも根本的に違う。舞台を客席から見て一緒にその中にいるような気になっているだけの観客。それが俺なんだよ。けど俺もそれを認めるのが怖くて目を背けてた、気づかないふりをしてた、考えないようにしてた。」

 

「けど、一昨日あのレイ・ルクに言われたんだ。お前はイレギュラーだって。どうやってかは分からないけどエルドラド側は気づいたんだろうな、俺のことに。そうしたらもうどうしようもなくなってさ。俺はどうしようもなくひとりぼっちなんだ。」

 

完全に決壊してしまった。なんとか気づかないふりをしていた孤独感が堰を切った。

もうどうしようもなくなって、自覚してしまった。自分だけがみんなと違うことに。

天馬は何も言わない。理解できていないのか受け止め切れていないのか。

無理もない。親友だと思っていたやつが別の世界の人間で、親友だと思っていた人間はまったくの別人で、違う人生を経験してるなんて。

 

もう何もない。全てを吐き出し切った。

ああ、どうなるんだろうな。これから

天馬はなんて言うだろう。こんな大事な大事なことを隠してきて今更なんて。

 

長い沈黙が流れる。

お互いに何も言わない。虫たちの鳴き声だけがあたりをつつむ。

 

 

「・・・違う。」

 

「え?」

 

沈黙を破ったのは天馬だった。

 

「違う。翼はひとりぼっちなんかじゃない。」

 

「天馬・・・けど俺はみんなとは「違わない!!」」

 

否定しようとする俺の言葉を遮り言う天馬。

 

「何も違わない!たとえ翼が俺が知らない世界で生きてた人だったとしても翼は俺の仲間だ!親友だ!」

 

「で、でも天馬がいう赤峰翼ってのは本当は俺じゃないんだ。俺は赤峰翼の体を借りてるだけの別人で「関係ない!」!?」

 

「たとえ翼が翼じゃなかったとしても!まったくの別人だったとしても俺と翼は一緒にサッカーして、笑いあって、秋ねえに叱られて、そうして一緒に過ごすんだ!もし俺と翼の立場が逆で、俺が前の翼の世界に生まれたとしても、絶対に俺たちは出会う。そして同じように生きていくんだ!」

 

「天馬・・・・」

 

俺の胸をつかみ語りかけてくる天馬。

その言葉にはなんの迷いも不安も無い。

 

「世界なんて関係ない。だって翼は昔も今もサッカーが大好きでこうして時代を超えてまでサッカーをしてるサッカーが大好きなやつなんだ!俺たちはサッカーでつながってる。信助や剣城、雷門の皆やフェイたちもそうさ!その繋がりはパラレルワールドだろうとまったくの別の世界や人生だって壊せない!俺たちは仲間だ!翼には俺がいる!みんながいる!客席から見ているだけだっていうなら引きずり込んでやる。こっちからそっちになだれこんでやる!だから・・・だから・・・」

 

もはや勢い余って天馬に押し倒される形になっている。

見上げる天馬の目には涙がにじんでいる。

そんな天馬の言葉をただただ俺は受け止めるしかない。

 

 

 

「翼はひとりぼっちじゃない。」

 

 

 

その言葉は。

天馬の口からこぼれ出たその言葉は。

俺がずっと求めていたもので。

けどそれはかなわないもので。

だれも理解してくれないから。

あきらめていて。

けどずっと言ってほしかった言葉だった。

 

俺を見下ろす天馬の顔がにじむ。

 

「あ、あれ・・・」

 

どこか他人事。そんなだからこれまで流してこなかった。涙があふれ出ていた。

 

「おかしいな。ちょ、天馬、離れて」

 

涙をぬぐうために天馬を押しのけようとするも押しのけられない。

力が入らない。頭が回らない。思考がぐちゃぐちゃになってる。

なのに、なのにずっと重くのしかかっていた胸のつっかえがどんどん軽くなっていっていて。

涙でにじんで見えないはずなのに、目に映る天馬の顔はどこまで輝いていて。

 

「本当のことを話してくれてありがとう。ずっと寂しかったんだね。けどもう大丈夫。」

 

どこまでも優しい声を掛けてくる天馬。

もうこらえられなかった。

 

「う、うぐ・・うぅぅあぁぁぁ・・・」

 

声を押し殺すように俺は泣いた。全てから解放されたかのように。

 

 

 

「・・・・そろそろ離れてくれよ。男に押し倒される趣味は無いんだけど。」

 

「あ、ご、ごめん。」

 

ひとしきり涙を出し尽くしたあとそう言って二人は元のポジションに戻った。

そこからまた少しの沈黙。

男が男に泣き顔を見られる。互いになんとも気まずい空気が流れる。

 

「なれるかな?」

 

「え?」

 

沈黙を破ったのは今度は翼だった。

 

「俺、みんなと本当の仲間になれるかな。一緒の場所に立てるかな?」

 

「・・・なれるさ。いや、本当はもうなってる。あとはもう翼次第。」

 

「俺次第、か。・・・そうだよな。」

 

咀嚼するようにつぶやく。

 

「世界なんて関係ない、俺たちはサッカーで、絆でつながってる。そうだよな天馬。」

 

「!・・・うん!」

 

翼の言葉に返す天馬。

さっきまでの翼とは違う。前を向いた言葉。

それを天馬は確かに感じていた。

 

「なら、その繋がりってのを信じるとするか!」

 

「うん!」

 

そう言った翼の表情はこれまで見たことも無いような、晴れ晴れとした表情だった。

 

 

「さて、もう遅い。早く寝ようぜ。」

 

「そうだね。」

 

そう言い立ち上がった翼に天馬も続いた。

寝床の方に歩みを進めようと先を歩く天馬がふと振り返る。

 

「あ、そういえば。」

 

「ん?何だ?」

 

「もう一つ。幕末でのあの女の子のこと。あの子は誰なの?」

 

「うぐっ・・・」

 

そう。あまりの衝撃に脇にそれていたが隠しているもう一つのこと。メイアについて。

まさかこの流れで聞かれるとは思っていなかったため言葉に窮する。

 

「あ~あの子はその~・・・」

 

なんと誤魔化すべきか。全てを打ち明けたとはいえメイアについては本人から口止めされている。

言ってしまってもいいものだろうかと思案するが。

 

「・・・ごめん。あの子についてはまだ言えない。けど大丈夫だ。あの子は信頼できる。」

 

迷った挙句やはりメイアとの約束を破るわけには行かないと思いはっきりと答える翼。

けれども彼女がエルドラドとは敵対してることもあるため誤解だけはされないように。

 

「・・・そっか。分かった。翼が言うならきっと大丈夫なんだね。俺は翼を信じるよ。」

 

「ありがとう。時がきたら必ず話すよ。」

 

「うん。それじゃ戻ろう。」

 

すんなりと引き下がった天馬に一安心する翼。

この戦いが終わったら天馬にも紹介しようかな。そんなことを考えつつ寝床に戻ろうとするがふと足を止めた翼。

 

「なぁ天馬。」

 

「ん?」

 

「その・・・ありがとうな。・・・・俺の・・・親友。」

 

「・・・・うん。」

 

それ以降もうお互いにもう何も言わず床についたのだった。

 

 

 

全てを吐き出し泣き疲れ、眠りに落ちようとした翼のポケットがふと震えた。

取り出し確認した画面には一通のメッセージ。

 

 

 

あなたなら大丈夫。お仲間と一緒に乗り越えられるわ。頑張って!応援してる!

 

 

その一文を確認した翼は彼女はどこまでお見通しなんだと思いつつも安らかな気持ちで今度こそ眠りについた。

その日は本当によく眠れた。




いかがでしたでしょうか?
死んで気づいたらこの世界にいたからには転生した翼くんに前世での人生があったように、イナイレ世界に元居た彼の人生もあるはずだよなとこの作品を投稿しはじめた当初から考えていました。それといざ記憶を持って転生したとしてそう簡単に受け入れられるのかと考えた時に自分と同一視できるだろうかと疑問に思ったためこういった展開を書かせていただきました。
正直好き嫌いは分かれると思いますが自分で書くならせっかくならとぶつけてみた次第です。面白いと思っていただけたら嬉しいです。引き続きよろしくお願いします。

途中出てきた凶暴で獲物を奪う恐竜。モデルが伝わる人いるのかな・・・
あと早くヒロインを出したい・・・
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