翌朝
・・・・て。・・・・きて。
真っ暗だ。遠くから声が聞こえる。
・・・ま・・・さくん
誰かが誰かを呼んでような。
聞いたことがある声な気がする。
・てんま!つばさくん!
俺と天馬を呼んでるのか。
「んん・・・う~ん・」
「天馬!!翼くん!!起きて!朝だよ!」
いきなり光がさす。
目をあけるとそこには葵の顔があった。
「も~やっと起きた。朝だよ!」
「お、おはよう」
どうやら聞こえてた声はなんてことない、俺と天馬を起こす葵の声だった。
「ほら天馬も、はやく起きて!」
寝ぼけ眼で隣を見ると天馬も葵に掛け布団代わりにしていたはっぱを剥ぎ取られ叩き起こされていた。
天馬を起こす葵に秋ねえの面影が。俺も含め木枯らし荘の朝の光景のようなものが繰り広げられていた。
「おはよう翼。」
「おはよう天馬。葵が一瞬秋ねえに見えたよ。」
「あはは、俺も同じこと思った!」
昨日遅くまであんなことしてたおかげで二人そろっての寝坊。
同罪の天馬がいて一安心しながらも昨晩のことを思い出す。
誰にも言ってなかった秘密を隣にいる親友に初めて打ち明けた。
一晩立って少し気恥ずかしい気分にもなるが天馬の笑顔を見ると落ち着いた。
そうしているとまた葵から声がかかる。
「天馬~翼くん~早く~みんな待ってるよ!」
「「は~いすぐ行く~」」
「「すいません!お待たせしました!!!」」
大急ぎで準備しみんなと合流する。
「も~二人とも遅いよ!」
「二人とも寝坊助さんやんね。」
「これが合宿の朝だとしたら問題だぞ。」
「まぁいいじゃないか神童。」
「そうそう。大自然に囲まれてるんじゃ!快眠もできるってもんぜよ!」
「そこら中に恐竜がいるのによくあんなに眠れますね・・・」
信助や黄名子、先輩たちが迎えてくれる。
寝坊で先輩たちを待たせるって冷静に考えるととんでもない。神童先輩の言うことはごもっとも。
「それではまたいつパーフェクト・カスケイドが襲ってくるか分からない。時間は限られているからこそ、この大自然の力を借りた特訓で力をつけましょう!」
「「「おお!!!」」」
寝坊しつつも天馬が指揮をとり、トーブが先導して移動を始める。
天馬の言う通り。今のままではパーフェクト・カスケイドには勝ち目が無いし、またいつ襲ってくるかも分からない。少しでも時間を有効に活用しないと。
「翼!ほら行こう!」
「あっ・・・」
そんなことを考えていると天馬に手を引かれる。
「翼早く行こう!」
「ぼ~っとしてると置いてっちまうゾ」
「油断してると恐竜に食べられちゃうやんね!」
先に進んでたみんなたちが手を振って俺たちを呼んでる。
今までもあったような光景。
けどなぜだろう。みんなは少し先にいるのに自分がもうその中にいるような感覚がした。
「翼。さぁ!」
「・・・ああ。行こうぜ天馬!」
昨日俺を受け止めてくれた親友に引かれ一歩踏み出した。
俺は本当の意味でみんなと仲間になれた。そんな確信があった。
先頭を行くトーブとトーチャンに連れられ俺たちは移動する。
開けた野原に到着してワンダバを中心に特訓の指針を議論する。
「パーフェクト・カスケイドを相手にするにはまずあのスピードについていけるようにならねばならないだろう。」
「確かに。あいつらのスピードはすさまじかった。まったくついていけなかった。」
「動きについていけないようでは点をとる以前の問題だからな。」
「そうはいってもどうすれば・・・」
目標は定まったもののそのためにどうすればいいか皆が頭を悩ませる。
「ん?何かくるぞ?」
そうしていると遠くから大量の足音が聞こえてきてそちらに目をやると
「うわわわわ。恐竜だぁ!!!!!」
大量の恐竜たちがこちらに走ってきておりあっと言う間に囲まれてしまった。
「わああ。トロオドンだ~!」
「とろろうどん?」
こんな状況だというのに目を輝かせる信助と聞き間違える錦先輩。
「ちょ、押すなって翼君!?」
「ほ、ほら俺は食べてもおいしくないだろうしさ。」
「だからって俺を差し出すなよ!」
狩屋と押し合いへしあい。
「安心しろ。こいつらはオラの仲間だ。」
トロオドンに囲まれておびえる俺たちを尻目に前にでるトーブ。
どうやらトーチャンが呼んだらしい。
「こいつらオラたちの特訓を手伝ってくれるらしいぞ。」
「手伝うって言ったって恐竜だぞ?」
そんな狩屋の言葉を聞いたトロオドンたちは俺たちのボールでいきなりパスを回し始めた。
完全にサッカーの動きになっている。
信助博士によるとトロオドンは中世代で一番賢い生物とのこと。だからこれくらい朝飯前らしい。
そうしてトロオドンを相手にした特訓が始まった。
3匹ほどでパスを回しながら攻め込んでくるトロオドンを止めにかかるディフェンス陣、逆に待ち構えるトロオドンたちを抜きにかかるオフェンス陣に分かれる。
「こ、こいつらさすがに早いな。それにパスも強烈だ。」
恐竜ならではの足の早さ、筋力から繰り出されるパスの重さと速度。それは人間同士での練習では得られないものだ。普通にパスカットをしようとしてもパスの早さに追いつけない。だがこれこそ俺たちに今必要なものなのかもしれない。
パーフェクト・カスケイドのあの動きとボール回しに近いものがある。
「今度はウチの番やんね!」
黄名子がトロオドンたちに向かっていく。
トロオドンたちは陣形を組んで黄名子を抜きにかかる。
すると黄名子の背中から黒い影のようなものが湧き上がる。
「「あれはもしかして」」
天馬やフェイとハモる。
そうあれはどう見ても化身が出る前兆だった。
「あ!・・・抜かれちゃったやんね」
しかし完全に化身を呼び出すには至らず抜き去られる。
「黄名子、ドンマイ。惜しかったぞ。次はいけるさ。」
「そうだよ。それに今もう少しで化身が出せそうだったよ!」
すかさず霧野先輩と天馬が声をかけに行く。
「そういえば黄名子って化身出したことなかったんだな。」
加入してからずっと試合に出ていて頼りになるプレイを続けていたのですっかり忘れていた。
化身に頼らなくても高いレベルのプレイが出来ている証でもあるが。
「う~~。次こそは成功させて見せるやんね。」
「化身といえばフェイの化身も見たことないな。化身アームドのことを知っていたしやっぱりフェイは化身出せるのかな?」
そう。フェイも化身を出したところを見たことがない。一応化身選手であるデュプリは出していたが。
デュプリを出せるなら普通の化身も出せるような気もするが。エルドラドとの激しい試合が続く以上、いつ負傷者がでたとしてもデュプリで補えるように体力を温存しているのだろうか?
オフェンス練習の方に混ざっているフェイのに目をやり考える。
その後ろでフェイを真剣な眼差しで見つめている存在には気が付かず。
ディフェンス練習陣から離れ天馬はオフェンス練習に戻っていった。
ディフェンストロオドンたちは動物的直感と瞬発力、狩りをする生物特有の連携でもってこちらのドリブルやパスを防いでいた。特にパスカットに関しては普通ならカットされないようなタイミングでもカットされる。パーフェクト・カスケイド戦でも複数あった展開だ。
「ミキシトランス、ティラノ!」
フェイがミキシトランスして単身トロオドンたちに突っ込んでいく。
しかしトロオドンたちはその動きに反応してボールを奪ってみせた。
「そんな・・・ミキシマックスしてもダメなんて・・・」
「フェイ、気にしないで!焦らずに連携していこう。」
「天馬・・・うん。」
サッカーを守るため、天馬たちに加勢するために未来から駆け付けたのに自分の力が通じなくなってきているのを実感し焦っているフェイに天馬が声を掛ける。
「・・・もう一度やってみるやんね。」
「頑張れ、黄名子!」
そんなオフェンス練習を見てまた黄名子がトロオドンたちに向かっていく。
先ほどよりも動きにキレがあるように見える。何よりも力が伝わってくる。
これはもしかすると
「たあぁぁぁぁ!」
黄名子が踊るように回るとそれにつられるように背中から伸びる影が今度こそ形を成していく。
「暁の巫女アマテラス!!!」
そうして黄名子の化身が発動した。獣の下半身に可愛らしいケモミミの女性の上半身をした黄名子らしい化身だ。
化身の力に後押しされた黄名子が今度こそトロオドンたちからボールを奪取してみせた。
「出来たやんね!ウチの化身!」
「やったな!さすが黄名子!」
駆け寄って黄名子とハイタッチ。トーブや霧野先輩も混じってもみくちゃにしてやる。
俺自身はあんなに化身の制御に苦戦したことを思うと立つ瀬がないように感じもするが。
「ウホ~。黄名子やるな~。オラも負けねぇぞ!ジャガウォック!」
黄名子に釣られトーブも化身を出しトロオドンとの1on1を制する。
トーブの動きには迷いがない。俺たち既存のサッカープレイヤーにはついてまわる定石や固定観念がないからこそできる。しかしそれこそが今の俺たちには必要なものなのかも知れない。
トーブの動きを見てそのことに気づいた神童先輩の言葉で全員が少しでも見てからプレイに移すまでの速度をあげることを意識して練習に取り組むようになった。
そうしている内にトーチャンが吠え今度は2体のトロオドンと対峙する。
さすがに2vs1では分が悪く弾き飛ばされるトーブ。
「さすがに2vs1は無茶だ。やめさせたほうが・・・」
フェイがトーチャンにやめさせるように言うがトーチャンは首を横に振りトーブに立ち上がるように吠える。
「・・・・・時には厳しくするも親の務め、やんね」
ぼそりとつぶやく黄名子の声が聞こえる。母性?
何度も打ちのめされダウンしたかと思ったトーブだったがビッグの鳴き声を聞き立ちあがる。
「ウへへ、ビッグに、情けないところ見せるわけには行かねぇもんな」
そんなトーブの姿を見て思わず前に出てしまった。
「そうだな。なら、一緒にやるか!トーチャン、トロオドンたちを増やしてくれ!それなら良いだろ?」
「翼・・・へへ、あんがとな!」
サッカーは個人技も大切だが連携も大切だ。個人技を磨くことで連携の質が高まることもあれば逆もまたありうる。一緒に成長していった方が儲けものってもんだ。
そんな俺の意思を組んでくれたのかトーチャンが吠えると今度は5体のトロオドンたちが向かってくる。って一人当たりの相手は増えてるんですけど!?
「行くぞ!トーブ!」
同時に突っ込んでいく。相手が5体に増えたことでパスルートや攻めのパターンはさらに複雑になる。
だがこちらも2人になったことで取れるプレイの幅も広がる。
二人でパスコースを制限する。そうするとトロオドンたちは高いパスをだした。そこにトーブが持ち前の反応速度とジャンプ力でパスを弾いた。しかし弾いたボールはトロオドンたちの方へと飛ぶが。
「まだだ!トーブ!」
「おう!」
狩屋と信助のかっとびディフェンスの要領でトーブとの連携でさらに高く飛びボールの奪取に成功した。俺も高さには自身はあるほうなんだ。
「よっしゃあ!!やったぜトーブ!」
無事着地しトーブを引き起こす。
2日前の夜には大いに心揺さぶられたものだが昨日の天馬とのやり取りで吹っ切れた今ならトーブの言っていた意味が分かり理解が深まった気がする。
そうしてしばらく特訓を続けていると見覚えのあるサッカーデバイスが現れた。
「あれは!」
そうしてまばゆい光が収まった時にはやはりと言うべきか、レイ・ルクが立っていた。
そして現れたかと思えばスフィアデバイスが瞬き次の瞬間には前回と同様獣の谷のサッカーグラウンドにワープしていた。
「みんな、特訓の成果を見せるぞ!」
「「「「おう!!」」」
そして雷門とパーフェクト・カスケイドの再戦が始まった。
スタメンは前回同様、狩屋がベンチスタートだ。
ちなみに監督は当然今回もトーチャンである。
「さあ!雷門とパーフェクト・カスケイドのリベンジマッチ!パーフェクト・カスケイドのキックオフ!速攻で上がっていく!」
いつもの実況の人のホイッスルで試合開始とともにパーフェクト・カスケイドが上がっていく。
「ダイ・ロード。」
「よし、ここだ!」
パーフェクト・カスケイドの機械的なプレイに対して天馬がパスカットを成功させた。
こぼれ球はパーフェクト・カスケイドが抑えるも太陽やフェイも後に続く。
「おっと!雷門前回と打って変わって互角の戦いを繰り広げている~!」
トロオドンたちとの特訓の成果が現れている。前回はまったくついていけなかったパーフェクト・カスケイドの動きに反応することが出来ていた。
「天馬、上がれ!」
翼が相手の相手のFWからボールを奪い天馬につなぐ。
「ミキシマックスで一気に攻めるぞ!」
「「「おう!ミキシトランス!!!」」」
神童の合図で神童、霧野、信助、太陽、錦、剣城、フェイが一斉にミキシトランスし天馬がドリブルで相手陣内に切り込んでいく。
しかし
「無駄だ。プラズマシャドウ。」
レイ・ルクの背後から赤い影が姿を表す。
それはノイズを無理矢理人型にした化身のようなものだった。
「け、化身・・・なのか?」
これまで見てきたどの化身とも違う異質な姿。そもそも化身なのかすら分からない。
ベンチのマネージャーたちからは怖いという声が聞こえる。
「あ・・・」
レイ・ルクが天馬からあっさりとボールを奪取しFWの選手へパスをするが先ほどまでとはまったく違う威力に翼と霧野が弾き飛ばされる。
「プラズマシャドウ」
「オメーもか!」
パスを受け取ったグラ・フォムもまた姿はほんの少し違うが同じような化身を繰り出した。
そしてそのままシュートを放つ。
「うわあぁぁぁ」
ミキシマックスした信助でも止められずあっさりとパーフェクト・カスケイドの先制点が決まった。
「今までの化身とは何か違う・・・」
「これは化身では無い。プラズマシャドウだ。」
天馬に対してレイ・ルクが答えるが要領を得ないといった感じだ。
プラズマシャドウはこれまでの化身よりもパワーアップ幅が大きいように感じる。
そこからは前回と同様一方的な試合展開が始まった。
見る見る間に点差は広がっていく。
「オメーらの好きにはさせねぇぞ!ジャガウォック!」
「ナイストーブ!」
化身でボールを奪ったトーブが剣城にパスを出す。
パーフェクト・カスケイドは止めるそぶりを見せない。
「キーパーの経験を積むために攻撃の機会を与えよう。」
「舐めるな!菊一文字!」
「キーパーコマンド16」
しかし絶好の機会に放たれた剣城の渾身のシュートもキーパーの必殺技に阻まれる。
「レイ・ルク、オプティカルファイバーを実行せよ。」
「了解。実行。」
ベンチのサカマキからの指示を受けパーフェクト・カスケイドが陣形を変える。
完璧にシンクロした選手同士の動きで雷門のメンバーを蹴散らしながらフィールドを縦横無尽に駆け巡り追加点を重ねていく。
「くそっ、どうして通じないんだ!」
フェイは自分のミキシマックスの力がまったく通用しないことに焦っていた。
サッカーを守るためにやってきたのにチームに貢献できていないと。
そんなフェイに黄名子が語りかける。
「フェイ、どうして全力を出さないのっ?」
「黄名子!?全力でやってるさ!」
「ううん。フェイの力はそんなものじゃない。ウチを見てて。」
そう言い黄名子がフェイの前に出る。
そして化身を呼び出す。
「暁ノ巫女アマテラス!光輪の矢!」
化身ディフェンス技で相手MFを蹴散らすことに成功する。
すかさずボールを前線に回しフェイに再び語りかける。
「フェイは優れたプレイヤーなのに、デュプリだって出せるのにどうして化身を出さないの?」
「それは・・・」
黄名子の問いにフェイは答えられない。
答えを持ち合わせていないというよりは答えたくないように。
そうしていると大きな足音が複数鳴り響く。
「な、何だ!?」
イレブンが目をやるとそこには大量の恐竜がなだれ込んできていた。
そのまま恐竜たちはコート内へ乱入。
「様子が変だぞ。」
「あれを見て!洗脳されているんだ。」
天馬が指さした先をみやるとスフィアデバイスが黄色い光を放っていた。
あれはマインドコントロールモードの光。
「その時代にあるものを利用すれば歴史への影響は少ない。豊富なリソースは使わせてもらうぞ。」
「我々も同じ条件。むしろ経験値を積むにあたって好都合だ。」
恐竜たちへの対応に精一杯の雷門イレブンを尻目にパーフェクト・カスケイドは恐竜たちを躱しながらサッカーのプレイを続けていた。
放たれたシュートを信助が止めようとするも危うく恐竜たちに踏みつぶされそうになったため回避した結果無人のゴールにシュートは突き刺さった。今のは仕方がない。
「まずは恐竜たちを何とかするんだ。」
「ここは任せてくれ!破壊神デスロス!」
状況をリセットするためにまず恐竜たちを鎮めようと翼が化身を出す。
「みんな伏せて!破壊弾幕!!!」
デスロスの必殺技を放つ。雷門の中で最も広範囲に衝撃を与えるにはうってつけだった。
破壊弾幕を受けた恐竜たちは我に返ったのか去っていった。
しかし点差はいかんともしがたかった。
「これで決まった。君たちが我々に勝つ可能性は0だ。」
レイ・ルクが無感情に告げる。
実力差が点に現れているのは火を見るより明らかだった。
「まだだ!絶対にあきらめないぞ!」
「そうだ!俺たちは負けられないんだ。頼んだ天馬!」
どれだけ点差があろうと、痛めつけられようとあきらめない。
そんな天馬の背中に引っ張られるように全員が立ち上がる。
「ディフェンス、俺たちの後ろを守ってください!」
天馬がディフェンス陣に指示をだす。
しかし神童が割って入る。
「ダメだ!右サイドががら空きになる。」
「あ・・・」
神童が全員に指示を出し直しそれに従う。
(神童さんってやっぱりキャプテンらしいよな・・・)
天馬は足を動かしながらも自分と神童とを比べてしまう。
そんな天馬の背中を翼は見つめていた。
逆サイドではフェイと黄名子のやりとりが行われていた。
「フェイ。どうして全力でプレイしないの?」
「僕は全力でやってるさ!」
「嘘やんね。ならどうして化身を出さないの?フェイの実力なら化身アームドだってできるはずなのに。」
「そ、それは・・・」
ぐうの音も出ないほどの図星をつかれたフェイは顔をうつむける。
「・・・僕は、自分の化身が嫌いなんだ。」
誤魔化しは聞かないと観念したのか正直に答える。
フェイが化身を出すのを躊躇う理由。
しかしそれを聞いた黄名子はまるで知っていたかのように動揺は無い。
「ウチは好きやんね。光速闘士ロビン。」
その言葉を聞いたフェイは思わず黄名子に向き直る。
誰にも教えてない、出したところを見せたことのない自身の化身の名前をなぜ目の前の彼女が知っているのか。
「ど、どうしてそれを!?黄名子、君は一体・・・」
「フェイ。フィールドを、みんなをよく見て!」
黄名子が指さす。
指さした先には今もパーフェクト・カスケイドに必死に食らいつこうとする他のメンバーの姿。
オプティカルファイバーやプラズマシャドウに何度圧倒されても立ち上がる。
「みんな必死に戦ってるやんね。なのにフェイはそれでいいの?フェイのサッカーへの思いはそんなものなの?!」
「僕の・・・サッカーへの思い・・・」
「サッカーが大事ならフェイの本気を見せてよ!!」
「ふん。そろそろ奴を投入するか。」
ベンチのサカマキが何かしらの指示を出す。
するとまた一際大きな足音が鳴り響く。
「グオオオオオオオオ」」
「あ、あれは!」
「デスホーン!」
姿を現したのはこの時代に来て2日目に出会ったあの凶暴なデスホーンだった。
しかも以前出会った時より更に凶暴さがにじみ出ていた。
「あいつも操られてんのかよ!」
「よりにもよってこんな時に!」
思わず悪態をついてしまう翼たち。
そしてデスホーンは最も近くにいたフェイと黄名子を標的に定めたのか。
猛烈な勢いで突進しだした。
「う、うわわ」
巨体のデスホーンの急な突進にフェイと黄名子がバランスを崩し倒れこんでしまう。
「危ない!」
「逃げろ!」
「くっそ!ここからじゃ間に合わない!?」
「うわあああああ」
どうあがいても助けに行ける距離ではない。
絶対に間に合わない。
1秒後に訪れる最悪の結果にその場のだれもが目をそむけたその時。
「ぴぃぃぃぃぃ!」
デスホーンと二人の間に割って入った小さな影と衝突音。
一同が顔をあげ目の当たりにしたのは
「ビッグ!?助けてくれたのか!」
小さな体で必死にデスホーンを食い止めていたビッグだった。
突進を食い止められたデスホーンが一旦距離をとるべくラインの外にでる。
それをビッグも追う。
「ビッグ、オメーやれんのか?」
すかさずかけられたトーブの声にビッグが吠える。
ずっと悲しみに満ちた目をしていたが今のビッグの目には強い意思がこもっていた。
「ビッグ・・・君は乗り越えたんだね・・・よし、一緒に戦おう!」
そんなビッグの姿を目の当たりにしたフェイの中でついに決心が固まった。
「黄名子、ありがとう。僕に自分と向き合うために背中を押してくれて。」
「フェイ?」
「僕の全力、見せてやる!天馬!」
黄名子の前にでて天馬からボールを受け取るフェイ。
「来い!光速闘士ロビン!!!」
飛び跳ねるようにしてジャンプしたフェイの背中から影が姿を表す。
そうして形を成したそれはアメコミのヒーローのような服をまとったウサギに似た戦士だった。
「ロビン、僕は君が嫌いだった。君を見ていると一人だったころを思い出してしまうから。」
フェイが化身を出すことを躊躇っていた理由。
それはフェイの親が姿を消す直前に残していたウサギの人形。ロビンの姿がその人形にそっくりだった。ロビンを見るとどうしても孤独で親に捨てられたあの時の悲しみを思い出してしまうからだった。
「ぴぃぃぃぃぃ!!!」
フェイが化身を出したのに呼応して今度はビッグが吠える。
するとビッグの背から青い影が現れる。
「あれは、ロックスター!?」
その影の形はどう見てもロックスターだった。
まるでビッグがロックスターの化身を出したように見えた。
「今じゃ!」
「うむ!行くぞフェイ!ミキシ、マッックスゥゥ!!!!」
すかさずワンダバがフェイとビッグにミキシマックスガンを放つ。
激しい光が収まったそこにはティラノの時のような髪型だが青い髪色のフェイが立っていた。
「ミキシマックス、コンプリート!」
「さぁ、行くよビッグ、ロビン。アームド!!!」
さらにフェイはミキシマックスだけにとどまらず化身アームドまで行った。
青い髪にロビンの青い鎧を身にまとったような姿のフェイ。
「ミキシマックスとアームドの同時使用だって!?消耗は半端じゃないはず・・・」
ワンダバもおもわず驚きの声をあげる。
そしてビッグもデスホーンに向かって行く。
ロックスターの力に目覚めたビッグはデスホーン相手にも一歩も引かない力を発揮して見せた。
ビッグがデスホーンと渡り合うのを確認したフェイは動き出す。
ミキシマックスと化身アームドを併用したフェイの動きはこれまでとまったくレベルが違った。
パーフェクト・カスケイドのメンバーをも置き去りにしあっと言う間にゴール前へ。
「君の力を借りるよ、ビッグ。王者の牙!!!!」
これまでのティラノとのミキシトランスで放っていた古代の牙。
見た目は似ていてもそこに込められたパワーは比較にすらならないものだった。
パーフェクト・カスケイドのキーパーが必殺技を放つも正面から打ち砕いた。
雷門がパーフェクト・カスケイド相手に初めて点をとることに成功したのだった。
「やったーーーー!すごいよフェイ!」
「ミキシトランスと化身アームドの合わせ技とはのう。まっこと恐れ入るぜよ。」
ついにパーフェクト・カスケイドの牙城を切り崩したことで大喜びのみんなにもみくちゃにされるフェイ。そんなフェイを黄名子は離れたところで優しい眼差しを向けていた。
「これからもウチが支えてあげるやんね。」
そんな黄名子の言葉は誰の耳にも届くことはなかった。
「フェイ。お前も乗り越えたんだな。俺だって・・・」
いかがでしたでしょうか?
ミキシアームドはやはりロマン。
ヴィクトリーロードでも早くミキシアームド両立したいです。
フェイのミキシとアームドはセットでデザインされてるんだろうなってくらいマッチしてていいですよね。