二度目の人生とフェーダの姫   作:プライムハーツ

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今回から幻想世界編です。
この章はイナズマイレブン史上でもトップクラスの超次元展開ですよね。
そして久しぶりにヒロインが本編に絡んできます。


幻想世界編
絵本の世界へダイブ!


恐竜時代から帰ってきて二日後。

雷門イレブンは雷門中屋内グラウンドで今日も練習に励んでいた。

5vs5のミニゲーム形式。

 

「青山、カバー遅れてるぞ。」

「黄名子ちゃん、そのままシュートだよ。」

 

黄名子のシュートを信助をなんとかセーブ。

一旦プレーが止まる。

 

「信助、ナイスセーブだ。かなり反応が良くなってきてるな。」

「ありがとうございます、三国先輩!」

「黄名子ちゃん、トラップする前にあらかじめどう動くか考えておかないと反応が遅れてしまうよ。」

「分かったやんね。太陽はよく見えてるやんね。」

「常に全体を見ておかないと。」

「ごめん神童。」

 

プレーが止まったことでそれぞれのプレーにフィードバックが入る。

太陽や神童はゲームの流れについて、三国や車田たち3年生は各ポジションの後輩に対してのアドバイスを送っていた。

そんな一同を天馬は浮かない顔で見つめていた。

 

神童先輩や太陽はちゃんとみんなをリードしてる。三国先輩たち3年生もこれまでの経験をもとに的確なアドバイスをくれる。

本当はキャプテンの自分がみんなを引っ張っていかないといけないのに。

この前のパーフェクト・カスケイドとの試合、俺はキャプテンとしての役目を果たせなかった。

みんなへの指示も、俺なんかよりよっぽど正確だった。

ホーリーロードの決勝で神童先輩からキャプテンを託されたけど俺はキャプテンにふさわしいのかな?

 

「どうしたの浮かない顔して?」

「朝ごはんはちゃんと食べてたよな?」

 

一人で考え込んでいるとフェイと翼が話しかけてきた。

顔に出てたかな?ダメだな。みんなを心配にさせちゃ。

 

「・・・キャプテンの役割って、なんなのかなって。」

声に出すべきじゃなかったかも知れないけど口をついて出た。

 

「キャプテンの役割、か。俺はキャプテンしたことないからなんとも・・・」

「改めて聞かれると考えちゃうね。」

 

二人からも明確な答えは帰ってこない。

テンマーズのメンバーはフェイのデュプリだけどフェイがキャプテンって言われると特殊なチームだし少し違うのかもしれない。

 

「天馬、あのさ・・「よ~しみんな、ミーテイングルームに集合だ!」・・・すまん、また後で。」

「翼?・・・うん。」

翼が何か言おうとしたところで次の時空最強イレブン探しのミーティングが始まった。

翼はなんて言おうとしたんだろう?

 

 

「では時空最強イレブン、次なるターゲットはまず9の力。野獣の獰猛さと賢者の頭脳を持つファンタジックリベロ!そして10の力。絶対的な勇気と揺るぎない実行力で大地をも味方にするキングオブミッドフィールダー!次のターゲットはズバリ・・・マスタードラゴンとアーサー王だ!」

 

大介さんが発表した時空最強イレブンの力にみんな今まで以上に驚きの声を上げた。

たしかアーサー王といえばおとぎ話の登場人物じゃなかったか。

大介さんがいうにはトンガットル共和国の病院にいた頃に子どもに読み聞かせてる内に逆に大介さん自身がドハマりしてしまったらしい。

音無先生が図書室から絵本を持ってきてくれて全員でそのストーリーをおさらいする。

曰く

アーサー王と円卓の騎士に憧れた若者が従者を連れて城の近くの村にやってきて、同じように騎士に憧れた若者と一緒に入団テストを受け無事合格。悪い騎士に洗脳されたマスタードラゴン

を妖精の力を借りたエクスカリバーで救うという物語だった。

途中信助や輝が騎士を夢見たり、女性陣がお姫様に憧れたりと皆物語の世界観に引き込まれていた。

ちなみに水鳥先輩がお姫様への憧れを口にしたときに錦先輩が茶々を入れて怒られていた。危なかった。

かくいう俺もやっぱり男子としてこういった物語を夢見たことがないかと言われると嘘である。

騎士になってお姫様を守る。全男子の憧れだ。お姫様という言葉でどうしてもあの子を思い浮かべてしまう。とても似合うんだろうなぁ。

 

「けど、これっておとぎ話でしょ?おとぎ話の世界にいくなんてやっぱり無理なんじゃないですか?」

狩屋がみんなが抱いていた懸念を口にする。

 

それもそうだ。これまでの旅も無茶苦茶だったとはいえあくまで実際にあった歴史の世界だった。

だが今回はそもそも現実に存在しない世界の話になる。

 

「いや、出来る!不可能を可能にしてこそ時空最強イレブンだ!」

「その通りじゃ!さすがはマスターD。実に先進的な考えじゃ。」

「おわぁ!アルノ博士!?」

 

もう慣れた。いや嘘。

いきなり現れたアルノ博士がアーティファクトさえあれば新たなパラレルワールドが生まれタイムジャンプできるかも知れんとのこと。

けど実在しない人物にまつわる実在のアーティファクトなんてあるのだろうか。

 

「はいはい!あるやんね!」

「「「「えええええええええ!??」」」」

 

みんなが途方に暮れかけてると元気よく黄名子。

みんなひっくり返るくらい驚く。

「ウチの知り合いに大金持ちで骨董品集めるのが趣味の人がいるやんね!たしかアーサー王の王冠持ってるって言ってたから借りてくるやんね!」

そう言い残してあっと言う間に黄名子は出ていった。

みんなあっけにとられていて誰も止めなかった。

黄名子と大金持ちの知り合い、骨董品とかイメージ違いすぎないか?

黄名子はもっとこう、あるじゃん。ねぇ?

 

 

小一時間ほどたち黄名子が帰ってきた。

机の上に広げられたのはたしかに古びた王冠だった。確かに骨董品として価値がありそうな雰囲気は出てはいるが・・・

 

「これがアーサー王の王冠?」

「どうせ偽物だろ。」

「本物やんね!代々アーサー王の子孫に受け継がれてたって言ってたやんね!」

 

みんなの疑いの眼差しに黄名子がプリプリと抗議する。

うんうん。黄名子はやっぱこうだよな。大金持ちとかじゃないって。

「まぁ他に手段もないだろうしこれでタイムジャンプするしかあるまい。」

 

「うむ。では今回タイムジャンプするメンバーを発表する!天馬、フェイ、剣城、倉間、神童、錦、太陽、霧野、赤峰、狩屋、影山、トーブ、菜花、信助。以上だ。」

 

これまでより同時にタイムジャンプ出来る人間が増えたのはアルノ博士がTMキャラバンを改良してくれたらしい。

前回のタイムジャンプでトーブと兼任とはいえ正式に時空最強イレブンのメンバー入りが確定したため安心してメンバー発表が聞けて良かった。

 

「では、キャラバンに乗り込めぃ!」

「本当に大丈夫なのか?・・・そうだ、一応連絡入れておくか。」

 

めちゃくちゃ不安が残るがとりあえず手荷物などの整理をする。

今回のタイムジャンプはどうなるか分からない。メイアが俺たちを追ってきて大変なことにならないように事前に連絡を入れておく。絵本の世界にいくことになったなんて信じてもらえるだろうか。

 

 

「黄名子。」

「ん?フェイ、どうかしたやんね?」

「あ・・・その・・君にお金持ちの知り合いがいるってのは、嘘だよね?」

「うっ(-_-;)・・・バレてたやんね・・」

「どうしてそんな嘘を?」

「内緒内緒!でももうすぐウチのことが分かるやんね。それまでは秘密♪」

 

 

「では出発するぞ。タイムジャンプ!!!!」

 

アーティファクトはなんと無事起動し現在ワームホール内。

 

「まさか本当にタイムジャンプ出来るとはね。」

「だから言ったやんね~ふふん♪」

「疑って悪かったよ。黄名子さん。」

「ふふん♪素直に謝れるのは偉いやんね、翼。」

「母親かよ。」

「それにしても本当にアーサー王の世界に行けるなんて!」

「楽しみ。」

 

みんな始まる前は散々疑っていたが今のところ無事にタイムジャンプできておりリラックスしていた。

 

「これまでと違って結末も分かってるし楽勝じゃん。」

「一応これまでもおこる出来事は分かってはいたけどな。」

「うっ、うるさいな翼君!」

 

狩屋や輝の1年生組と気楽に話していると急にキャラバンが大きく揺れる。

 

「何があったぜよ!?」

「分からない。航行装置に何か異変があったのかも。」

 

車内にもアラート音が鳴り響く。

機体の揺れも止まらない。

 

「やっぱり王冠が偽物だったんじゃ・・・」

「もう!王冠は本物やんね!」

「みん、「みんな落ち着くんだ!」」

「何かに捕まって!」

 

天馬が立ち上がろうとする前に神童先輩と太陽がみんなに指示を出す。

「ダメだ!コントロールできん!!」

 

しかし時すでに遅し。キャラバンは激しく揺られたままワームホールの光に飲み込まれていった。

 

とりあえず一言。黄名子覚えてろ~~~~~~~~!!!!!

それを最後に俺は意識を失った。

 

 

雷門イレブンがタイムジャンプでとんでもないことになる少し前。

SARU、メイア、ギリスはエルドラドへの宣戦布告を終えアジトに帰ってきていた。

フェーダ側の提案にエルドラド首脳陣たちは当然のように聞く耳は持たなかった。

しかしSARUにとっては当然想定の範囲内だった。

 

「ふふ。我々の勝利は揺るがない、だってさ。」

SARUが微妙に似ていないレイ・ルクのモノマネで茶化す。

 

「あのアンドロイドたちまで差し向けないといけなくなった時点でもう追い詰められてるっていうのに。」

「エルドラドの戦力のなかで唯一少しは僕たちの相手になるかもしれないチームを雷門に割かないといけなくなったから今回の襲撃もたやすかったね。」

 

今回ついにエルドラド本部を襲撃したのはエルドラド側の最高戦力パーフェクト・カスケイドが不在のタイミングを見計らってのものだった。

正面切って戦っても負けるとは微塵も思わないがラグナロクに向けて戦力を温存出来るにこしたことはない。

 

「ええ。雷門は必ず彼らを倒す。恐らく次が最後になるんじゃないかしら。」

「へ~。雷門の追っかけをしてるメイアが言うならきっとそうなんだろうね。」

「失礼な言い方ね。別に追っかけなんてしてないわよ。」

 

SARUの茶化すような言い方に即座に返すがメイアは予感していた。

現状の雷門の戦力ではパーフェクト・カスケイドに及ばないのは明らかではあったがこれまでの雷門イレブンの成長速度、恐竜時代へ飛ぶ日の朝に翼と実際にサッカーを通じての感覚、そして連中が到着までにかかった時間とその時の様子。これらを加味して恐らく次のタイムジャンプで彼らの言う時空最強イレブンの力が集まればエルドラドでは雷門を止めることはできなくなるだろう。

 

「そうすればエルドラドは雷門と手を組もうとするだろうね。」

「うん。けどそのほうが面白い。それに僕たちセカンドステージ・チルドレンを迫害したエルドラド、そして僕たちが生まれる要因となった優秀なサッカープレイヤーの遺伝子を持った彼らを倒してこそ僕たちフェーダの力を世の中に認めさせることができるんだ。」

 

SARUが力強く語る自分たちのヴィクトリーロード。

もちろんメイアもその道を歩む。

しかし彼女だけは別の楽しみを心待ちにしていた。

 

(エルドラドが雷門と手を組めば必ず翼もチームに入る。そこでやっと翼と真剣勝負のサッカーが出来る。ふふ♪世界の命運を決める戦い、私たち二人の勝負にふさわしいシチュエーションね。)

 

これまで特訓をかねての1on1やお出かけの時に二人でゴロツキの相手をしたことはあったが真剣勝負は一度も無かった。時代を超える旅を経て強くなっていく翼と雷門メンバーを実際に目の当たりにしてきたメイアは他のみんなとは少し違っていた。そしてそんな自分の変化を受け入れるきっかけをくれた翼と真剣勝負ができるのが楽しみで仕方なかったのだった。

そんなメイアをSARUとギリスはやれやれといった感じで見ていた。別に手を抜くわけではないだろうしモチベーションが高いに越したことはないのだ。

 

「それで。肝心の彼らは今どうなっているんだい?」

「そうだったわね。そろそろ次のタイムジャンプをすることだと思うからフェイの座標を・・ってあら?」

「どうかしたのかい?」

ギリスに雷門の状況を尋ねられフェイの現在地を調べようとしたメイアだったがメールが一通届いていることに気づいた。中身を変えるとこう書かれていた。

 

『これから9の力と10の力を目指してアーサー王の世界に行ってくる。何を言ってるんだと思うかもしれないし俺も思ってるけどとりあえず行ってくる。もし来るなら気を付けて。』

 

翼からのメールだったが内容がなんとも荒唐無稽だった。

 

「あっははははは!アーサー王って確かおとぎ話の登場人物でしょ?面白いことを考えるね~」

「おとぎ話の世界にタイムジャンプか。その世界を一種のパラレルワールドとして考えれば可能なのか?いやでも・・・」

 

SARUが大うけしていた。一方でギリスは絵本の世界へのタイムジャンプが可能なのかと思考を巡らせていた。こういったところはやはり研究者肌のギルのメンバーといったところだ。

メイアも一緒に議論したところアルノ博士の言っていたように理論上は可能かもしれないという結論に至った。

 

「結論もでたところで。メイア、君は今回も彼らのいるところへ向かうつもりだろ?」

「ええ。エルドラドへの宣戦布告を済ませた以上別にこの時代にいる意味もないし。」

「なら今回は僕も一緒に行くよ。ギリス、こっちの準備は任せていいかい?」

「うん。といってももうほとんど終わってるだろ。」

「まぁね。それじゃ早速行こうか。」

「ちょっと待って!これは・・・」

 

ギリスにこちらの時代での指揮を任せ早速タイムジャンプの準備をしようとしたSARUをメイアが制する。

 

「どうかしたのかい?」

「少し様子がおかしいの。フェイと翼のデバイスの座標がかなり離れた位置にあるの。時間軸は同じみたいだけれど・・・」

「別行動してるだけじゃないのかい?」

「その可能性もあるけれど・・・今回はかなり特殊なケースだしなんとも言えないわね。」

「なるほどね。なら僕らも二手に分かれようか。僕はフェイの方に向かうからメイアは愛しの彼の方に行きなよ。」

「愛しのって///そんなんじゃ!「じゃ、お先に~」、ってSARU!帰ってきたら覚えてなさい!」

 

足早にタイムジャンプ装置の部屋へ向かったSARUに抗議しようとするもなんとも逃げ足の早い皇帝であった。戻ってきてからお仕置きしなければと言った風のメイアだった。

 

 

「・・・て・・・きて・・・」

 

声が聞こえる。まだ眠い。

 

「起きてください!」

「はっ!何とかしなきゃ!・・・ってここは?」

 

声が聞こえ飛び起きる。知らない天井だった。

薪が炊かれる音と少し甘い香り。

 

「やっと起きましたね。おはようございます。」

声のほうを向くとそこには藍色の髪の女の人が立っていた。

どこかで見たことがあるような気がする。

 

「あなたは・・・ここは一体・・・」

「私の名前はシーナ。あなた、家の前で倒れていたんですよ。あちらの人はお知り合い?」

どうやらここはシーナさんの家らしい。シーナさんが指さした先を見やるとそこには

「ワンダバ!?」

「う~ん・・あと5分・・寝かせて・・・って、のわぁ!!ここは一体!!」

 

どうやらワンダバも今の今まで気を失っていたらしい。

ワンダバが目を覚ましたのを確認して家の中を見回す。

この家もどこかで見たような気がする。家の名かとシーナさんを見ながら記憶を掘り返すと徐々に記憶があふれてきた。ここってもしかしてアーサー王の世界なんじゃないか?

シーナさんは主人公の見習い騎士を拾った女の子にそっくりで家の中も絵本に描かれていた通りだった。ということはタイムジャンプは成功したってこと?

 

 

完全に目が覚めたワンダバと現状のすり合わせをした結果やはりここはアーサー王の世界で間違いないということになった。

シーナさんにマスタードラゴンやこの村のことについて話を聞いていると遠くの方から花火のような音が聞こえてきた。

 

「今の音は?」

「今日は円卓の騎士の入団テストがあるの。天馬さんも早く行かなくちゃ。」

円卓と言えばアーサー王に使える騎士団だったはず。けどなんで俺が行かなくちゃいけないんだ?

「天馬さんも入団試験を受けるためにやってきた見習い騎士なんでしょ?」

「ええ!?お、俺が?」

「そういうことかぁぁぁ~~~」

 

見習い騎士扱いされて戸惑う俺を尻目にワンダバがい言う。

 

「我々がこの世界にやってきたことでこのパラレルワールドは生まれた。つまり我々は最初からこの世界に組み込まれている。そして天馬、おまえはあの絵本の主人公である見習い騎士なのだ!!!」

「えええええ!?お、俺が主人公!?」

 

ワンダバが言うには俺があの絵本の主人公らしい。

俺があんなハチャメチャな物語の主人公だなんて何かの間違いとしか思えない。

けどこの家もシーナさんもあの絵本に出てきたままだし、この世界はアーサー王の世界で間違いないみたいだし・・・

事態を飲み込めていない俺をよそにワンダバは憧れていた騎士になれることに大はしゃぎだ。

けどもし俺があの見習い騎士だとしたらワンダバは騎士じゃなくて従者なんじゃ。いや、言わないでおこう。

 

「世話になった。」「いろいろありがとう!」

 

円卓の騎士の入団試験があるということで俺とワンダバは足早に出発することになった。

アーサー王の城に続く山道をワンダバと二人で歩く。

 

「それにしても俺が主人公だなんて・・・」

「シーナもお前を見習い騎士だと言っていたんだ、間違いない。」

「いや、なんというか実感が無くて。物語の主人公ってやっぱり不思議な力に目覚めたり強くなって凄い敵を倒したりするものだろ?」

「せっかくこの世界に来たんだ、主人公であることを楽しめばいいのだ!」

 

楽しめといわれてもなぁなんて思ってると山賊のような見た目の男が現れた。

 

「よう。お前らもアーサー王の城に用があるんだろ?だがここは通さんぞ。荷物をおいて立ち去りな。」

 

アニメやゲームの序盤でよく見るようなセリフを吐く。こんなこと言う人本当にいるんだ。

ワンダバは騎士じゃなくて従者扱いされて怒ってるけど

 

「どうせお前らじゃ円卓の騎士にはなれねぇよってだばぁ!」

「サッカーボール?」

 

盗賊が俺たちに襲い掛かろうとすると茂みの中からサッカーボールが飛んできて盗賊をKOした。

ボールが飛んできたほうを見やるとそこには

 

「危ない所だったね。」

「フェイ!」

 

俺と同じ服を来たフェイが立っていた。

よかった、この世界に来られたのは俺とワンダバだけじゃなかったのか。

 

「どうやら天馬が主人公の見習い騎士みたいだね。」

「あ、あはは。」

 

フェイが俺とワンダバの恰好をみて言う。

やっぱり主人公扱いされるとなんだかむず痒い。

 

「フェイには理解できているようだな。我々が絵本の中の世界に組み込まれているということを。」

「うん。どうやら僕が主人公と友達になる見習い騎士みたいだね。」

「違う違う!!わたしが!見習い騎士だ!」

「う~ん、それは違うと思うけど・・・」

 

フェイがワンダバの恰好を指さして言う。

ワンダバの恰好はどう見ても従者のものだった。

気づいてなかったのか・・・ワンダバは自分が従者の役割だということを認めざるをえなくなってめちゃくちゃへこんでいた。

 

「それにしても、絵本の登場人物になるなんて、なんだか楽しいね。」

「ワンダバと同じこと言ってる。」

 

この感覚は未来から来た二人特有のものなのかな。

こういう時もフェイはいつも通りだな。

それに恐竜時代から帰ってきてからなんだか吹っ切れたみたいに今まで以上に明るく見える。

 

「それにしても何で俺が主人公なんだろう。」

「物語の主人公にはみんなやるべきことがある。だからきっと天馬にもこの世界でやるべきことがあるんじゃないかな?」

 

俺がしなくちゃならないこと・・・

 

「そろそろ入団試験が始まっちゃう!急ごう!」

「うん!」

 

アーサー王の城からまた花火が上がる。

たぶん入団試験開始の時間が近いことを示してるんだと思う。

走ってアーサー王の城に向かう。

ワンダバはフェイの背中におぶさっている。

 

「この3人でこうしていると出会った頃のことを思い出すね!」

「たしかに!最初は俺たち3人だけでプロトコル・オメガと戦ってたんだった。」

 

フェイとワンダバと初めて出会った時のことを思い出す。

俺が沖縄から帰ってくるとみんながサッカーのことを忘れていて、途方にくれてるとアルファがやってきて俺の中のサッカーも消そうとしてきて、そこにフェイがやってきて。

少し前のことのはずなのに随分前のことのように感じる。それだけエルドラドとの戦いが大変で、雷門のみんなたちと同じくらいフェイとワンダバが俺の中で大きくなっているんだ。

 

そうこうしているとアーサー王の城にたどり着いた。

どうやらなんとか間に合ったみたいだ。

門は開いていたのでそのまま場内に入ると庭のほうから楽器の音が鳴り響く。

すると城の中から男の人が出てきた。

 

「よくぞきた。勇気ある若者たちよ!」

「あの人がアーサー王?」

「絵本通りの姿だ。」

 

名乗らなくても分かる。

威厳と自信に満ち溢れた、思わずひきつけられてしまうような男の人。

黄名子が持ってきた王冠と同じ形のものをかぶっている。

この人がアーサー王。

 

「名を名乗るがよい。」

「ま、松風天馬です!」

「フェイ・ルーンです!」

「ほう。二人とも良い名だ。私は常に勇気あるものを求めている。お前たち二人がわが宮廷の円卓の騎士と戦い、力を示すことが出来れば我が騎士団に迎え入れよう!」

 

アーサー王の言葉

には不思議な力がある気がする。

自分の心が自然とわきたてられるような。

信長のような厳しさとも劉備さんのような温かさとも違う。

 

「では入団試験を開始する。我が円卓の騎士よ、ここに!」

 

アーサー王の指示で円卓の騎士たちが出てきた。

けどそこにいたのは

 

「み、みんな!?」

 

円卓の騎士と呼ばれた人たちは鎧を来た雷門のみんなだった。

 

「お前たちが我々円卓の騎士の仲間たりえるか見せてもらう!」

 

神童先輩が一歩前に出て号令をかける。どうやら神童先輩が円卓の騎士のリーダーらしい。

黄名子、信助、錦先輩、霧野先輩、剣城、太陽、狩屋、倉間先輩、輝、トーブ。

みんな自分たちが円卓の騎士であることを自覚しているみたいだ。

ただ並んだみんなを見てあることに気づく。

 

「翼だけ、いない?」

円卓の騎士の中に翼の姿だけがなかった。

 

 

「それでは、今回の種目を発表する。」

 

アーサー王が入団試験の内容を発表する。

剣術勝負とかだったらどうしよう。まだ体育でもやってないのに

 

「今回の種目は・・・・サッカーだ。」

「ええっ!?」

「サッカー!?」

 

まさかの内容にフェイと一緒に思わず声をあげる。

なんでこの世界にサッカーが。

 

「恐らく我々がこの世界にダイブしたときにサッカーという概念を持ち込んだことで物語に組みこまれたのだろう。」

 

な、なるほど。

けどサッカーならなんとかなるかもしれない。

 

 

「入るぞ。」

 

城の人たちに入団希望者用の控室に通され準備しているとドアの外から声がする。

ドアを開けて入ってきたのは神童先輩だった。

見た目はどう見ても雷門のユニフォームを来た神童先輩だけど

 

「あ、あの・・・神童先輩、ですよね?」

「ああ。安心しろ。みんなお前たちのことも覚えている。どうやら大介さんの言った通りのようだな。」

 

よ、よかった~。もし俺たちのことを知らない本当の騎士だったらと思うと。

それから神童先輩はこの世界にやってきてからのことを話してくれた。

神童先輩たちも目が覚めるとこの世界にいて円卓の騎士の一員になっていたらしい。

大介さんがワンダバと同じように現状を分析してくれたためそれぞれ自分の役割を演じることになったらしい。

 

「あの、翼は?みんなとは一緒じゃないんですか?」

 

先ほどから気になっていたことを聞く。

みんなが円卓の騎士なのに翼だけがこの場にいない。

もしかしたらこの世界に入り込めなかったのか。

 

「ああ。俺たちが目覚めたときには翼はいなかった。だがどうしているかは知っている。」

「知っているんですか!?翼はいったいどこに?」

「アーサー王が言うにはマスタードラゴンへの遣いとして嘆きの洞窟へ向かっているらしい。どうやら俺たちジャンプしてきたのは遣いが出された後の時間軸で翼は嘆きの洞窟へ向かった円卓の騎士の一員の役割のようだ。」

「なるほど。じゃあ翼もこの世界に・・・」

「実際に会えた訳ではないがアーサー王が円卓の騎士の一員であると認識している以上この世界にいるのは間違いないはずだ。」

 

良かった。翼がちゃんとこの世界に来れているらしいことに一安心する。

 

TMキャラバンがどこにあるか分からない以上、それぞれが自分の役割をまっとうして物語を完結に導かないといけないという結論になった。

 

「アーサー王ほどの人ならば、手を抜いたら必ず見抜くはずだ。全力で行くぞ。」

「はい!フェイ、デュプリをお願い。」

「OK!久しぶりにテンマーズ結成だね。」

そして俺たちの入団試験が始まった。




いかがでしたでしょうか?
果たして翼は無事なのか、ヒロインの出番はどうなるのか。次回に続く。
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