「エルドラドチーム01のキックオフで試合開始ぃ!!あっとチーム・ザンは一歩も動かないぞ!?」
いよいよラグナロク第一試合が始まった。
しかしザナーク含めザンが全く動かない。
「なんぜよ、あいつら。」
試合開始前に再戦への熱い意志を感じたザナークすら動きを見せないのを錦は怪訝に思う。
しかし敵の意図は分からずとも試合は進む。
当然のようにゴール前までたどり着いた。
当初の作戦通り最初のシュートチャンスは剣城に託した。
(このチームのキャプテンを俺にした理由。それは点をとること!)
当初はなぜ自分がキャプテンなのかと困惑した剣城だったが自分に求められる役割は一つしかない。
このチームの決定力は剣城とフェイが占める部分が大きく本職のストライカーは剣城しかいない。
自分が点を取ってチームを引っ張ることだと剣城は解釈した。
「ミキシトランス、沖田!でりゃあああ!」
相手が動きを見せないことなど知ったことではないとミキシトランスでのシュートを放った。
シュートが放たれた以上ザンも動くしかない。
チーム01に限らずエルドラド陣営が食い入るように見つめる先
「ふん。」
「なっ!?」
ザンのキーパー、ファダムは片手でセーブして見せた。
「ミキシマックス状態の剣城のシュートを片手で・・・」
「なんてやつだ。」
観戦していた天馬たちも驚愕といった様子だ。
しかしそれだけで終わらずせっかくセーブしたボールをファダムは無造作に投げ返した。
「舐めやがって・・・錦先輩!」
動揺は残るがとにかく作戦通り剣城にボールを集める。
「菊一文字!」
「ふん!」
今度はミキシマックス状態での必殺シュート。
ザナーク・ドメインもパーフェクト・カスケイドも打ち破った必殺シュート。
しかし今度もファダムは必殺技も使わず両手でセーブしてみせボールを放る。
「ダーナ!」
「キャプテンだからって指図するんじゃないよ!青山!」
ボールを要求するもエルドラド側との意思疎通は完璧ではなく指示に従わないダーナ。
青山をから回ってきた3度目のシュートチャンス。
「今度こそ・・・剣聖ランスロット!アームド!!」
ミキシマックスを解除し化身アームドを発動する。
現時点で剣城が出しうる最高出力。
「でりゃあああああ!」
「深淵のアギラウス!!」
ここでついにファダムが動きを見せた。
巨大な鮫のような姿をした本人同様凶暴そうな化身。
「ギガバイトスクリュー!!!!!」
アギラウスの口から放たれた激流がシュートの勢いを完全に殺し手中に収めた。
初めて見せたフェーダの必殺技は圧巻の威力だった。
「所詮この程度か。」
「そんな・・・」
パーフェクト・カスケイドをも打ち破った雷門のエースストライカーの剣城のミキシマックスも化身アームドも全く通用しない。セカンドステージ・チルドレンの力を目の当たりにし思わず言葉を失う。
「くくく。今日はあいつで決まりだ。」
「剣城のミキシマックスも化身アームドも全く通じないなんて・・・」
「これがセカンドステージ・チルドレンの力か。」
「ふん。あれくらい僕なら破って見せるけどね。」
「ガンマには無理だと思いますけど~」
チーム02の控室は今も険悪だった。
「ファダム相手とはいえ、あれじゃ俺たちの敵じゃなさそうだな。」
「そう言ってやるなよザット。ただの人間にしては良いシュートだと思うよ。」
「・・・・・」
自分たちの勝利は揺るぎないと口々に言うギルのメンバー。
メイアは黙って戦況を見つめていた。
スタジアムが静寂に包まれたのも束の間。
ついにザンが動きだした。
剣城に巨漢DFのルードの激しいタックルが襲う。
「ぐっ・・・・」
「ほう。このルード様のタックルを受けて立ってられるとはな。今日の獲物は楽しみがいがありそううだ。」
「何だと?」
「やれ!ブレイクアタック!」
ガロの合図とともに3人の選手が剣城に襲い掛かる。
ボールなんて無視と言わんばかりのラフプレーの嵐。
荒くれもの集団のザンの十八番とも言える戦術だった。
ボールが外に出て一旦プレーが止まり剣城のもとに皆が駆け寄る。
「剣城、大丈夫か!」
「ひどいケガやんね・・・」
サッカーと言えるかも分からないラフプレーを受け剣城はいたるところにダメージを追っていた。
足も腫れて肩には鈍い痛み。ベストなプレーは出来そうにない。
「あ~やだやだ。ほんとザンの連中って野蛮よね。」
「モリー、分かりきったことを言うなよ。」
「あんなことしなくても俺たちセカンドステージ・チルドレンの優秀さは証明出来るのに。」
ザンとは徹底的に主義主張が合わないギルの面々が吐き捨てるように言う。
メイアも不快感を覚えていた。
以前まではここまででは無かったがこれもタイムジャンプを経ての変化だろうか。
「気に入らねぇ・・・」
満足なプレーは見込めそうにないがキャプテンとしてプレーを続行する剣城を尻目に今度はザンが攻め上がる。
しかしゴール前まで戻っていた錦がスライディングでボールを奪う。
ウォード、青山、ダーナから再度錦へとボールがつながる。
「戦国武神ムサシ、アームド!!!」
「伝来宝刀!!!」
「無駄だ。深淵のアギラウス!ギガバイトスクリュー!!!」
錦の化身アームドの必殺技もファダムの化身を打ち破ることは叶わずザンの速攻。
パスを繋ぎあっと言う間に前線のロデオまでボールが渡る。
「海王ポセイドン!ヘヴィアクアランス!!」
この試合初めてのザンのシュート。
ウォードとガウラがブロックに入るもあえなく吹き飛ばされる。
「任せろ!真ゴッドハンドX!!!」
「キーパー三国、ザンの化身シュートを止めたぞ~~~!」
タイムジャンプ前に必ず三国の力が必要になるからと大介から習得するように命じられていた新必殺技。元コトアール代表の守護神であり大介の愛弟子でもあるロココの必殺技だった。
「三国先輩、俺たちがタイムジャンプしている間にあんな技を身に着けてたのか!」
翼を含めチーム01以外の面々から驚きの声が上がる。
なんとかザンの攻撃をしのいだがザンのキーパー、ファダムの守りを崩す光明は見えない。
錦に続いてフェイの光速闘士ロビンの必殺技、満月ラッシュも通じず。
なんとか凌ぐエルドラドチームとザンとでは地力の差は明白だった。
「スプリングアロー!」
「くそっ、届かない!」
「決まった~~~!先制点はチーム・ザンだ~~!」
敵のゴールを崩せる気配がない状態での先制点が重くのしかかる。
「ダーナ、剣城があの状態じゃ。ワシらでなんとかするぜよ。」
「錦・・・分かった。」
試合が再開し錦、フェイ、ダーナを中心に攻めを展開するもザンのラフプレーは続く。
いつファウルを取られてもおかしくないようなギリギリのプレーにエルドラドチームは削られていく。
そんな中ザンに立ちはだかる男がいた。
「ザナーク!?」
「気にいらねぇんだよ。ここまでがお前たちに付き合ってやったんだ、文句は言わせねぇ。」
まさかのザナークが味方であるザンからボールを奪い取り一人で攻め上がっていく。
「ザナーク、おまんの相手はワシぜよ。」
「錦、お前には借りがある。俺がフェーダに入ったのはお前と戦えると思ったからだ。」
幕末以来に相対する二人。
二人の間には戦いの中に育まれた奇妙な絆が、再戦の高ぶりが湧き出ていた。
「借りは返すぜ。真剣勝負のサッカーでな!」
「ぬおっ」
個人技で競り勝ったザナークが錦を抜き去る。
そのまま三国と1vs1へ。
「ディザスターブレイク!!」
「ザナークのシュートでザンが追加点を上げた~!」
「ザナークのやつ。前よりパワーが増してないか?」
「恐らくセカンドステージ・チルドレンの力に目覚めた影響だろう。」
あんなに倒すのに苦労したのに強くなって再登場なんて勘弁してほしいものだ。
それをいえばアルファたちもだが今は味方なので気にしないでおく。
その後もザンの猛攻は止まらない。
一つ変わったことがあるとすればザナークとザンのメンバーが完全に対立しだしたことか。
試合開始から、いやフェーダに加入した時からザナークが感じていた不和はピークに達していた。
前半残り時間わずかといったところでなんとか最初の1点をもぎ取るべく攻撃を続けるエルドラドチーム。
そんな中SARUに動きがあった。
「そろそろいいかな。」
SARUの視線とかざした手の先にはフェイの姿。
SARUから念のようなものがフェイに注がれる。
「うっ・・・」
「フェイ?」
プレー中にもかかわらずフェイが突然頭を抱え動きを止める。
フェイの頭の中に流れる映像。。
それは自分がSARUやメイアたちセカンドステージ・チルドレンと共にいる映像。
エルドラドチームの面々とザナークは何が起きているか分かっていないがザンの面々は底意地の悪い笑みを浮かべるばかりだった。
「フェイ、戻ってくるんだ。僕たちのもとへ。」
「予定通りここでやるのね、SARU。」
フェイがSARUのほうを見やりアイコンタクトを取った直後放たれたシュートはゴールへ突き刺さった。
エルドラドチームゴールへ。
ハーフタイム
エルドラド側のベンチ近くのスタンドに天馬はいた。
「フェイどうしたちゃったの!?あんなミス、フェイらしくないよ!」
「何ってゴールを決めたのさ。」
「でも、味方のゴールだよ。」
「味方じゃない。僕はもう、天馬たちの味方じゃないんだ。」
そう言い残しフェイは一人グラウンドを去っていった。
「あいつまさか・・・」
「敵のスパイだったのか?」
「フェイ・・・」
エルドラドチームは去り行くフェイに声をかけることも出来ずチームは10人になってしまった。
「おい、SARUはあいつに何をした?」
「あんたに教える必要があるのか?」
「何?」
「俺たちが従うのはSARUだ。あんたじゃない。」
「チッ・・・」
後半もザンの一方的な展開とラフプレーは続いた。
フェイが抜けチームに動揺が走り全員が精細を欠いていた。
試合はもう完全に決まっていた。
ザンに追加点で試合は5-0となっていた。
(ここまでの強さとは・・・このままでは負ける。ならやるべきことは)
「剣城!」
「鬼道さん?」
「ハーフウェイラインを越えてDFも敵陣地まで上げろ!」
この試合初めて鬼道からの指示が飛ぶ。
「まさか全員攻撃を?それでは余計に失点を重ねる可能性があります!」
「冷静に試合を見ろ。フェイがいない以上この試合は負けると見るべきだ。ならば次の勝利のための布石を打つ。」
それはある意味残酷とも言えるものだった。
時間がまだ残っているにも拘わらずこの試合を捨てるに等しい指示。
「ここで決める1点の価値は俺たちと敵とでは全く違う。ここで俺たちが点をとればエルドラドチーム全体のムードが変わる!」
「だからこそなんとしてでも1点を取る、そういうことですね?」
「ああ。次の試合を戦うもののために希望を残すんだ。」
フェーダにとっては勝ちの決まった試合。あとはどれだけ自分たちが悦に浸れるかだけ。
しかしエルドラド側にとっては違う。このまま完封されたのでは戦う前から尻込みしてしまう。
しかしなんとか1点をもぎ取れば自分たちの力がセカンドステージ・チルドレンにも通用することの証明になるからだ。
試合再開直前、剣城を中心に円陣が組まれる。
「聞いての通りだ。残り時間は全員攻撃を仕掛ける。」
「分かったやんね。」
「ゴールのことは気にするな。これでも体は丈夫なんでな。」
雷門組の同意は取れたところで剣城がダーナ、ウォード、ガウラに向き直る。
「ダーナ、ウォード、ガウラ。お前たちも力を貸してくれ。この後に控えるみんなに希望を残すために。」
「剣城・・・」
合同練習が始まって以来、なし崩し的にチームとしてプレーしてきた。
試合中も剣城の指示に従わなかった時もある。
自分たちルートエージェントの力でセカンドステージ・チルドレンを倒すとプライドを持って任務
に当たってきたという思いがあってのことだろう。
だが今、これまで敵だった自分たちに頭を下げてまでただ1点をもぎ取ろうとする剣城の覚悟を目の当たりにし思いは一つになった。
「分かったよ、キャプテン。」
「やつらに目にもの見せてやろうぜ!」
「俺たちがお前らをサポートする。」
「お前たち・・・ああ、やるぞ!」
「試合再開。おっとエルドラドチーム01、キーパーを残して全員攻撃を仕掛けてきたぞ!」
ホイッスルと同時に三国を残し全員がハーフウェイを越え攻め上がる。
錦を起点に攻撃をしかけるも素早くチェックが入る。
3人に囲まれ激しい攻撃にあいながらもなんとかダーナへパスを出す。
錦を痛めつけることに意識が割かれていた分、裏の剣城へのマークががら空きになっていた。
「キャプテン!」
「させるか。ブレイクアタック!」
ダーナから剣城へとパスがつながるがすかさずガロの指示で剣城にブレイクアタックが仕掛けられる。
「邪魔はさせん!」
「行け!」
しかしウォードとガウラの巨漢コンビが文字通り壁となり剣城を守る。
雷門とエルドラドが本当の意味でチームになった瞬間だった。
「このチャンス、無駄にはしない!剣聖ランスロット、アームド!!」
残るはDF二人とキーパーのみ。
しかし前半の時点で化身アームドが通じないことは分かっている上に足を痛めた剣城のシュートではゴールを決めることはできないのは明白だった。ならば取るべき選択は一つ。
剣城が放ったシュートはカーブがかかっておりその先には黄名子が走りこんでいた。
「暁ノ巫女アマテラス!アームド!!」
「黄名子が化身アームドを!」
この土壇場で黄名子が化身アームドを成功させた。
「絶対決めるやんね!たぁぁぁぁ!」
化身アームド二人によるシュートチェイン。
エルドラドチーム01最後のシュートが放たれた。
「深淵のアギラウス!ギガバイトスクリュー!!!」
この試合幾度となく立ちはだかったファダムの化身が姿を現した。
「ぬぅぅぅぅぅ・・・があっっ!!」
「決まった~~~!エルドラドチーム01ついに1点を返したぞ!しかしここで試合終了!」
「最後まで正々堂々全力を尽くす。それがお前たちのサッカー、か。」
試合が終わりザンのメンバーを尻目にエルドラドチーム01を見やるザナーク。
試合に負けた悔しさを感じつつもどこか達成感を感じさせるエルドラドチーム01と試合には勝ったはずなのに自分に渦巻く違和感。
「うおおおおおおおおおおお!!!!」
今はただ発散するしか出来なかった。
「あの叫び・・・まだまだあの男のなかでくすぶり続けている力があるようだな。」
「やぁザナーク・アバロニク、勝利おめでとう。どこへ行くのかな?」
「悪いが俺は俺の好きにやらせてもらう。ここは俺の居場所じゃねぇ。」
「残念、良いものを持ってたのに。」
「そういうと思ったぜ。」
エルドラドチーム02控室
「セカンドステージ・チルドレン、ここまでの強さとはな。」
「はい。けど剣城たちが俺たちに希望を示してくれました。」
「ああ。もう後がない。俺たちの試合に人類の存亡がかかってるんだ。」
正直圧倒された。強さも速さも今まで見たどの相手よりも上だった。
いや、正確には一人だけ知ってはいたのか。
けど三国先輩が敵の化身を止め、剣城と黄名子が点をもぎ取ってくれた。
雷門とエルドラドが力を合わせれば勝てないわけじゃない。
「私と神童は一度議長の元へ行く。他のものたちはミーテイングルームにて待機するように。」
「イエス。」「は~い。」
だっていうのに俺たちのチームはこのありさまだ。
絶対に負けられないのに。
ギル控室
一方、こちらも次の試合を控えるギルは余裕綽綽といった様子だ。
「ザン相手にこれじゃ、俺たちの相手も期待できそうにないな。」
「ま、最後ファダムから1点とっただけ上出来じゃない?」
「ああ。俺たちが勝ってラグナロクは終わり。俺たちの世界が始まるんだ。」
それはギリスも同様だった。
ザンよりも戦力的に上回っている自分たちが出る以上勝利は揺るがないだろうと。
隣のメイアに声をかけようとしたところでメイアが立ち上がり口を開いた。
「みんな。明日の試合、一つお願いがあるの。」
ザン戦は試合展開もあって1話で終了です。
最終盤の鬼道監督の指示、有能すぎる。