二度目の人生とフェーダの姫   作:プライムハーツ

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今回からついにギル戦、と思わせて1話だけ挟まります。


決戦前夜

各チームのキャプテンと監督、トウドウ議長を交えての会合の帰り。

神童は今も頭を悩ませていた。

今日の敗戦を受けてもう1試合も負けられない。

にも拘わらずチームはバラバラ。アルファ、ベータ、ガンマはそれぞれ好き勝手するし天城さんはそれに怒り心頭、狩屋も悪いところが出て余計にこじれる始末。

こんなチームをまとめることが出来るのかと。

 

「どうやら苦労しているようだな神童くん。」

 

「サカマキ監督・・・はい。」

 

これまで敵対していたが今は自分たちの監督であるサカマキが神童の気を知ってか知らずか声をかける。

 

「監督、どうしてあのメンバーにしたんですか?」

 

「言ったはずだ。鬼道、豪炎寺と各チームのバランスをトータル的に考えて振り分けたと。」

 

「しかしチームはバラバラです!あの3人の性格はあなた達が一番知っているはずだ。あの3人が同じチームになればこうなることは目に見えていたはずだ。」

 

あの3人の実力は充分に認めている。しかしチームにはハーモニーが大事だと大介さんから言われていたように相性というものがあるだろう。

 

「このままではこのチームは「神童、よく聞け。」・・何を」

 

「我々はあらゆる組み合わせを検討した。そのうえでこのチーム分けにいたった。そしてそれはキャプテンの選出もだ。」

 

「キャプテンの?」

 

「アルファ、ベータ、ガンマは我々エルドラドが誇るルートエージェントの中でも特に優秀な管理者だ。それぞれがチームを率いる資質がある。だがそれでもこのチームを率いるにふさわしいのはお前だけだ。」

 

「俺が?」

 

「そうだ。松風天馬でも剣城京介でもレイ・ルクでもあの3人の誰でもない。君ならばこのチームの力を最大限発揮できる。そう見込んだ。」

 

有無を言わせぬ言い方ではあるがサカマキは神童を高く評価しているようだ。

神童はそうは言われても糸口も見えていないのにと口を噤むばかり。

 

「では一つヒントをやろう。アルファ 38と48、ベータ 30と52、ガンマ 45と50。いいな。」

 

「それは一体なんのデータだ?」

 

「お前なら分かるさ。さて着いたぞ。」

そうこうしている間に他のメンバーの待つミーティングルームへ到着した。

 

 

 

神童先輩とサカマキ監督が戻ってくるまでの間俺たちはミーティングルームで過ごしていた。

 

「それにしてもフェーダのやつら、凄い強さでしたね倉間先輩。」

「ああ。けど負けるわけにはいかないぜ。」

「倉間の言う通りだド。俺たちが負けたら終わりだド。」

 

剣城たちが何とか1点を取ってくれて俺たちの力だってなんとか通じることは分かった。

それでももう負けられない状況に変わりはない。

それだってのに。

 

「ふふん。君たちがそんなに気負わなくとも、この僕がいれば負けることなんてありえないさ。」

 

「私の足を引っ張るような真似だけはしないでくださいね。」

 

「何だと?」

 

「喧嘩売ってるド!?」

 

未だにチームはバラバラのままだ。

チーム01のみんなが力を合わせたのを見たのにこれだ。

このままじゃ勝てるわけがない。

絶対に負けられないのに・・・

 

「みんな遅くなってすまない。」

 

「お帰りなさい神童先輩。」

 

そうこうしてる間に二人が帰ってきた。

各チームのキャプテンと監督と議長で話があるって言ってたけど。

 

「それでどんな話だったんですか?」

 

「ああ。いくつかあるんだがまず・・・」

 

神童先輩から聞かされた内容はこうだった。

フェイはセカンドステージ・チルドレンだったこと。SARUがエルドラドの作戦の妨害のために記憶を封じてこちらに送り込んでいたこと。アルノ博士は最初から気づいていた上でフェイを信じて黙っていたこと。そしてSSC制御ワクチンが完成したこと。

つまりセカンドステージ・チルドレンも長生き出来るようになる手だてが確立されたということ。

けどフェーダは、メイアはワクチンは打たないだろう。ラグナロクに勝たない限り。

 

「俺たちが勝てば世界も、フェイも救えるんだ。そのためにも明日の試合必ず勝つぞ。」

 

「はい。」

 

「よし。それじゃあミーテイングを始めるぞ。」

 

神童先輩が場を取り仕切りミーティングを始めようとする。

 

「ミーテイングって相手がどんなチームで来るかも分からないのにやる意味あるんですか~?」

 

「相手の情報が無くても連携の確認とか」

 

「言ったはずだよ。僕は君たちと手を組むつもりはない、好きにやらせてもらうと。」

 

「待てガンマ!」

 

「これ以上この場にいる意味はないようだ。失礼する。」

 

だがプロトコル・オメガの面々は足早に去ろうとする。

神童先輩の静止など聞く耳持たず、監督も何も口出ししない。

どうする。このままあいつらを行かせたらこのまま試合を迎えることになる。それはダメだ。けどあいつらを説得するなんてできるのか?

我が強い3人とそれぞれ仲の良いエイナム、オルカ、ルジク。

あいつらは自分ならフェーダなんて相手ではないと豪語していた。

けど今日の試合を見て確信した。このままでは勝てない。

それは俺が一番よくわかってる。

こうなったら。

 

「翼?」

 

「・・・そこをどいてくれるかい?」

 

「ダメだ。席に戻れ。」

俺は行く手を阻むように転移装置のまえに立つ。

 

「邪魔なんですけど?」

 

「このままではこのチームは勝てない。」

 

「NO。ムゲン牢獄での再教育を終えた我々ならば問題ない。」

 

やはりこうなるか。確かにこの6人は以前戦った時より強くなってる。

 

「それだけじゃ不十分だと言ってるんだ。」

 

「何?」

 

「生意気~」

 

「なんと言われようとちゃんとチームとして戦わないと勝てないんだ。」

 

「この僕がいれば問題ない。」

 

自分たちの力を信じて疑わない。

ならもうこうするしかない。一種の賭けだが。

 

「なら俺とお前たち3人、それぞれ1vs1で勝負してもらおう。俺が勝ったら明日の試合、ちゃんと神童先輩の指示に従ってプレーしてもらう。」

 

「翼、本気なのか?いくらお前でも・・・」

 

「ここは任せてください。で、どうする?」

 

「結果の分かり切った勝負受けるはずないじゃないですか。」

 

神童先輩が止めに入ろうとするが制する。

それでもベータたちは全く乗り気じゃない。

 

「へ~ビビってるんだ?勝つ自信ないんだろ?」

 

「はぁ?調子にのるんじゃねぇ!」

ひえっ!?やっぱこっちのベータ怖いよ~。けど顔にだしちゃダメだ。

 

「僕も聞き捨てならないね。」

 

「ならこの勝負受けるよな?」

 

「いいだろう。」

 

「でかい口叩いたこと後悔させてやらぁ!」

 

「それじゃ、グラウンドに行くぞ。」

 

予想通りベータとガンマが乗ってきた。こうなればなし崩し的にアルファも巻き込める。

口先でなんとかなるのはここまでだ。

ここから先は実力でなんとかするしかない。

けど絶対に勝つ。

 

「神童先輩、この勝負ちゃんと見ててください。明日のために。」

 

「翼・・・分かった。必ず役立てて見せる。だから頼んだぞ。」

 

「はい!」

 

 

「それじゃまずは誰からだ?」

 

「私だ。」

 

俺がDF側で3人をそれぞれ止められたら俺の勝ち。ゴールを決められたらあいつらの勝ちというルール。化身はなし。

一番手はアルファみたいだ。

ここで負ければ全部ご破算だ。

昨日の練習の時の3人のプレーを思い出す。

この3人はそれぞれ長所がある。そこに対応出来るかだ。

 

「すぐに終わらせる。」

 

サイドラインからの合図でアルファが向かってくる。

アルファは3人の中ではテクニックに優れる印象。フィジカルとスピードのバランスが良い。

だからこそ真っ向勝負。

 

「ここだ!」

 

「む・・・・」

 

「まずは一人。次!」

 

 

「あらあらアルファったら。粋がってた割にあっさり負けちゃって。」

「次はベータか。」

「格の違いを教えてやらぁ!」

 

ベータは3人の中でもトップスピードは頭一つ抜けてる。

一気に抜きさられないように距離を詰めて加速させない。

体を寄せて押し切る!

 

「くそっ、しゃらくせぇ!」

 

「隙あり!」

 

「何だと!?」

 

「ちょっとベータ何やってんのよ~」

 

「ぶ~~・・・」

 

なんとか二人。連戦はちょっときついが本番はもっと大変だ。弱音を吐いていられない。

あと一人だ。

 

「やれやれ。二人とも情けないなぁ。それでもエルドラドの管理者なのかい?」

 

「うるせぇ!さっさとしやがれ!」

ガンマの煽りにベータもお怒りだ。今は虫の居所が悪そうだ。

「ふん。言われなくとも。」

 

ガンマは昨日戦ってみてボディバランスの良さが際だっていた。

競り合いになったら分が悪い。ある意味ベータと真逆だ。

手ごわいがガンマの性格を考えれば。

 

「ふっ。もらった!」

 

「かかったな!」

 

近距離の競り合いであえて抜けるコースを用意してやればガンマなら見逃さないだろう。

だからこそ一点読みすることでボールを奪うことに成功した。

 

「よし!」

 

「すげぇじゃん翼くん!」

 

なんとか3人抜き達成だ。

といっても昨日の練習で実際に戦ってみていなかったら勝てたか分からない。

けど1vs1ならなんとかなることは証明できた。

本題はここからだ。

 

 

「ふ、ふん。やるじゃないか。これならデイフェンスは君たちに任せてオフェンスは僕が・・」

 

「いや、ダメなんだ。これじゃ。」

 

「それはどういう意味だ。」

 

 

「チーム・ギル。」

 

「!?」

俺が出した名前にプロトコル・オメガのメンバーが驚く。

 

「ギル?翼、それはいったい・・・」

 

「フェーダのチームの一つだ。フェーダの中でも随一の頭脳を持つチームと言われている。戦術面でもザンを上回っている。」

 

「あのザンを!?」

 

神童先輩の疑問にこれまで静観していたサカマキ監督が答える。

 

「そのギルが俺たちの対戦相手だ。」

 

「なんでそんなことあなたが知ってるんです?」

 

「メイア。この名前のことは?」

「ギルの女性リーダーのことだな。昨日SARUの隣にいた。」

 

「あ~あのかわいい子か。ってなんで翼くんがその子のことを。」

 

狩屋をはじめ神童先輩たちも覚えていたようだ。

あと狩屋の覚え方、それはそうなんだけど気になるな。

 

「俺は彼女とこれまでの旅で出会っていた。」

 

「「「「何だって!?」」」

 

俺とメイアの繋がりに全員驚く。

それもそうだ。フェイのことがあったばかりだ。スパイと思われてもおかしくない。

 

「これまで隠していてすいません。昨日の夜に天馬には話したんですけど皆には話すタイミングが無くて。俺は別にスパイってわけじゃないから安心してほしい。」

 

昨日天馬に話したのと同じことを話す。

ゴッドエデンで出会ったこと。化身の制御のこと。タイムジャンプ先でこっそり会っていたこと。

神童先輩やベータは俺が急に化身が制御出来るようになっていたことに納得したといった風だった。

 

「それで昨日の夜、メイアと会って二人で話した。その時にギルが2戦目に出ると聞いた。」

 

「なるほど。それはありがたい情報だ。」

 

「はい。伝えるのが遅くなってすいません監督。」

 

「けど私たちには関係なくないですか~?」

 

けどベータたちはまだ納得していないようだ。

ザンより強いとはいっても自分たちならということだろう。

 

「俺は彼女と戦ったことがある。といっても今みたいな1vs1のゲームみたいなものだけど。ちょうど恐竜時代にタイムジャンプする前に。」

 

「それで?」

 

「正直手も足も出なかったよ。」

 

「翼くんが?」

 

「ああ。何回もやってなんとか一度勝てただけだ。」

 

あの日の朝のことを思い出す。苦い思い出だけど楽しくもあったな。

けど大事なのはその結果だ。

あれから俺も強くなったとはいえメイアを超えられたとは思えない。

 

「これで分かってくれたか?このままじゃ俺たちは勝てない。けど全員で力を合わせればきっと何とかなる。だから頼む、一緒に戦ってほしい。」

 

自分たちを負かした俺が敵わない相手と戦う。

プロトコル・オメガのメンバーに危機感を抱かせる方法が俺にはこれ以外思い浮かばない。

あとはもう頭を下げて祈るしかない。

 

「翼の言う通りだ。敵はあのザンよりも手ごわいんだろう?ならチームとして力を合わせて立ち向かうしかない。」

 

「神童先輩・・・」

 

「さっきの勝負で俺にも見えたものがある。今なら俺がお前たちを活かしてみせる。」

 

「ほう。」

 

神童先輩はさっきの勝負で何やら気づいたらしい。

サカマキ監督の方は期待通りにことが運びそうといった感じだ。

 

 

「我々の任務はフェーダの脅威からこの世界を守ること。ならば過程よりも結果こそが全て。」

 

「アルファ・・・」

 

「そこまで言うなら協力してあげてもいいですけど?」

 

「ベータ?」

 

「勘違いしないてください。あなたに勝ったっていうあの女を倒して私のほうが上だってあなたに分からせてあげるだけですから!」

 

「同意だね。試合に勝利することで僕たちの力を証明してやろうじゃあないか。」

 

「ガンマ・・・3人とも、ありがとう。」

 

どうやら分かってもらえたらしい。

これでダメならもう打つ手はなかったところだ。

 

「答えは決まったようだな。ギルが出てくるのは分かったがあいにく奴らのサッカーのデータはない。こちらで個人の能力の分析は進めておく。お前たちは連携の調整をしておくように。」

 

「「「はい!」」」

 

 

そしてようやくチームとしての練習が始まった。

オフェンス陣は神童先輩を中心に攻撃のプランやパスラインの調整。

デイフェンス陣は俺たち雷門組とルジクを中心にエイナムとオルカも交えてカバーエリアの確認。

相変わらず3人組は煽りあってるがさっきまでとは見るからに空気が違うし息もあってきている。

こっちもルジクとエイナムは根がまじめそうだしオルカも軽い感じだけどちゃんと意思確認が取れている。

これで少しは光明が見えてきたかもしれない。

あとは俺だ。チーム練習に時間を取られた分化身アームドの練習する時間はない。

明日のために体も休めないといけない以上ぶっつけ本番になってしまう。

けどなんとかするしかない。

 

 

その夜 個室にて

 

「翼、起きてる?」

 

「天馬か。入っていいぞ。」

 

ベストコンディションで挑むために就寝の準備をしていると天馬がやってきた。

 

「明日は翼たちのチームの試合だろ?調子はどう?」

 

「分からん。けど今日やっとチームとして一枚岩になったって感じだ。」

 

「そっか。そっちのチームのメンバーは大変そうだもんね。」

 

「ああ。その分、味方としては頼もしいさ。勝って必ず天馬たちに繋いでみせるさ。」

 

「うん。・・・ラグナロクに勝ってフェイを、セカンドステージ・チルドレンのみんなを救うんだ。」

 

「天馬・・・そうだな、俺もそう思う。」

 

神童先輩から聞かされたフェイのこと。

SARUに記憶を封じられて俺たちのもとに送り込まれた。

けど天馬にはそんなこと関係なくて、いや俺にだってそうだ。

フェイは一緒に旅してきた仲間で、サッカーが大好きな大事な友達だ。

正直ワクチンで正常な寿命を得るのが救いなのかは分からない。

けどこのままじゃダメだ。ちゃんと分かりあいたいと思う。

それはもちろんメイアともだ。

明日は俺とメイアの、最初で最後の真剣勝負。負けられない。

 

「翼なら勝てるって信じてる。」

 

「ああ。だから3戦目は頼むぞ、天馬。」

 

「うん。それじゃ俺も自分の部屋に戻るね。おやすみ。」

 

「おやすみ。」

 

 

 

「いよいよ明日。明日で世界が変わる。そしてやっとあなたと戦える。楽しみね、翼。おやすみなさい。」




いかがだったでしょうか?
試合前にちゃんと団結できたチーム。
果たしてどんな試合になるのか。
正真正銘次回からついにギル戦です。
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