先制を許してしまいましたがどう巻き返していくか。
「ザナーク!さっきのプレーは何だ!勝手なことをするな!」
「知らねぇな!俺は俺の好きにさせてもらう。」
「この試合は負けられないんだぞ!」
ザナークのワンマンプレーを神童先輩が咎める。
止められなかったのは俺たちDF陣の責任があるとはいえボールを奪われたのはザナークがきっかけだ。
昨日せっかくチームとして機能していたのに。
「だから僕はあの男を入れるのは反対と言ったんだ。」
パスを取られたガンマも怒り心頭といった感じだ。元々因縁もあるし。
けどいきなり先制点をとられたのはまずい。
なんとか取り返さないと。
「くそっ・・・ザナークが入ってチームのバランスが崩れてる・・・このままじゃ。」
「神童さん。次の攻撃、私にボールを回して下さい♪」
「ベータ?いや、ミーテイングではまずガンマに・・」
「ガンマは今ザナークのせいで頭に血が上ってますから。臨機応変にいきましょ。・・・俺が決めてやるよ。」
「・・・分かった。必ずチャンスを作って見せる。」
「へっ、任せな。」
試合再開直後ボールは神童先輩へ。
神童先輩からパスを受けたエイナムがドリブルで上がっていく。
「アルファ。」
エイナムからアルファへのパス。
さすがにここの二人の息はあっている。
「アルファ、パスだ!僕が決める!」
左サイドにガンマが上がっていく。
先程と同じようにアルファからガンマへ繋ごうとしたところにまたもザナークが走りこんでくる。
しかしそれを呼んでいたかのようにギルのDF陣が寄る。
ギルは戦術のレベルが高いと言っていたがさっきのゴール前のポストプレーといい確かにクレバーなチームだ。
「今だ、神のタクト!アルファ、オルカにパスだ。」
「イエス。」
「そこだ!」
「オーケー、ベータ!」
「よっしゃあ!」
オルカからのかなり深めのパスだったがベータが持ち前のトップスピードで追いつく。
エイナムとアルファに負けず劣らずこの二人の息もあっている。
ムキになってるガンマとザナークを囮にした形だ。
「決めるぜ。虚空の女神アテナ!アームドッ!!」
完全にフリーになったベータとキーパーの1vs1
「シュートコマンド07!!」
俺たちが何度苦しめられたか分からないベータの化身アームドの必殺シュート。
「リジェクション!・・・ぐあっ!」
ハリネズミの針のようなものでシュートを串刺しにするキーパーの必殺技。
だがベータのシュートが針の山を貫いた。
「決まった~~!エルドラドチーム02すぐさま追いついたぞ~」
「いいぞベータ!」
「ふふ♪決めちゃいました。」
「味方になると頼もしいな。」
「あいつ、あんな凄いシュート持ってるド」
結局俺たちもベータのシュートを止められたのは1回だけだったな。
ベータのシュートを初めて見る狩屋と天城先輩はびっくりしてた。
「ふん。」
「僕ならもっとスマートに決められたのに・・・」
「ガンマ、少し落ち着け。この試合必ずお前の力も必要だ。だから今は無理にザナークと張り合うな。」
「・・・・スマート」
ベータに先を越されてヒートアップするかと思ったが今の攻撃が自分がムキになっていたところを利用されたのだと理解したのだろうか。少しは落ち着いた様子だ。
「彼ら中々やるじゃないか。」
「ええ、思った以上だわ。けど取られたならすぐ取り返すだけよ。」
「今度はギルのボールで試合再開。ボールはギリスへ。」
ベータがすぐに同点にしてくれた。俺たちのシュートも通用するのが分かった以上、守り切ればこの試合ちゃんと勝ち目はある。
「そう簡単には行かないよ。情熱のラヴァーズ!!」
「化身か!?」
しかしギリスが化身を呼び出した。青い鎧を来た騎士の化身。剣城のランスロットとは少し違った感じだ。
いきなりの化身の出現でエイナムとオルカが軽々抜き去られる。
「俺が止める!奏者マエストロ、アームド!!!」
神童先輩が化身アームドでギリスを止めにかかる。
化身と化身アームドの戦いなら相手がセカンドステージ・チルドレンでも戦えるか。
と思った矢先、メイアが加速してきた。
「ふふ。本命はこっちさ。メイア!」
「しまった!」
「任せてギリス!情熱のラヴァーズ!!」
「こっちも化身だド!?」
ギリスがパスを受けたメイアも化身を出現させた。
ギリスの化身とよく似ているが女性型の化身だ。
あの日ゴッドエデンで影だけ見せてくれた化身とついに相まみえることになった。
DFで化身を使えるのは俺だけだ。当然俺がマッチアップする。
「破壊神デスロス!!」
「忘れたとは言わせないわよ翼。あなたに化身の制御を教えたのはこの私。」
「忘れるわけないだろ!」
化身同士のぶつかりあいは否応なく1vs1のガチンコ勝負になる。
けど、このパワーは
初めて会ったあの日のことが脳裏をよぎる。
「こうも言ったはずよ。何かあっても私が抑え込むって!はああああ!」
「うわあああっっ!」
ラヴァーズのレイピアがデスロスを貫き弾き飛ばされる。
あの時の言葉が嘘じゃなかったことを証明されてしまった。
「さぁ決めてくれ、メイア。」
「ええ。ハートレイピア!!」
「止めるド狩屋!」「はい!」
「アトランティスウォール!」「ハンターズネット!」
メイアの化身必殺シュートが放たれ狩屋と天城先輩がシュートブロックに入る。
しかしすさまじいパワーの前には通じずルジクもろともゴールに突き刺さった。
「メイアの化身でギルが2-1と勝ち越したぞ~~~!」
「くそっ!!俺が止めなきゃ・・・勝たなきゃいけないのに・・・」
せっかくベータが同点にしてくれたのにあっさり勝ち越しを許してしまった。
さっきもそうだ。俺がメイアに勝っていれば・・・
「どうするド神童。あのレベルの化身使い二人を同時に止めるのは無理だド。」
「ベータたちにも手伝ってもらう?」
「いや、アルファ、ベータ、ガンマは重要な得点源だ。3人の化身は攻撃に集中させるべきだ。」
「エイナムの言う通りだ。現状二人の化身を同時に止めることは出来ない。なら化身を呼び出す前からマークについて化身を呼びださせないようにするしかない。」
「けどそうなると他のマークが甘くなるんじゃないですか?」
「ああ。だがこのままでは奴らの攻撃は止められない。攻撃の要のメイアとギリスを分断することが先決だ。」
ギルの攻撃の中心はやはりメイアとギリスだ。二人の必殺シュートで2点を取られている以上そちらを止めるのが優先だ
「俺が、俺がメイアにつく。」
俺がやらなきゃいけないんだ。
「翼・・・分かった。ならオルカは翼のフォローに回ってくれるか。」
「オーケー。」
「ならギリスは俺と狩屋でなんとかするド。」
「お願いします。オフェンスは俺とエイナムでボールを運ぶ。アルファ、ベータ、ガンマ、ザナーク頼んだぞ。」
一旦の作戦は決まった。
だがオフェンスの負担が重くなる。ザナークが指示通りに動いてくれるか。
「第一戦とはうって変わってシーソーゲームの様相を呈してきたぞ。エルドラドチーム02、エイナムがドリブルで上がっていく!」
「神童!」
エイナムから神童先輩へ。ボールキャリーは二人にかかっている。
しかしギル側もそれを読んだのか詰めるのが早い。
「くっ、ザナーク!」
プレッシャーがかかりパスを出させられる形になる。
「アルファにパスだ!」
「パス?そんなもん必要ねぇ!」
「ザナーク!?」
「あいつまた!?」
しかしボールを持ったザナークはまた一人で攻め込んでいく。
自分のことを物足りないと言った大介さんに力を証明するために躍起になってやがる。
けどギルはお見通しとばかりに素早くトリプルチームにつく。
「こざかしい!」
「一人じゃ無理だザナーク!一旦バックパスを」「うるせぇ!」
「ディザスターブレイク!!」
「「「わあっ!!」」」
「ふんぬっ!」
トリプルチームの上から強引にシュートを放つザナーク。
だが当然シュートの威力は大きく削がれギリギリの所で止められてしまった。
「メイア!」
キーパーからのロングスローで一気にメイアへとボールが渡る。
「させない!」
トラップすると同時に距離を詰める。
オルカがサポートに入ってくれている。
「私に化身をださせないつもり?なら・・・」
「こっちもだぜ。」
逆サイドでは狩屋と天城先輩がギリスを密着マークしていてパスは出せないはずだ。」
「少しは考えたわね。」
「これ以上点をやるわけにはいかない!」
ここでカウンターが決まれば同点で前半を折り返せる。
なんとかしないと。
「けど、私たちギルを甘く見すぎよ。ザット!」
「待ちくたびれたぞメイア。」
「しまった!」
フリーになっていたFWのザットにボールがつながる。
「神童先輩!ルジク!」
「俺が止める!・・・くっ!?」
神童先輩が止めに入ろうとするももう一人のFWチェルが妨害する。
「ギルはメイアとギリスだけのチームじゃないんだよ。来い!炎魔ガザード!!」
「そんな!?3人目の化身使い!?」
「くそっ!」
「間に合わないわ。ザット、決めちゃって!」
「爆熱ストーム!!!」
1vs1での化身シュートを止められる手だてはなく無情にも追加点が決まった。
「ザットの化身シュートでギル追加点!そしてここで前半終了のホイッスル!3-1でギルのリードでハーフタイムへ突入だ~!」
そんな。同点で折り返すはずが2点差に広がるなんて。
俺がしっかりしていれば・・・
勝たなきゃいけない試合なのに・・・
膝をついてうつむいていると視界に人影が。
顔を上げると立っていたのはメイアだった。
俺を見下ろすばかりで何も言わず去っていった。
けど言葉以上にメイアの目が語りかけてきた。
こんなものなのか?と
それが俺の心を点差以上に深くえぐる。
どうやってベンチに戻ったかはもう覚えていなかった。
「いいペースだね。」
「ああ。同点に追いつかれたときは少し焦ったが、ザナークのおかげで攻撃が読みやすいぜ。」
ハーフタイムに入ってベンチでこれまでの展開を振り返る。
前半終わって私たちが2点リード。試合展開は完全に押している。
翼たちのチームはFWのパワーは私たちに匹敵するものがあるけどザナークが好き勝手やってくれるおかげで御しやすい。
向こうが私とギリスを止められない以上このままいけば私たちの勝ち。
「メイア、このままなら楽勝だね。」
「ギリス・・・そうね。」
「どうしたんだい?2点リードなのに?」
そう。リードしていてこのまま進めば私たちの勝利でラグナロクは終わる。
けどこのまま終わるはずがない。私が期待していた戦いは。
あなたの力はこんなものじゃないはずよ。
「・・・・・・・」
気が付いたら俺はベンチに座っていた。
選手としての習性だろうか。
「メイアとギリスだけでも厄介なのにまだ化身使いがいたとはな。」
「ルジク大丈夫か?かなりキツイシュート受けたろ?」
「・・・問題ない。」
「このままじゃ離される一方だド。」
「2点差でしょ?これ以上デイフェンスには割けなくない?」
「オルカの言う通り。攻勢に回らなければ勝利はない。」
「後半はこの僕がゴールを決める。」
みんなが後半の方針について話しているのが遠くに聞える。
今のこの状況はどう考えても俺の責任だ。
俺がメイアとの1vs1にことごとく負けてる。相手の攻撃の中心を全く止められていない。
これじゃずっとギルのペースになるのは当然だ。
「・・・・さ」
この旅で強くなったと思った。
昨日アルファたち3人にああ言ったけど心のどこかで何とかなると思ってたんだ。
「・・・ばさ」
この旅で強くなった。
ずっと遠かった背中に近づいたと。
なのに結果はこれだ。
俺がもっと・・・
「翼!聞いてるのか!」
「!?す、すいません!」
どんどん思考の水底に沈みかけていたが神童先輩の声で意識が浮上する。
「もう一度言うぞ。この試合、負けられない以上後半は点を取るしかない。だから俺とエイナムとオルカもオフェンス中心になる。だからゴールは4人に任せたぞ。」
どうやら後半の作戦は決まったらしい。この試合、引き分け以上でなけらばラグナロクが終わる以上用全の判断だ。
けどなんの策もないんじゃ。
「・・・そうですよね、分かりました。すいません俺のせいで2点ビハインドで・・・」
「翼くんだけのせいじゃないって。」
「そうだド。失点は俺たちみんなの責任だド。」
狩屋と天城先輩がフォローしてくれる。
それでも気は晴れずうつむくと目の前に3人の人影が。
「いいえ。本人の言う通り、この点差は彼のせいですわ。」
「全くだ。昨日僕たちにあんな大見得を気っておいてこの体たらくとはね。」
顔を上げるとアルファ、ベータ、ガンマが立っていた。
「ちょっとベータ、ガンマ!それは言いすぎ・・」
「NO。昨日私たちと戦った時はこの程度では無かった。」
「え?」
アルファの言ってることが理解出来ない。
俺は全力でやってる。それこそ昨日以上に。
この試合は絶対に負けられないんだから・・・
「そうそう。なんなら戦国時代で戦った時のほうがマシだったくらい。」
「それはどういう・・・」
そんなはずは無い。あの時よりずっと強くなって、ミキシマックスだって出来るようになって
「俺は全力でやってる。」
「じゃあ聞きますけど。」
「あなた、なんのために戦ってるんです?」
いかがだったでしょうか?
俺たちの最強ストライカーベータ、頼りになりすぎる。
しかしギルの攻撃は止められず。
オメガ三幹部の真意はいかに。
メイアだけじゃなくてギリスやザットも頑張ってます。
次回もよろしくお願いします。
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