ギル戦も折り返しです。
「あなた、なんのために戦ってるんです?」
ベータに投げかけられた言葉に俺の脳は完全に思考停止してしまった。
「エルドラドはこの世界の秩序を守るために戦っている。」
「それはこれまでの戦いもそう。」
「僕たちルートエージェントはそのことを誇りに思っている。だからサッカーを消すことも厭わないかった。」
アルファ、ベータ、ガンマが続けざまに話す。
雷門のみんなは口を挟まない。
「俺だって・・」
「別にこの時代がセカンドステージ・チルドレンに支配されたってあなた達には関係ないはずでしょう?」
「それは・・・サッカーから生まれたセカンドステージ・チルドレンが世界を支配したらサッカーを救ったことにはならないって・・・」
「それは松風天馬の言葉だ。」
「・・・俺も同じことを」
「それにしては君は他の雷門の人間よりやけに意気込んでるじゃないか?」
「そうそう。私たちと戦ってる時はもっと気楽そうでしたけど?私たちを倒さなきゃサッカーが消えちゃうのに。今のあなた、今までで一番弱く見えちゃいます。」
「私も同意見だ。」
「もう一度聞きますけど、あなた何のために戦ってるんですか?」
俺が戦う理由。
これまではサッカーを取り戻すために戦ってきた。
今はどうだ?サッカーの歴史はもう元通りになった。
ラグナロクに負けても俺たちの時代には関係ない。
天馬が言っていた言葉。確かに天馬の言う通りだ。
けどそれは天馬の答えだ。
俺が戦う理由。この試合に勝たなきゃいけない理由。
勝たなきゃいけない?
なんで俺はこんなにも勝たなきゃいけないと思っているんだ?
この試合にかかっているものはなんだ?
世界の命運。負ければフェーダが世界の覇権を握る。
セカンドステージ・チルドレンはなんで世界を?
それは世界に自分たちを認めさせるため。
どうしてこのラグナロクを?
彼らは大人になれない。寿命が短い。
なぜ勝つ必要がある?
それは勝ってワクチンを接種するように説得するため。
一体誰を?
俺がワクチンを接種してもらいたい子、そんなの一人しかいない。
メイアだ。
なら何故ワクチンを接種してほしい?
そうすれば長生き出来るから。
メイアは望んでいない。なのに何故俺は長生きしてほしいと思ってる?
もっと一緒に生きたいから。
何故?
何故?
何故?
何のために戦ってる?
「・・・あ、そっか。そういうことか。」
自分が戦う理由。勝たなきゃいけない理由。いや、勝ちたい理由。
余計なもの全部剥ぎ取って残ったもの。
それは本当に単純で口にすれば笑ってしまうような答え。
俺は彼女が、メイアが好きなんだ。
目を閉じればこれまでの思い出が鮮明に浮かぶ。
一緒に過ごしたいこれからの光景が広がる。
けどこのままじゃその未来は訪れない。
彼女の未来はごく限られてしまっているから。
俺はメイアに死んでほしくない。生きてほしい。一緒に歩んでいきたい。
もっともっと一緒にサッカーしてたい。これまでのリベンジだってしたい。
だからこそ俺はこの試合勝ちたい。メイアに勝ちたい。
勝って彼女の未来を掴めるようにしたい。
やっと分かった俺が戦う理由。戦ってる理由。
俺はこの試合、これまで何のために戦ってるか分かってなかった。
そんなの力が発揮できるわけない。
けどもう大丈夫だ。
「答えは出たか?」
「ああ、おかげさまでな。」
「手間かけさせないでくれます?」
「後半、しっかり挽回したまえよ。」
「まさかお前たち3人に気づかされるなんてな。」
「昨日のお返しです。」
まったく見事にやり替えされたもんだ。
けど晴れ晴れした気持ちだ。
さっきまであんなに重かった体が今は空も飛べそうなくらいだ。
早くプレーしたくてたまらない。
「話は済んだようだな。では後半の作戦を伝える。赤峰、お前は相手のキャプテンにマンツーマンでついてもらう。」
「ハーフタイムが明け、後半戦が始まるぞ。」
2点差で迎えた後半戦。
巻き返していくためにも攻めるしかない。
神童先輩たちにオフェンスに専念してもらうには俺たちが踏ん張るしかない。
まずはこの1プレー目だ。
「ギルのキックオフで後半戦スタート。メイアとギリスが早速攻めこんでいく~。」
前半と同じようにメイアとギリスが中心になっての攻撃。
けど前半ラストのプレーで分かったがFWの二人も厄介だ。
ポストプレーも上手いし化身で決定力もある。
前半と同じじゃまたやられるだけな以上やるしかない。
「ミキシトランス!」
前半戦は一度も発動しなかったミキシマックス。
出し惜しみしてた訳ではないが俺のミキシマックスは消耗が激しい分、勝負所に取っておきたかったのもある。
けどそうは言ってられない状況だ。それに俺の全力をメイアにぶつけたい。
「来たわね翼。」
「勝負だメイア!」
「速い!?
前半は1vs1でも化身の力比べでもやられっぱなしだった。
けど今度は絶対に勝つ!
一気に距離を詰めたタイミングでボールを奪おうとしたけどそう甘くは行かなかった。
けどメイアの動きがよく見える。
体が自分の思考に連動するみたいに動いてくれる。
逆サイドのギリスは天城先輩たちがマークしてくれてる。
「くっ・・ザット!」
前半戦ラストと同じようにザットへのパス。
けど今なら対応出来る。
「もらった!」
一瞬距離をとったのに合わせて跳んでカットに成功する。
「嘘・・・」
「へへっ。神童先輩!」
やっとやり返せた。
ミキシマックスの力もあるけど前半より集中出来てる感じがする。
ここまでは作戦通り。
「今ならいける。いくぞ、神のタクト・ファイアイリュージョン!」
後半戦が始まる前に監督から伝えられた作戦。
ギルボールで開始される上にギルとしては追加点をとれば試合を決めうる1点になる。
だからこそ止められればカウンターの大きなチャンスになる。
「ガンマ!」
「スマート。」
攻め込まれる前にこちらの攻撃を潰したいギル。
早めにかかるプレッシャーにキープ力が高いガンマ。
「ベータ!」
「おりゃあああ!」
そこで空いたスペースにベータのスピードで切り込む。
「決めろ、アルファ!」
「イエス。今なら我らの力を合わせられる。」
「「あれは!?」」
昨日の練習で最後まで完成しなかった3人の合体技。
「シュートコマンド24」
「「「オメガアタック!!!」」」
虹色の輝きを放ちながら突き進む3人の必殺シュート。
ギルのDFたちをたやすく吹き飛ばし、キーパーの必殺技もねじ伏せてゴールに突き刺さった。
やっぱり凄いな、あの3人。
「1点を返したエルドラドチーム02、このまま勢いに乗れるか?それともギルが突き放すか?」
そうだ。1点を返したといってもまだ負けてる。
早く追いつかないと。
同じ手は二度通用しない。
「「情熱のラヴァーズ!」」
「あっといきなりメイアとギリスが二人同時に化身を呼び出した~~!!」
初めて攻撃を止められ二人はいきなり全開。
化身の突破力で神童先輩とエイナムとオルカを易々と蹴散らし攻め込んでくる。
「止めるド!」「はい!」
「アトランティスウォール!」「ハンターズネット!」
「「うわあああっっ!」」
天城先輩と狩屋の必殺技でもギリスの足止めが精一杯。
「頼んだよメイア!」
「止めてくれ翼!」
「ふぅ・・・破壊神デスロス!」
「その化身じゃ私は止められないわよ!」
今動けるのは俺だけ。
ここで失点したら勢いが潰えてしまう。
化身対決では勝てないのは前半で証明された。
こうなったら残された手は一つしかない。
結局これまで一回も成功したことがない。
けど不安はない。
なんでだろう。ゴッドエデンで初めてメイアと会った時のことを思い出した。
(化身は人の心と気が極限まで高まった時に現れるもの。)
なら化身のその先の力、化身アームドを身に着けるにはもっと強い心の力が必要。
さっきまでの俺はその力を呼び覚ますだけの心の力が伴ってなかった。
けど今なら
「アームド!!!」
放出していた化身の力が逆に体全体にいきわたる感覚。
デスロスが体にまとわれていく。
「翼が化身アームドを!?」
「やった~~!」
観客席から天馬の声が聞えた気がした。
メイアに目を向けると驚いた顔をしていた。
けどそれはすぐに勝気なものに変わる。
「ゴッドエデンでメイアから言われたことを思い出したよ。」
「そうこなくっちゃ。けどこれを止められるかしら?」
「ハートレイピア!!」
メイアの化身必殺シュート。
俺は受けることはなかったけど天城先輩、狩屋、ルジクがまとめて貫かれた。
ここで俺が止めるしかない。
「うおおおお!アスタリスクロック!!」
全開の必殺技でシュートブロックに入る。
凄い威力だ。ブロックしてるのに押しこまれそう。
けど負けられない、負けたくない。
「ぐぐぐ・・・だあっっっ!!!」」
「そんな!?」
「はぁ・・・はぁ・・・よっしゃあ!」
「メイアの化身シュートを赤峰が化身アームドで止めたぞ~~!」
メイアを含めギルのメンバー全員がまさかといった感じだ。
初めての化身アームドだったけどなんとかなった。
初めて真っ向勝負で勝てた気がする。
けど感慨に浸ってる場合じゃない。
「神童先輩!」
ギルが動揺してる好きにカウンターだ。
神童先輩がさっきと同様に神のタクトの態勢に入りアルファたちが上がっていく。
「やらせるな!マークにつけ!」
「今だ。ミキシトランス、信長!」
さっきのオメガアタックがよっぽど効いたのか一斉に3人にマークが分かれたのを見て神童先輩がミキシマックスした。
初めてミキシマックスした時に似てるな。
「刹那ブースト!!」
「ぐっ・・・リジェクション!・・・があっ!」
完全に不意をついた神童先輩のシュートが押し切る形で決まった。
「ゴーーール!エルドラドチーム02追いついた~!」
「あらら。決められちゃいました。」
「あの程度のマーク、僕なら問題なかったんだけどね。」
「ふっ。それは頼もしいな。」
囮になった形なのに軽口が言い合えるくらいにはチームとしてまとまっている。
初日からは考えられないけどな。
それにしても化身アームド、ようやく成功した。凄いパワーだけどミキシマックス以上に消耗が激しいな。
「・・・ふん。次は俺が決めてやる。」
「まさかまた追いつかれるとはね。」
「どうする?攻撃のパターンを変えるか?」
同点にされて輪ができる。
前半、1点を取られていたとはいえ私たちがずっと押していた。
けど2回ともカウンターを食らう形で失点してみんな動揺している。
ザットやギリスたちは悔しさを隠せていない。
かくいう私もだ。
化身シュートも止められるとは思わなかった。
なのに同時に胸の高鳴りが止まらない。
悔しい。なのにそれ以上に湧き出てくるこの気持ちは。
「どうかした?メイア。」
「いえ、何でもない。それよりこのままでは終われないわ。」
「よし、このまま逆転するぞ!」
「「「おう!」」」
同点に追いついて俄然チームのムードがいい。
たしかにこのままなら逆転だって出来そう。
試合再開の笛がなる直前メイアの方を見やる。
「なんだ?」
ギルの雰囲気がさっきまでと違う。
何か大きく変わったようには見えないけど確かにそう感じた。
「神童の同点ゴールで試合は振り出しに戻ったぞ。ギルはどう出る?」
「いくわよみんな。」
「ああ。」
「なっ!?」
再開早々パスを回して攻め込んでくる。
けど今までよりパスワークが細かく速い。
ゾーンディフェンスが攪乱されてしまっている。
今まで手を抜いていたわけでは無いだろう。
けど同点になったことでより集中力が増してのこの攻撃か。
「メイア!」
あっと言う間にゴール前まで迫られメイアにボールが渡る。
「狩屋、天城先輩!両サイドはお願いします!破壊神デスロス!!」
ギリスやザットは他のみんながカバーしてくれる。
なら俺は任された仕事をするだけだ。
「アームドッッ!!!」
「ふふ。情熱のラヴァーズ!」
さっきと同じシチュエーション。
ここを止めてカウンターに繋げて見せる。
「さっきと同じだと思ってる?化身アームドが出来るのはあなた達だけじゃないわよ。」
「まさか!?」
「アームドッ!!!」
化身が光になってメイアの体を包みこむ。
ラヴァーズの鎧に身を包んだメイアの化身アームド。
ここまで見せてこなかった化身アームド。けどメイアの実力なら化身アームドが出来るなんて普通に考えたら分かることだ。
それにしても。こんな時だってのに。
世界の命運がかかった試合なのに今俺の胸を焦がすこの感情は。
「はぁ・・はぁ・・・楽しいな、メイア!」
「私もよ。たあああっっ!!」
「アスタリスクロック!!」
追いついたと思ったらまた上の力を見せてくる。
負けられない試合だっていうのに胸が熱くなる。
「ぐぐぐ・・・うわっ!」
「キーパーコマン・・ぐあっ!!?」
「ゴーーール!メイアの化身アームドでギルがまたもリード!!」
これがメイアの化身アームド。こっちはやっと出来るようになったってのに。
今度はこれを止めないといけないのか。
勘弁してほしいのにワクワクしてくる。
「すまないルジク。大丈夫か?」
「ああ、問題な、っ!?」
「おい。まさか今ので!?」
「大丈夫だ・・・他にキーパーはいないんだ。これくらい・・・」
明らかにさっきのシュートでどこか痛めてる。
無理もない。ずっと強烈なシュートを体で受けてきてるんだ。
けど代わりのキーパーがいないのも事実。
「分かった。俺たちも体張るぞ、狩屋。」
「それが俺たちの仕事だしね。」
まだ時間は残ってる。必ず追いついて、逆転するんだ。
いかがだったでしょうか?
ついに自分の想いを自覚した翼。
逆に今まで自覚してなかったのかとツッコミたくなるところですね。
主人公が覚醒したと思ったらさらにそれを超えてくるラスボス系ヒロインであった。
メイアのアームドはアニメでは無かったけど主人公とヒロインのぶつかり合いならそりゃあ化身アームドは必要でしょってことで。
今作ではメカ円堂の出番はありません。
いよいよギル戦も大詰めです。
感想、コメントお待ちしています。励みになります。
小話 昨年このサイトで一時投稿されていたイナゴ恋愛物という作品、最高だったなと思い返す日々です。