ここはどこだ?
気づいたら真っ暗な空間にいた。
向いている方向も立っているのかも分からない。
ふと気配を感じてそちらを見る。
そこには一人の女の子が立っていた。
俺が彼女の存在に気づくと彼女は俺から離れていく。
追いかけようと思っても足が動かない。
どんどん離れて見えなくなっていく。
それでも今彼女を追いかけないといけないと思った。
動かない足を引きずって。背中が近づいてきて。
手を伸ばして彼女の手をとった瞬間。
視界が白く染まる。
「はっ!・・・・ここは?」
知らない天井だ。
今のは夢?
たしか俺はラグナロクの試合に出てて
「良かった、目が覚めたんだ。」
「天馬?って痛ててててててて!?」
「無理に起き上がっちゃだめだよ。」
声のする方向に顔を向けると天馬がこちらを覗き込んでいて起き上がろうとすると全身に猛烈な痛みが走った。
「俺はいったい?ここは?」
「覚えてないの?翼、試合終了してすぐ気を失ったんだよ?」
「ここはスタジアム内の医務室だ。」
「神童先輩。」
ついで神童先輩が顔をのぞかせる。
落ち着いて周囲を見わたすと雷門のみんながいた。
神童先輩の言うようにどうやらここは医務室みたいだ。
「後半戦明らかに無理しっぱなしだったド。」
「ミキシマックスと化身アームドのどっちかは使いっぱなしだったし最後は同時に使うんだもんな。」
「天城先輩、狩屋・・・」
「ほんと、軟弱ですこと。」
「まだまだ訓練が足りないね。」
よく見ると同じチームだったプロトコル・オメガの面々もいた。
みんなの言うことをまとめると、俺は無理しすぎた結果体力の限界で試合終了直後にぶっ倒れてこの医務室に運ばれたらしい。
この体中の痛みはその反動というかも猛烈な筋肉痛のようなものか。
徐々に状況が飲み込めてきたのと同時に記憶が戻ってくる。
「そっか。試合は勝ったんだな。」
「最後、翼がゴール決めたんだよ!」
「YES」
「私たちがいて負けるはずありませんわ。」
良かった。これで天馬たちに繋ぐことが出来た。
それにしてもアルファたちまで来てくれてるなんてな。
「ありがとう。勝てたのはお前たちがいてくれたからだ。」
「当然さ。」
「最後いいところ持っていかれたのは不満ですけど。」
「まぁたまには許してくれよ。」
「それでは我々は失礼する。」
「明日の試合、ちゃんと勝ってくださいね。」
ひと段落ついてプロトコル・オメガの面々は引きげるつもりらしい。
「ああ。心配かけたな。それと」
「「?」」
「また、サッカーやろうぜ。」
「・・・YES」
今度は使命も任務も関係ない、純粋なサッカーをやりたいなと思った。
「それではお大事に~。ってあら?・・・ふふ♪}
「ベータのやつどうしたんだ?」
医務室を出たところで何かを見つけたようなリアクションを残していった。
その後すぐ廊下から一人の女の子が顔を出した。
「おまんは!?」
「ギルの・・・」
恐る恐るといった感じで顔を出したのはメイアだった。
錦先輩や剣城が警戒して身構える。
「何の用だ!・・神童先輩?」
剣城が一歩前に出たところを神童先輩が制する。
「彼女なら大丈夫だ。」
試合前のロッカーでのやり取り、そして試合を通じて神童先輩は敵ではあるがメイアに一定の信頼を置いたのだろうか。
そういえば俺たちのチームと天馬、信助、葵以外はあのこと知らないのか。
「それに翼が倒れた時、真っ先に駆け寄ってくれたのも彼女だ。」
そういえば意識を失う前、最後に見た光景がそれだった。
神童先輩の言葉にみんな一旦は警戒を解いた感じだ。
「あの・・・・・・」
「・・・翼と話したいんだよね?」
「ええ・・・」
「分かった。それじゃあみんな、俺たちはもう行きましょう。翼。翼や神童先輩が繋いでくれた明日の試合絶対に勝って見せる!」
「ちょ、天馬!?」
「いいのか?二人にして。」
「大丈夫。翼と神童先輩が信頼できるって言ってるんだもん。」
「ああ。」
「ありがとう・・・」
「こちらこそ。仲間を心配してくれてありがとう。」
「それに素晴らしいプレーと試合だった。次があれば、またやろう。」
天馬や神童先輩たちはそう言い残しみんなを連れて去っていった。
去り際に剣城と少し話をしたようだった。昨日の試合の事だろう。気にしてたからな。
そしてこの医務室に残されたのは俺とベッドのすぐそばの椅子に腰掛けるメイア、ただ二人だった。
お互い何から話せばいいかと少しばかりの沈黙が流れ、先に口を開いたのはメイアだった。
「体はもう大丈夫なの?」
「ああ。無理しすぎただけで別に異常は無いらしい。体中痛いけどまぁ重い筋肉痛みたいなもんだ。」
「そう。良かった。」
体を起こして分かりやすく動かしたのを見て一安心といった感じだ。
「心配してくれてありがとう。」
「べ、別に心配なんてしてないわ。ただ目の前でいきなり倒れたから・・・」
「試合に勝ったのに倒れてちゃ締りも悪いよな。」
「ほんとよ!まったく、私たちに勝っておきながら・・・」
試合に勝ったことを話題に出すと不服そうに頬を膨らませながら何やらつぶやいてる。
はじめは気まずかったがこうして話し出すといつもみたいに自然と話せる。
けどこんなやり取りも久しぶりに感じてしまう。
アーサー王の世界からこの時代に来てまだ2日しかたってないのに。
「試合前の約束も守ってくれたし。」
「ええ。もしかして信じてなかった?」
「他のみんなは分からないけど、俺は疑ってなかったよ。」
「松風天馬といい神童拓人といい、あなた達ってお人よしね。」
「天馬たちも誰でも信じる訳じゃないさ。それこそエルドラドから手を組むよう言われたときはみん
な反対してたし。試合前の約束をメイアたちが守ったからだと思う。」
「そういうものなのかしら?それにしてもよくあのメンバーでチームとしてまとまってたわね。」
「いやもう最初は本当にひどいもんだったよ・・・いやほんとに・・・」
あのまま試合に臨んでたらと思うとぞっとする。
想像して憂鬱そうにしてると苦笑いの声が。
「けど良い試合だったな。」
「私は負けたから不満よ!」
「ふふん♪リベンジ成功だな。」
「なっ!?・・・ふん、ハットトリック決められておいてよく言うわね!」
「ぐっ・・・いやでも後半はちゃんと1vs1も止めたし・・・」
「けどトータルは3ゴール1アシストよ?」
「それは・・・その・・・」
「ふふん♪」
試合には勝ったけどやっぱりプライドってものはある。
実際個人でみると後半巻き返してもトータルで見ると分が悪いか。
「試合には勝ったし・・・あ~もうこの話は終わり!それより!」
一旦流そう。
そう。一番大事な話がまだだ。伝えたいこと。
メイアの方に姿勢を正して向き直る。
真面目な雰囲気を察してメイアの顔つきも変わる。
「メイア。俺はやっぱり君にワクチンを受けてほしい。」
「・・・!」
昨日も伝えて、そのうえで断られた。
それでもこの気持ちは変わらない。
「言ったはずよ。ワクチンを受けるつもりはない。世界に私たちの力を認めさせるって。」
それも分かってる。セカンドステージ・チルドレンたちの意志が固いことも。
けどぶつかり合わなきゃ通じないことだってある。
「俺は世界のためなんて言うつもりはない。ただそれでも受けてほしい。頼む、お願いだ。」
「この力を手放すつもりはないわ!翼もエルドラドや他の大人たちと同じことを言うの?」
「そんなつもりはないよ。別にセカンドステージ・チルドレンの力を手放してほしいわけじゃない!ただ俺たちと同じように大人になって普通に生きてほしいんだ!」
「同じことよ!それに大人になれないなんてみんな承知の上!それでも私たちは戦うことを選んだの!」
初めてここまで感情的になってるメイアを見た。
試合の
時とも違う。俺も同じように心の底から漏れだす声が止まらない。
「分かってる!それでも俺は!」
「どうして?私たちが大人になれずに死んでも翼たちには関係ないじゃない!」
「関係なくなんか無い!俺たちにはもう繋がりが生まれてる!この繋がりを失いたくないんだ!」
「っ!?」
「一緒に生きていく方法があるのに、それを無視してメイアだけ大人になれず死んでいくなんて俺は
嫌だ。俺の心には穴が空く。それにきっとメイアだって。」
「私たちの力を世界に認めさせられるならそれで死んだって後悔なんてしないわ!」
「そんなことない!死ぬのは怖くて寂しくて・・・そんなの絶対悔いが残る!」
「翼に何が分かるの!!」
「分かるよ!俺には分かる!!俺は」
俺には分かる。俺だから分かる。
残していった側の後悔。
死んで気づいたらこの世界にいて。
二度目の人生を歩んだからこそ分かる。
前世でも毎日サッカーして友達と笑いあって、全力で生きてた。毎日が楽しかった。
それなのにこの世界に来てからもずっち心残りがあった。
やりたかったこともいっぱいあった。
もっと一緒に過ごしたい友達だっていた。
その人たちに味合わせてしまった悲しみの重さも今なら分かる。
伝えるためには隠してちゃダメだ。俺の全てを打ち明けなきゃ。
「俺は一度死んで、今ここにいるんだ。」
「・・・・・は?」
言ってしまった。天馬に続いて二人目。
けど後悔はない。メイアになら打ち明けられる。
「それは、どういう?冗談のつもり?」
突然告げられたあまりの内容に流石に驚いてるようだ。
さっきまでの激情が少しだけ引いたのか。
「そのままの意味だ。俺は一度死んで、そしてこの世界に生まれ変わって今こうして生きてる。」
「それはパラレルワールドの・・・」
「いいや。正真正銘、2回目の人生を歩んでるんだ。全部話すよ。」
そして俺は全てを打ち明けた。
俺は元々この世界とは全く違う世界で生きていたこと。
その世界で一度死んだこと。
そして気が付いたらこの世界に生まれ変わっていたこと。
雷門中入学前の記憶はないこと。
おおよそ恐竜時代で天馬に話したのと同じこと。
それをメイアは黙って聞いてくれた。
「俺はこの世界で生きていながらも心の底ではずっと引っかかってた。前世に残してきた家族や友達のこと。もしかすると共鳴現象の一種かもしれないけど。俺が死んだ後、残してきた人たちの悲しんでる姿を夢に見たりもした。」
「そんなことって・・・」
「人間は一人で生きてるんじゃない。色んな人と繋がって心を通わせあって生きてるんだ。俺と雷門のみんなやメイアとフェーダのみんなみたいに。俺とメイアだってそうだ。だから。」
翼が語ったこと。それは到底信じられないものだった。
パラレルワールドとも違う全く異なる世界で生きていて、死んでこの世界に生まれ変わった?
そんなこのタイムスリップもありふれたこの時代の科学でも証明しようもない荒唐無稽な話。
けど翼の言葉には確かな説得力があった。
元いた世界は翼たちの時代よりも更に前時代的で、超能力はもちろん必殺技や化身なんて無くて、私たちが当たり前のようにやってることもありえないような世界。
もしそんな世界からこの世界に生まれ変わったのだとしたら。
これまで翼が見せていた不思議な面も理解出来る。
普段はお馬鹿なのに妙に大人びている瞬間があったり。他のみんなとは違う考え方を持っていたり。
私たちセカンドステージ・チルドレンの力を知っても、翼にとっては必殺技や化身も似たようなもので。たった数か月でそれに順応して今を生きているなら今更驚かないのも無理もない。
これまで抱いていた疑問がパズルのピースが嵌っていくように解消されていく。
そしてその事実を受け入れると同時に翼の言葉がさっきまでよりも更に胸を貫いてくる。
「だからそんな寂しいこと言わないでくれよ。俺はメイアとこれからも一緒に生きていきたいよ。」
目にうっすらと涙を浮かべながら私をまっすぐ見つめ、絞り出すような声で訴えてくる。私の肩に手をやり離さないと言わんばかりに握りしめてくる手。
その手を私は振りほどけない。
「けどどうして?どうしてそこまで。そんなにボロボロになるくらい無茶してまで戦ったの?」
翼はこんなになるまで力をふり絞って、私を説得するためにここまでするなんて。
私は世界を変えるために、そして翼に勝つために全力で戦った。
けどどうしてここまで翼が必死になって私にぶつかって来るのかが分からない。
最後の勝負の時、翼の勝ちたいという気持ちが確かに私にも流れ込んできた。
どうして世界を変えるために戦ってる私たちと同じくらい強い思いでぶつかって来れるの?
何が彼をここまで駆り立てるの?
「それは・・・」
全てを打ち明けて、そのうえでメイアから返ってきた問い。
それは本心から漏れ出たものだというのが聞かずとも分かった。
そしてその問いに対する答えは決まっていた。
ずっと抱えていたこの思い。
試合中に気づかされて自覚したこの感情。
全てを打ち明けたといったがまだ一つだけ打ち明けていないもの。
俺が戦っていた、戦う理由。
言葉にすれば本当に単純ですぎて恥ずかしいような。
ただ一つの答え。
「俺が君のことを・・・・メイアのことが・・・好きだから!!!」
こんなに簡単な答えだったんだ。
今思うと一目ぼれってやつなのかもしれない。
忘れられないゴッドエデンでの初めての出会い。。
一緒にいると天馬たちと過ごしたり、サッカーしてる時とも違う温かい気持ちになる。
話してると見せてくれる花のような笑顔を見るたびにドキドキした。
幕末で悩みを打ち明けてくれた時は何とか力になりたいと思った。
彼女に何度も勇気をもらった。
出会いを重ね、言葉を交わすたびに自分の中で大きくなっていった感情。
前世を含めても初めて出会った、こんなにも心惹かれる女の子。
そしてそんな彼女の正体を知ったときに抱いた絶望。
どれもこれも全部この想いがあるからだ。
「好きだから死んでほしくない。大好きだから一緒に生きていきたい。未来を歩んでいきたい。
だからその未来を掴む方法があるならそれに手を伸ばす。エルドラドが開発したものにだって縋る。ぶつかり合ってでもこの想いを伝える。そのためならどんな無茶だってするさ。」
「それくらい俺はメイアのことが好きだ!」
ありったけの想いを言葉にして手を差し出す。
言葉を紡ぐのに必死でようやく顔を上げた俺の目に飛び込んできたのは。
見たこともないくらい顔を真っ赤にしたメイアだった。
「俺が君のことを・・・・メイアのことが・・・好きだから!!!」
思考が止まる。
どうしてこうなったの?
この話の流れでなんでこんな話になってる?
え?好き?
誰が誰を?
翼が私を?
矢継ぎ早に伝えられる翼の想い。
思考は追いつかないのにそれでも彼の気持ちが伝わってくる。
心臓の鼓動が早くなる。顔が熱くなる。
心が温かくなる。
「それくらい俺はメイアのことが好きだ!」
全部出し切ったとばかりに顔を上げ手を伸ばしてくる翼。
興奮や恥じらいや色んな感情が入り混じった表情。
それでもまっすぐに見つめてくる。
あうぅ///そ、そんなに見つめられたら///
なんでこんな話になってる///さっきまであんな真剣な話してたのに///
ダメ。見つめてられない///何か言い返さないと
「メイアはどうなんだ?」
「ひゃ///どうって?」
「俺はメイアと一緒にいると楽しくて仕方ない。話してると心が温かくなってくる。」
「そ、それは私も、私も同じ・・・」
「一緒に笑ったり、泣いたり、サッカーしたり、たまにはぶつかり合ったり。そんな日々を過ごしたい。」
これまでの翼との思い出があふれだす。
全て私の大切な思い出。
大人になれないと分かっていた。つまらない人間たちに囲まれて退屈していた私の日々は翼と出会ってから変わった。
一緒に遊んで、サッカーして、小さなことで張り合ったり。
そんな未来を思い描いてしまう。描けてしまう。
それは何故?
最初は興味本位で近づいて。けどどんどん惹かれていって。タイムジャンプ先でこっそり会ったり、メッセージでのやり取りが楽しみになって。SARUとギリスに揶揄われるのが妙に恥ずかしくて。幼馴染のギリスに抱く気持ちとはまた違うこの感情。
翼のことを考えると胸が高鳴って、試合中もどんどん強くなっていくのにワクワクさせてくれて。
私が迷った時は支えてくれた。本人曰く一度死んで生まれ変わった不思議な男の子。
そうか。
いつの間にか抱いていたこの気持ちは。
「・・・私も。私も、もっと翼と一緒にいたい。」
自分の気持ちに嘘はつけなかった。
一度言葉にすると止まらなかった。
「また一緒にお出かけしたい。映画見に行ったり、サッカーしたり。もっともっといろんなことをしたい。私も、翼のことが好き!」
「気が付くと翼のことを考えてる。寝る前にメッセージのやり取りをするのが楽しかった。ジャンヌ・ダルクとミキシマックスするかもって聞いたときは嫉妬した。ワインを呑んだ時は歯止めが利かなかったし声が聞きたかった。翼が受け止めてくれたから迷いを断ち切れた。お姫様みたいって言われて嬉しかった。」
「ずっとずっと惹かれてた。こんな気持ちになったのは翼が初めて!」
熱に浮かされたみたいに想いを言葉にするのが止まらない。
さっきとまるで逆。言葉と一緒に涙もあふれてくる。セカンドステージ・チルドレンの力に目覚めて、迫害されてギリスと一緒にフェーダに流れ着くまでに枯れたと思っていたはずなのに。
全部吐き出して翼を見やると顔を真っ赤にしてた。
目が合うと止まらなかった。
心のままに胸に飛び込んだ私をそっとやさしく抱きとめてくれた。
お互いに全部吐き出して、抱きかかってきたメイアを受け止めて抱きしめ返して。
どれくらいの時間がたっただろう。
ようやく落ち着いた俺たちはどちらからともなく離れ元の位置で向き合う。
「・・・・///」
「・・・・///」
お互い顔真っ赤にして相手を見れない。
それもそうだ。言い争いをしてたと思ったらいつの間にか告白してたんだから。
「あ、あのさ。」
「な、何かしら?」
「その~さっきのってさ、つまりそのさ。メイアも俺のことす、好きってことで良いの?///」
「っ!!・・・ええ。好きよ」
「ぐっ///う、嬉しいよ。やっと伝えられたよ。」
「私も。」
二度の人生通じて初めて女の子に告白したし、女の子から好きって言われたな。
前世も今もサッカーばっかだったし。
「それじゃあさ、ワクチンは?」
「・・・ごめんなさい。それでもワクチンを受けることは出来ないわ。」
「そんな・・・」
確かにさっき一緒に生きていきたいと言ってくれた。
それなのになぜ。
「今はまだね。」
「え?」
「翼と生きていきたいのは本当よ。けどまだ私は提案を受け入れるわけにはいかない。私はフェーダとして戦っているから。翼のことは好きだけど、フェーダのみんなも大切な仲間なの。みんなを裏切ることは出来ない。」
ラグナロクはまだ終わっていない。
今日で1勝1敗。まだ明日の最終戦が残ってる。
「明日の試合でラグナロクの決着がつくわ。」
「分かった。なら、ラグナロクで俺たちが勝ったらワクチンを受けてくれないか?」
「・・・・分かったわ。元々世界の実権を賭けた最終戦争。フェーダが負けたなら私はこの力を手放す。けど私たちが勝ったら。」
「ああ。もう何も言わない。メイアたちの意志を最後まで尊重する。」
結局全ての運命はラグナロクに委ねられるというわけだ。
けどそれで良いのかもしれない。
「ならお願いがあるの。」
「お願い?」
「ラグナロクで私たちが勝って世界の実権を握ったなら。私の寿命が尽きるその時、そばにいてくれる?」
「メイア・・・」
とても穏やかな笑顔で持ちかけられたお願い。
悲壮な決意が伴ってるはずなのに、これまでと違って未来を見てるような。
答えは決まってる。父さんと母さんには怒られるかもしれないけど。
迷うことは無い。
「分かった、約束する。その時は必ず・・・いや、その時までずっと俺がそばにいる。君の残された時間に俺の全てを捧げるよ。」
「ありがとう。なら私も約束するわ。あなた達が勝ったらこの力を手放す。そして翼と一緒に生きていくわ。・・・ってこれじゃどっちが勝っても私と翼はずっと一緒に生きていくことになるわね♪」
「確かに。」
なんだかんだで何があっても俺たちは最後まで一緒にいることになりそうだ。
そのことに気づいて俺たちは一緒になって笑った。
この時代に来て初めて心から笑えた。。
メイアの笑顔もとてもまぶしい。本当にキレイだ。
「ま、明日の試合は天馬が出るからな。悪いけど俺たちの勝ちだな。」
「あら?私たちフェーダの力、まだ甘く見てるの?そんな口きいてられるのも今のうちよ!」
「言ったな?」
「ええ、言ったわよ!」
こんな子どものケンカみたいなやり取りですら楽しい。
ひとしきり言い合って気づけばもう完全に日もくれた時間になっていた。
「それじゃ、私は帰るわ。」
「ああ。あまり俺と一緒にいても仲間に悪いしな。」
「ギリスはともかくSARUはいい顔しないでしょうね。」
「そういえば、なんかギリスとは特に仲良さそうだったな。化身もお揃いだったしさ・・・」
「ギリスとはセカンドステージ・チルドレンの力に目覚める前からの幼馴染なの。サッカーを始めたときから一緒に練習してたから同じ化身になったのかも。」
「へー・・・ふーん・・・」
「あ、もしかして嫉妬してた?」
「・・・まぁな。」
試合前に一緒にこっちのロッカーに来て。
試合中もコンビネーション抜群で化身もお揃いで。
嫉妬心が無かったといえば嘘になる。
もしかしたら二人がラブラブな世界線もあったのかもしれない。
「ふふっ♪安心して。私の初恋は翼よ♪」
「んあっ!?」
不意打ちのように耳元でささやかれる。
この手玉に取られる感じも久しぶりだ。
こういうとこはいつまでたっても敵わなそうだ。
「わ、分かったよ!それじゃ、気をつけて帰るんだぞ?」
「私はセカンドステージ・チルドレンよ?気をつけるのは街の人たちじゃないかしら?」
「それでもだよ。男は好きな女の子の夜道は心配なんだよ。」
「ふふ♪ありがとう。翼はどうするの?」
「体中痛いし今日と明日はここで安静にするようにだってさ。」
「そう。それじゃ、お大事に。」
「ああ。おやすみ。」
「おやすみなさい。」
前回のあとがきで早めに更新したいと言っておきながら間が開いてしまいました。
いかがだったでしょうか。
ついに全てを打ち明けた翼、一世一代どころか二世一代の告白。思いは届くも物語はまだまだ続きます。
それにしてもこの二人、隙を見せるとすぐイチャつく。
前回の話にコメントや考察をいただけて筆者冥利に尽きます。
引き続きお楽しみいただければ幸いです。