アンプルで強化されたザ・ラグーンの猛攻は続いた。
さっきのSARUの化身シュートでその勢いはより一層激しさを増していた。
「くそっ。早すぎる・・・」
「ミキシマックスしててもついていくのがやっとぜよ。」
ゾーンディフェンスを展開して自分の持ち場に集中しても凄まじいスピードとパスワークについていくのがやっとだった。
またもほとんどボールに触れられない。
俺とフェイとザナークだけじゃ太刀打ちできない。
「ここだ!」
「あら、ごめんなさい♪」
「くっ・・・!」
パスカットしたかと思ったら一瞬でニケにボールを奪われる。
「メイア!」
「いくわよギリス!」
「OKメイア!」
ニケからパスを受けたメイアがギル戦で見せたギリスとのコンビネーションであっと言う間にゴール前に切り込んでいった。
「これ以上点をやるわけにはいかない!」
「護星神タイタニアス!アームド!!!」
ミキシマックスを解除して化身アームドに切り替える信助。
出力なら化身アームドの方が高い。
「デッドフューチャーG2!!!」
「はああああっ!!・・・く・・うわあっ!!」
ギル戦で散々苦しめられた二人の必殺技。
それもあの時より必殺技が進化して威力が増していた。
メイアの相手は俺がしたいけど今はそうは言ってられない。
ザ・ラグーンは全員がストライカーを担えるくらい個人のレベルが高い。
「けどこれで1-4・・・・」
「どうしたら・・・」
正直アンプルを使われてからほとんど何も出来ていない。
「みんな!相手のスピードに惑わされるな。ここは1点ずつ、確実にボールを前に運ぶんだ。ザナークとフェイを中心に翼がフォローを、俺たちが3人をサポートするんだ。」
「OK!」
「そういうと思ったぜ。」
「任せてください。」
責任重大だな。
シュートはフェイとザナークに任せることになるからそこまでなんとか繋がないと。
まさか最終戦になってこんな役回りになるなんてな。
けど、それで勝ってこそ望む未来を掴めるってことか。
「ザナーク、こっちだ。」
「・・・ザナークじゃねぇ。」
「え?」
「スーパーザナーク様だ!これで良いんだろう?」
「・・・・ああ!」
試合再開直後ザナークが神童先輩にボールを預ける。
ギル戦の時は散々振り回されたけどガル戦からザナークは変わったな。
今は完全に信頼できる、そして頼りになる仲間だ。
「道を切り開くんだ!」
他のみんながザナークとフェイのマッチアップ相手を二人がかりでマークして二人をフリーにする。
なら俺がボールを運ぶんだ。
「神童先輩!ボールを!」
「頼むぞ翼!」
天馬と錦先輩がサポートに入っている以上ミキシマックスの出力が高い俺がボールを運ぶことになる。
シュートよりはこっちのほうがまだ得意だ。
「そうはさせないわ。」
けどそんな思い通りにさせてくれる訳もなくメイアがマークについてくる。
1点目をとった時と同じシチュエーションだ。
ただ一つ違うのはアンプルで強化されてる分さっきよりも手ごわいという所だ。
落ち着いて動きを読もうとしても隙がない。
「くっ・・・ここ」
「同じ手は通じないわよ!」
「しまった!」
抜こうとしたほんの一瞬を突かれてボールを奪われる。
「翼に私の動きが分かるように、私にだって翼の動きが分かるんだから!SARU!」
俺にはなんとなくメイアの癖のようなものが分かった気がしていた。
メイアのことをずっと見てきて、想い続けてきて、好きだと自覚してからメイアのことがよりよく見えるようになったから。
けどそれはメイアにも同じことが言えるってことらしい。
嬉しいんだか厄介なんだか。
けどギル戦の時といい、こんな大事な試合だっていうのにメイアとの勝負はやっぱり楽しいな。
なんてのんきなことは言ってられない。
SARUにボールが回ったがなんとかフェイが回り込んでくれていた。
「後悔してないみたいだね。」
「はぁ・・はぁ・・・SARU。僕たちは必ず勝つ。そして君たちを救って見せる!」
この試合に特別な思いを持ってるのは俺だけじゃない。
フェイにとってもこの試合はフェーダの仲間たちのための戦いでもあるんだ。
けどフェイの言葉はSARUに届いていない。
「救う?何を言ってるのかな?君たちの運命を握っているのは僕らの方だ。」
「何だ?」
SARUの体からさっきのとは違うオーラが湧き出る。
いやそれだけじゃない。
体中の筋肉が膨れ上がっていく。それどころか骨格まで変わっていって。
「な、な、な、なんとなんと!SARUが凶暴な野獣になってしまった~~!」
SARUの姿は化身の超魔神エヴァースのような大猿になってしまった。
これもセカンドステージ・チルドレンの力なのか?
ちらりとメイアの方を見ると首を横に振っていた。
どうやらSARUだけの力のようだ。
「うわああっ!?」
「きゃっ!?」
大猿になったSARUのパワーはすさまじくフェイや霧野先輩、黄名子を正面突破してしまった。
「こんなものじゃないよ。超魔神エヴァース!!」
「おいおいまさか・・・」
「アーーームド!!!」
「化身アームドだと・・・」「あいつ、どこまで強くなる気だ。」
アンプルによる強化に特殊なミキシマックスのような変身に加えて化身アームドまで。
「シェルビットバースト!!」
今まで見てきたどんなシュートよりも強力なSARUの必殺シュートは信助の大国謳歌改をいとも簡単に破ってしまった。
まだ上の力があったなんて・・・
「ここで前半終了!ザ・ラグーンが4点の大幅リード!これは勝負あったか~~?」
前半終わって1-5の4点差。
正直ここまでとは思わなかった。
メイアとの勝負に勝っても試合に負けちゃ意味がないっていうのに。
みんなミキシマックス状態でプレイしてた分疲労もある。
俺もこのミキシマックスを自分のものに出来たといっても普段より消耗することに変わりはない。
「もう分かったかな?僕たちの力。セカンドステージ・チルドレンしか持ちえないこの特別な力。この特別な力によって繋がっている僕たちに古い人間たちがどんなに頑張って敵うはずがない。それはこの会場にいるみんなも分かったよね?」
会場全体に向けて自分たちの力を誇示するSARU。
この試合を通じて世界中に自分たちの力を示すという当初の目的は変わっていない。
「やっぱり。弱くて何の役にも立たない存在は排除されるべきなんだ。」
会場全体が言葉を失っていた。
その反応に満足気なSARU。
けど何だ?この違和感は。
点差と試合展開から普通なら楽勝ムードのはず。実際他のメンバーは余裕そうだ。
けどなぜかSARUからは点差ほどの余裕を感じない。
「翼、ハーフタイムだよ。ベンチに戻ろう。」
「天馬・・・ああ、そうだな。」
ハーフタイムに入って一旦ミキシマックスを解除。少しでも体力の消耗は減らさないと。
とはいっても逆転への光明は見えてこない。
「まさか奴らの力がこれほどとはな・・・」
「いや、必ず打開策はあるはずだ!」
「でも、このままじゃ・・・」
「天馬、どうする?」
ザン、ギル、ガル。3チームとも強敵だったけどザ・ラグーンの実力はそれ以上だ。そのうえアンプルによる強化。今までのどの相手よりも強いのは間違いない。
「絶対に勝たなきゃいけない試合なのに・・・」
「勝たなきゃいけない、か・・・」
キャプテンとして天馬もなんとかしないといけないと思ってるだろう。
一昨日の俺もあんな感じだったのかな。
「それがお前たちのサッカーなのか?」
「え?」「円堂監督・・・」
みんな疲労と実力差に沈んでいると不意に円堂監督が口を開いた。
俺たちのサッカー?
「勝つことにこだわりすぎだな。お前たちにとってのサッカーって何なんだ?」
「・・・俺を導いてくれる存在です。」
「俺が俺である証。」
「温かい気持ちにしてくれる、お日様みたいな存在です。」
「うちにとっては、大きな希望やんね。」
俺にとってのサッカー。
前世も今も俺はサッカーと共にあった。きっと何度生まれ変わっても俺はサッカーをする。
そして今の俺にとってのサッカーは
「俺を突き動かして、みんなとの絆を紡いでくれる存在です。」
この世界に生まれ変わって、前世とは全く違うサッカーに戸惑った。
それでもサッカーをすることに迷いは無かった。
雷門中に入学して、親友の天馬と出会って、雷門のみんなと一緒に革命を起こした。
サッカーを守るためにフェイや黄名子と一緒に戦うことになって、トーブと出会ってこの世界での自分という存在を受け入れることができた。
そしてメイアとめぐり合わせてくれた。初めて出会った愛おしく思う、競い合って熱い気持ちにさせてくれて、思いや価値観をぶつけあって分かり合えた。
みんなサッカーのおかげだ。
「天馬はどうなんだ?」
「サッカーは、いつも一緒にいてくれる友達です。」
「そうか。・・・もちろん勝たなきゃいけない試合だ。だが、そればかり気にしすぎて大切なことを見失ってないか?」
「大切なこと?」
「見せてくれ!お前たちがやってきたサッカーを!」
そうか。俺たちは、俺はまた同じ過ちを繰り返しかけてたのか。
一昨日の試合、勝たなきゃいけないとばかり思ってた。
けどアルファたちに戦う理由を気づかされた。
「天馬、余計なこと全部忘れて思いっきりサッカーやろうぜ。」
「思いっきり?」
「ああ。こんな最高のメンバーで、あんな強い相手と戦えることなんてもう二度とないぜ。なら思いっきり俺たちのサッカーでぶつかろう!」
そう。一昨日のギル戦も負けたらそこで終わりの絶対に負けられない試合だった。
けどあの後半戦、大変な時だってのに俺は夢中でサッカーをしていた。
勝ったら嬉しい、負けたら悔しい。メイアと勝って負けてを繰り返してどんどん強くなれた。
勝たないといけないと思ってた時よりただただ夢中でサッカーをしていたあの時のほうが力を発揮できてた。
「この時空最強イレブン、クロノストームで最強の相手ザ・ラグーンと最高の試合をしようぜ!」
「翼・・・うん。・・・うん!みんな!後半戦、全力で俺たちのサッカーをやろう!!」
「「「おう!!」」」
「答えは出たようだな。それじゃあお前たちに必殺タクティクスを伝える。」
いよいよ後半戦が始まろうとしてる。
世界の命運、俺とメイアの未来。全てが決まる。
後半戦始まる前に円堂監督から伝えられた必殺タクティクスと後半の戦い方を脳内で整理。
顔を上げて前を向けば天馬の背中、その更に先にはメイアがいて目があう。
メイアも分かってる。この後半戦で全てが決まることを。
現状1-5でかなり厳しい状況だけど俺たちのサッカーでぶつかっていくんだ。
「ザ・ラグーンに対抗するには俺たちが一つになるしかない!」
「俺たちのサッカーを見せる!」
「全力でぶつかっていくんだ。」
そして後半戦開始のホイッスルが鳴る。
「走れ!!」
神童先輩の合図打ち合わせ通り信助以外の全員が走る。
「クロノストーム、キーパーを除いた全員でザ・ラグーンをぴったりとマーク!」
後半戦、ザ・ラグーンに対抗するためにはスピードで攪乱されないように密着マークするしかない。
「1vs1なら負けねぇんだよぉ!!」
「いけ、ザナーク!」
1vs1なら対抗できるザナークとフェイをより活かすために俺たちで二人に近づく相手を徹底的にカバーする。俺の機動力もサポートに回す。
「へぇ、考えたわね。」
「邪魔はさせないぜ。」
俺の相手は当然メイアだ。
俺たちの作戦の意図は理解したらしい。
お互いにボールを持ってない段階でこうして向き合うと軽口も叩きたくなるが今は試合に集中だ。
「よし、道が開いたぞ!」
マークを外されかけるとすぐにマーク対象を変えながら二人を自由に動けるようにサポートする。
二人がゴール前に切り込んでチャンスがきた。
「けど、甘いわよ!」
目を離しはしなかったけどまるで消えたと思うようなスピードでマークを外される。
それは他のみんなも一緒だった。
けど後半最初のこの攻撃、なんとかものにしてみせる。
「「させない!!」」
「魔神ペガサスアーク!」「破壊神デスロス!」
「「アームド!!」」
ミキシマックスを一旦解除して化身アームドに切り替える。
俺のミキシマックスも化身アームド並の出力は出るけどより瞬間的なパワーなら化身アームドのほうが良い。同時使用は流石にまだ切る訳にはいかない。
「俺たちもいくぞ!」
「剣聖ランスロット!」「奏者マエストロ!」
「「アームド!」」
4人の化身アームドでザナークたちの道を切り開く。
「絶対に1点とって試合の流れを超えるんだ!」
「おう!俺も化身で行くぜ!魔界王ゾディアク!アームド!!」
「はあああぁぁぁ!!!」
「リバースワールド。」
ザナークの化身アームドのシュートはキーパーの必殺技で跳ね返されてラインを割って一旦ゲームが止まる。
「くっそ!惜しい!」
「あとちょっとだったのに!」
前半のザナークのゴール以来の得点チャンスだったがあと一歩届かなかった。
ここで決まってれば勢いに乗れたのに。
「ふふん♪私たちのキーパーを舐めてもらっちゃ困るわね。」
「ぐぬぬ・・・。」
俺が止められたわけではないけど悔しい。
けどこの悔しいって気持ち、メイアとの1vs1以外でも感じるのはこの試合で初めてかもしれない。
「そうだよ、この気持ちだよ。」
「どうした。」
天馬も同じことに気づいたみたいだ。
「ボールが繋がって嬉しい、シュートが決まらなくて悔しい。これが俺たちのサッカーだ!」
そうだ。俺たち11人は時空最強イレブンだなんだ言っても根本はサッカーが好きでたまらない11人の集まりで、世界の命運を賭けた試合とは言っても俺たちがやってるのはサッカーだ。
ギル戦の時に感じたあの気持ちの高鳴り。サッカーが楽しいっていう気持ちは俺たちに力をくれるものなんだ。
「まだまだ、巻き返していこう!」
「おう!」
みんなが気づいた。俺たちがやるべきことは世界のために戦うことなんかじゃない。
ただ全力で勝利を目指してサッカーをすること。
肩から力が抜けていく。今ならもっと良いプレーができる。
「ナイスプレッシャー!」
「次はいけるぞ!」
「俺様に任せろ!」
試合再開してみんなのプレーが変わった。
がむしゃらにボールに向かっていく。お互いに声をかけあって励まし合う。
まるで部活の練習中みたいだけどこれが俺たちのサッカー。
「「「「ミキシトランス!」」」」
「俺たちのサッカーをすれば必ず勝機は見えてくる!天馬!」
また全員がミキシトランスしてボールが繋がっていく。
さっきまでとは全然違う。
今ならあの必殺タクティクスでいけるんじゃないか。
そう思って円堂監督のほうをチラッと確認するが合図はない。
「もらった!グランドスイーパー!」
「うあっ!!」
天馬も気にしていたが気を取られたところでボールを奪われてしまった。
「メイア!」
「ここでもう一点取って試合を決めるわよ、SARU!」
DFのダクからメイアへと繋がれたボールがSARUに渡る。
「・・・古い人類にしては中々だったよ・・・けど、ここまでだ!」
前半戦の最後に見せた大猿の姿に変貌していくSARU。
けど前半終了時に感じた違和感。いや、これは焦りか。
ラグナロクが始まって昨日の試合の途中まで見せていたSARUの余裕が無くなっているような気がしていた。それはどうやら当たってたみたいだ。
「超魔神エヴァース!!アーーームド!!」
「今だ!!必殺タクティクスに繋げ!」
SARUが化身アームドしたところでベンチから円堂監督の指示が飛ぶ。
そうか、ここが勝負どころか。なら
「天馬!やるぞ!」「分かった!」
「破壊神デスロス!」「魔神ペガサスアーク!」
「「アームド!!!」」
試合の勝負所に残しておいた化身アームドとミキシマックスの同時使用。
ここがこの試合の勝負所だ。出し惜しみは無しだ。
ところで天馬もしれっと同時使用出来てるのは何なんですかね?
「シェルビットバースト!!!」
「「うおおおおお!!」」
天馬と二人でシュートブロックに入る。
やっぱりこれまで受けてきたどのシュートよりも強力なとんでもない威力だ。
けど俺たち二人なら止められる!
「何っ!」
「よし!」「止めたぞ!」
「そんな・・・」「SARUが止められた・・・」
二人がかりのミキシマックスと化身アームドでなんとかSARUのシュートを止めることに成功した。
メイアとギリス、いやSARU本人も含めてザ・ラグーンの全員SARUが止められるなんて思いもしなかったからだろう。明らかに動揺してる。
「いけ、天馬!」
「くっ・・・通さん!」
「そよかぜステップS!!」
天馬の初めての必殺技。これまで何度も強敵たちを抜き去って、練習では俺も何度も抜かれたそよかぜステップ。いつのまにか進化して完成してたのか。これまで見たことない技のキレだ。
俺も負けてられない。
「いくよみんな!」
天馬を起点に後半開始前に必ず使う時が来ると円堂監督から教わった。必殺タクティクスが発動した。
ボールにパワーを込めながらパスを回して11人全員のパワーをボールに込める。
ホーリーロードに帝国戦で使った必殺タクティクスのアルティメットサンダーはボールに集めたパワーを敵陣で炸裂させて突破口を作るタクティクスだった。
けどこのタクティクスは全てのパワーをボールに込める。
「「「必殺タクティクス、グランドラスター!!」」」
「「「決めろ、天馬!!!」」」
「ゴッドウィンド!!!」
マッハウィンドが進化したような必殺シュートが全員分の力を受けて唸りをあげてキーパーの必殺技を打ち破ってゴールに突き刺さった。
「ゴーーーール!!クロノストーム、1点を返したぞ!」
「くっ・・・こんな・・・ことが・・・」
いかがだったでしょうか。
誰しもがGO2のゲームでトータルパワーのミッションのためにグランドラスターを使ったはず。
クロノ・ストーンで全く音沙汰が無かったそよかぜステップが完全進化してこの最終戦で使われるの大好き。
原作よりも厳しい点差ですがこれから巻き返していけるのか、お待ちいただければと思います。
感想、コメントあればお待ちしています。