二度目の人生とフェーダの姫   作:プライムハーツ

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今回はメイア視点が中心になります。


セカンドステージ・チルドレン

松風天馬のシュートが決まって試合は5-2。まだまだ私たちの有利は変わらない。

けれどさっきのプレー。SARUの全力のシュートが翼と松風天馬に止められた。

あのSARUが止められるなんて

それは他のみんなも同じで明らかに動揺してる。

ここは一旦落ち着いて

 

「お前たちごときが!この僕らに敵うはずがない!!」

 

 

そう思った矢先、試合再開直後SARUが一人で攻め込んでしまった。

まだ1点返されただけなのに焦ってる。

あんなSARU見たことない。

 

「いかせない!」

 

「くっ・・・ギリス!」

 

「もらった!」

 

「なっ!?」

 

冷静さを失ったSARUのパスは簡単にカットされてしまった。

けどカットされたのはSARUが焦ったからだけじゃない。

相手の動きが全員良くなってる。

翼とフェイとザナーク以外はさっきまで私たちの動きに着いてくるのがやっとだったのに今は私たちと互角に渡り合えてる。

 

「うおおおお!」

 

「古代の翼!!」

 

激しいボールの奪い合いから抜け出したSARUも翼の必殺技でまたボールを奪われてしまった。

 

「フェイ!」

「しまった!」

 

「王者の牙、改!!」

 

 

「ゴーーール!!クロノストーム更に1点を返した~~!まだまだ試合は分からないぞ!」

 

ゴール前でフェイをフリーにしてしまった。

SARUの動揺がみんなに伝わって、いや私も同じ。

フェイとザナークはフリーにしてはいけないと分かってたのにみんな連携がバラバラになってる。

 

「この僕たちが・・・3点も・・・」

 

「SARU・・・」

 

 

「僕たちはセカンドステージ・チルドレンなんだ!!」

 

SARUの動揺はどんどん激しくなっていく。

思えば昨日から少し様子がおかしかった。

気のせいかと思ってたけどやっぱり違った。

きっとそれはフェイがフェーダを抜けた時から・・・

 

 

「どけ!地球最強の小市民、スーパーザナーク様が通るぜ!」

 

「僕らの力はこんなもんじゃない!!」

 

ザナークをSARUが体で止めたところを松風天馬がボールをクリアして一度試合が止まる。

あのままだとザナークに得点を許すかもしれなかったからこちらとしてもありがたい。

 

「どうしてだ・・・どうしてこいつらは僕らと渡り合えるんだ・・・セカンドステージ・チルドレンの僕たちと。」

 

SARUが翼と松風天馬に止められてから試合の流れが変わって彼らの動きが変わった。

正直理由は私にも分からない。けれど彼らの旅を見てきた中で彼らは幾度もこうして試合中に劇的に強くなってエルドラドを打ち破ってきた。一昨日の試合もそう。前半あれだけ圧倒したのに翼は試合中にどんどん強くなって、化身アームドを身に着けて最後は私たちギルに勝って見せた。

この不思議な強さが彼らの力だというの?

 

「僕たちは特別な力で繋がった最強のチームのはずだ!」

 

「みんなを繋ぐものは力なんかじゃない。もっと色んな思いで人は繋がれるんだ。」

 

「違う!セカンドステージ・チルドレンの力、この力が新しい未来を築くんだ!古い人間たちに決してできないことを実現する力。この力こそがフェーダのみんなを繋いで支えている。」

 

松風天馬の言葉を否定し私たちセカンドステージ・チルドレンを繋ぐものは力だとSARUは言い切る。

本当にそうなのかしら?私たちには力という繋がりしかないの?

 

「SARU、聞いてくれ。今なら分かるんだ。フェーダは一人ぼっちで寂しい思いをした者たちの集まりだった。だからこそ身を寄せ合って、支え合って生きてきたんだ。力で繋がってたんじゃない。」

 

そう。フェイの言う通り。フェーダはセカンドステージ・チルドレンの集まり。

この力に目覚めて親に捨てられてからギリスと一緒に世界をさまよってSARUと出会った。それからも徐々に同じ境遇の子たちと出会ってフェーダが結成した。フェーダという組織の存在を知った子たちがまたやってきてどんどん仲間が増えていった。いつしかギリスと二人だったころに感じていた寂しさは段々薄れていっていた。ザンみたいに反りが合わない連中もいるけれど嫌いにはなりきれない。それはやっぱり同じ境遇の仲間だから。

 

「違う!僕たちを繋ぐものは力!力があるからこそ結束してるんだ!力を持っているもの同士、大人にも誰にも頼らず生きている。だからフェーダには価値があるんだ!」

 

けどSARUは否定する。SARU以外のみんなはきっと分かってるはずなのに。

 

「力だけで・・・力だけで繋がって誰にも頼らず生きていくなんて、本当にそれでいいの?」

「そんな寂しい生き方じゃ、誰にも頼れないなんていつか折れて立ち上がれなくなるんじゃないか?」

 

「翼・・・」

松風天馬と翼がSARUに言う。

医務室で打ち明けられた翼の過去、前世。

翼はこの世界の誰とも違う存在だと知りながら生きていた。

恐竜時代にタイムジャンプする前に会った時は今にも折れそうなくらいに頼りない背中だった。

きっと限界が来てた。今のSARUはあの時の翼に似てる。

 

「みんなを繋いでいるのはそんなんじゃないよ!胸の中が熱くなって、涙があふれてきて一緒になって喜んだり悲しんだり・・・そうして強く繋がっていくものなんだよ!」

 

「繋がっていく?」

 

「友達さ!友達になるんだ。本当の仲間になるんだ。それが誰にも断ち切ることの出来ない、深いところで繋がってる絆なんだ。」

 

「そう。そうなんだよ。僕たちは時空最強イレブンを探して旅をしてきた。だけどその旅で手に入れたのは時空最強イレブンよりももっと大きくて、大切なものだった!それがみんなとの絆だったんだ!僕たちは君たちと同じ一人ぼっちだった。だけど天馬たちと出会って、友達の大切さを知った。友達は家族と同じくらい素晴らしいものなんだよ。」

 

フェイは旅を通じて変わったのね。フェーダにいた時は私たちの中でも特に孤独を抱えていたのに。今は彼の周りにはたくさんの人間がいる。

 

「違う・・・僕たちは特別なんだ・・特別な力を持った者同士繋がっているんだ!友達なんかじゃない!僕たちは組織であり、同志なんだ!!」

 

「SARU・・・」

 

 

 

ギリスのスローインで試合が動きだす。

 

「お前たちごときにぃ!!!」

 

「いかせない!」

 

ボールを受けとったSARUに松風天馬がつく。

 

「僕たちは特別な力を持つもの同士、深くつながってるんだ!力によって結ばれた固い絆だ!お前たちなどに負けるはずがない!

 

「力だけで繋がってるなんて本当の絆じゃない!」

 

「お前ごときに何が分かる!僕たちは特別なんだ!」

 

SARUと松風天馬の競り合いでまたボールが弾かれて外に出る。

SARUが私とギリスのもとに歩いてきた。

 

「こうなったら力を出し切る。僕たちが持つ全ての力を。」

 

「危険すぎないか?」

 

「私たちの体が持つかしら・・・」

 

私たちセカンドステージ・チルドレンはいつも全ての力を出しているわけじゃない。

寿命を縮めているように、力を使いすぎると体に負担がかかりすぎるから。

全力で戦っている時もギリギリの所でリミッターをかけてる。

そのリミッターを外せばどうなるか私たち自身にも分からない。

 

「・・・やるんだ!」

 

「っ!?・・・・・分かったわ。」

 

SARUのこの目。普段はお茶らけてるのにこういう時に見せる皇帝としての顔。

能力だけじゃない。この意志の強さがあるからSARUは立ち上がり世界を変えることを決めた。

そんなSARUだから私たちもついていこうと思った。フェーダのみんなもSARUを皇帝として認めている。なら従うしかない。

それにどんなことがあっても彼なら、翼なら受け止めてくれる。

 

 

「いくぞ!」

「ええ!」

 

 

「なんだこれは!?すさまじいスピードだ!」

 

試合再開前にメイアとギリスがSARUと何やら話していた。

覚悟を決めたような目をしていた。

そして今、ザ・ラグーンの動きが更に速くなった。

きっとメイアたちも限界を超えて戦ってるんだ。

 

「SARU!」

 

「はあああああっ!」

 

ここで決められたら完全に終わりだ。

「止める!アスタリスクロック!・・・うあっ!」

 

「「まだだ!」」

 

SARUの渾身のシュートを止めきることは出来なかったが信助と天馬と剣城がなんとか弾いてくれた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・いい加減理解してほしいな。君たち古い人間は淘汰されるべきなんだ。」

 

SARUも息が上がってる。やっぱりザ・ラグーンも無理をしてるんだ。

けどそれは俺たちも同じだ。

 

「これは・・・」

 

「ミキシマックスは、もうじき解ける・・・」

 

「みんな!最後の力を出し切って、SARUたちの力を受け止めよう!」

 

「受け止める、か。」

試合前に言っていた救うためのサッカー。

この試合を通じて感じたSARUたちの怒りと孤独。

それは勝つだけじゃ拭えない。受け止めて分かり合わないといけない。

ようやく分かった。俺たちがこの試合でやらなければならないことが。

 

「みんな!」

 

「円堂監督?」

 

ふとベンチから円堂監督の声が聞えた。

 

「サッカーにとって大切なものってなんだ!思い出せ、お前たちの大好きなサッカーを!」

 

「俺たちの」「サッカー・・・」

 

サッカーにとって大切なもの。

この旅で何度も耳にしてきた言葉。

大介さんと円堂監督の言葉を思い出す。

 

『サッカーにおける強さとは個人の能力ではない。チームの力、選手同士が生み出すハーモニーによって決まる。』

『全員の力を合わせてぶつかれば必ず勝てる。』

 

サッカーはチームスポーツだ。

一人じゃ敵わない相手でも力を合わせて一緒に乗り越える。

この試合だって一人一人の力ならザ・ラグーンのほうが上だ。

けどこうして戦えている。この11人だからだ。

きっとこの11人で戦ってなければとっくにミキシマックスも切れて力尽きてた。

 

「みんなで力を合わせて乗り越える。それがサッカーなんだ!」

 

「甘い!甘いんだよ!」

 

俺たちを、俺たちのサッカーを否定するSARUの前に天馬が立ちはだかる。

けど俺には分かる。天馬はSARUを止めようとなんてしてない。

そういうことか。

 

「来い!・・・ふっ。」

「今だ!」

「なっ!?」

 

SARUと接触する寸前に天馬が道を開ける。

想定外の行動にSARUが動揺した所にスライディングでボールを奪えた。

 

「君たち一人一人が最強と言うのなら、俺たちは11人で最強になればいいんだ!最強のイレブンに!」

 

セカンドステージ・チルドレンは最強の相手だ。

ホーリーロードで戦ったやつら、プロトコル・オメガ、ザナーク・ドメイン、パーフェクトカスケイド。そのどのチームよりも強い。個人技でもずっと圧倒されっぱなしだった。

けどこうして戦えてるのはイレブンとして戦ってるからだ。

 

「みんな!俺たち今ならなれるんじゃないか?時空最強イレブンに!」

「11の力を受け継いだから時空最強イレブンなんじゃない。俺たち11人だから時空最強イレブンなんだ!」

「うん!」「ああ!」

 

「感じる。みんなの思いが一つになっていくのを。」

「ここにいる11人だけじゃない。様々な時代で出会った仲間たち、一緒に戦ってきた仲間たち。」

「彼らの思いが俺たちに集まっていく。強い心の力が。」

「全員の思いと力が一つの大きな存在になっていく。」

 

一つの力を11人で共有しているような感覚。

みんなの力が俺の中に流れ込んでくる。俺の力がみんなに流れていく。

これがハーモニー。

 

「この試合必ず勝つ!勝って未来を救うんだ!」

 

力が完全に溶け合って天馬が走り出す。

全員の力が今は天馬に集まってるのを感じる。

 

「いくよみんな!」

 

 

「最強イレブン波動!!!!」

 

 

 

11人全員の力が溶け合ったシュートはさっきのゴッドウィンドを遥かに上回る威力でザ・ラグーンを蹴散らし、キーパーの必殺技を貫いてゴールに突き刺さる

 

「まだだ!!」

 

目前でSARUがブロックに入った。

あそこから回り込んだのか。

 

「ぐっ・・・こ、こんな・・・こんなもの・・・がああっ!!」

 

 

「ゴーーーール!!ついに1点差だ~~!」

 

しかしSARUのブロックも貫きゴールに突き刺さった。

 

「みんな!あと1点だよ!」

「いけるよ、天馬!」

 

 

 

とうとう1点差まで追いすがられてしまった。

今のシュート、私たち全員の力でも止められなかった。

まさかあんな力があったなんて。

 

「SARU・・・」

 

SARUは呆然としていた。自分の全力のシュートを止められて、全員の力を合わせても彼らのシュートを止められなかった。

 

「あんなやつらが僕たちと互角だというのか・・・ハ、ハハハ・・悪い冗談だ。」

 

悪夢でも見てるかのような、目の前で起きてることから目を逸らし気が狂ってしまいそうなSARU。

自分の力に絶対の自身を持っていて、私たちの先頭に立って世界と戦ってきたフェーダの皇帝。そんなSARUの背中がこんなにも小さく、頼りなく見える。今にも折れてしまいそうな背中。もしかしたら私たちと出会う前、一人ぼっちになった時のSARUなのかもしれない。

 

「メイア、ギリス!・・・やり返すぞ。」

 

「うん・・・。」

 

「があああああああ!!!」

 

力を心の拠り所にして自分を支えてきたSARUだからこそ、その力で彼らをねじ伏せることで正気を保とうとしてるんだ。けどもしそれすらも打ち砕かれてしまったらSARUは・・・

 

 

「がああああっ!」

 

「うおおおおお!」

 

試合が再開してすぐSARUが攻め上がっていく。

ザナークも力づくで突破してフェイのスライディングも躱していく。

あんなにもプレーは力強いのに心の悲鳴が聞えてくるみたい。

 

「流石だねSARU。けど僕たちは一人じゃない!」

「はあっ!」

 

SARUからギリスへのパスを神童拓人がクリアした。

彼らはもう限界に近いはず。なのにあんなにも前を向いている。

必ず勝てると信じてるんだ。もちろん翼も。

 

「どうしてだ!どうしてあいつらはまだ立ち上がれるんだ!」

 

SARUはもう私やギリスのことも見えていないようにうつむいてしまう。

フィールドで一人ぼっちになってしまってる。

ふと隣を見ると翼がいた。翼ならSARUの孤独を分かってあげられる?

 

「翼。」

「メイア?」

「SARUを・・・SARUを助けてあげて。」

 

 

 




いかがだったでしょうか。
この辺のSARU、痛ましくて見てて辛い。
フェーダ結成秘話とか見てみたかったなぁという今日この頃。

ここに来て翼がどうでるか。次回をお待ちいただければと思います。
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