「ラグナロク最終戦、勝ったのはクロノストームだ!!」
「はぁ・・・はぁ・・・終わった・・・」
「か・・勝った・・・」
「勝ったよ~~~!天馬!」
試合終了のホイッスルと同時にみんなグラウンドに倒れこみたいのをこらえて倒れこんだ天馬に駆け寄る。
全員が本当に全ての力を出し切った。もう立ってるのもやっとだけど勝利の喜びでそんなことも吹き飛んでしまう。
全員もみくちゃになって喜びを分かち合う。誰かと誰かの体の隙間から同じように倒れこんだSARUのもとに歩み寄るメイアたちの姿が見えた。
「負けた・・・・」
全員で喜びを分かち合ってる翼たちを見て自分たちが負けたことを自覚する。
一昨日の試合に負けた時、胸を刺すような痛みと晴れやかな心地よさを覚えた。
けど今は満足感が私の中に広がってる。
力を使い果たしたSARUは本当に悔しそう。
私だって悔しい。
「けど、楽しかったじゃない。」
「そうだね。」
「セカンドステージ・チルドレンなんて言ったって、こんなものか。」
「僕たちも同じってことだよ。同じ人間同士負けた。ただそれだけさ。」
結局私たちと彼らに違いなんて無かったってことね。
「いつの間にか、なっていたんだな。」
「え?」
「天馬たちに教えられたよ。僕たちが組織なんかじゃなくて、友達だったってこと。」
「友達、か。」
「今まで使ったことなかったな、そんな言葉。
最後のあの時、SARUが立ち上がってくれた時にようやく分かった。
私たちフェーダの本当の関係性を。
きっとこうして彼らとぶつかり合わなければ気づくことは無かったんだと思う。
「SARU!」
ひとしきり喜びを分かちあった俺達は立ち上がったSARUたちザ・ラグーンのもとに歩み寄った。
天馬がSARUに手を差し伸べる。
最初は意味が分かってなかったSARUもすぐに理解したみたいだ。
「ありがとう!」
試合が終わったら健闘を称え合って握手。
サッカーの本来の姿だ。
二人に続いてみんなそれぞれ思い思いに握手を交わす。
当然俺の相手は。
「楽しかったな、メイア。」
「ええ。ありがとう、翼。」
お互いの全てを賭けて戦った俺とメイア。
どっちが勝っても恨みっこなし。
負けたはずのメイアも笑顔で握手に応じてくれた。
「翼のおかげで気が付くことが出来たわ。私たちフェーダが、友達だったってこと。」
「そうか。ならよかった。」
少し隣に視線を移すと天馬とSARUが話していた。
「天馬。ぼくもその・・・君の友達に加えてくれないか?」
「それは違うよ。」
「え?」
「友達は加えるものじゃない。こうやって思いをぶつけ合う内にいつの間にかなるものなんだ。だから俺達はもう友達!」
「そうか。それが友達なんだね。」
「天馬の言う通りだ。この場にいるみんな、もう友達だ。」
「翼。うん・・・あ。いやそうじゃないみたいだよ。」
「え?」
「隣を見なよ。」
せっかく良い感じに締めたと思ったのに友達じゃない?
SARUに言われて隣を見るとそこにはふくれっ面のメイアがいた。
「メイア?」
「もう!翼ったら!」
「ど、どうした?お、怒ってる?」
「当たり前よ!」
何でこの展開で怒られてるんだ。
心当たりがなくて混乱してるとメイアの綺麗な顔が目の前に広がって。
唇に柔らかい感触。
「私たちは友達じゃなくて、その、恋人、でしょ///」
「んあっ///そ、そうだな///」
そうか。全ての決着が着いた今、俺とメイアは敵同士ではない。
友達でもない。俺達二人を表す関係性、それは恋人か。
告白したときから怒涛の展開で気づいてなかった。
恋人か。
「ん?」
周囲から視線を感じて目を向けると全員が俺達二人を見ていた。
「試合終わったばっかだってのにお熱いことだね、二人とも。」
「翼とメイアって付き合ってたの!?」
「お似合いカップルやんね!」
「二人とも可愛い反応ね。」
「ちょ、そんな目で見るな~~~!!!!」
クロノストームとザ・ラグーンそれぞれから揶揄われる。
ベンチからはマネージャー陣の黄色い声が聞えてきた。
「時空を超えたカップル成立だね。」
「けどどうするの?二人は暮らす時代が違うんじゃ?」
「ああ。それなら問題ない。」
信助の疑問。それは至極まっとうなものだ。
けど俺はこの試合が始まる前から結果がどうなろうとメイアと生きていくと決めていた。
何の考えもなしに約束したわけじゃない。
「俺、ルートエージェントになるんだ。」
「ルートエージェントって・・・」
「彼にはエルドラドの一員として働いてもらうのだよ。」
「トウドウ議長!?」
詳しく説明しようとしたところでトウドウ議長がグラウンドに降りてきてくれた。
俺の口から説明しようとしても上手く伝わるか不安だったから助かる。
「昨日、彼から直々に頼まれてね。我々としても優秀な人材は多いに越したことはない。なのでエルドラドのルートエージェントとして働いてもらうことにしたのだ。」
『それで一体何の用かね?・・・・赤峰翼君。』
『お願いがあって来ました。トウドウ議長。明日の最終戦、もし俺達が勝ったら俺をエルドラドのルートエージェントにしてほしいんです。』
『何?』
『セカンドステージ・チルドレンは優秀なサッカープレイヤーの遺伝子から生まれた、そしてそれはちょうど俺達の時代から始まってる。そうですよね?』
『うむ。』
『俺達の時代の行く末がこの時代のセカンドステージ・チルドレンの存在に大きな影響を与える可能性が高い。ならこのタイムルートを辿る力になりたいんです。そのためにこの時代にいるプロトコル・オメガだけじゃなくてその時代の人間である俺が動いた方が都合の良いことも多いんじゃないですか?』
『ふむ・・・。確かにその通りだ。君たちの暮らす時代は人類の歴史において非常に重要な意味がある。その時代に協力者がいるのは我々としてもありがたい話ではある。分かった、その提案を受け入れよう。』
「っていう訳で俺は今後エルドラドの一員ってわけ。中学生にして公務員だな。」
「えええ~~~!?」
「学校とかはどうするの?もう一緒にサッカー出来ないの?」
「別にそんな事は無いさ。基本的に生活は今まで通りで何か会った時に俺が動くって感じだ。それとこの時代の助っ人として動いたりもするぜ。」
「彼にはルートエージェントの一員としてタイムジャンプの許可を与えた。勿論、多くの制限はあるがな。この時代での任務にも定期的についてもらうことになる。」
「そう。敵対してたエルドラドに入るのは嫌がられるかなとも思ったけど一緒に生きていくならこれしかないと思ってな。それにフェーダのみんなとも仲良くしていきたいし。だからこれからもよろしくなメイア!」
「翼ったら・・・うん///よろしく///」
中学生にして未来の公務員就職が確定したのであった。
「それにしても勝ったから良かったけど負けたらどうするつもりだったのさ?」
「あ~・・・それは考えてなかったな。絶対勝つつもりだったし。」
嘘だ。負けた時の事も当然考えてた。
けどこの場で言うような内容じゃない。
もしこのことを知ったら天馬たちはめちゃくちゃ怒るだろうな。
『それともうひとつお願いがあります。』
『何かね?』
『もしも明日の試合俺達が負けてフェーダが世界の実権をにぎることになったら、俺のインタラプトを修正してこの時代の人間として生きさせてください。』
『・・・それは何故。』
『あなたたちのことだからどうせ知ってるんでしょ?俺とメイアの約束のこと、それと・・・俺のことも。』
メイアとのやり取りもどうせエルドラドなら何かしらの方法で知ってるはずだ。
それと同時に俺の前世の事も。
『俺はこの世界におけるイレギュラーな存在。他の人間よりもインタラプト修正の影響は少ないはず。』
だから俺は俺の時代での生活を捨ててメイアの寿命が尽きるまで共に生きる。
両親や天馬たちは怒るし悲しむだろうけど覚悟は出来てる。
『イレギュラーだからってあれだけ痛めつけてくれた上に世界の命運を背負って戦うんだ。これくらい許してくださいよ。』
『本当にそれで良いのだな?』
『もちろん、覚悟は出来てます。』
『・・・分かった。』
ま、こうして勝ったからこの話は永久にお蔵入りだ。
そんなことよりこれからの未来を話そうじゃないか。
「僕たちはエルドラドの提案を受け入れて、セカンドステージ・チルドレンとしての力は手放すよ。」
「良かった。それじゃきっとサッカーも喜ぶね。」
「サッカーが喜ぶ?」
「うん。SARUたちが長く生きられればサッカーを続けてくれるだろ?」
「うん、そうだね。」
「俺、思うんだ。サッカーを通じて色んな人の間に絆が出来たら良いなって。だからこれからもサッカーをよろしくね!」
「ハハハ!君らしいね。うん!まかせて!」
「翼たちが困ったとき、今度は私たちが助けになるわ。」
「ありがとうメイア。って言っても人類の命運を賭けた戦い以上に困ることなんてあるのかな?」
「宇宙人が攻めて来て宇宙の命運を賭けて戦ったりして!」
「信助、流石にそれはないだろ。・・・ないよな?」
「「「あはははは!」」」
こうして俺たちの時空を超えた戦いは終わった。
人類の命運を賭けて戦って最後にはこうしてみんなで笑いあって分かり合うことが出来た。
これもサッカーの不思議な力なのかな。
翌日
「それじゃあ俺たちは元の時代に帰るよ。」
「ああ。君たちとの出会いは忘れないよ。」
「またここにいるみんなでサッカーをしよう!」
俺たち雷門イレブン、黄名子にトーブ。
それぞれが自分たちの時代に帰るときが来た。
メイアにSARUにギリス、それにアルファたちプロトコル・オメガの面々も見送りに来てくれていた。
「まさかあなたが私たちの後輩になることになるとは思いませんでしたわ。」
「せいぜい僕の足を引っ張らないように頑張りたまえよ。」
たしかに言われてみればプロトコル・オメガは俺の先輩になるのか。
こいつらが先輩ねぇ。いや優秀なのは分かるけど。
「ワクチンの経過観察の間はしばらくのお別れね。」
「そうだな。けど連絡はとれるんだろう?」
「ええ。ちゃんと返事返してよね。」
セカンドステージ・チルドレンのみんなはこれから順次ワクチンを接種することに決まった。
これまでに存在しなかったものだから経過観察中はエルドラドの管理下での生活になるらしい。
「もちろん!彼女の頼みだからな。」
「ううぅ///」
「これからもずっとよろしく!大好きだぞ!」
赤くなって顔を伏せてしまったメイアに今度は俺から。
ラベンダーの香りと柔らかい唇の感触。
しばらく会えない分、これくらい許してほしい。
「っ!?///」
「それじゃ、またな!」
何か抗議の声と冷やかしの声を背にTMキャラバンに乗り込んだ。
「それでは行くぞ!最後の、タイムジャンプ!!!」
フェイや黄名子、トーブにザナーク。
みんなそれぞれの時代に帰っていった。
俺達と彼らがこれからどんなタイムルートを辿るのかは分からない。
けれどこの旅で培った力と絆があればどんなインタラプトが待ち構えていたとしても、俺達なら必ず乗り越えられる。
「また、会えたやんね。」
こうして俺たちの時空を超えた旅は終わった。
けどこれで終わりじゃない。旅の終わりは新しい未来への始まりでもあるんだから。
いかがだったでしょうか。
これにて原作本編は完結となります。
コロナ渦に投稿を開始して休止期間を経てここまでたどり着くことが出来ました。
投稿開始当初から読んでいただいていた方、投稿再開したのを期に知ってくださった方、休止期間中も待っていただいていた方。本当にありがとうございます、
原作本編は完結しましたが今作はまだ続きます。
投稿頻度は下がるかもしれないですが引き続きよろしくお願いします。、