二度目の人生とフェーダの姫   作:プライムハーツ

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今回は過去一長くなってしまいました。
2話に分けるのも考えたのですが1話にまとめました。
それでは。


労働 in 200年後の未来

200年後の未来 エルドラド本部研修室

 

「以上が我々エルドラドの平時の業務内容および組織規定だ。」

 

俺は今サカマキさんからエルドラドの仕事についての説明を受けている。

途中小難しい話はあったがなんとか意識を失わずに済んだ。

 

「ではこれから実際に現場に出てもらう。集合地点の座標を端末に送ったからそこに迎え。」

 

「分かりました。」

 

座学は終わりで実際に現場に出て仕事をこなすらしい。

今日は有事の際の制圧部隊として市内のパトロールに当たるらしい。

 

「え~とこっちか。っと、すいません。」

 

端末に視線を落としながら歩いていると曲がり角から出てきた人とぶつかりかけてしまった。

 

「NO。気にすることはない。・・・む?」

「ってアルファ、ベータ、ガンマ!」

 

「あらあら。お久しぶりですわね。」

「僕たちと同じルートエージェントになったというのは本当だったようだね。」

 

「ああ。エルドラドのほうも少し落ち着いて俺達の時代にメイアが来てくれたから研修のためにこっちに来たんだ。」

 

「まぁ!せっかく来てくれた彼女さんを残してくるなんて酷い殿方ですこと。」

「しょうがないだろ、仕事なんだから。」

 

せっかくの週末。俺だってメイアと過ごしたかったが仕方ない。

 

「言っておくが君がルートエージェントとして働く以上、管理者である僕たちは上官に当たるんだから敬語を使いたまえよ。」

「はいはい、分かりましたよ。それじゃ俺はこれから任務だから失礼しま~す。」

 

ずいと胸を張るガンマの横を通りすぎ目的地に向かう。

 

 

「ここか。失礼しま~す。」

 

端末に指定された部屋に着いたのでノックして入る。

部屋に入った俺に視線が集まる。

 

「あ?お前が新入りか?・・・ってお前は。」

 

かけられた声に聞き覚えがあり見わたすとそこにいた全員荒々しい雰囲気を醸し出していた。

 

「お前はたしか、ザンのガロ!」

 

そこにいたのはラグナロク1戦目に出てきたザンの面々だった。

 

「お前はメイアの・・・たしか名前は。」

「赤峰だ。赤峰翼。実働部隊ってザンのことだったのか。」

 

そういえばメイアがチラッと言ってた気がする。

 

「ふん。俺達はギルの連中と違って机にかじりついてるなんて性に合わないんでな。」

「馬鹿みたいに暴れる奴がいれば力づくで取り押さえることも出来るからこうして働いてるってわけだ。」

いやそれは大丈夫か?やりすぎにはならないか?

 

「なるほどな。ま、お前たちよりも派手に暴れるやつは早々いなさそうだけどな。」

「ふん、生意気なやつだ。まぁいい。お前ら、準備は出来てるな?」

 

「「おう!」」

 

「よし。じゃあ行くぞ。お前もついてこい。」

「了解。」

 

 

ザンに連れられて来たのはセントエルダから少し離れた地区だった。

 

「ある程度落ち着いたって聞いてたけどこの辺はまだ復興が進んでないんだな。」

 

「ああ。エルドラドの幹部連中はまずは中央の評議会としての機能を再開させることに力を入れてたからな。このあたりは後回しになってる。」

 

エルドラド本部ビルのあるセントエルダはもうほぼ元通りと言っていいくらいには綺麗に整備されて都市としての機能も回復していた。

一方で今いる地区はまだ瓦礫の山も見受けられ人通りもセントエルダに比べると少ない。

未来都市と言われてイメージする像とは違っている。

 

「エルドラドの管理が及びきっていない分、治安も悪く犯罪も多い。だからこうやってパトロールしてるって訳か。」

「・・・そうだ。」

 

田舎は柄の悪いやつが多いみたいな話なのかな。

ガロが歯切れ悪く答えてくれる。

 

「気にしてるのか?」

「・・・俺達の破壊活動が招いた結果だからな。」

 

フェーダの中でも荒くれものの集まりで破壊活動も特に積極的に行っていたらしいザン。

目の前に広がるこの光景を引き起こしたのが自分たちである自覚があるからかエルドラド本部にいた時とは少し空気が違う。

周りをよく見れば通行人たちも少し怯えた表情を浮かべている人も少なくない。

ラグナロクで俺達とセカンドステージ・チルドレンが手を取り合えたといっても全ての人がセカンドステージ・チルドレンを本当の意味で受け入れられた訳ではないってことか。

エルドラドの制服を着た俺とザンの面々に向ける目線は違っていた。

 

「気にするな、とは言わないぞ。」

 

「・・・・・・」

 

「けどな・・・」

 

ガシャアアアン

 

ガロを中心としたザンの面々と話そうすると少し先からガラスの割れたような音が聞こえた。

音がした方を見ると何かの店からそれはもう見るからに子悪党っぽい見た目の男たちが飛び出してきたところだった。200年後の未来でもあんなテンプレみたいな強盗みたいなのいるんだ。

俺たちの姿を見つけたそいつは急いで走り去ろうとする。

急いで追いかけようとした俺より先にザンが動いた。

 

「やるぞお前ら!ブレイクアタック!」

 

「「「おう!」」」

 

ガロの号令でザンのメンバーが全員動く。

 

「たしかブレイクアタックってラグナロクでやってたあの・・・」

 

剣城や錦先輩が囲まれて痛めつけられた時のことを思い出す。

おいおい、いくら犯罪者相手だからって。

 

「ふん。勘違いするな。」

「え?」

「逃がすな!」

 

「く、くそ!」

 

ラグナロクの時みたいにあっと言う間に犯人たちを取り囲んだザンがまたもガロの合図で今度は犯人を取り押さえた。

それも試合の時で暴力ではなくて見事な連携で制圧していた。

 

「ふん。俺たちから逃げられるとでも思ったかよ。」

 

犯人たちを縛り上げたガロはどっちが悪人か分からないような笑みを浮かべていた。

けど今の手際は見事としか言えない。テレビで見る刑事ドラマみたいだった。

通行人の人たちを見やると子連れのお母さんが呆気に取られていたが何かこっちに声をかけたいけどかけにくそうにしていた。

まぁ怖いよね。

 

「きゃっ!?」

 

「あぁん?」

 

するとその女の人の荷物を奪って別の男が逃げ出した。ひったくりってやつだ。

ここ本当に200年後の未来か?

 

「ちっ・・・懲りないやつらだ。お前ら「待ってくれ。ここは俺が」

 

せっかく捕まえた奴らを逃がしてしまうかも知れないし俺だって一応エルドラドの職員なんだ。ちゃんと仕事しないとな。

ひったくり犯の前に回り込む。

 

「狩屋、技借りるぞ。ハンターズネット!!」

 

俺のアスタリスクロックは一般人に使うもんじゃない。俺が知る限りこういう時に一番活躍しそうな仲間の技を拝借する。

ハンターズネットでひったくり犯人を捕まえて荷物を取り返して持ち主に返す。

 

「はいこれ。怪我はないですか?」

 

「ありがとうございます!」

 

「かっこよかったぞ兄ちゃん!」

 

荷物の持ち主だけじゃなく他の人たちからも声が上がる。なんだか照れくさいな。

けど悪くない。むしろいい気分だ。けど

 

「ありがとうございます。けど、その言葉はあいつらにもかけてあげてください。」

 

歓声を上げてくれた人たちの視線はザンのはみんなに向く。

 

「彼らは元セカンドステージ・チルドレンです。見た目は怖いし過去に色々あったかも知れないけど今はこうしてエルドラドの一員としてちゃんと働いてるんで!」

 

まだまだザンと市民との距離は遠いかもしれない。だからこそ一歩ずつ詰めていかなきゃ。

せっかくこうして功績をあげるとこを見てもらったんだ。こういうところからもっと知っていってもらおう。

 

「捕まえてくれてありがとうございます。」

「凄かったぞ!」

「かっこよかった!」

「これからもよろしくな!」

 

被害にあった店の店主さんらしき人がザンに礼を言ったのを皮切りにザンの活躍を目の当たりにした人たちからザンに賞賛の声が飛ぶ。

今まで受けたことがなかったであろう賞賛にザンのメンバー全員照れくさそうだった。

 

「お前、なんでこんなことを。」

 

「さっき、やったことを気にするなとは言わないって言ったろ?けど俺はお前たちが間違ってたと言うつもりもない。だからこれから向き合って埋め合わせていけばいいだろ。一緒にさ。」

「一緒に?」

「ああ。フェーダだけに押し付けたりはしないさ。俺たちは友達なんだから。」

 

ザンだけじゃない。俺の大切な人であるメイア、一緒に戦ったフェイ、思いをぶつけあったフェーダのみんな。元セカンドステージ・チルドレンと一緒に生きていくってのは助け合って、許し合って、手を取り合っていくってことだと思う。だから市民の人たちにも分かってほしかったんだ。

 

「さ、いこうぜ。」

 

「・・・ああ。・・・・・・ありがとうよ、赤峰。」

 

 

 

パトロールを終えてエルドラド本部に戻ってきた俺は今度は研究室のようなとこに連れてこられていた。

 

「それじゃあここからはエルドラドの技術開発部の仕事についてだよ、翼。」

 

そんな俺を待っていたのはギリスを中心としたギルのみんなだった。

ギルは科学班に配属されたってメイアが言ってたな。

 

「あの~それって俺、いる?」

 

中学レベルの授業にひぃひぃ言ってる俺に理解できるとは思えないんだが。

 

「勿論さ。組織に所属する以上、一通りの業務はこなせるべきだし君に支給される装備なんかも僕たちが開発しているんだ。構造や機能を理解するのは当然の義務だろ?」

 

「・・・・・・・・はい。」

 

そんな俺の抵抗はギリスの正論に木っ端みじんにされた。

 

 

「~~~~という訳で、今は僕たちが使っていた兵器や技術をセカンドステージ・チルドレンの能力が無くても使用できるように落とし込んでいるんだ。」

「な、なるほど・・・」

 

ギリスやミスタが中心になって今進めている研究のことを説明してくれたが9割くらい何を言ってるか分からない。学校で習ったことに10段階くらい先の話をされてる感覚だ。

 

「本当に理解出来ているのかい?」

「ごめん。正直ほとんど理解できてない。」

 

もはや何が分からないかも分からない。

 

「やれやれ・・・メイアからそれとなく聞いてはいたけどここまでとはね。」

「うぐっ・・・」

「サッカーしてる時とは大違いだな。」

「本当に俺たちに勝ったのか?」

 

ギリスだけじゃなくザットやチェルからも呆れられる。

いやほら、サッカーは別じゃん。

 

「お、俺は体で覚えるタイプだから!実際に使ってみたら何とかなるって!」

 

そう。まず体で覚えてそれを自分なりに理論に落とし込むってやつ。

それでなんとかこれまでやってきた訳よ。

試しに説明に使われた銃のようなものを手に取ってみる。

 

「これは?」

 

「それはアンプルガンを改造したものさ。元はセカンドステージ・チルドレンの力をアンプルに入れて弾として射出していたんだけど。」

 

「けど?」

 

「セカンドステージ・チルドレンの力を手放したからね、オーラの込め方や威力の調整が中々上手くいってなくてまだ試作の段階なんだ。」

 

セカンドステージ・チルドレンの力を射出していたところを別のエネルギーで代用しないといけない分、自分たちの感覚とは違ってるってことか。

エネルギーを弾に・・・もしかしたら。

 

「これ、試しに使っていいか?」

 

「まぁ別に構わないけど・・・」

 

「まぁ見てなって。」

 

試し打ち用の的に銃口を向ける。

ちょっと刑事ドラマの訓練みたいでかっこいいな。

 

「ふぅ・・・ほっ!」

 

引き金を引いて放たれた弾は的を最小限の威力で打ちぬいた。

 

「どうよ?」

 

練習も無しで一発で打って見せた俺にギルのみんな驚いていた。

 

「す、凄いね。一体どうやったんだい?」

 

「俺の化身、覚えてるか?」

 

「確か破壊神デスロスだったね。・・・なるほどね。」

 

流石は頭脳派集団。すぐに理解したみたいだ。

 

「そう。俺のデスロスの必殺技は破壊弾幕っていう化身の力を弾幕として放つ技。デスロスの銃を打つ感覚で打ったら出来たんだ。」

 

アンプルガンを構えた時に妙にしっくり来たのは普段から同じような必殺技を使ってたからだ。

破壊弾幕を一発だけ打つ感じでやったら上手くいった。

 

「つまり今の弾は化身のパワーということだね。」

「化身をオーラとして射出できるよう作ったつもりではないんだけどね。」

「セカンドステージ・チルドレンの力を体外に出すのと化身を呼び出すのは本質的に同じことってことかもしれないわね。」

 

俺を置いて頭の良さそうな会話が繰り広げられている。

こういうのを研究者気質っていうのかな。

待てよ?

 

「化身の力を弾に出来たんなら必殺技のエネルギーも同じように使えたりしないかな?」

「確かに。試してみてくれないか?」

「OK!」

 

思い付きで言った案が採用されて嬉しい。

ならさっきと同じように。

 

「おお!」「これは使えるな!」

 

ハンターズネットを使う感覚で打ってみたらなんとハンターズネットのような網が射出された。

これなら相手を制圧するのにかなり便利そうだ。

 

「ふふん。言ったろ?俺は実際にやって覚えるタイプだって。」

伊達に生まれ変わってすぐにこの世界のサッカーに適応してないってわけよ。

 

「ああ。ラグナロクの時から君には驚かされてばかりだよ。」

「俺たちに勝っただけのことはあるな。」

「ただの馬鹿じゃないな。」

 

さっきは呆れられてたけどなんとか面目は保てたかな。てか最後の誰だ。

 

「ん?どうした?」

 

ギリスたちと笑いあってると一人の女の子が寄ってきた。

たしかドレーヌって言ったかな。試合ではベンチメンバーだから彼女のことはよく知らないんだけど。

 

「・・・やるわね。」

「お、おう。」

「試合でも良い動きしてたし、今度特訓に付き合ってよ。」

「特訓?」

「メイアには負けないんだから。」

それだけ言い残して輪の中に戻っていった。

 

「何だったんだ?」

「ドレーヌはメイアのことをライバル視しててね。同じDFとしてもメイアと渡り合っていた翼のことを認めてるんだろう。」

「なるほどな~ま、特訓相手担ってくれるなら喜んで引き受けるけどな」

 

女のプライドってやつか。

 

「おや?これはメイアに報告しないといけないかな?」

「いやいやいやちょっと待て!あくまで特訓相手だから!俺が好きなのはメイアだから!」

 

ギリスが悪い顔してとんでもないこと言ってきたので慌ててツッコむ。

しかし直後自分が何を口走ったか理解すると同時に生暖かい視線を感じた。

 

「お熱いことで。」

「うちのキャプテンを射止めたんだ。責任は取ってもらわないとな。」

 

「それじゃあメイアにふさわしい男になってもらうために、僕たちの仕事をしっかり覚えてもらわおうか。」

「メイアの分も働いてもらうぞ。」

 

 

「つ、疲れた・・・・・」

 

俺を揶揄いながら鬼教官となったギルの面々にみっちりと座学を叩きこまれ、アンプルガンのデータ収集のために搾りかす寸前まで化身や必殺技を使わされてすっかりグロッキー状態になったところで解放されたのだった。

 

「あいつら容赦なさすぎだろ。人をモルモットみたいに扱いやがって・・・」

 

次の指示があるまでは休憩していいことになってるからとりあえず休憩スペースに来た。

俺以外にも職員の人たちが何人か休憩をとってるから一人用の丸テーブルに座る。

 

「は~も~疲れたよ~」

 

学校の授業中、・・じゃなくて休憩時間みたいに机に突っ伏してると隣から声が聞えた。

声の方をみるとそこには見覚えのある子の姿があった。

赤いベストを来た大きなツインテールが特徴の女の子。

 

「あれ?あんたは確かメイアの彼氏の・・・」

「赤峰翼だ。君はガルのたしか・・・」

「あたしはローコだよ。」

 

ガルの一員のローコだった。

ラグナロクの試合で結構目立ってたのと特徴的な髪をしてたから覚えてた。

 

「どうしてこの時代に?」

 

「一応俺もエルドラドの職員って扱いだから研修のために今日明日と呼ばれて来たんだ。そっちは任務終わり?」

 

「そう!もう朝から働きっぱなしで疲れた~」

 

「ガルはどういう任務なんだ?」

 

「あたしたちガルは身寄りのない子たちや養護施設のサポートが仕事だよ。」

 

「なるほど。それは大変だな。」

 

なんとなく親しみやすい雰囲気のガルには確かに向いてるのかもしれない。

 

「そういう赤峰も疲れた顔してるじゃん。」

 

「ああ。今日は朝からザンと一緒に現場に出て午後からはギルと一緒にいたんだけどそこで化身や必殺技いっぱい使われてさ。もうへとへとだよ。」

 

頭も体も酷使して学校よりよっぽど疲れる。甘いものでも食べて糖分補給しないとやってられない。

元の時代から持ってきておいたお菓子を荷物から取り出す。

最後までチョコたっぷりのスティック状のお菓子やタケノコの形をしたチョコ菓子といったお気に入りたち。キノコの形をしたやつ?その話題は争いを生む。やめておけ。

そして炭酸ジュース。俺の宴が始まる。まだ仕事あるかもだけど。

 

「あ~脳が生き返っていくのを感じる。」

 

サッカー部の練習がある日なんかは食べてる時間もないけどこうしてたまに食べるのがたまらない。

 

じーーーー

「ん?」

 

糖分を噛みしめていると隣からやけに視線を感じる

ローコの方を見ると俺の机に広がるお菓子たちを食い入るように見ていた。

 

「・・・・・」

じーーーー

 

お菓子を一つ摘まんで自分の口に運ぶ。その間ローコの視線は俺の手元を追いかけていた。

この視線、そういうことだよな。

 

「・・・食べる?」

「!!うん!」

 

それはもう凄い笑顔で頷いてきた。好きなんだな、甘いもの。

どういう仕組みかトレードマークのもこもこの髪がパタパタと動いてる。

 

「それって200年前の時代のお菓子だよね!」

「そうだけど、この時代には無いのか?」

「お菓子はあるけどそれは初めてみた!」

「そっか。じゃあ・・・」

 

最後までチョコたっぷりのやつを差し出そうとしたところでローコのあまりの笑顔に少し魔が差す。

ローコの口に向かっていたスティックを急旋回してパクっと自分の口に放り込む。

 

「ああ!?ちょ、くれるんじゃないの!?」

 

今度はそれはもう残念そうに、絶望したような表情を浮かべるローコ。

 

「どうしよっかな~ラグナロクでは俺の仲間に結構酷いことしてくれたしな~」

「うう・・・」

 

あの試合はフェイの念道波が目立っていたが他のメンバーも結構ラフプレーをしていたことを引き合いにだす。

痛いところをつつかれて分かりやすくしょんぼりするローコ。

やばい。ちょっと癖になりそう。これがキュートアグレッションてやつか。

 

「霧野先輩や太陽たち、それにレイザたちプロトコルオメガのやつらも危うく怪我するところだったしな~」

「うう・・・ナサイ」

 

「ん?何か言った?」

 

「あの時は仲間に酷いことしてごめんなさい!」

 

観念したかのように少し大きな声で言うローコ。

これ以上はかわいそうだしメイアやフェイに怒られるな。

 

「別にもう気にしてないさ。ちょっとイジワルしたくなっただけだよ。けどまぁ霧野先輩たちには俺から言っとくからレイザたちには今度自分から伝えておけよ。」

「も、もう!今度メイアに会ったら言いつけてやる!」

「それは勘弁してくれ。ほら、食べていいから。」

「ほんと!?やったーー!」

 

最後までチョコたっぷりなやつを差し出すと嬉しそうに加えてサクサクと食べ進めてくる。

なんか小動物に餌あげてる気分でなごむな。

他のも好きに食べていいと言ったら大喜びしていた。

 

 

 

「やっと見つけた。ここにいたのか、ローコ。」

 

「うげっ・・・ヨッカ、ユウチ・・・」

 

二人でお菓子を食べてると他のガルのメンバーがやってきた。

 

「もう時間だよ。今日の分の仕事ももうあと少しだなんだ。早く済ませよう。」

 

「ローコ・・さてはサボってたな?」

 

「サ、サボってないし!休憩してただけだし!」

 

嘘だな。視線を逸らした。

 

「もう休憩時間はとっくに終わってるよ。」

「早く行くよ。ウチのローコが迷惑かけたね。」

「楽しかったし気にしなくていいよ。それに俺が引き留めたのもあるからそう厳しくしないでやってくれ。」

 

お菓子を摘まみながらのひと時はローコの人懐っこさもあって初対面とは思えないくらい会話も弾んだ。なんとなく信助みたいな雰囲気だ。

ユウチたちと話しているとポケットの端末が震えた。

メッセージの内容を見ると議長からの呼び出しだった。俺の休憩時間も終わりのようだ。

 

「俺も議長から呼び出されたからまた今度な。フェイによろしく伝えておいてくれ。」

「OK。」

「今度来るときはまた別のお菓子を持ってくるよ。」

「ほんと!?約束ね!」

「ああ。それじゃまたな。」

 

 

呼び出しを受けて議長の部屋にやってきた。

 

「入りたまえ。」

 

「失礼します。」

 

部屋の前まで来たところで中から声がして入室の許可がでたので入る。

部屋に入るとそこには当然トウドウ議長とサカマキさんがいた。

ただ予想外の人物がもう一人。

 

「やあ。久しぶりだね、翼。」

 

「SARU!久しぶり、どうしてここに?」

 

もう一人の人物はSARUだった。

 

「力は手放したけどフェーダのリーダーなのには変わりないからね。代表として議長たちとこうして報告会議を定期的にやってて今がちょうどそのタイミングだったんだ。」

 

「なるほど。けどそんな大事な時になんで俺が呼び出されたんですか?」

 

「今日の研修は終了だ。共に働いたザンとギルだけでなくガルともコンタクトを取ったようなのでな。ザ・ラグーンは主に復興作業に当たってもらっているが落ち着いてきた今後はまた編成を考え直す予定なので今日のところはここまでだ。」

 

どうやら今日の仕事は終わりらしい。

もうへとへとだったから正直助かるけどガルやザ・ラグーンのみんなとももっと触れ合いたかったな。

 

「それじゃあ今日はもう休ませてもらいます、って俺ってどこで寝泊りすればいいんですか?」

 

「それならこのビルに職員用の宿泊スペースが「良かったら僕たちのところに来なよ。」・・・おいSARUよ。」

 

議長の言葉を遮ってSARUが言う。

 

「フェーダのみんなは今もアジトに使っていた所で暮らしているんだ。せっかくこの時代に来たんだからこんな味気ない所でで寝るくらいなら僕たちの所に来なよ。君とはゆっくり話をしたいって子もいるだろうしね。」

 

「良いんですか、議長?」

 

俺としてはそっちの方が楽しそうだし嬉しいけど。

 

「味気ないとは言ってくれるな。まぁ良いだろう。」

 

「ありがとう議長。」

 

SARUの酷い言い様に笑って返す議長。

この二人がこんなに軽いやり取りをするなんてな。

セカンドステージ・チルドレンと人類が共に歩み始めている証拠だな。

 

「それじゃ一晩お世話になるよ。」

 

「別に今日だけじゃなくてこの時代にいるときはいつでも来てくれていいよ。」

 

「・・・SARU、変わったな。」

 

「僕が変わった?」

 

「ああ。前よりずっと良い顔してるよ。」

 

「そうかな・・・そうかもしれないね。力を手放して不自由で仕方ないけど、前よりよっぽど毎日が楽しいよ。」

 

「なら良かった。それじゃ案内してくれよ。フェーダの館に。」

 

「OK。」

 

 

その夜。

 

「それじゃあみんな、今日も一日お疲れ様!」

 

「「「お疲れ~~~!!」」」」

 

SARUの掛け声とともに夕食が始まった。

食堂にはフェーダのみんなが集まって思い思いに飲んで食べて騒いでいる。

部活の合宿やテレビで見る大人たちの飲み会みたいになってる。

 

「みんな仲良いんだな。」

「いいや。こうなったのはラグナロクが終わってからさ。あの戦いがあったから僕たちはフェーダがかけがえのない友達なんだって気付けたんだ。」

 

「そっか。また試合したいな。」

 

あのラグナロク第4戦を思い出す。

あの試合はこれまでで一番しんどかったけど一番楽しい試合だったな。

 

「次は負けないよ。」

 

「今度やるなら違うメンバーで戦うのもいいかもな。」

 

「お、いいね!君と同じチームで戦ってみるのもいいね。」

 

「時空最強イレブンの7の力は俺とトーブで二人いるしな。」

 

「・・・時々思うんだ。もし君が僕たちの時代にいてもっと早く出会っていたらどうなってたのかなって。」

 

不意にSARUがつぶやく。

もし俺がこの時代に生まれ変わってフェーダのみんなと出会ってたら、か。

 

「もしもっと早く君に出会っていたら何か変わってたのかなって思うんだ。」

 

「俺がいたところで何か変わるか?」

 

「分からない。けど君と出会ってからメイアは変わったしフェーダのみんなも君のことを好ましく思ってるんだ。僕たちの周りには誰も味方がいなかった。けどそんな僕たちを君は同じ人間として見てくれていた。」

 

SARUの言葉に俺は実感を抱けないでいる。俺にとっては当たり前のことだから、当たり前じゃないことが当たり前なこの世界だから。

 

「どうだろうな。もし俺がこの時代にいて天馬と出会う前にフェーダのみんなと出会ってたら、か。想像つかないな。止めてたかもしれないし、もしかしたら一緒に戦ってたりしたかもな。」

 

「あはは!もし君が一緒に戦ってくれてたら今頃僕たちが世界を支配してたかもね。」

 

「そんな世界もあったのかもな。けどどんな出会い方をしても俺たちはこうして分かり合ってたんじゃないかな。」

 

「・・・そうかもしれないね。」

 

 

「もしそうなったらメイアじゃなくて私がもらっちゃってたかもしれないわね!」

 

「ニ、ニケ!?」

 

喧噪の中、もしもに思いを馳せていたら背後からニケがやってきた。

 

「私もあなたのこと、結構気に入ってるのよ?」

 

「あ、あはは。あんまり大きい声で言わないでくれ。周りの目が痛い。」

 

ニケが来てから一部男子たちの目が変わった気がする。

他の女の子たちより少し大人っぽいし多分モテるんだろうな。

 

「試合前のあれも、興味があったのは本当だもの。」

 

「そう言われるのは嬉しいけど、メイアに怒られるから勘弁してくれ。」

 

俺たちが違う出会い方をしてたらどうなっていたか分からない。

けれどこうしてフェーダのみんなと分かり合いたいし、どんな運命でもメイアと結ばれたいと思う。

 

「あら、フられちゃったわね。」

 

「悪いな。けどこれからも仲良くしてくれ。」

 

「ええ。こちらこそ。さ、冷める前に食べましょう!」

 

メイアとはかなり仲が良いみたいだし困ったことがあったらギリスと一緒に頼ろう。

今は目の前の夕食に向き合おう。

 

「すごいな、これ全部自分たちで作ったんだろ?」

 

「まぁね。大人に頼らずに一緒に生きてきたからね。家事といわれるものは分担して生活してたんだよ。」

 

たしかに大人に頼らず子どもだけで生きてきたんだもんな。

俺と天馬は食事は秋ねえに頼りっきりだからな。

 

「尊敬するよ、そういうところ。」

 

「今日はあなたが来るって聞いたから気合入れて作ったわよ。」

 

どうやらニケも料理に携わったらしい。

 

「ありがとうニケ。それじゃいただきます。・・・うん、おいしい!」

 

「そう、それは良かったわ。」

 

食卓に並んだ料理は本当に子どもが作ったとは思えないレベルだった。調理実習で自分で作ったのとは大違いだ。あとこのジュースも体がポカポカしておいしい。

 

 

「今、メイアの手料理食べてみたいって考えなかったかい?」

 

「べ、別に思ってなんか・・・いや、思ったかな。」

 

別に本人がいないんだ恥ずかしがることもないか。

 

「メイアにも思ったけど、本当にセカンドステージ・チルドレンの力は手放したんだよな?心読んだりしてないよな?」

 

「あはは!翼が分かりやすいだけだよ。」

 

俺ってそんなに分かりやすいかな?

結構秘密は隠し通せてたと思ったんだけど。

 

「別に悪いことじゃないんじゃない?」

「そうそう。からかい甲斐があって面白いわよ。」

 

「それが困るんだって・・・」

 

「けどメイアは気付いてなかったみたいよ?あなたがメイアのこと好きだって。」

 

「それはまぁ、俺自身ラグナロクで戦うまで自覚無かったからな。」

 

「全く。君たち二人は似たもの同士だね。」

 

俺とメイアってそんなに似てるところあるのかな?

気は合うけどいろいろ正反対な気はするけど。

 

「メイアがこの時代に帰ってくるたびに君の話をしてたけど傍から見たら意識してるの丸わかりだったのにメイア自身はそんなんじゃないって言ってたよ。」

 

「そ、そっか///」

 

「顔、赤いわよ。」

 

「うぐっ・・・」

 

なんだか顔が熱い。

SARUとニケに良いようにからかわれてるしギリスたちギルがこっちを見てるのも感じる。

 

「飲み物いるかい?」

「ああ。ありがとう。」

 

グラスが空いたのを見てSARUがすぐに補充してくれる。

このジュース、不思議な味するけどおいしいな。ちょっとブドウっぽいか。

 

「けど、メイアの前でももう少し素直になっても良いんじゃないかしら?」

 

「素直に?」

 

「ええ。ワクチンの経過観察中もメイアったら翼が好きって言ってくれない~ってやきもきしてたわよ。」

 

「うぐっ・・・だって好きなのは変わらないし。」

 

あのメイアがそんな風に。

イメージわかないけど、確かに気持ちを伝えてくれてたのはいつもメイアからだったな。

 

「女の子は好きって気持ちはちゃんと伝えてほしいものよ。」

 

「そんなもんなのか?」

 

「そういうものよ。」

 

女心ってやつなのだろうか。

いや大好きなのはそうなんだけどなんというか。

 

「俺だって本当はもっと気持ち伝えたり一緒にいろんなことしたいけどさ。」

 

「ならその気持ちに従ってみるのも良いんじゃない?」

 

「その、初めて出来た彼女だから、気恥ずかしくって・・・」

 

「そこを一歩踏み出すの!」

「そうそう!」

 

「そうかな~、そうかも~」

 

なんだか頭がぼーっとする。

SARUとニケが何か目配せしてにやりと笑ってる気がするけど多分気のせいだろう。

ああ。それにしてもごはんはおいしいし飲み物も進むな。

メイアとももっと一緒にごはん食べたり出かけたりしたいな。

眠たい。ダメだ。明日もあるんだ。

 

「けどメイアの声、聴きたいな~」

 

周囲の喧噪も段々と遠のいていくきがする。頭が働かない。

ああ、声が聴きたいな。あ、手元に連絡用の端末がある。

ん~?SARUとニケはなんでそんなに笑ってるんだ?

 

 

まあ、いいか~。

 




いかがだったでしょうか?
翼とセカンドステージ・チルドレンたちとの触れ合いを書きたいなと思ってたのでこういう展開になりました。
ザンは特に被害を出してただろうし悪人面が多いしで共存するにあたって一番苦労しそう。
ギルはキャプテンの彼氏なのでね。
ガルはローコは甘いものが好きという設定があったのでどうしてもやりたかったです。かわいい。フェイを出せなかったのが少し残念だけど今回は他の面々との絡みをクローズアップしたかったというところで。
ザ・ラグーンはやっぱりこの二人ってことで。

次回はその頃のメイアサイドの話を予定しています。
ブドウっぽい味のする体がポカポカしてぼーっとしてくる飲み物、何やろなぁ。

感想お待ちしています。励みになります。
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