短めですが本編をどうぞ。
心地よいまどろみの中で最初に感じたのは温もりだった。いつもの朝、自分の布団とは違う心地よさを感じる。
次にやってきたのは香り。ラベンダーのような香りに包まれている。この香りを俺は知っている気がする。
そしてようやく布団の中に自分以外の存在がいることに気付く。
意識が覚醒し目を開く。視界に飛び込んできたのはカーテンの隙間から刺す朝日に照らされたいつもの自室。しかしその中にある唯一の非日常。
目覚める前に感じていた温もりの正体は愛しい女の子。
メイアが隣で眠っていた。
「っ!?」
思わず声をあげそうになるがメイアを起こしてはいけないと思いなんとか堪える。
(な、何でメイアが隣で寝てるんだ!?)
目覚めた脳が現状を把握しようと動き始める。
(昨日一昨日と俺は未来で研修を受けてた。それは間違いない。)
真っ先に思い出したのは二日間に渡って行われたエルドラドの研修。
(そうだ。それも無事終わって・・・)
この二日間の出来事が順を追って脳内を駆け巡っていく。そしてようやくこの状況にいたるまでを思い出した。
「つ、疲れた・・・」
未来での研修二日目を終え俺は元の時代の木枯らし荘に帰ってきていた。
二日目はザ・ラグーンと一緒に復興作業にあたった後にプロトコル・オメガの面々とサッカーの訓練だった。当然雷門サッカー部並かそれ以上にスパルタだったのでもうへとへとだ。
夕食もエルドラドで済ませて来たからもう完全に夜になっている。
メイアも天馬ももう寝てしまってるかな。
「ただいま~」
「おかえりなさい。」
静かに入ると秋ねえが迎えてくれる。
共用スペースの様子を見るに夕食の後片付けなんかも終わってるようだ。
「秋ねえ一人?」
「うん、二人は自分の部屋。その様子じゃ大変だったみたいね。もう遅いし早くお風呂済ませてきなさい。洗濯物は置いておいて。」
「は~い!」
正直今すぐにでも寝てしまいたくらいに疲れてるから秋ねえに言われるがまま風呂に直行する。
「んあ~ぎもじ~~~」
体中の疲れが抜け落ちていくのを感じる。
フェーダのアジトでも風呂は借りたけどやっぱり慣れ親しんだ木枯らし荘のお風呂は心も体も完全にリラックスできる。
この二日、ルートエージェントとしての初仕事、フェーダのみんなとも友達になったとはいえ初めて一緒に過ごしたメンバーは殆どなのもあって無意識に張りつめていた緊張の糸がほどけていく。
一人リラックスできる時間を得たことで二日間のことを思い返す。
座学で頭がパンクしそうになったりガンマたちに先輩風を吹かされたこと、ザンと一緒にパトロールに回ったりギルの兵器開発を手伝ったりローコを餌付けしたり。そしてフェーダのみんなと一晩を共にした。あの旅が始まった時には想像もつかなかったけどこの結果を掴みとれて良かったと思う。
これからも大変だろうけどやっていける気がする。いや、やっていかなきゃな。メイアと一緒に生きていくために。
「それにしても・・・」
メイアのことが脳裏によぎって昨日の夜のことを思い出す。
「あのジュース、ぜったいアレだよな・・。うぅ、俺はどうしてあんな///」
どうやら俺はちゃんと記憶が残るタイプだったらしい。
SARUとニケに勧められるままに飲んだ結果、タガが外れてあんなことを。
中世フランスでメイアが酔っぱらって電話をかけてきたけど丸っきり同じことを今度は俺がやっちまった。完全にブレーキというものが壊れてた。考えたことが全部そのまま口から出てた。
「いやでも///・・・・あ~やめだやめだ!もう今日はとっとと寝よう!メイアも無かったことにしてくれるかもしれないし!」
あの時はメイアが怖くて俺の口からは何も言えなかった。
明日起きたらおはようの挨拶してそのまま学校だ!
風呂をでてそのまま歯磨きも済ませた。
「秋ねえ~お風呂上がったよ~。もう今日は疲れたから寝るよ。おやすみ~」
「は~い、おやすみなさい。寝坊しないようにね~」
共用スペースに置いたままだった荷物を回収し自室に戻る。
1日半ぶりくらいの自室だ。もう今日は早く寝よう。
そう思い扉を開けて部屋に入る。
「おかえりなさい、翼。」
「ただいま~、、、、って何でいるんだ!?」
聞こえるはずのない出迎えの声に思わずノリツッコミを入れてしまった。
部屋に入るとそこにはあらまびっくり、俺のベットに腰かけて迎えてくれるメイアがいた。
「この二日間頑張ってきたんだもの。労うのが彼女の務めでしょ?」
「そんな、俺が選んだ道なんだから。」
「その道を一緒に生きていくんだもの。だからほら。」
優しい笑顔で隣をポンポンと叩く。座れって事らしい。いやまぁ俺の部屋なんだけど。
誘われるままにメイアの隣に腰掛けると手を引かれ仰向けに倒される。
後頭部に感じる柔らかい感触と目の前に広がる光景。これはアーサー王の世界でもしてもらってた膝枕というやつでは?
「ちょ、メイア///」
「ふふ♪頑張ってくれたのね、お疲れ様。」
「あ、うん。」
優しく頭を撫でられ労いの言葉をかけられる。
辛かったとかではないが体は正直らしい。メイアの心遣いが伝わってきて頷いてしまう。。
この笑顔のためなら次も頑張れる。そう確信できる。
「フェーダのみんなとも仲良くしてくれたみたいね。」
「うん。ギルのみんなの研究の実験体になったりザンとも一緒に仕事したりもしたよ。」
「そう。ギルのみんなは元気にしてた?」
「ああ。メイアが抜けた分埋め合わせはしてもらうぞってこってり絞られたよ。」
「ふふ♪ギリスたちならそう言うでしょうね。フェイとは会ったの?」
「いいや、今回は会えなかったよ。けどガルだったら休憩中にローコと会ったよ。お菓子あげたら喜んでて何かかわい、っていひゃいいひゃい!」
無言で頬をつねられた。小動物的な意味で言ったんだけど。
「もう!彼女に膝枕してもらってる時に他の女の子を可愛いだなんて!」
「そういうつもりじゃ・・・ごめんなさい。」
「まぁいいわ。SARUやニケとも仲良くやってたみたいね。」
「ああ。アジトにいたのもSARUに誘われたからなんだ。ニケはラグナロクの時にちょっと話したしな。」
あ、やばいか?またメイアが嫉妬して怒られたり。
思わず身構えるが帰ってきたのはやけに上機嫌な声だった。
「ふふ♪話も弾んでたみたいで良かったわ。」
どうやら気にしてないみたいだ。それにしてもなんか声色が妙だな。
そう思いメイアを見上げると満面の、そして少し嗜虐的な笑みを浮かべていた。
「それはもう気分が良くなって私に電話してくるくらい楽しかったみたいね?」
「あ、あのメイアさん?」
な、なんだか様子がおかしいぞ。
「急に電話かけてくるからびっくりしたけど嬉しかったわよ。」
「そ、それは良かった。」
まずい!触れないようにしてたのに。
「ええ。だって・・・・あんなにも熱烈に愛をささやいてくれたんだもの!」
「うあっ///ちょ、ちょっと待って!?」
「恥ずかしがる必要無いじゃない♪私、本当に嬉しかったのよ?♪普段はあんまり言ってくれないし♪愛してるって」
顔から火が出そうだ。なんとか無かったことにしたかったのを本人に目の前でいじられるなんて。
止めようと起き上がろうとするも重心を抑え込まれ起き上がることが出来ない。
終わった。これがまな板のなんたらというやつか。
「あ~あ、普段からも言ってくれたらいいのに。それにあれもお酒の勢いに任せてだなんて。もっとロマンチックなシチュエーションで言って欲しかったな~。」
それはもう満面の笑みで俺の頬をつついてくるメイア。
俺は真っ赤になった顔を手で隠すしかできなかった。
「もう許して///」
「フランスの時のお返しよ♪ま、今日はこのくらいにしておいてあげるわ♪」
抑え込まれていたところから解放され起き上がる。
またどっと疲れた気がする。
「けどね。」
ほっと一息ついたところで耳元でメイアが囁いてくる。
「嬉しかったのは本当よ?今度また聞かせて♪」
「っ///」
「それじゃ、疲れたでしょうしもう寝ましょ!明日からまた学校だし。寝坊しちゃダメよ?」
ベットから立ち上がり部屋から出ていこうとするメイア。
膝枕で横になっていたのもあって確かに睡魔が襲い掛かってきている。
もう寝よう。けれど部屋から出ようとする彼女の背中を見た時、衝動が抑えきれなかった。
思わず彼女の手を取る。
「どうしたの翼?きゃっ!」
少し力を入れて引き寄せ抱きとめる。
「あのさ、もし良かったらさ、今日は一緒に寝ないか?」
「へっ!?///」
「というかその、頑張ったからさ、一緒に寝てほしいっていうか///」
たった一日半離れていただけ。ワクチンの経過観察中はもっと長い期間会えていなかったというのに我慢出来なかった。一度タガが外れて今もその時のことを意識させられてしまったからか。
メイアと離れたくなかった。これは俺のワガママ。けど今日は隣にいてほしかった。これから先も隣で生きていけると感じたかったのかもしれない。
「わ、分かったわ///私もその、その方が嬉しいし///」
どうやらメイアも同じ気持ちだったらしい。
「い、言っておくけど変なことはしないから!そこは約束するから!」
「分かってるわよ!」
一応言っておかないと。
「それじゃあ電気消すぞ?」
「うん、大丈夫よ。」
それからメイアはこっそり自分の部屋から枕を回収してきて今、ベッドの上二人で一つの布団に包まれている。メイアの温もりが伝わってきて、香りに包まれて心が安らいでいく。
「本当にお疲れさま、翼。これからも一緒にがんばりましょう。」
「うん。それじゃあ、おやすみ。」
「ええ。おやすみ。」
「さっきのことだけど、今度じゃなくて今、俺の言葉で意志で言わせてくれ。」
暗い部屋。目の前の女の子にだけ届くように、正真正銘自分の言葉で囁く。
「メイア、大好きだ。愛してる。メイアのためならこれからもいくらでも頑張るよ。」
「翼ったら、いきなりなんだから///私も、愛してるわ///」
その言葉を聞き彼女を少し抱き寄せたのを最後に俺の意識はまどろみの中に消えていった。
(で、今に至ると///)
昨晩のことを完全に思い出してまた顔から火が出そうになる。
何やってんだ昨日の俺。甘えたりきざなセリフ吐いたり。
布団の中で悶えたくなるがメイアがまだ寝てることを思い出し我慢する。
(ダメだ。完全に目が覚めてしまった。)
このまま二度寝なんて出来るはずもない。横目で時計をちらりと見ればまだ時間には余裕がある。
もう少しこうしていても遅刻はしないだろう。
かといってメイアを起こすのも悪いしあまり身動きは取れない。
出来る事といえば隣で眠るメイアを見つめることくらいだ。
(こうして眠ってるのを見るのは初めてだな。心地よさそうだな。)
アーサー王の世界で俺が気を失ってたところをメイアには見られてたっけ。
こっちに来てからの朝もいつも俺が起きるころには学校の準備を済ませてるからこうして寝てるメイアを見るのは初めてだ。
(ほんとに綺麗な寝顔だな。こんな綺麗で可愛い子が俺の彼女だなんてたまに信じられなくなるな。)
いつも俺に向けてくれる可愛い笑顔、サッカーをしている時の凛々しい顔、たまに見せるふくれっ面。
色々な表情を見てきたけどまた新しいメイアを見れた。
アーサー王の世界でも思ったけどこうしていると本当に物語のお姫様みたいだ。美しいっていうのはこういうのを言うんだろうな。
もし白雪姫の物語を書いた人がメイアのことを知ったらモデルになってだろうな。。
酒も入ってないのにきざな言い回しが思い浮かぶ。つくづく惚れてしまってるんだな。
(白雪姫は王子のキスで目を覚ます、か。)
だれもが知るおとぎ話の結末。
王子様なんて柄ではないのは分かっているが、目の前で眠るメイアがもし白雪姫なら俺のキスで目覚めてくれるのだろうかなんて考えてしまう。
触れたくなって気が付いたら手を伸ばしていた。
「ん・・んん・・・」
気配を感じたのかメイアが身じろぎしたのちゆっくりと瞼が開く。
寝起きで焦点が合わない目が徐々に俺の姿を捉えていくのが分かる。
「つばさ?・・・あ、そっか。昨日は一緒に・・・」
「ごめん。起こしちゃったか?」
どうやらメイアは昨日のことはちゃんと覚えてるようだ。
学校の日の朝の数分という貴重な時間を彼女から奪ってしまったか。
「だいじょうぶよ。おはよう、翼。」
「おはよう、メイア。」
普段のきっちりしているメイアだが流石に寝起きということもあり少しフワフワしている。
「ふふ♪なんだか嬉しいな~」
「何がだ?」
「朝起きたら、目の前に好きな人がいておはようって言ってくれるんだもん。幸せだなぁって。」
「俺もだよ。」
確かに俺も最初起きた時は驚いて混乱してたが状況を受け入れられた時には胸の内に喜びがあった。
「よく眠れた?」
「ええ。この時代に来てから、いいえ。ここ数年で一番よく眠れたわ。隣に翼がいてくれたからね。きっと心の底から安心して眠れたんだと思う。」
「それはよかった。綺麗な寝顔だったぞ。」
「も、もう///恥ずかしいじゃない///」
「アーサー王の世界で俺も見られたんだしお互い様ってことで!」
昨日の熱に浮かされた会話とは違う。お互いにまだ残るまどろみに身を委ねるようなやり取り。
「ずっとこうしてたいな。」
「ダメよ。お母さんや秋さんに怒られるわよ。それに私は学校も楽しみなんだから。」
学校が楽しみ。そう言い切ってくれることが俺としては嬉しい。
メイアがこの生活を楽しんでくれてることを実感出来るからだ。
「そうだな。それじゃそろそろ起きないとな。準備もあるだろうし、天馬も起こさないと。」
女の子は準備に時間がかかると言うしな。
布団を出るため身を起そうとしたところで手を握られる。
「メイア?」
「起きないといけないのにどうやら私、このままじゃ目覚められないみたい。」
そういって仰向けになってまた目を閉じるメイア。
一体どういうことだ?もう起きてるじゃないか。
「白雪姫」
「な!?・・・もしかして声に出てた?」
「さあ?どうかしら♪」
そう言いながらも目を開けようとはしないメイア。それが答えという答えだろう。
「やれやれ、とんだワガママなお姫様だな。」
昨日までの俺なら絶対に出来なかっただろう。
けどもう少し気持ちに従って素直になる。一歩を踏み出そう。
柄じゃないが目の前のお姫様にとっての王子様は誰にも譲れないな。
二人だけの部屋、外にいる誰にも気づかれないようにそっと。
「目は覚めた?」
「ええ。おはよう、今日も一日よろしくね♪」
いかがだったでしょうか?
あれだけじゃ足りねえ!と思ってこうなりました。
イナズマイレブンクロスでメイアのコスプレ姿みたいなの出てほしい。
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