それに伴って視点が切り替わることが多くなるので試験的に切り替わり時に区切りを入れてみました。
「あの子に何が起きているんですか?」
冷たい鉄の壁に囲われた部屋で少女は両親と施設の人間の会話を聞いた。
「あの子、何か不思議な力で物を動かして、とうとう主人に怪我を・・・」
「ご安心ください。近年人、の新たな力に目覚める子どもたちが増えてきています。我々はその子どもたちをセブンスと呼んでいます。あなた方の娘さんもその一人です。」
自分の娘のことを怯えた声で話す母親。自分のことをまるで違う生物のように呼称する人間たち。
「そんな・・・」
「そのような子どもたちの対処を我々は心得ています。力をコントロール出来る状態に教育したのち、ご家族の元にお返しします。」
本来厚い鉄の壁に覆われた部屋にいる彼女には両親たちとの会話は聞こえるはずがない。
しかし不幸だったのは彼女の能力は施設の人間たちの想定を遥かに超えており、会話も筒抜けになっていたことだろうか。
「フラン、大丈夫か?」
「少し魘されていたみたいだったけど。」
「夢を見ていたわ・・・」
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ホーリーロードスタジアムから随分離れたどこか幻想的な森。
そこにTMキャラバンとシャトルが着陸した。
「ここは一体どこだ?」
「綺麗なところね。」
翼たちがTMキャラバンから降りるともう一機の方からも9人の少年少女が降りてきた。
両者の間に少しの沈黙が流れる。
沈黙を破ったのはリーダーと思われる少年だった。
「さっきはありがとう。」
その声はスタジアムでLBX越しに聞いた声と同じだった。
「教えてくれないか?」
「一体何が起こってるの?」
神童と天馬が尋ねる。
「敵は世界を消そうとしてるんだ。」
「「「ええっ!!??」」
少年から帰ってきた言葉は信じられないものだった。
新生イナズマジャパンの面々が驚きの声をあげる。
「それって一体どういうこと!」
「まぁ待て天馬。それについてはこれから説明するからまずはお互いに自己紹介しようぜ。」
「翼・・・」
「たしかにそうだね。俺は山野バン。」
「大空ヒロです。」
「花咲ラン!」
「俺は松風天馬。そしてこっちのみんなが「新生イナズマジャパン、でしょ?」・・・知ってるの?」
「ああ。何人か知らない人もいるけどね。」
山野バンと名乗った少年がメイアとフェイの方に視線を向ける。
「俺は赤峰翼。こっちがメイアとフェイ。」
「よろしく。」
翼に紹介されたメイアとフェイが軽く手を振る
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俺たちは一通り自己紹介を済ませたところで本題に入る。
「それで翼、一体今世界で何が起きているか知ってるの?」
「ああ。そっちのみんなとも一緒に確認していこう。ってことでメイア説明をお願い!」
「もう!丸投げじゃない!」
いやこういうのは馬鹿な俺よりメイアに任せたほうがいいと思って。
「はぁ、分かったわ。・・・今、世界は大混乱に陥ってるの。世界中がパッチワークのようにバラバラにされて歪に組み替えられているの。それも時空を超えて。」
「時空を超えて?それって一体どういうこと?」
「言葉通りの意味よ。例えばこの時代と私たち200年後の時代の場所が繋がったりもしてるわ。それだけじゃない。時間だけじゃなく世界すらも超えて色んな場所が繋がってる。」
「世界?」
「私たちの世界と彼らの世界は本来決して交わることのない世界なの。細かい部分の違いで分岐するパラレルワールドとも違う、まったく違う世界。彼らが操っていたロボットが私たちの世界に存在しないようにきっと彼らの世界のサッカーは私たちの世界のものとはまったく違う。そんな違う世界同士が時間も空間も超えて繋がっているの。」
時空を超える旅をしてきた天馬たちも流石に言葉を失っていた。
白竜と雪村さんは何が何だかといった感じだ。
「つまり敵は世界を組み替えるほどの力を持っているということ。この混乱を止めるために私や翼はエルドラドの指示で動いていたの。」
「力の反応から俺たちの時代のあの試合が重要なインタラプトになると思ったからこの時代の人間である俺が選手として出場することで何とかしたかったんだけど、まさかあそこまでとはな。」
サッカーの実力、LBXの物量、そしてあの光。
向こうの力はエルドラドの想定を遥かに超えていた。
「あなたたちも恐らく敵の攻撃を受けてこの世界まで来たのよね?」
「ああ。俺たちの世界もLBXの大会の最中に敵が襲ってきて、色んな場所を消し去って違う世界をはめ込んでる。」
「とんでもない奴らなんです・・・」
バンとヒロはきっと自分たちの世界が消されたときのことを思い出してるんだろう。
「正直に言って敵の力は私たち元セカンドステージ・チルドレン以上よ。」
「マジかよ・・・」
セカンドステージ・チルドレンの力をその目で見たメンバーはあの時のことを思い出して戦慄している。
瓦礫の山をスタジアムに作り変えたりそのスタジアムをワームホールの中に切り離したり。セカンドステージ・チルドレンの力も凄かったけど今回の敵の力はそれ以上だ。
「敵の正体は?」
「まだ分からない。エルドラドも調査中よ。」
「円堂監督や消された人たちはどうなってるの?」
「恐らく時空のどこかに飛ばされているか、敵の手中でしょうね。」
「助けられるの?」
「フェーダのみんなとエルドラドが敵の力の解析を進めているわ。」
「こういう時は敵を倒せばなんとかなるさ。」
難しいことは未来にいる仲間たちが全力であたってくれてる。
俺たちに出来ることは一つ。
「天馬。」
「うん!みんな!戦いましょう!消されたみんなを救うために!」
こんなに絶望的な状況なのに希望が見えた途端もう前を向いて一歩踏み出し始めている。
隣にいるメイアも見るとメイアも笑っていた。段々メイアも天馬に慣れてきてるな。
「俺たちも戦うつもりだ!」
「ああ。お互い力を合わせて戦おう!」
ここに二つの世界の共同戦線が成立した。
そこからは早かった。用意されていたテントなどで寝床の確保などは錦先輩を中心にあっと言う間に済まされた。
異世界での大所帯キャンプの始まりだ。
「そのLBXってヒロくんたちの世界で流行ってるの?」
「はい!凄く流行ってます!やってみますか?」
「「「はい!はい!」」」
みんな興味津々らしい。狩屋も興味ないふりして横目でめちゃくちゃ見ていた。
俺?俺はほら、任務中だから。そういうとこちゃんとしてるから。
「翼、手が止まってるわよ。」
「うぐっ・・・はい。」
嘘です。正直やってみたい。けどそれは全てが終わってからだ。
メイアとフェイはバンのお父さんたちと一緒に何やら難しそうなことを話したりLBXの構造を聞いたりしていた。
交流は続いた。
天馬や信助はLBXに触れ、逆に神童先輩や霧野先輩がランやカズにサッカーを教えたりしていたし
剣城、白竜とジンはお互い口数も多くはないが不思議と一緒にいるところを見かけた。
夜になれば食事を共にし焚火を囲んでお互いの世界のことについて語りあったり。
本来交わることのない二つの世界がこうして交われたのにはきっと何か意味がある気がした。
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夜が少し深まったころ、天馬とヒロとバンはシャトルの上で星空を見上げていた。
「うわ~手が届きそうですよ!」
「なんだか星が近くに感じますね。」
どこの世界から飛ばされてきたかも分からないこの場所だが夜空はそれぞれの世界のものよりもとても綺麗に感じる。果てしない星空に魅了されながらも天馬は少し表情を曇らせる。
「どうしてるかな?円堂監督たちや消された人たち・・・」
自分たちを守るために消されたレジェンドジャパンの面々や一緒に消された人たち思いを馳せる。
自分にもっと力があれば変わっていたのだろうかと思ってしまう。
ふと頭の後ろから足音が聞こえる。
「必ずなんとかしてみせる。そのために俺たちやエルドラドも全力を尽くしてる。」
「翼!もういいの?」
翼は先程までメイアとフェイ、山野博士たちといっしょにこの現象や敵の力の解析をしていた。
正直繰り広げられる高度な話にはついていけてなかったがルートエージェントとしてエルドラドと連携を取るためにも参加していた。
「ああ、ちょうど一区切りついたとこでな。それと・・・」
「それと?」
「いや、メイアがランさんやジェシカさんにテントに引きずり込まれてな。今日は切り上げようってなったんだ。」
一区切りついたタイミングでやってきたランとジェシカとなぜか水鳥に拉致されてテントに連れていかれた。いきなりのことに困惑したままあれよあれよと連れていかれるメイアを見て翼は少し笑ってしまった。
「それで寝る前に星を見ようと思ってきたら3人がいてな。」
「あ、あはは。うちの二人が迷惑をかけたみたいだね。」
「気にしないでください。うちの水鳥先輩もいましたから。」
「そういうことだから前を向こうぜ天馬。戦ってるのは俺たちだけじゃない。」
「そうさ諦めない心こそが大切だ。俺たちもその思い出戦ってきたんだ。」
「顔あげていきましょう、天馬さん!」
「翼、バンさん、ヒロ君。」
3人に元気づけられた天馬が体を起こす。その表情は先程までと違って明るかった
「何か不思議ですね。僕たちはこうして出会う前から同じ星を追いかけていたのかも知れませんね。」
「ああ。俺たちは離れていても、世界が違っても同じ星の下にいる。生きる時代や世界が違っても絆を育むことが出来る。それは俺たちが一番分かってることだろ?」
「そうだね、翼。」
「だからこれから先どんな強い敵が現れても、何が起きても絶対に諦めるなよ天馬。俺はお前なら、いや俺たちならこの事態もなんとかなるって信じてる。」
「うん!なんとかなるさ!」
翌朝
「おはよう翼!」
「1・2・3・4~っとおはようみんな。」
翼が朝のラジオ体操をしていると起床した女子陣が葵を先頭にテントから出てきた。
「おはよう、メイア。今日は俺のほうが早起きだったな!」
その中には当然メイアの姿もあったのだが
「おはよう、翼・・・」
「ど、どうしたんだ?メイア。」
気持ちのいい朝だというのにメイアの表情にはなぜか覇気が感じられなかった。
一方で他の女子陣はやけに肌がつやつやして見える。
あと女子陣が翼に向ける視線が生暖かい。
「ほら、元気だしなよ。」
「そうだぞメイア!」
ジェシカと水鳥先輩がメイアと肩を組むようにして発破をかける。
「翼・・・神はいないわ・・・」
「本当に昨日あれから何があったんだ!?」
昨晩テントにて行われたパジャマパーティーの詳細は本人たちのみぞ知ることである。
言えることがあるとすれば女の子というものはみな恋バナというものが好きである。
そして女子しかいない空間では一部開放的になる時があるということだけだ。
「私だってこれから・・・・」
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付近の探索や食料、薪の調達などを分担してこなしていると時間は昼下がりになっていた。
「落ち着いてボールをよく見て。」
「足の内側を使って蹴る!」
「こうですか?」
「そうそう!上手くなったよ二人とも!」
休憩がてら天馬と一緒にヒロ君とバンさんにサッカーを教えている。
最初はリフティングも一苦労だったけど結構上手くなってきてる。
バンさん曰くヒロは運動神経はいいわけではないが反射神経はいいらしい。
サッカーやるらなキーパーか?なんて考えてると
「きゃ~~~~~~~!!」
森の奥から女の子の悲鳴が聞こえてきた。
「今のは!?」
「あっちからだ!いってみよう!」
悲鳴のした方角へ走り続け森を抜け切り立った谷に入ったところで見覚えのあるやつがいた。
「あれはスタジアムにいたLBX!」
スタジアムを襲ってきた赤と青のLBXが女の子を襲っていた。
にじり寄る2機のLBXに女の子は恐怖の顔を浮かべていた。
「ヒロ!」「はい!」
ヒロ君とバンさんのイカロス・フォースとイカロス・ゼロが女の子と2機の間に割って入る。
すると2機のLBXはどこかへ飛び去って行った。
「あれ?逃げていきますよ。」
「ああ。」
「やけにあっさりだな。」
スタジアムでの戦いを見る限りスペック的には二人のLBXのほうが上だろう。
それにしてもあっさり引き下がりな気もする。
「そうだ、あの子は?」
ひとまず去っていった敵のことは置いて襲われていた女の子の方を向くと天馬が声をかけていた。
「大丈夫?」
「・・・ええ。」
綺麗な水色の髪の女の子だった。
胸元の花のブローチが特徴のどこか未来的な雰囲気の全体的に花を思わせる服装。
鮮やかな髪とどこか儚げな雰囲気も相まって彼女自身が花のような印象を受ける。
メイアが美しく強く咲く花だとしたら彼女はこの谷のような荒れた地で儚くも必死に咲く花のような女の子だと思った。
「ここは危ない。この先に俺たちのキャンプがあるんだ。一緒に来ない?」
「・・・お願いします。」
天馬に差し伸べられ少し呆然とした後、手を取り立ち上がる女の子。
そんな彼女に天馬は柔らかに笑いかけた。
そうして俺たちは女の子を連れて元の場所に戻った。
俺たちが戻ったころにはちょうど昼食のタイミングだった。
ひとまず落ち着いて彼女の話を聞くことになった。
「さっきは危なかったね。俺、松風天馬!」
「俺は赤峰翼だ。君の名前は?」
「・・・フラン。」
「フランか。良い名前だね!・・・あれ?君どこかで・・・」
「き、気のせいだと思います・・・」
フランが気まずそうに顔を背けたところでメイアと葵がカレーを持ってきてくれた。
「これ、良かったらどうぞ!」
「口にあえばいいのだけど。」
「いいの?」
「もちろん!」
「・・・ありがとう。それじゃ。」
差し出されたカレーを遠慮がちに受け取るフラン。
伏し目がちにカレーを口に運ぼうとした時に少し手が止まった気がしたがそのまま口に含む。
「!おいしい。」
「でしょ!良かった!」
天馬、お前は何もしてないだろ。いや俺もなんだけど。
少し緊張がほぐれたのかそのままフランがカレーを食べ進めるのを確認して俺たちも一緒に食べることにした。
みんな食べ終えたところで改めてフランの話を聞くことになった。
「フランはいつからここに?」
「目が覚めたらあの森の中にいたの。それからあたりを見て回ってたら・・・」
「あいつらに襲われたってことか。」
「ええ。」
「フランはどこから飛ばされてきたの?いた場所はどんな世界なの?」
「私の世界は・・・・」
天馬の質問に答えようとしたところでフランが口をつぐむ。
「フラン?」
固まってしまったフランの顔を天馬が覗き込み呼びかけたところで思考の海から呼び起されたようだ。
「・・・・ごめんなさい。まだ混乱していてよく思い出せないの。」
「そっか・・・。そうだ!フラン、サッカーやってみない?」
「え?」
暗くなった空気を払拭するみたいに天馬が言う。
いきなりの提案にフランもきょとんとしてる。
天馬らしいというかなんというか。
「翼、ちょっといいかしら?」
「メイア?・・・ああ。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翼とメイアは何か用があるらしいから信助たちを誘ってフランにサッカーを教えることになった。
フランとは不思議と初めて会った気がしなかった。
それにフランは放っておくと静かに枯れてしまいそうな花みたいな女の子でどうしても放っておけなかった。こう思うのはフランが一人でこの世界に飛ばされてきたからなのかな。
「こうやって足の甲でボールを上に蹴るんだ。フランもやってみて。」
「は、はい。」
一度リフティングをやって見せてフランにボールを渡す。
リフティングでボールをコントロール出来たときのあの喜びはサッカーに触れてもらうのに一番いいと思う。
「こ、こうかしら?」
「そうそう!上手いよ!」
初めてサッカーボールに触れるらしいフランの動きは少しぎこちないけど初めてとは思えないくらい上手にボールをコントロールしていた。
少しボールに振り回されながらもリフティングを続けている内にフランが少し笑った気がした。
出会ってからずっと不安そうにしていたフランがサッカーに触れて楽しんでくれてる。
それがたまらなく嬉しかった。
「凄いよフラン!サッカーもきっと喜んでる!!」
「喜んでる・・・?」
また一人サッカーを知ってくれて、楽しんでくれる子が増えた。
サッカーが喜んでる声が聞こえた気がした。
サッカーが喜んでるのを感じる時、俺も嬉しくなる。
けれど今、俺が感じてる喜びはいつものそれと少し違う。そんな気がした。
俺が話しかけるとフランが少し驚いたようにこっちを向いた。
その結果フランの視線がボールから切れたことでボールがはねて
「んがっっ!?」
狩屋の顔面に直撃した。
「は、鼻が潰れた~~~~!」
「あははははは!狩屋大げさだよ~」
ギャグみたいな狩屋の反応にみんなで思わず笑ってしまう。
「・・・ふふ♪ふふふ♪」
後ろから小さく笑い声が聞こえた。
振り返るとフランが堪えられなかったみたいに笑ってた。
初めて見せてくれた花が咲いたようなフランの笑顔はとても綺麗で思わず見とれてしまった。
胸の鼓動が少し高鳴った気がした。
「フランさ~ん!次は一緒にLBXで遊びましょうよ!」
ひとしきり笑ったところでヒロ君が声をかけてきた。
きっとヒロ君もフランが皆の輪に溶け込めるように気を使ってくれたんだろう。
「いいね!いこうよフラン!」
「え?あ、ちょっと!?」
フランの手を引いてヒロ君の元へ向かう。
「LBXの操作がピタッと思い通りに決まった時の感覚って最高なんですよ!」
ヒロ君が昨日俺たちに押してくれた時みたいにLBXの操作を実演してくれている。
ヒロ君の言ってることは俺にもなんとなく理解できる。
日ごろの練習していたプレーや連携が決まった時。自分が思い描いているようにボールをコントロールして相手のDFを抜けた時の感覚と同じなんだと思う。
「あ・・・失敗しました・・・」
ヒロ君が大技を決めようとしたところ最後の決めポーズが決まらなかったみたい。
「・・・ふふふ♪」
またフランが笑ってくれた。
緊張がとけてきたのかな。
世界が混乱してるこの状況だけど少し前を向けるようになってきてるのかもしれない。
「フランさんもやってみませんか?」
「・・・・多分無理。」
「やってみたくなったらいつでも言ってよ。色んなタイプのLBXがあるから面白いと思うんだ。」
すぐそばでイカロス・ゼロのメンテナンスをしていたバンさんがやってきた。
「カスタマイズだってプレイヤーが10人いれば10人それぞれのやり方がある。どれもがプレイヤーにとって、宝物なんだ。」
サッカープレイヤーもスパイクやグローブにそれぞれこだわりがある。バンさんが言ってることはそれと同じなんだと思う。
「宝物・・・」
「フランにとっての宝物って?」
「私の宝物・・・」
俺にとっての宝物。いろいろあるけれど今の俺を形作ってるのは沖縄にいた頃、豪炎寺さんに命を救ってもらったあのサッカーボール。あのサッカーボールがきっかけでサッカーを始めて翼や信助たちかけがえのない仲間に出会えた。俺の心の一番深いとこにある支え。
フランのことをもっと知ることが出来る気がして聞いてみた。
フランは胸元の花のブローチに手を当てて考え込む。
「花・・・」
「花?」
「お父さんにもらった花・・・」
どこか遠い記憶に思いを馳せなが語るフランの声と表情はとても柔らかくて、温かかった。
その夜、昨日みたいにみんなで火を囲んで食べたご飯は今日も美味しかった。
フランはやっぱり緊張してたみたいだけど、明日またみんなと打ち解けてほしいな。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
天馬やヒロたち全員が寝静まったころ。
それぞれのテントから寝息と一部いびきが聞こえてくる中、フランは身を起こす。
同じテントの葵たちが眠ってるのを確認しテントを出る。
テントから少し離れ湖のそばへ立ちテントに向き直り手をかざす。
「・・・・・・消えろ。」
恐ろしく冷たく呟くと同時にフランの体からオーラがあふれ出しスタジアムで見せた消滅の光が放たれる。
「・・・やはり。特別な力に守られている。」
しかしあの時と違い光を浴びたテントが消えることは無かった。
どこからともなく飛んできたレッドソルがフランのそばで停止する。
『姉さん。それはどういうこと?』
レッドソルからサンの声が響く。
「私の力に抵抗する強い心の力。」
『もしかしてこの二つのチームが出会ってしまったから?』
『それがフランの言う心の強さを更に強めている?』
「強い心の力も深い絶望を感じさせれば弱くなる。」
『つまりもう一度打ちのめせばいいんだな。』
『簡単さ。消し忘れを消すだけさ。』
『やろう。・・・それがフランの望みなら。』
「明日、また仕掛けるわ。」
レッドソルが去っていったのを確認したフランは月明かりに照らされた湖面を少し見つめていた。
天馬たちを消すためにこのチームに潜り込んで過ごした今日一日を思い返す。
彼らを消すためのほんのわずかな、取るに足らない時間。
(この感覚は一体何?)
人の未来のため。そのためならどんな手段も使う。そこに感情はいらない。
にも関わらずフランは胸の内に違和感を感じていた。
(・・・気のせいに決まっている。彼らには消えてもらう。)
その時背後に気配を感じた。
「良い夜だな、フラン。」
「やっぱり、あなたの仕業だったのね。」
立っていたのは翼とメイアの二人だった。
「・・・・・・」
いかがだったでしょうか?
ということでお察しの方もいるでしょうがイナダン編は翼とメイアだけでなく天馬とフランのW主人公とヒロインの予定です。
そのため次回以降はフラン視点も書いていくつもりです。
狩屋、君の犠牲は決して忘れない。
感想、コメントお待ちしています。大変励みになります。