二度目の人生とフェーダの姫   作:プライムハーツ

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今回の話は1話にまとめるつもりがいつの間にか3話に分かれた1話目になります。


それぞれの思惑

この世界に来て3日目、フランと出会った次の朝。俺たちは全員で集まっていた。

朝起きたら翼とメイアがいなくなっていた。

 

「夜ごはんの時は確かに二人ともいたはずだ。」

 

「うん。一緒に食べてたから間違いないです。」

 

「翼は天馬たちと同じテントだった。寝る前はどうだった?」

 

神童先輩が昨日の夜のことを順番に整理してくれる。

翼は確かに俺と同じテントだった。信助たちと一緒に少し話をしたりした。

 

「その時もいました。・・・そういえば灯りを消した後にちょっと出てくるって言ってました。」

 

あの後翼が戻ってくる前に寝ちゃったんだ。

 

「葵、メイアはどうだった?」

 

「こっちも一緒。私はすぐ寝ちゃったけど。」

 

「あたしも。灯りを消してからのことはあんまり覚えてないよ。」

 

葵やジェシカさんたちも消灯までは一緒にいたということしか覚えてないらしい。

 

「あの二人って付き合ってるんだろ?みんなが寝た後に二人でどっかにしけこんだんじゃないのか?」

 

「確かにそうだけど勝手に消えたりはしないよ!」

 

「じょ、冗談だって!?」

 

「だが二人が同時にいなくなった。それも敵のLBXを見かけたその夜にだ。なら二人でいる時に敵によって消された可能性は考えるべきだろう。」

 

「そんな!?」

 

翼とメイアが消されたなんて。

信じられない。けど神童先輩がいってる事は筋が通ってる。

 

「落ち着け天馬。あくまで可能性の話だ。」

 

「そ、そうですよね・・・そうだ!フェイは何か知らない?あの二人と連絡が取れたりは・・・」

 

「エルドラドには報告をしているから捜索してくれてるはずだよ。だから今は僕たちに出来ることをやろう。」

 

「そうですよ天馬さん!あの二人もきっと同じこの空の下にいるはずです!だから必ずまた会えますよ!」

 

「ヒロ君・・・そうだね!」

 

そうだ。こんな所で弱気になってちゃダメだ。一昨日の夜に翼も言ってたじゃないか。

何が起きても諦めちゃだめだ。

それにあの二人が一緒ならどんな敵が相手でもきっとなんとかなる気がする。

 

 

「二人のことを信じて今、やるべきことをやりましょう!」

 

「ああ。それじゃあ今日の予定についてみんなで話し合おう。」

 

俺はキャプテンなんだ。こんな時こそ前を向かなきゃ。

ふと顔をあげると話し合いの輪の少し外にフランがいるのが目に入った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

時間は昨晩に遡る。

 

「・・・っと。メイア大丈夫か?」

「ええ。ありがとう、翼。」

 

手を繋いでいたメイアに声をかける。

体を突然の浮遊感が襲ったかと思えば目の前の景色がガラリと変わる。

この感覚はアーサー王の世界からエルドラドの本部に呼び出された時のあれに似てる。

恐らくどこかにワープしたんだろう。

 

「ここはどこだ?」

 

まず最初に感じたのは匂いだった。

不思議と心が安らぐ花の香りが微かに漂っていた。

だが逆に目に飛び込んできたのは薄暗い空間。

その中心には大きな水晶玉のようなものが浮かんでいた。

水晶玉にはさっきまで俺たちがいた湖畔が映し出されていた。

 

「ようこそ。私たちの城、フラウ・ア・ノートリアスへ。」

 

そして聞こえてきたのは冷たくも凛とした声。

振り返った先にはやはり彼女がいた。

 

「フラン・・・それにお前は。」

 

そこにいたのはフランだけではなかった。

フランの両脇に二人の少年。そのうちの片方には見覚えがあった。

スタジアムに乱入してきたドレッドヘアーの男の子。

もう一人は中性的に整った顔立ちの男の子。おそらくLBXを操っていたのは彼だろう。

 

「姉さん。どうしてこいつらをここに?」

「ここで痛めつければいいのか?」

 

「待って。サン、アスタ。」

 

二人はサンとアスタというらしい。

アスタがここにいるという事はここはきっとスタジアムの上空に現れたあの要塞の中ということだろう。一緒にワープして来たということか。

前に出ようとした二人をフランが諫めた。

 

「いつから気付いていたの?」

 

「確信があったわけじゃないわ。ただ私たちがあの場に逃れてきた次の日に突然あなたが現れた。それもLBXに襲われそうになっていた所を偶然助けた。私は翼や天馬みたいにお人よしじゃないから警戒していただけ。」

 

昼食を食べた後、メイアに呼び止められてフランと出会った時の事を話したところ不信に思い、何か動きがあるとすればみんなが寝静まった後だろうってことで身を隠していたという訳だ。

けどメイアは俺の話を聞く前からフランのことが気になっていたらしい。

 

「それにフラン、あなたを見てると以前の私に似てると思ったの。」

 

「それは一体どういうことかしら?」

 

「強い意志と憎しみがあなたの目に宿っているのを感じたわ。」

 

「・・・・・・・」

 

「あなた達の目的は一体何?」

 

「答える必要は「世界を救うことよ。」・・フラン?」

 

アスタとサンは答えるつもりは無いみたいだったがフランが答える。

出会ってから見せていた儚げな印象とは違って凛として強い意志を感じる答え。

 

「こんなにも世界をめちゃくちゃにしてどうやって世界を救うというの?」

 

「この世界に不要なものを全て消すのよ。」

 

「世界に不要なもの?」

 

「戦いよ。戦いは何も生まない。大切なものが全て失われてしまう。そして・・・」

 

少し俯いたフランからその先の言葉が発せられることは無かったがフランの両の拳は強く、強く握りしめられていた。

彼女を突き動かすもの。今の俺には知るすべはないけれど、とても大きな何かを抱えているのは分かる。アスタとサンがフランに向ける視線もどこか悲しそうだった。

フランは以前のメイア自身に似てると言っていたが俺にも分かる。旅の途中やラグナロク開幕の前日に俺に見せたあの目に確かに似ている。

 

「・・・そう。止まるつもりは無いみたいね。」

 

「ええ。あなた達には人の未来のために必ず消えてもらう。」

 

メイアがそうだったようにフランたちの意志の固さを理解したんだろう。

フランたちを否定することは無かった。止めても無駄なことは俺たちが一番分かってる。

 

 

「それで俺たちをこれからどうしようと?ここで消すつもりか?」

 

「あなた達二人をここで消すことは出来ない。特別な力を感じる。」

 

特別な力?俺はみんなとは違う世界から生まれ変わって、メイアは元セカンドステージ・チルドレンだからそのことか?

 

「恐怖は人から心の力を奪う。けれど今のあなた達からは微塵も恐怖を感じない。」

 

「ふふ♪それは当然ね。」

 

「どういうことかしら?」

「だって私には翼がいてくれるもの。隣に翼がいてくれるなら私は強くいられる。何も怖くはないわ。翼はどう?」

「・・・俺もだ!」

 

言われるまで気付かなかった。円堂監督たちを消して世界を組み替えるほどの力を持つフランを前にしても不思議と恐怖を感じていなかった。繋いだ手から伝わってくるこの温かさが、隣に感じる息遣いが。メイアが隣にいてくれるだけで勇気が湧いてくる。天馬と一緒に戦ってる時とも違うこの感覚。

 

「・・・・・・」

「ふん。」

「のんきなことだね。」

 

俺たちの答えにフランたちはそれぞれ複雑そうな表情をしている。

 

「けれど他の仲間はどうかしら?深い絶望を感じれば私の力に抗うことは出来なくなる。そして仲間が消えて尚、絶望せずにいられるかしら。」

 

きっとこれは他のみんなを絶望させて消していくという宣言だろう。

 

「全てが終わるまで、あなたたちにはここで大人しくしていてもらうわ。」

 

消すことは出来ず正体を知られている以上俺たちはここに監禁されることになるらしい。

けど不安はない。メイアが一緒にいてくれる。それに

 

「フラン。俺たちの仲間はそう簡単に絶望したりしないぞ。」

 

これまでずっと一緒に戦ってきた天馬たちはもちろん、バンさんたちもきっと色んなことを乗り越えてきたことはこの2日でも分かる。なら俺たちは仲間を信じて待っていればいい。

それにあの中には天馬がいる。

 

「翼の言う通りよ。それにフラン。あなたは戦いは何も生まないと言ったけれど、戦いを通して生まれる絆もあるわ。」

 

俺の方をチラッと身ながらメイアは言う。

確かに俺たちは旅を通してお互いに惹かれてたけど、あのラグナロクでの戦いが俺たちの絆をより固いものにしてくれた。フェーダのみんなたちとの繋がりも生まれた。

 

「・・・・何も知らないくせに。」

 

 

 

「ちょっと待ってくれフラン。」

 

「まだ何か?」

 

フランがみんなの所に戻る前にどうしても言っておきたいことがあって呼び止める。

フランもアスタもサンも、そしてメイアもピンと来ていないらしい。

けれどとても大事なことだ。

 

「・・・・・ちゃんと大人しくしとくから椅子とか飲み物とか用意してくれない?」

「翼・・・緊張感。」

 

いや飲まず食わずの立ちっぱなしは辛いじゃん!

ちょっとアスタとサンよ。何だその呆れたような眼差しは。

 

「・・・好きにしなさい。」

 

そういってフランが指を鳴らすとこの場に浮いているものよりかなり大きい椅子と冷蔵庫みたいなものが出てきた。いや本当に用意できるんだ。

 

「サンキュー!優しいとこあるんだな、フランは。」

 

「・・・・ふん。」

 

そしてフランは姿を消した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

昼食を終えて俺たちはいくつかのチームに分かれて辺りの散策に出かけていた。

食料を探すチーム、サバイバル生活で必要なものを集めるチーム、元の場所で待機するチーム。

俺は信助と狩屋と葵と一緒に食料を探すチームだ。食料を探すチームは俺たち以外にもう1チーム。ヒロ君、バンさん、カズさん、アミさん、そしてフランの5人が逆の方角を探してくれてる。

フランは待機してて良いってみんな言ってたけどフランの方から手伝うって言ってくれた。

こんな状況でもみんなの輪に溶け込もうとしてくれてるんだと思うと嬉しくなる。

 

「結構緑が増えてきたね!」

 

「といっても食えるもんなんてあるのか?」

 

元の場所から出発してしばらくはあぜ道が続いてたけど信助の言うようにかなり華やかになってきた。

もしかしたら違う世界の部分に入ったのかもしれない。

けど狩屋の言うように食べれるものがあるかは別の気もする。

 

「熊とかイノシシとか出てきたらどうする?」

 

「その時は狩屋がハンターズネットで捕まえてよ!」

 

「いやいやいや!?流石に無理だって!それを言うなら信助くんが化身でなんとかしてくれよ!」

 

たしかに野生動物がいる可能性もあるのか。

俺たちは化身やミキシマックスがあるから葵を連れて何とか逃げられると思うけどあっちは大丈夫かな?

 

「どうかしたの天馬?さっきから考え込んでるけど。」

 

「葵。いやヒロ君たちのほうは大丈夫かなって。ヒロ君、体力に自信ないって言ってたし。」

 

「LBXがあるから大丈夫なんじゃない?」

 

「だといいけど。それに・・・」

 

「それに?」

 

「あっちにはフランもいるし。」

 

ヒロ君やアミさんはLBXがあるから戦うことは出来るけどフランは違う。

 

「天馬、昨日からフランのこと気にしてるよね。」

 

「え、そうかな?」

 

「うん。一緒にサッカーしたときもだし、ふとした時にフランのこと見てること多いよ。」

 

葵に言われて思い返してみるとたしかにそんな気がする。

ご飯の時やみんなで話している時もフランがどうしてるか気になってたような気がする。

 

「おやおや?天馬くんったらもしかして一目ぼれでもしちゃった?」

 

「そ、そんなんじゃないよ!・・・フランは俺たちと違って一人でこの世界に飛ばされて来て混乱してるだろうから。それに・・・」

 

フランはふとした時にとても淋しそうで、悲しそうな顔をする

それがどうしても頭から離れない。

 

「と、とにかく向こうも大変だろうし俺たちの方で何とか食料を探そう!」

 

「・・・うん!そうだね!」

「それじゃ張り切っていこう!」

「はいはい。」

 

自分でもよく分からないこの気持ちは一旦置いて役割を果たすことにいた。

いつまで続くか分からないこの世界での生活。みんなのためにも頑張らなきゃ。

 

「ん?あれは・・・」

 

改めて辺りを見回した時にふと生い茂った木々の奥に何かが見えた気がした。

好奇心に釣られて茂みを抜けた先に広がっていた光景を俺は忘れることはないと思う

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「それにしてもこんな所で食料なんて見つかりっこないぜ。」

「文句言わないの。」

 

赤峰翼とメイアの二人をフラウ・ア・ノートリアスに隔離した朝、当然騒ぎにはなったけれど彼らは一先ず今出来ることをするという結論になった。

仲間割れしてくれれば手間が省けて良かったけれどそう簡単にはいかないみたい。

それからいくつかのチームに分かれて食料などを調達することになった。

私は元の場所にいていいと言われたけど、少人数で別行動を取ってくれるのは好都合だから私も混ざることにした。

そして今は大空ヒロ、山野バン、青島カズヤ、川村アミと共に食料調達の名目で森と谷を超えた山道を歩いている。

 

(ここがどこの世界から飛ばしてきたところかは分からないけれど、食料はないでしょうね。)

 

辺りは枯れた気が立ち並ぶ山道。彼らの目当ての食料なんてあるとは到底思えないような場所。

だからこそ他の人たちと偶然出会うこともない。仕掛けるのにはちょうどいい場所。

それにしても

 

「どうしたヒロ?」

「がんばってヒロ!」

 

「はぁ・・・はぁ・・・すみません・・・体力には自信がなくて・・・」

 

大空ヒロは息も絶え絶えになりながら付いてきていた。

体力には自信がなくてって、そんなに堂々と言うことかしら。

私はともかく川村アミにすら半ば呆れられている。体力が無いにもほどがある。

 

(けれど恐らく彼も鍵になる内の一人・・・)

 

潜入して1日。二つの世界の人たちそれぞれに中心となる人たちがいると分かった。

LBXの世界は今この場にいる大空ヒロ。

そしてサッカープレイヤーたちは松風天馬。

彼らの中には赤峰翼とメイアという私の目的を見抜いた人たちもいる。

けれどその中心にいるのは松風天馬。

彼らを消せば二つの世界を守る特別な力も消える。

この場で消すことが出来れば好都合。そろそろ仕掛ける頃合いかしら。

 

(この香りは・・・)

 

サンにテレパシーで合図を出そうとしたときに優しい香りが私の鼻をくすぐった。

辺りの地面を見回すとそれはそこにあった。

 

「花・・・!」

 

木々も枯れて整備もされていないあぜ道に数輪の青い花が咲いていた。

花の無い世界で生まれ、全てが滅んだ世界からやってきた私にとって道端に咲く花はどれだけ焦がれたとしても縁のないもの。

厳しい環境で強く咲く花はこんなにも綺麗で心を安らげてくれる。

 

「フランさんは花が好きなんですね。」

 

思わず夢中になってしまったから後ろからかけられた大空ヒロの言葉に不意を突かれてしまった。

 

「私の世界に、花はないから・・・」

 

セブンスの力に目覚める前。まだ両親と平和に暮らしていた頃。

文明の発展した私の世界では花はとても貴重で目にするのは図鑑や記録でだけ。

それでも幼い私は花に強烈に惹かれた。

そんな私の誕生日プレゼントに父が苦労して手に入れてくれたカプセルに入った花。

実際に手に触れ、香りを嗅ぐことは出来なかったけれども今はフラウ・ア・ノートリアスに形を変えて私を包んでくれて、心を支えてくれる私の宝物。

昨日、松風天馬に聞かれて思わず答えてしまったから大空ヒロも私が花が好きだと思ったのだろう。

 

「花が無い?そんなことってあるんですか・・・?」

 

花が無い世界なんて想像もできないのか4人も口を噤んでいた。

 

「花が無い世界だってあるんです。」

 

彼らには分からない。文明を追い求めて自然を犠牲にし、その果てに文明も自然も全てが滅んだ世界があることを。そして彼らが楽しんでいる戦いがその悲劇を生むことも。

だからこそ私が変える。全ての戦いを消し去り世界を救う。花が咲き誇ることが出来る未来にして見せる。

 

『・・・姉さん。』

 

サンの心配そうな声がテレパシーで頭の中に響く。

 

『大丈夫よサン。さぁやりましょう。』

 

『任せて、姉さん。』

 

 

私の合図から間もなく空からあれが飛来した。

 

「キラードロイド!?」

「奴らこんなものまで使えるのか!」

 

キラードロイド。LBXを破壊することに特化した自立稼働ロボット。

サンが操作するデジトニアスには及ぶはずもないけれど量産型のレッドソルとブルーノーグとは比べ物にならない機体。

自立稼働だからサンが細かい操作をすることは出来ないけれど彼らLBXプレイヤーを追い詰めるのにはちょうどいい。

 

「みんないくぞ!」

「フランさんは下がって!」

 

「え、ええ。」

 

私が呼び寄せたとは知らずに山野バンと大空ヒロを中心にすぐに戦いの準備に入る。

キラードロイドのコアからバトルフィールドが展開されれば私だけが隔離される。

 

「みんな油断するな!」

 

プレイヤーが操作していないとはいえ普通のLBXの数倍の大きさのキラードロイドを相手するのは簡単ではない。装備の一つ一つはLBXを破壊する力を持っているし並の攻撃ではびくともしない。

フィールドの外からでも中の戦いは見てとれる。

4人ともキラードロイドのパワーとスピードに驚いている。

 

「パンドラ!?」

 

そして遂に一機。川村アミのLBXが攻撃をまともに受けて大破した。

 

「嘘・・・だろ・・・」

 

次に青島カズヤ。4人の内2人のLBXが再起不能になった。

LBXはプレイヤーにとっての宝物と大空ヒロは言った。

それはきっと正しい。LBXを破壊された瞬間、二人は目に見えて絶望の表情を浮かべていた。

そう。それが大切なものを失う悲しみ、そして絶望。

 

「・・・・くっ。」

 

絶望した二人を見た瞬間、私は思い出してしまった。

全てが失われてしまったことを知って絶望したあの瞬間を。

目の前が真っ暗になって心を暗い影が覆うあの感覚を。

 

「これも、未来のためなの・・・」

 

 

「バンさん!」

「分かった!」

 

あの絶望に沈みかけていると大空ヒロと山野バンの声が聞こえて意識が浮上する。

二人のLBXがそれぞれ武器に姿を変えもう一機を強化してキラードロイドと渡り合っていた。

そして二度の必殺ファンクションでキラードロイドは完全に破壊された。

 

「やった!」

「ざまぁみろ!」

 

キラードロイドを打倒した彼らは勝利の喜びを味わっていた。

けれどその感情こそが未来の悲劇に繋がることを彼らは知らない。

戦いがもたらす歓喜と絶望。闘争心という人の心に巣食う闇。

やはり消さなければいけない。

 

「フラン、大丈夫か。」

「ええ。」

「このままの探索は危険だ。一旦戻ろう。」

 

 

山野バンの判断で湖に戻ることになった。彼らからすればまたいつキラードロイドに襲われるか分からない以上、当然の判断。

帰り道、彼らの間には重い沈黙が流れている。

 

「二人とも・・・」

 

「まぁ、気にしてねぇよ・・・と言いたいところだけど、ちょっと落ち込んでる・・・」

 

大空ヒロも山野バンの二人にかける言葉が見つからみたい。

二人が絶望し心が弱っていることは火を見るより明らか。

4人の少し後ろをついて歩いていたけれど落ち込んだ二人の歩くスピードはその心と比例して重い。

気が付けば前を歩く山野バンと大空ヒロとの間に距離が生まれている。

今ならこの二人を消すことが出来る。

前を向いて歩く二人、俯いて歩く二人。誰も私を見ていない。

手をかざし力を少し開放し光を放つ。

 

そいて青島カズヤと川村アミは消えた。

他の消した人たちと同じ場所へ飛んだのを感じる。

やはり絶望し心の力が弱まれば彼らを消すことが出来る。

このまま少しずつ彼らを消していけば世界は救える。

 

(だというのにこの感覚は何?私の胸を刺すこの痛みは。)

 

これまで色々な世界の戦いとそれを楽しむ人たちを未来のために消してきた。

今回もそれと同じ。なのにこれまで感じることの無かったこの違和感。

 

(気にしてはいけない。彼らの後ろを歩いていた私が消えたことに気付かなかったら間違いなく疑われる。)

 

「あ、あの!」

 

「フランどうかしたのか?ってカズとアミがいない・・・」

 

「ふ、二人が・・・いない・・・」

 

「何だって!?」

「フランさんは二人が消される瞬間を見ましたか!?」

 

「ご、ごめんなさい・・・俯いてて、顔をあげたら二人がいなくなってて・・・」

 

「そんな・・・どっかではぐれたとか?」

「分からない。けれどこのままじゃ危険だ。早くみんなの所に戻ろう。」

「はい!」

 

そして湖に戻って全員に報告したけれど当然彼らが先に戻っているなんてことはない。

朝に赤峰翼とメイアが消え、また二人消えた。

残っている面々も動揺を隠せていない。

このまま進めば彼ら全員を消すのも時間の問題。

あと少しで全ての戦いを消し去ることが出来る。

そのためなら私は。




いかがだったでしょうか?
人を信じるのが翼や天馬なのでメイアには一歩引いた視点で見てもらいました。
メンタル最強カップルです。
LBXサイドをフラン視点で進めることでフランの心情も描けるといいなと思いこういった構成になりました。油断すると性格悪く映ってしまうので気をつけなくては。

感想、コメントいただけると大変励みになります。
次回もよろしくお願いします。
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