二度目の人生とフェーダの姫   作:プライムハーツ

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早めに更新すると言っておきながら間が空いて申し訳ありません。
デストラクチャーズ戦も終盤となります。


心と心

 

「何故分からないの?」

 

同点に追いつき俄然勢いに乗って攻めていると上空からフランの声がした。

はるか上空にいるのにテレパシーのようにこの場にいるみんながフランの声を聞いた。

 

「あなた達のためなの!未来のためなの!!」

 

これまでと違ってそれはどこか悲壮な、俺たちに訴えかけるかのような声だった。

次の瞬間、目の前が光に包まれた。

光の中、目の前にフランがいた。

 

「これは一体?」

 

周りを見ると天馬たちの姿もあった。

これもフランの力か。

 

「心に刻むのよ。未来に起こる悲劇を!」

 

またフランから発せられた光に包まれた瞬間、俺の中に何かが流れ込んできた。

 

『うわああああっ!!』

『あああああっっっ!!!』

 

頭に何かの装置を装着された男の子が電流を浴びせられて苦しんでいる。

あれはアスタとサンか。

苦しむ二人をガラス越しに大人たちが観測している。

 

「これは・・・フランたちの世界・・・」

 

これはフランたちの記憶。フラウ・ア・ノートリアスで話してくれた研究施設にいたころのフランたちの記憶を俺たちは見ているんだ。

 

「私たちはあなた達よりずっと未来の人間なの。」

 

「これが俺たちの未来・・・」

 

「私たちは人間の新たな力に目覚めた存在。私たちはこの能力開発研究所で実験体としての日々を過ごしてきた。戦争の道具として使うためのね。」

 

「そんな・・・」

 

部分的に話を聞いていた俺たちと違って初めてフランたちの過去を知る天馬たちは言葉を失っていた。

思わず耳を塞ぎたくなる悲鳴。同じ人間がやっているとは思いたくないような仕打ちをフランたちは受けてきた。

 

「そして悲劇は起こったわ。」

 

「うあっ・・・今のは何だ?」

 

フランの見せる記憶越しに強い衝撃を感じる。

フェーダがエルドラド本部を破壊したときと同じかそれ以上の衝撃。

ここから先は俺とメイアも知らないフランたちの記憶。

場面が切り替わるとフランが倒れていた。辺りは瓦礫の山。きっとさっきの衝撃で研究施設が崩落したんだ。フランが顔をあげるとアスタとサンが倒れていた。

 

「アスタ・・・サン・・・」

 

「うっ・・・フラン・・・」

「姉さん・・・」

 

気が付いた二人を見てフランがホッと胸を撫でおろしていた。

それは弟たちを心配する優しい姉そのものだった。

 

「何が起こったんだろう?」

「もしかして俺たち外に出られるんじゃないか?」

 

人気のない崩落した研究施設から外を目指しているフランたち。

 

「これで普通の生活に戻れるのかな!」

「かもな。」

 

過酷な実験の日々からの解放という希望。それを象徴するかのようにフランたちの前には外に繋がる扉。とにらの間からは陽の光が差し込んでいた。

 

「なっ・・・・・」

「そんな・・・・」

 

「これは一体・・・」

 

けれど扉を開けて外に出たフランたちを待っていたのは絶望だった。

俺たちも思わず声をもらしてしまった。

辺り一面の砂漠。人間など影も形も無い。まさに世界が終わった後の光景そのものだった。

そしてまた記憶が流れ込んできた。

 

『反物質爆弾が使用された!?』

「なんということだ・・・世界が、滅ぶ・・・!?』

 

これはきっとフランが無意識に能力で読み取った研究者たちの記憶。

戦争で反物質爆弾ていうものが使用された結果、世界は滅んだ。

フランたちはセブンスの力のおかげで何とか生き残ったということか。

サンが慟哭する中、フランは静かに、ただ静かに涙を流していた。

自分たち以外は家族も建物も何もかも滅んでしまった。

もし俺がフランの立場だったら。メイアが、天馬が、家族が、雷門が。全てが滅んでしまった世界に俺だけが残されたら。想像すらできない絶望。これがフランたちが戦いを憎む理由。

 

「私は決意した!世界を変えることを!」

 

気が付くと俺たちの意識は元のフィールドに戻っていた。

試合はまだ続いている。こぼれ球をデストラクチャーズが抑える。

 

「それでも・・・それでも違うよ!サッカーは戦争とは違う!!」

 

フランたちが戦いを消そうとする理由。フランの覚悟の重さ知ってそれでも天馬は吠える。

 

「同じさ!戦争だってバトルだって同じさ!」

 

「LBXのバトルは憎しみ合う戦いとは違う!」

「楽しいから戦うんです!」

 

サンとバンさんたちの声がする。きっとフランの力の影響で俺たちとLBXプレイヤーの間に繋がりが生じているんだ。

 

「戦いが楽しいわけがない!君たちは大切なものを失いたいのか!!」

 

あの時サンが言っていたことを思い出す。きっとサンにとっての大切なものは。

 

「戦いで何かを失ったとしても、もっと大きなものを手に入れることだってある!」

 

「そんなに憎しみ合いたいっていうのか!!」

 

「憎み合ってなんていません!バトルをするのは楽しいじゃないですか!」

 

「それは君たちが、戦いに溺れているからだ!!!」

 

サンとバンさんたちもお互いが譲れない信念のために戦ってる。

彼らの思いが伝わってくる。

サンの言う通りサッカーもLBXも戦争も本質は同じなのかもしれない。

ラグナロクというサッカーで世界の実験を賭けた戦争があった。

だけどあのラグナロクで俺たちは大きなものを手に入れた。

 

「戦いは憎しみを生み、心を蝕んでいく!なぜそんな事も分からないんだ!」

 

「アスタ・・・」

 

デストラクチャーズが繋いだボールがアスタに渡って今、俺の目の間にいる。

 

「戦いは憎しみ合うためのものじゃない!分かりあうための戦いだってあるんだ!」

 

ホーリーロードでのフィフスセクターとの戦い、時空最強イレブン探しでのエルドラドとの戦い、そしてラグナロク。いろんな形の戦いがあった。時には味方だった人が敵になった。それまで戦っていた相手とチームを組んだ。繋がりが生まれた上で尚も選んだ戦いもあった。フランたちは戦いの一つの面しか見ていない。

 

「そんなもの認めない!混沌の王アスタロト、アームド!!」

 

アスタが化身を呼び出し、そして身に纏った。

さっきアスタのシュートをブロック出来たとはいえ今度のそれは比べ物にならない。

アスタが全力をぶつけてくる。なら俺も全力で受け止めないといけない。

 

「ミキシトランス!破壊神デスロス、アームド!!!」

 

あのラグナロク以来の全身全霊全力。

あの戦いから腕を磨いた今の俺に出来る全て。

 

「これで終わらせる!ディメンションストーム!!!」

 

ラグナロクで見たあのSARUの必殺シュート以上の威力。

止められるのかなんて言ってられない。絶対に受け止めて見せる。

 

「うおおおおお!アスタリスクロックGX!!!!」

 

持てる力の全てをふり絞ってアスタのシュートを受け止める。

6つの岩がシュートを止めようとせめぎ合う。

 

「邪魔を、するなぁ~~~!!」

 

「ぐっ・・くっそぉぉぉ・・負けるか~~~!!」

 

けどシュートの勢いは全く収まらない。それどころか勢いは増してくる。

力をふり絞って、絞り切ってなお押し込まれていく。止められない。

シュートからアスタの思いが、覚悟の大きさが伝わってくる。

 

「ぐぐぐ・・・もうダメ・・かっ・・・!?」

 

体が悲鳴をあげて限界を迎えて押し切られそうになった時、背中に力を感じた。

気のせいではない。確かに感じる温かさが二つ。

 

「メイア!SARU!」

 

肩越しに振り返るとメイアとSARUが俺の背中を支えてくれていた。

 

「諦めるなんてあなたらしくないわよ翼!」

「そうだよ。君の、君たちの力はこんなものじゃないはずだよ。僕たちセカンドステージ・チルドレンに勝って受け止めてくれた君なら絶対に負けないさ!」

「あの3人の思い、一緒に受け止めなきゃ!」

 

「二人とも・・・」

 

俺にとっての戦いを通じて生まれた繋がり、絆の象徴。

そんな二人が俺の背中を支えてくれてる。

 

「それに・・・格好いいところ、見せてくれるんでしょ?!」

 

「メイア・・・ああ・・・もちろんだ!うおおおおお!」

 

脱出するときに格好つけさせてくれって言ったの、まだ果たせてなかったな!

この絆の力を証明するために、信頼に答えるために、アスタにサッカーの素晴らしさを分かってもらうために、絶対に止めて見せる。

限界だと思ったその先。メイアとSARUの支えが俺に力をくれる。

 

「だああああっ!!」

 

「何だと!!??」

 

そして遂にアスタのシュートを弾くことが出来た。

俺一人じゃ絶対に無理だった。二人がいてくれたからだ。

 

「はぁ・・・はぁ・・・アスタ、戦いも捨てたもんじゃないんだぜ。神童先輩!」

 

試合はまだ終わっていない。この試合に勝つことが俺たちの正しさを証明することではないかもしれない。けど勝たないとフランたちにはきっと何も伝わらない。だから勝つんだ!

 

「全力でぶつかり合うことで仲間を思いやる優しさや尊重しあう友情は芽生える!」

 

「相手のことだってより深く理解できる!メイア!」

 

「お互いの全てを賭けて戦って通じる思いもあるわ!SARU!」

 

「戦って初めて本当に大切なものにも気付ける!天馬!!」

 

神童先輩、剣城、メイア、SARUから天馬にボールが繋がった。

入学式の日から始まった新しいサッカー人生。

いろんな形で衝突したり、敵対したりもした。

 

「戦って思いをぶつけ合った先に大きく強い、心の絆が生まれるんだ!」

 

けど今こうして肩を並べてサッカーをしてる。

戦いがあったから生まれた絆なんだ。

 

「通さん!!」

 

みんなでボールを繋いでゴールに迫る俺たちの最後の壁。

アスタがゴール前まで戻って天馬の前に立ちはだかった。

 

「戦いは憎しみを生み、人の心を蝕んでいく!何故そんなことも分からないんだ!!はああああっっ!!」

 

アスタの体が炎のようなオーラに包まれていく。

ホーリーロードスタジアムで俺たちを纏めて倒して見せた力だ。

周りを見ればデュプリたちが膝をついて息が上がっている。

デュプリに回していた力をアスタ一人に集中させてるんだ。

 

「絶対に・・・違う!!」

 

天馬の姿が変わっていく。ミキシトランスだ。

それだけじゃない。魔神ペガサスアークが現れ光に変わっていく。化身アームド。

 

「あの姿は・・・」

 

けどいつもと姿が違っていた。

天馬が纏う鎧はまるで天馬自身の熱い心そのもののような深紅の鎧だった。」

 

「潰す!はああああっっ!!」

「うおおおおおおおお!!!」

 

二人が同時に前に出た。

凄まじいエネルギー同士のぶつかり合い。

この場の誰もが理解している。この試合の決着はこの二人に委ねられていると。

天馬に加勢すれば勝てる?違う。この試合はただのサッカーの試合じゃない。

心と心のぶつかり合い。お互いに譲れないもの信念の戦い。

この試合に誰よりも強い思いを持ってる天馬とアスタの戦いには誰も手出しなんて出来ない。

 

「ぐっ・・・うぅ・・」

「はあああああっっっっ!!」

 

鬼気迫るアスタの突進に天馬は押されながらもなんとか持ちこたえる。

 

「俺たちは努力して苦しんで、勝利を手に入れる!」

 

アスタの力を正面から受け止めた天馬が一歩前に踏み込む。

一歩。また一歩と天馬が前に出る。天馬の強い思いがアスタを上回る。

 

「本当の戦いは憎しみ合うことじゃない。悔しくて泣いたり、嬉しくて笑ったり!そんな気持ちを感じさせてくれる!俺たちは真剣な心と心をぶつけ合ってるんだ!!!」

 

そして遂に天馬はアスタを弾き返して見せた。

天馬が真っすぐな心を貫き通した。

 

「止める!!」

 

それでもアスタも膝をつきはしなかった。

なおも天馬を止めようと立ちはだかり天馬も応える。

 

「絶対に負けない!!ゴッドウィンド!!!!」

 

「アスタリスクロック!!・・・うあっっ!!」

 

ラグナロクでも見せた天馬の持てる最強の必殺シュート。

みんなの力を合わせたあの時のそれと同等、もしかしたらそれ以上かもしれない凄まじい威力のシュートはアスタのアスタリスクロックを真っ向から打ち砕きゴールに突き刺さった。

 

『キャプテン松風が決めたぁぁ!!イナズマジャパン、遂に逆転だ~~~!』

 

 

「まったく。相変わらず凄いやつだよ、あいつは。」

 

「僕たちフェーダが君たちに負けたのも納得だね。」

 

まさかあのアスタに真っ向勝負で勝つなんてな。信じてはいたけど驚きもある。

それだけこの試合にかける天馬の思いが強かったってことか。

俺も少しは強くなったと思ったのにな。

最も身近で負けたくないライバルの成長に感服してると後ろからそっと抱き寄せられた。

 

「それを言うなら翼もよ。さっきの翼、とってもかっこよかったわ。」

 

「メイア・・・そりゃ良かった!」

 

ちゃんと良いところ見せられたようで良かった。

可愛い恋人に労われれば疲れも吹き飛ぶってもんだ。

 

「どうやらあっちも決着がつきそうだ。」

 

SARUが上空のLBXバトルの方に目をやる。

繋がったパスはまだ僅かに残っているようで向こうの様子が伝わってくる。

 

「認めない!!絶対に!!」

 

「今俺たちがしているのは大切なものを守る戦いだ!」

「あなたにだってあるはずです。守りたいものが!」

 

ギルのみんなが作ってくれたLBXたちは量産型のやつらと差し違える形で役目を終えていた。

残った赤いデジトニアスはジンさんたちが、そして青いデジトニアスはバンさんとヒロ君が倒した。

これで向こうも決着だ。

 

「大切なものを守るために戦う強さこそ、本当の勇気なんです。」

 

「本当の、勇気・・・大切なものを・・・守る。」

 

 

「それじゃ行こうか。」

 

「ええ。」

 

真剣勝負の後はお互いを称え合ってこそのスポーツ。

憎しみって貶めあって傷つけあう戦争とは違う。

膝をつき立ち上がれないアスタに天馬は手を差し伸べていた。

そして手を差し伸べられたアスタは憑き物が落ちたかのようにとても晴れやかな表情をしていた。

 

「分かったよ。」「お前たちの言っていること。」

 

そしてアスタは天馬の手を取って立ち上がった。二人の手は強く、強く結ばれていた。

 

「あとは・・・」

 

 

「まだ終わってはいない!!!」

 

 




いかがだったでしょうか?
このエピソードは歴代のイナイレでも群を抜いた悲惨さだと思います。
今作では翼たち木枯らし荘組とフランたち3人は原作より強めのイメージです。
天馬と翼とメイアで部活終わってからでも特訓できるのズルだと思うんです。

原作主人公の見せ場の前に今作主人公の見せ場は用意しておきました。
次回、ラスボス系ヒロイン戦

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