サンのデジトニアスが力尽き、アスタが松風天馬の手を取った瞬間、大きな喪失感に襲われた。
あの日、研究所から出て外の世界を目の当たりにしたとき以来感じたことなかったもの。
肉親も世界も全てを失った私に残された最後の繋がり、仲間、家族。
ぶっきらぼうな所もあるけれど大地のような安心感を与えてくれるアスタ。私のことを本当の姉のように慕ってくれてお日様のような笑顔で私に安らぎをくれるサン。そんな二人が私のそばから離れていこうとしてる。
二人まで私を置いていくというの?
嫌だ。
二人がいなくなったら私は本当に世界で一人ぼっちになってしまう。
一緒に世界を救おうと、未来を変えようと誓ったのに。
まだ私たちの戦いは終わってないじゃない。
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「お前たち、何故戦いをやめる!!」
サッカーとLBX。二つの戦いの決着が着いたと思ったところでスタジアムに声が重たく響いた。
怒り、憎しみ、悲しみ。様々な感情が乗った声の主は一人しかいない。
「フラン・・・・・・」
フランたちの要塞、フラウ・ア・ノートリアスの上から俺たちの戦いを見届けたフランが遂に動き出した。
フランの戦いへの憎しみが吹き出したように髪は黒く染まる。
それだけじゃない。フランの背中から黒い影が湧き出てる。
「あれは・・・化身・・・」
全身が黒い女の人のような化身。ここからでも分かる。アスタの化身を遥かに上回る凄まじいエネルギーを感じる。
姿を表したフランの化身はすぐに光に変わってフランを包み込んでいく。
あれも化身アームドなのか。黒いドレスのような化身アームド、黒く染まった髪、とどまるところを知らない黒いオーラに包まれたフランはまるで魔女みたいだ。
あれがフランを包む心の闇。
「まだ、終わってはいない!!」
「フラン!」
フランが降りてくると同時に空が、世界がフランのオーラと同じく黒く染まった。
これもフランの力。
「姉さん、待って!!」
「サン・・・」
フランが現れたのと同時にサンもグラウンドに現れた。
「姉さん!もう終わりにしよう!」
「俺たちは間違っていたのかも知れない。戦いを消し去ること。それがフランの望みならと・・・そう思ってやってきた!」
サンとアスタは分かってくれたんだ。
だから今、二人はフランを止めようとしてくれてる。
全力でぶつかり合って分かった。アスタが本当に守りたいもの。
それはフランなんだ。サンもきっとそう。
二人はフランのためにずっと戦ってきた。そして気付いたんだ。
「でも、このまま憎しみ合って争ってちゃ「違う!!」・・・っ!?」
このままじゃ世界も、未来も、そしてフラン自身も救われない。アスタたちは気付いた。
けどフランの答えは拒絶だった。
「裏切りは許さない・・・許さない!!!」
「フラン!!」
フランが黒い花のようなものに包まれる。
黒い花はいばらの鞭を振るわせる。
「アスタ、サン!・・・うわっ!!」
あのアスタとサン、そして天馬までもフランの振るう凄まじい力に弾き飛ばされスタジアムの壁に叩きつけられてしまった。
「みんな来るぞ!」
天馬たちを退けたフランは今度は標的を俺たちに移した。
「「「うわあっっ!?」」」
オーラを具現化したような花の鎧をグラウンドに叩きつけた余波の威力だけでみんなうちあげられてしまう。
「戦いは何も生まない。闘争心は人の心に出来る闇!」
「ぐっ・・・うあっっ」「きゃああっ!」
「メイア!?くそっ・・がああっっ!?」
フランの力はあまりにも圧倒的なものだった。
俺もメイアもSARUも、みんなフランの力に押しつぶされるばかり。
あのアスタが可愛く見えるレベルだ。
「そんなことはない!
「フランを止めるんだ!」
「はい!」
地面に叩きつけられ空を見上げるとバンさんたちが降りてきたところだった。
バンさんやヒロ君たちもフランを止めようと立ち向ってくれる。
「邪魔はさせない!!」
「あれは、LBX!?」
バンさんたちが助けに入ろうするとフランが結晶のようなものからLBXを生み出した。
「いくのよ、ヘリオローザ!戦いに溺れる者たちを退けろ!!」
フランのLBX、ヘリオローザは花を基調にしたボディに2対の羽のまるで可憐な
花の妖精のような見た目をしておりどこかフラン自身を思わせる。
そしてその力もフランと同様に圧倒的だった。
剣の一振りでバンさんたちのLBX7機を吹き飛ばしてしまう。
バンさんたちもかなり苦しい戦いになりそうだが、バンさんたちが助けに入ってくれたことでこちらへの攻撃の手が緩んだ。
流石のフランと言えどサッカーとLBXでこの人数を同時に相手するのは簡単ではないようだ。
それなら。
「メイア、フェイ、SARU!大丈夫か?」
攻撃の手が緩んでる隙にメイアたちと合流する。
「ええ。翼のほうこそ大丈夫?」
「ああ。これくらいで音はあげてられないさ。」
「それで、どうかしたのかい?」
「3人に頼みがある。」
「僕たちに頼み?」
元フェーダの3人。今この場で戦える中でフランに立ち向える、俺が信頼できる3人。
「少しの間だけでいいから時間を稼いでほしい。」
「時間を稼ぐって言ったって・・・」
「今バンさんたちがフランと戦い初めて俺たちへの攻撃の手が緩んだ。なら逆に俺たちがフランの気を引くことが出来ればバンさんたちをサポートできるはずだ。」
「サッカーとLBXで協力してフランを足止めするってことだね!」
「ああ。化身の力ならフランも無視は出来ないはずだ。」
「分かったわ。やりましょ!SARU、フェイ!セカンドステージ・チルドレンだった私たちだからこそフランに伝えられることがあるはずよ!」
「メイアの言う通りだね。」「フェーダの絆の力、見せてあげようよ!」
「すぐ戻る。だから、任せたぞ!」
「「「OK!」」」
3人とも文句の一つも言わずこんな大変な役目を引き受けてくれる。
本当に頼りになる恋人と友達だ。
きっとこの戦いは俺たちだけではダメだ。みんなの力が必要だ。
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「何故わからない!戦いのせいで全てが失われるというのに!!」
サンのデジトニアス2機に勝利したヒロたちだったがヘリオローザの力はデジトニアスを遥かに凌いでいた。
「早い・・・」
「くっ・・・行くぞ!」
「はい!」
剣の一振りだけでバンとヒロ以外のLBXは大きなダメージを受けてしまいそれぞれが戦線に復帰するため急いで調整を行っている。
今動けるアキレスD9とオーディーンMk-2の2機が応戦するしかないと悟ったバンはヒロと連携することを選んだ。
「「必殺ファンクション!!」」
『アタックファンクション:ダブルレイウィング』
飛行形態へ変形したオーディーンMk-2にアキレスD9が騎乗することで放たれる合体必殺ファンクション。
不死鳥のようなまばゆいオーラに包まれた2機がヘリオローザに突撃する。
「こんなもの!」
「そんなっ!?」
しかし通常の必殺ファンクションを大きく上回る威力を誇るダブルレイウィングでさえヘリオローザは正面から受け止め弾いてしまった。
「失う悲しみを知らないものに何が分かる!!!」
家族、普通の生活、花、希望、そして世界。全てを失ったフランは同じ悲劇を繰り返さないために立ち上がった。なのに何故彼らは自分の前に立ちはだかる。
「知っているさ!だからこそ仲間がいることの大切さや素晴らしさが分かるんだ!!」
失う悲しみを知らないと断じるフランにバンは吠える。
バンはLBXを悪用する組織であるイノベーターやディテクターとの戦いを潜り抜けてきた。
その戦いの道のりは決してやさしいものでは無かった。
イノベーターの策略によって自分たちを影でサポートしてくれていた宇崎悠介を目の前で失い塞ぎこんだ。師匠のように慕ったレックスと敵対し最後には救われ、そして救うことが出来なかった。
山野バンという男は失う悲しみを知っている。今も隣にいてくれる仲間の大切さ、絆の素晴らしさを理解している。
「くっ・・・・」
オーディーンMk-2とアキレスD9もヘリオローザの剣戟に次第に追い詰められていく。
ヒロの反応速度をもってしても捌ききれず反撃に転じることができない。
ヒロの心にも焦りが生まれてくる。
操作に集中するヒロの隣でバンがつぶやく。
「ヒロ、受け止めるんだ。」
「え?」
「フランを、フランの悲しみを受け止めるんだ。」
フランと同様に失う悲しみを知るバンが示した答え。
その意味をヒロも理解した。
オーディーンMk-2とアキレスD9の動きが先程までのヘリオローザを打ち倒そうとする動きから変わった。ヘリオローザの攻撃をいなし、受け止めようとする。
しかしフランの怒りと憎しみに呼応するように激しくなるヘリオローザの攻撃を御しきるにはあと一歩届かない。
「情熱のラヴァーズ!!」
「光速闘士ロビン!!」
「超魔神エヴァース!!」
ヘリオローザの猛攻の前にオーディーンMk-2とアキレスD9も押し切られかけたその時ヘリオローザの動きが鈍った。
「あれは・・・」
ヒロが目を向けた先には3体の巨大な影。
甲冑に身を包みレイピアを携えた女騎士、ヒーローのような姿をしたウサギ、禍々しい筋骨隆々な大猿。その影は3人の男女から伸びていた。
メイア、フェイ、SARUの三人が化身を発動しフランの侵攻を食い止めようとしていた。
「くっ・・・邪魔を、するな!!」
「そうはいかないよ!翼に、友達に託されたからね!」
「大切な仲間をこれ以上傷つけさせるわけにはいかない!」
フェーダの中心メンバーであったメイア達3人の化身の力はセカンドステージ・チルドレンの力を手放して尚、強力なものだった。
「フラン!あなたも気付いてるはずよ!このままじゃあなたも世界を滅ぼした愚かな人間たちと同じになってしまうって!」
「っっ!?」
「あなたが本当は他人を思いやれる優しい人だって私には分かるわ!だからもう終わりにしましょう!」
「だ、黙れ!!」
「今だ!ヒロ!」
3人の化身による抵抗、そしてメイアの語りかけによってフランの意識がヘリオローザから僅かに離れ攻撃の手が緩んだ。その好きをバンとヒロは逃さなかった。
ヘリオローザの攻撃を躱し組みついた。
「くっ・・・こざかしい!!」
ヘリオローザを打ち負かすのではなく動きを止めることに全力を注ぐ。
フランの心の結晶であるヘリオローザを止めることがフランの悲しみを受け止めることに繋がると信じて。
「バン、ヒロ!お待たせ!」
「ラン!」「ランさん!」
ミネルヴァ改の調整を終えランがなんとか戦線に復帰した。
組みつく2機をヘリオローザが振り払おうともがく。
「ラン、俺たちのLBXごと打つんだ。」
「マジ!?」
「あいつを止めるにはそれしかない。」
オーディーンMk-2とアキレスD9の2機がかりでの拘束もヘリオローザの前でがそう長くは持たないことをバンは確信していた。今このタイミングを逃せばもうヘリオローザを止めることは出来ない。
たとえ自分たちのLBXが再起不能になろうとも今やるしかないと覚悟した。
覚悟を決めたバンとヒロの目を見てランも覚悟を決めようとする。
バンとヒロが決死の思いで作ってくれたチャンス。自分がこのチャンスを逃せば終わり。
二人も覚悟の上。あと一回CCMを操作する指を押し込めば必殺ファンクションが放たれる。
この指でボタンを押し込みバンとヒロのLBXごとフランのLBXを破壊する。
「やっぱ無理~~~!!!私も受け止める!!」
出来なかった。仲間の大切なLBXごと相手のLBXを打ちぬくことが。フランの心の結晶であるヘリオローザを破壊することがランには出来なかった。
だから選んだ。自分も一緒に受け止める道を。
「貴様ら!?」
ミネルヴァ改も加わったことでヘリオローザが限界を迎え地面に墜落した。
高空からの墜落によって遂にヘリオローザは機能を停止した。
そしてミネルヴァ改が加わった瞬間に3人の心がフランの分身であるヘリオローザを通じて流れ込んだ。
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バンたちがヘリオローザと対峙しているころ
「天馬!」
誰かが俺を呼ぶ声がする。この声は翼だ。
呼ぶ声に答えるため体を起こそうとすると体中に激痛が走った。
俺はフランの攻撃を受けて、それで気を失ってたのか。
ダメだな。キャプテンなのにみんなに心配かけてちゃ。
「天馬。俺は立てるか?なんて言わないぞ。松風天馬っていう男はこんなところで諦めるようなやつじゃないて知ってるからな。」
厳しいように聞こえるけれど翼はいつも俺のことを信じてくれる。くじけそうな時に背中を押してくれる。
だから俺も背中を預けられる。
「バンさんたちもフランを止めようとしてくれてる。メイアたちも協力してくれてる。けどそれだけじゃダメなんだ。フランを止めるのは天馬、お前なんだ!」
フランを止める。そうだ、止めるんだ。
さっきフランの攻撃を受けた時に感じたんだ。フランの怒りと憎しみ。そして悲しみと孤独を。
この戦いが始まる前分からなくなっていた本当のフランの姿が今なら分かる。
心に触れられないようにする怒りと憎しみっていう心のトゲで覆い隠された、誰かを愛したくて誰かに愛されたくて暗闇の中で誰かの助けを求めて泣いてる孤独な女の子。
「翼・・・やっと分かったよ。俺がやらなくちゃいけないことが。」
「そうか。なら後はやるだけだ。信じてるぞ。」
そう言って翼は走り去っていった。
顔をあげればフェイたちが化身でフランの力を抑えてこんでくれてる。
バンさんたちのLBXが多分フランのLBXに組みついているのが見える。
「・・・行かなきゃ。」
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「あの感じなら天馬は大丈夫だ。メイアたちも頑張ってくれてる。後は・・・」
天馬は自分の答えにたどり着いたみたいだ。もう何も心配ない。
けどそれだけじゃダメだ。
メイアたちも必死にフランを食い止めてくれている間に何とかしないと。
天馬を置いてやってきたのはスタジアムの壁に出来た大きなくぼみのひとつ。
「アスタ!大丈夫か?!」
「お前は・・・ああ、何とかな。」
天馬と一緒にフランの攻撃を受けたアスタがそこにはいた。
天馬と同じかそれ以上にダメージを受けているみたいだ。
俺が来たことに驚いたようだが答えてくれる。
「時間が無い。手短に言うぞ。・・・力を貸してくれ。一緒にフランを止めるんだ。」
この戦いは俺たちだけじゃフランを倒すことは難しい。
いや、フランの記憶で見た研究者たちが言っていたようにフランの力は同じセブンスのアスタやサンと比べても次元が違うレベルだ。
きっとアスタたち含めて俺たちが全員で戦ってもフランを倒すことは出来ない。
だけどフランは倒すべき敵なんかじゃない。倒すんじゃなくて受け止める。
そのためにはアスタたちの力も必要だ。
「言っただろ?俺たちは分かり合える。アスタもフランを守りたいんだろ?さぁ!」
アスタに手を差し出す。試合を通じてアスタからは戦いへの憎しみ以上にフランを守りたいという強い思いを感じた。俺たちの目的は一致してる。あとはアスタがこの手を取ってさえくれれば。
差し出した俺の手を見つめるアスタ。少しの沈黙が流れる。
そして。
「・・・言われるまでもない。俺はフランを守るためにこの場にいる。」
アスタが強く、強く俺の手を取ってくれた。
「やろう!フランを止めるんだ。」
「アスタ!ありがとう!」
「行くぞ・・・っっ!?」
俺の手を取り立ち上がったアスタがその足を踏み出したがふらついて倒れそうになり咄嗟に受け止め肩を貸した。
なんてことないことだが肩を貸した瞬間に違和感を感じた。
「アスタ・・・お前は・・・」
「ふっ。ま、そういうことだ。大丈夫、まだこの体は動く。サンも立ち上がるはずだ。さぁ!」
「アスタ・・・」
言葉を紡ごうとしたその時、背後から凄まじい衝撃を感じた。
いかがだったでしょうか
フラン戦は時間にしてみれば短いですがド迫力でいいですよね。
魔女アームド大好き。ヴィクロで早く再現させてほしいです。
後半は明日にでも投稿できるかと思います。
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