今回はイナダン後日談になります。後日談が数話続きます。お付き合いいただければと思います。
カーテンの隙間からさす朝の日差しと耳元で鳴り響くアラームの音でまどろみから覚める。
あと5分寝かせてなんて以前なら言っていた、いや今でもたまに言っているがそんな自堕落な自分を蹴り飛ばし起きる。
知っている天井だ。毎朝見上げる自分の部屋の天井。
なんてことのない中学生の朝だ。
あの不思議な出会いから幾ばくかの時が流れたが今日も今日とて日常は続いている。
寝ぼけ眼をこすりながら部屋を出る。
洗面所で顔を洗い歯磨きを済ませればその頃にはしっかりと意識も覚醒する。
「おはよ~秋ねえ。」
「おはよう、翼。もうすぐ朝ごはん出来るから座ってて。」
食卓に戻れば秋ねえが朝ごはんの準備をしてくれていた。
さっき通った時はいなかったのか、はたまた俺が気付かなかったのか。記憶にあるのは朝ごはんの良い香りがしていたことだけだ。
「は~い。いつもありがとう。メイアと天馬は?」
「メイアちゃんなら部屋で学校の用意をしてくるって言ってたからすぐ出てくるんじゃないかな。天馬はまだ寝てるみたい。」
どうやら今日は天馬より俺のほうが早起きだったらしい。
俺たち3人はちゃんと朝起きるメイアと起きれるかどうか蓋を開けてみないと分からない俺と天馬に分かれる。信助や葵にこのことを話すと口を揃えて、だろうね、という答えが返ってきた。
解せぬなんて思ってると足音が聞こえてきた。
木暮さんたち社会人はこの時間にはもういない人が殆どだ。
となると足音の正体は二択なわけだが。
「あら、今日は翼のほうが早起きだったのね。おはよう。」
「おはよう。そういうメイアはいつもちゃんとしてるな。たまには寝坊してるとこを見せてくれたって良いんだぞ?」
「絶対嫌!翼と天馬がだらしないだけよ!」
う~ん。たまには慌ててるメイアも見てみたいんだけどな。
甘えてくれることは増えたけどこういうガードは固い。
「そうよ。翼も少しは見習いなさい。はい、朝ごはん出来たわよ。翼、天馬を起こしてきて。」
「は~い、ってちょうど起きてきたみたいだよ。」
秋ねえに言われて天馬を起こしに行こうとしたのと同時に天馬が部屋から出てきた。
まだかなり眠そうだけどまぁギリギリセーフだな。
「天馬~早く顔洗ってこい。朝ごはん出来てるぞ。」
「う~ん、おはよ~」
「なんか随分眠たそうだな?夜更かしでもしたのか?」
「ちょっとね~ふぁ~あ」
ここ最近は俺のほうが早く起きることが増えた。
というより天馬が起きるのが遅いことが増えた気がする。
夜は一緒に過ごすことも多いが就寝時間にはそれぞれの部屋に戻るからその後のことは知らない。
まぁ遅刻しそうなら起こしにいくから問題ないと言えば問題ないけど。
「今日も部活あるのよね?」
「うん。テスト期間はもう少し先だしね。」
「勉強の方は大丈夫?」
「うぐっ・・・ダイジョウブデス」
「大丈夫です。二人のテスト勉強は私がみっちりと詰め込みますから♪」
「それなら安心ね。」
秋ねえも入れて4人で朝食を囲む。
この光景もすっかり日常の一幕になった。
メイアも秋ねえに対して随分心を開いてるし一緒に買い物にいったりもしてる。
木枯らし荘は今日も平和だ。
「ほら、よしよ~し。良い子にしてるのよ~」
「お待たせメイア。」
朝食を食べ終えて準備を済ませ外に出るとメイアがサスケの世話をしていた。
一応飼い主は天馬だがサスケの世話はみんなでやることになっている。
というかメイアがすごくやりたがっていた。サスケの方もよく懐いているしなんなら俺に対してより懐いている気がする。
「天馬と一緒じゃなかったの?」
「俺もてっきりもう来てるかと思ってたよ。ちょっと部屋覗いてくるよ。」
ちょっと準備に手間取ったから天馬の方が先に出てきてると思ったんだがな。
まさか二度寝してはいないだろうけど念のため部屋に呼びに行くことにした。
「天馬~入るぞ~」
ガチャリと扉を開け天馬の部屋に入るとそこにはちゃんと天馬がいた。
二度寝してないようで何よりだ。
「準備できたか?」
「うん。ちょうど今終わったところ。行こっか。」
そう言って振り向いた天馬の手には小型のじょうろが握られていた。
じょうろを置いて鞄を肩にかけ部屋を出る天馬の背中越し、窓のそばには1個の花瓶。そしてその花瓶には白いユリと黒いバラ、2輪の花が飾られていた。
変わらない木枯らし荘の日常風景のなかであの戦いを経て少しだけ変わったところだった。
変わらない中学生の日常がということは学校生活も続くということだ。
エルドラドの一員として働きながらも中学生という特殊な身分ではあるがそれはそれだ。
相も変わらず二度目の中学一年生の授業についていくのに必死である。
今も教室では理科の授業が行われている。今日は植物の授業。
植物の呼吸と光合成がどうのと聞いたことあるような無いような話を理科の先生がしている。
まずい。眠たくなってきた。
眠気を紛らわすように教室中に目を向ける。
ちゃんと授業を聞いている者、隣の席の友達とこそこそ話している者、俺のように舟をこいでいる者と様々だ。
サッカー部でいうと葵はいつもちゃんと授業を聞いている。信助は自分の興味が向く範囲の時は興味津々だ。恐竜時代の時を思い出す。
意外にも狩屋は結構ちゃんと授業を聞いている。表向きは優等生なのもあるが本人に以前聞いてみたらテストの点数が悪いとお日様園、特に八神さんに叱られるらしい。前にお日様園に遊びに行った時にあったことがあるが確かに厳しそうな人だった。
メイアはというとセカンドステージ・チルドレンの頭脳だ。正直授業は楽勝も良いところでクラスメイトに分からなかったところを質問されるところをよく見かける。授業は退屈かもしれないけど、この時代の人たちと触れ合う機会も増えて楽しそうにしている。
俺の視線に気付いたのかこっちに手を振ってくる。
「相変わらず仲がよろしいこと。」
「茶化さないでくれよ。」
後ろの席の子につつかれる。付き合ってることを公言してからクラスメイトからはよくイジられるようになった。
まぁこういうふとした時に目が合うだけでも心地良いんだけど。
「ん?」
そんなメイアの少し前の席には天馬がいた。見た感じあまり集中してなさそうだ。
天馬はサッカーのことに意識が言っていて授業を聞いていないことが多々ある。俺と違って真面目ではあるんだけどサッカー馬鹿なんだよな。いや俺も真面目だが?
だけど今日の天馬はいつものトリップの仕方とは違って見えた。
まるでどこか遠くの誰かに思いを馳せているような気がした。
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遠い未来のとある家庭では一人の少女と親子の日常が繰り広げられていた。
「ママ!洗濯物ここに置いておくわね。」
「ありがとうフラン。助かるわ。」
親子だけあってよく似た雰囲気の母と娘。
娘が休日に母の家事の手伝いをするといういたってありふれた日常。
たまの休日を穏やかに過ごす父は微笑みを絶やさない。
「フラン、そろそろ時間じゃないか?」
「え?・・・本当だ!」
「アスタくんとサンくんが心配するよ。あとは父さんと母さんでやっておくから早く行ってあげなさい。」
「ありがとうパパ!それじゃ行ってきます!」
約束の時間が迫っていることに気付き足早に家を出ていったフランを両親は優しく見つめていた。
フランが暮らす未来の団地が入るビル街を抜けた自然の息吹を感じる丘の上にてフランを待つ二人の少年がいた。
「アスタ、サン!遅れてごめんなさい!」
「僕らもちょうど来たところだよ。」
「別に気にすることないさ。」
「今度またお菓子を焼いてくるわ。それじゃ今日もやりましょう。」
「ああ。」「うん。」
フランの心を守るため幻となり共に戦ったアスタとサンはこの世界でもフランと共に歩んでいた。
フランたち3人は親友とも家族とも異なる特別な関係であった。
そんな3人はそれぞれ肉親と過ごしながらもこうして3人で過ごすことも多い。
3人集まってサッカーをする日もあればLBXバトルをする日もある。はたまたこうして文明が発展し人工物であふれる世界にも確かに根ざす花畑などの自然を守り拡大する取り組みも行っていた。
文明の拡大に比べるととても緩やかかもしれないが、その一歩一歩がこの平和な世界を守ることに繋がるとフランたちは信じている。それに彼女たちはただの少年少女ではない。
天馬たちとのあの戦いを経て未来は代わり、一度滅亡した世界は救われた。
荒廃した砂漠はこうして文明と自然が共存する世界へと変わった。
だが全てが変わった訳ではない。フランたちセブンスの力は今も健在であった。
その力をフランは世界のために使うと誓った。
作業をしながらフランはあの出会いに思いを馳せる。
(天馬たちとのあの戦い。戦いは憎しみ合うだけのものではないと知った。そして彼らは勇気があれば未来だって変えられると言って、こうして本当に未来を変えてくれた。だから天馬たちが変えてくれたこの世界を今度は私が守っていく。)
天馬たちと別れ元の世界に帰ってきたフランを待っていたのはアスタとサン。そして希望そのものだった。二人に迎えられたフランは世界が変わる瞬間を目の当たりにした。その時からフランの新たな人生が始まった。
(パパとママは滅びた世界のことを覚えてはいない。というより私たち3人以外は誰もあのことを覚えていない。)
反物質爆弾によってこの世界は一度滅びた。唯一生き残ったフランとフランが生み出した幻として世界を救うために戦い、変わったこの世界で生き返ったアスタとサンだけがその記憶を有している。
(二度とあんな悲劇は繰り返させない。)
フランは遠くにそびえるビル群のほうを見やり拳を固く握る。
以前の世界ではあの中に能力開発研究所もあった。セブンスの子どもたちを集め能力を制御できるように教育、という名の実験を繰り返し戦争の道具にしようとする悪魔の巣窟。
この世界に戻ってからその場所へ向かったがそこには全く別の建造物があった。
今のところ能力開発研究所の存在は確認できていない。
(けれど私たちのこの力が失われていないということは今もどこかにセブンスの力に目覚めた子どもたちがいるかもしれない。ならいつまた彼らのような機関が現れるとも限らない。)
「姉さん!」
「っっ!?サン・・・?」
「姉さん大丈夫?その・・・辛そうにしていたけど」
「ごめんなさい・・・何でもないわ。」
「・・・奴らのことを思い出してたのか?」
「アスタ・・・ええ。もしまたあいつらのような存在が現れたらこの平和も消えてしまうのかって。」
「フラン・・・」
あんな機関が生まれてしまえば人間の欲望に火がついてしまう。戦争が起きてしまえば両親との生活も、この花たちも、アスタとサンもまた失ってしまうかもしれない。
そう思うとどうしても不安になる。そして同時にフランの中に負の感情が生まれる。
天馬たちとの出会いを通じて真剣な心と心をぶつけ合い絆が生まれる戦いもあることを知ったフランは全ての戦いを否定することは無くなった。
それでも憎しみの炎を生み出し大切なものを奪う戦いや戦争に対する憎しみにも似た嫌悪感が薄れることは無かった。
(もしアスタとサン、パパとママを奪われたら・・・)
拳を固く握るフランの姿はあの戦いで見せた黒い魔女のような姿に変貌しつつある。
フランの持つ負の感情が大きくなると現れるもう一人のフランとも言える存在。
「フラン!」「姉さん!」
アスタとサンの声がフランの意識を呼び戻す。
「大丈夫だ。俺たちはもういなくなったりはしない。」
「だから安心して、姉さん。」
「二人とも・・・そうよね。ごめんなさい、心配かけて。」
(もっとちゃんと感情を制御出来るようにならなくちゃ。)
また自分が憎しみに囚われて世界を滅ぼしてしまわないように。
自分の中に眠る感情と魔女のような姿。これが表に出てくることがあってはならない。克服し消してしまわないといけないとフランは考えている。だがその方法が分からないでいる。
ふとフランの髪と足元の花たちをそよ風がそっと揺らす。
(ねえ天馬。あなたなら分かるのかしら?)
あの世界で出会った少年たち。そのなかでもずっとフランを気にかけ、心をぶつけてきたそよ風のような少年。
二人だけが共有したあの夜の花畑の光景と胸の高鳴りは今でも鮮明に思い出せる。
憎しみに囚われ破壊兵器と化し世界を滅ぼそうとしたフランを包み込んだ光の掌の温もり。
どこまでも透き通る心の持ち主。
この世界に戻ってきてからも彼のことを思い出したのは両手の指では足りなかった。
「もしかしてあいつらの、松風天馬のことを考えてるんじゃないか?」
「え?」
口には出していないはずなのにアスタに心の内を見透かされて思わず声を漏らすフラン。
「別に心を読んだ訳じゃないよ。なんとなくそう思ったんだ。それに姉さん、よく今と同じ顔をしてるよ?」
「私ってそんなに分かりやすかった?」
「僕らを舐めてもらっちゃ困るよ。」「ああ。」
この三人の間で隠し事はできないようだ。
「流石ね二人とも。・・・うん。天馬ならどうするかなって考えてたわ。」
「そっか。」
「・・・・・・会いにいってきたらどうだ?」
「え?」
アスタの提案にまたも声が漏れる。
「フランが今抱えてる悩みはきっと俺たちだけでは答えが出せないものなんじゃないかな。」
「うん。彼にはきっと答えに繋がる何かがあるかもしれない。行っておいでよ、姉さん。」
「フランのお父さんたちには俺たちから説明しとくさ。」
「二人とも・・・・ありがとう。私、行ってくるわ!」
「うん。行ってらっしゃい、姉さん。」
「変なことされたら俺がとっちめてやるよ!」
「もう!天馬たちなら大丈夫なのはアスタも知ってるでしょう!」
こうしてフランはまた時を渡ることを決めたのだった。
いかがだったでしょうか?
本編の後日談というか日常回やってるんだからイナダンでもやりたいということでやっていきます。
天馬とフランについてタグ追加したほうが良いか迷いましたが本編完結後だし一旦追加しない方向でいきます。
更新頻度がかなり下がってしまうのですが引き続きお付き合いいただければと思います。
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