タトゥイーンの軌道に出て、デューン・シーから距離を取って着陸する。
ジャバからコンタクトを受けたのは、息子のロッタの救出を依頼された時以来だ。それ以来、私は関わっていなかった。どういう再会になるのか、ジャバの行動を予期できない。
マントを羽織って、私はジャバの宮殿を目指した。
デューン・シーはあの頃と何も変わっていなくて、帝国でも外縁部の統治は完全にできていないと感じた。
共和国の影響力は外縁部、アウター・リムまで届かなかった。22年前、共和国は帝国に再編されて、力は外縁部にも及んだ。皇帝は銀河全域を支配したけど、無理な統治は綻びが生まれる。
その綻びが、ハット・スペースにあることを信じよう。
宮殿の門をノックすると、目玉が現れて私を見下ろす。
「アリス・レインが会いに来たと、ジャバ・ザ・ハットに伝えて。」
目玉が消えて、門が開く。
ここに来るまでに、センサー網が私を感知していたはずだ。敵と認識されていないことは安心できたけど、実際はどうなのか分からない。普通に会えれば幸いだ。
「《ついて来い。》」
フォーチュナに連れられ、私は謁見の間に通された。
姿を現した私に、ジャバの手下達は囁き出す。当然といえば当然だ。私がジェダイである上に、反乱軍の一員だと知る者もいるだろうから。
「《遅かったじゃないか。》」
「それは申し訳ない。いろいろあってね。」
翻訳されていないハット語に返事した私に、ジャバは少し驚く。
前回会った時は、翻訳ドロイドが必要不可欠だった。しかし今回、3POにハット語を教えてもらっていた。勉強は嫌いだけど、今後の為に損はないはずだ。
「ボバ・フェットからメッセージを受け取ったよ。ていうか、私に驚かないのを見ると、もう帝国と仲良くなったの?」
「《仕方なかった。だが奴らと手を結べば、わしはハットを完全掌握できる。》」
「そんなちっぽけな支配に拘るの?」
そう発言した途端、ジャバの手下達が一斉に私へブラスターを向ける。
「私にブラスターを向けるのは、ジャバの指示が出てからにした方がいいよ。」
ジャバが手下達を諫め、会話が再開される。
「《アリス・レイン、お前のことはシスの暗黒卿に聞いた。ソロを渡せば、安全を保証してやろう。》」
なるほど、帝国とジャバは利害が一致したわけか。しかし、ジャバは素直に従うような奴じゃない。帝国と取引が成立する前に、何とかしたいんだろう。
最悪、ジャバは私一人の存在で、この状況がどうにかなると思っている。
「利用される気はないよ、ジャバ。」
「《ジェダイ、》」
「ソロはあれでも一応友人だから。渡す気はない。安全を保証するって言うけど、その安全は帝国が保証したものでしょう?あんたの保証じゃない。私がここにいるとシスの暗黒卿が知れば、帝国は私を差し出すように言ってくるよ。」
ジャバが私を引き渡すことくらい、考えなくても分かる。奴は自分の利を優先する。以前コネになったのも、私が利用できると思ったからだ。
利用できない私に、価値はない。
「《良かろう。今回は見逃してやる。二度とわしの前に現れるな。》」
「安心して。私も来るつもりはない。」
フォーチュナに肩を引かれ、謁見の間を追い出される。
私が去ることを許したのは、ジャバの最後の情けだ。本来なら、ジャバの申し出を断った時点で落とし穴に落とされるか、殺されるかのどちらかだ。どちらもされなかったということは、最後の好だろう。
ハット族にフォースの技は通じないけど、考えは分かる。ロッタ誘拐事件の時、私を疑った埋め合わせのつもりだと思われる。ジャバにしては、温情的すぎるんだよね。それしか心当たりがない。
宮殿を追い出され、私は来た道を戻る。
Aウィングに乗り込もうとすると、嫌なものを感じて乗るのをやめた。
「人……じゃない………」
その瞬間、ドロイドのナイフが視界に入った。
ギリギリで避け、ライトセーバーで腕を切り落として襲撃者を見ると、襲ってきたドロイドが暗殺ドロイドだと気付いた。IG型のドロイドは、暗殺専門だ。それだけで、誰の指示か分かる。
「ソノ動キハ想定済ミダ。」
「ここまでは、でしょ?」
今度はブラスターを撃ってきて、私はIGドロイドの脚を切り落とす。動きが不安定になったIGドロイドの胴体にライトセーバーを突き刺すと、各所の配線がショートして倒れた。運動プログラムは落ちたが、人格プログラムはまだ生きていて、ドロイドに雇い主を問う。
「誰の差し金?」
「契約ヲ明カスコトハプログラムデ禁ジラレテイル。」
「あっそ、じゃあいいよ。」
「オマエニ警告スル。皇帝ハオマエノ狙イニ気付イテイル。」
「え、何?プログラムの誤作動?」
「信ジルモ…信ジナイ…モ……オマエ………シ…ダイ……ダ………」
IGドロイドは、勝手に停止した。
暗殺ドロイドが残した言葉に、私は考え込む。シディアスが私の狙いを知っているってことは、私がルークを鍛えていることを知っているということだ。私が何を目的としているのか、シディアスは気付いている。
それを、暗殺ドロイドで確かめる程に。
「めんどくせぇ……」
私の足掻きには、ジェダイとなったルークが必要だ。それを、皇帝は阻止しようとしている。私が全てを諦めれば、シディアスの支配は続くのだから。
邪魔されるわけにはいかない。シディアスは、欲を掻きすぎだ。帝国、シディアスの支配を終わらせる為に、最後まで抵抗してやる。
今度こそAウィングに乗り込み、目的地の座標を入れる。
さて、次の行動を起こさないと。
未来は、変化しつつある。
────────
その頃ダゴバでは、ルークは小さな緑色の生き物と出会っていた。出会ったその老人に連れられ、家で料理を振る舞われるが、ルークはヨーダに会わせろと急かす。アリスに聞いていた話と違うと呟けば、その老人はルークに反応する。
「アリス?アリスと言ったか?」
「あ、ああ。アリスのことも知っているのか?」
「知っているとも!友達じゃ!」
「知らなかった……」
強ち間違いではないが、ルークはその言葉を信じた。
「あんたと喋っている時間はないんだ!ヨーダはどこだ?」
「この子には教えられん。辛抱が足りんな。」
「え?」
ルークは耳を疑う。老人の様子が、先程とはまるで違った。ふざけた態度をやめ、その瞳がルークを射抜く。
そこへ、オビ=ワンの声が響く。
『アリスや私もそうでした。』
「すぐカッとなる。父親とそっくりじゃ。」
『我々は違いましたか?』
「この子は恐怖に耐えられるか?」
『いつかは恐怖に負けてしまうでしょう。』
「そんなことはない!ベン、言ってくれ!僕にはできると!」
ここで見放されるわけにはいかない。ルークは必死に懇願する。訓練を受けたいと、ヨーダに頼み込んだ。
「アリスから何を学んだ?」
「ジェダイの訓練を受けました。フォースと、ライトセーバーの技を。ただ、僕には欠けているものがある、と。」
訓練中、アリスは何度も言った。ルークに耐えろ、と。訓練を受けるだけが、ジェダイではない。アリスはルークにそう教えた。
「彼女の言う通りじゃ。アリスも、お前に忍耐が足りんことを見抜いておる。わしに教えを受けさせようとしたのも、その為じゃ。お前にわしの修行が耐えられるか?」
「失望はさせません。決して恐れません。」
「さて、どうか。今の言葉、決して忘れるな。」
ルークは、ようやくアリスの言った欠けているものの意味を理解した。だが、ルークは少し勘違いをしている。訓練に耐えるだけではない。
彼がその意味を知るのは、少し後の話だった。