ルークの前に立ち、ヴェイダーと睨み合う。そんな私に、奴はまた嘲笑する。ルークは絶望している、と。
「我が息子は、お前にも絶望しているぞ。お前は嘘を吐いていた。父親は死んだとな。」
「本当のことでしょう?オビ=ワンも私も、嘘は言ってない。あんたがアナキンを殺した。良心をね。」
ライトセーバーを交えて分かった。アナキン・スカイウォーカーは存在しない。在るのは、ダース・ヴェイダーだけ。
「良心だと?ではお前は、ルークの為に死ぬ良心があるのか?」
「あるよ。可愛い弟子の為だもの。」
「弟子の為に、命を懸けるつもりか?」
「教え子の為に身体を張るのが、師としての義務じゃない?」
ここで死ぬ気はないが、ルークの為にしてあげられることはある。
「ならば、今その義務を果たすがいい。」
赤いライトセーバーが投擲されカーブを描き、ルークを目掛けて飛んでいく。それをライトセーバーで弾き、私達はお互いの手の平を向け合う。フォースの押し合いだ。
「なんてフォースだ……」
ルークの呟きが聞こえた。
どちらも引く気はない。私もヴェイダーも、全力だ。一呼吸置いて、更にフォースに集中させる。
押し返されたのは、ヴェイダーだった。
「どうやら本気のようだな。皇帝陛下は、今のお前をお望みだ。お前が共に来れば、我が息子は見逃そう。」
「断る。私は暗黒面に手は出さない。何があったとしてもね。」
「賢明な判断とは思えんな。」
「それはあんたの基準。私がどんなジェダイだったのか、忘れたわけではないでしょう?」
元親友に、そう問う。
ヴェイダーは、憶えているはずだ。故に、私がどのような選択をするか分かるだろう。道は、一つじゃない。
「お前こそ忘れているようだな、レイン。この申し出は“マスター”がお前にしたものと同じだ。断れば、ルークを見逃すことはできんぞ。」
“シディアスの誘い”
クローン戦争が終わる直前、私は同じことを問われた。私がシスに降れば、アナキンは諦める、と。その時は拒否して、守るはずだったアナキンと敵対することになった。
でも、今は違う。
アナキンの息子は、私やアナキン以上に強い。私が拒んでも、ルークは自分で道を見つける。シディアスに従ったりしない。
「あの時とは状況が違う。私は拒むし、可愛い弟子も渡さない。」
「だが、結果は同じだ。お前は弟子を失い、我が息子は暗黒面の使い手となる。レイン、後戻りはできないのだ。」
ヴェイダーに背を向けて、ルークに問い掛ける。
「ルーク、覚悟はできてる?」
「何の、」
「直感的に答えて。YESかNOで。」
「………できています、先生。」
「よろしい。」
「っ!?アリス!!!」
ルークの肩を抱き、間髪入れずにシャフトに飛び降りる。ヴェイダーが手を伸ばそうとしてきたが、既に手遅れだ。フォースを使い、私はルークを抱えたまま通気口に滑り込む。
ルークを上にして中を滑り、途中で突起に掴まって止まった。
人一人を支えるのは、結構きつい。
「アリス……」
「ごめん、また落ちるよ。」
「え…」
手を離して再び滑り、ようやく止まる。
息を吐く間もなくポータルが開いて、私とルークは落ちる。ギリギリのところで風向計に引っ掛かり、私はルークの脚を必死に掴む。このプランを選んだのは、失敗だったかもしれない。
「アリス」
「んー、何ー?後にしない?」
「父を救うことはできるのか?」
「意味合いにもよる。ちょっと待って、本当にやばい。」
私の焦りに、ルークは目を閉じる。その理由を察して、辺りをフォースを通して探ると、逃げたはずのファルコンが戻ってくるのが見えた。ルークは、確実に成長している。
「レイア……助けてくれ。」
ルークはレイアに念を送っている。悲鳴に似た念に、私は口を噤む。その悲鳴が、心苦しい。
「………来た。」
ファルコンが戻ってきて、私達の真下にゆっくり静止する。船の脱出ハッチが開き、カルリジアンが姿を現した。まずルークを降ろし、私もファルコンに跳び乗る。
「行動してくれて良かったよ、カルリジアン。」
「勘弁してくれ。」
ハッチが閉まり、ルークを寝台に寝かせる。
レイアが駆け付けてきて、ルークの額に手を触れた。
「酷い顔色だわ……」
「すぐに良くなるよ。敵が来る。早く逃げよう。」
レイアは頷き、コックピットへと向かう。私も後を追おうとすると、腕を掴まれて立ち止まってしまった。掴んだのは、ルークだった。
「アリス……」
「ルーク、休んでて。」
「どうして隠していたんだ……」
オビ=ワンへの疑念と同時に、ルークは私にもその感情を向ける。
「貴女は訓練の最中、父を救えなかったと言った。」
「間違いじゃない。」
「間違いだ。父は生きている。」
「でも、アナキンの心はない。」
「いいや、ある。僕には分かる。アリス、貴女は簡単に諦めるのか?」
絶望していたのは、私も同じだ。アナキンの心が見えなくて、諦めかけていた。しかし、ルークは希望を信じている。
「アリスは、皇帝を倒すことしか考えていなくて、父が見えていない。」
「………」
「違いますか、先生?」
「………違わない。」
弟子に考えを改めさせられるなんて、私はまだ未熟だ。
「ルーク、帰ったら全部話すよ。」
「アリス……?」
「追手をどうにかしなきゃ。」
ルークから離れ、コックピットへ向かう。
ファルコンを捕らえようとするエグゼクターから、ヴェイダーの意識を感じた。奴は、息子を求めている。そして、私にも意識を向けてきた。私はヴェイダーを拒み、コックピットに入る。
何度も船が揺れて、なぜハイパースペースに入らないのか分からなかった。
「ハイパードライブは!?」
「ハイパードライブは使えない!帝国にやられたんだ!」
コックピットを飛び出して、チューバッカを手伝いに向かう。ハイパースペースに入れなければ、トラクター・ビームに捕まってしまう。シールドもいつまで保つか分からない。
私にできることは、基盤を直すことだけだった。
やはり機械の相手は苦手だ。