エンドアに戻った私とルークは、アナキンの亡骸を薪の上に寝かせる。ルークが火を点け、アナキン・スカイウォーカーは炎に包まれていく。
私は親友の遺体が燃えていくのを、静かに見つめる。
「ルーク、頼みがある。」
アナキンの遺体が燃え尽きた頃、ルークに最後のお願いだと告げる。
「断る。」
「聞いてから答えてよ。」
「貴女が言おうとしていることは分かる。」
私が言う前に、弟子はその頼みを拒む。
「お願い、聞いて。ダンタムを呼んでほしいだけ。」
「呼んで、どうするんだ?」
「2人で反乱軍を去るの。皇帝は死んだ。だから、もう私は必要ない。生きて戻ったら、彼と静かに暮らすと約束したから。」
ジェダイも議員も、新共和国も関係ない。何の柵もなく、静かに過ごしたいと願っていた。シディアスとの戦いが終わった今、自分の幸せを取りたい。
「そんな……では、レイアの訓練は誰がやるんだ!?」
レイアはベスピンで、フォース感応力の覚醒の兆しを見せた。あの子も、紛れもなくスカイウォーカーの血を受け継いでいる。ジェダイの素質は充分ある。
「ルーク、あんたが訓練すればいい。」
「僕はまだ、」
「あんたは良きジェダイになった。私がいなくても大丈夫。あぁ、新しいオーダーにも、私は必要ないよ。」
気持ちを変える気はない。
私の頼みに、ルークは悲しそうな表情をする。
「肝心の呪いは解けたのか?」
「んー、たぶん解けた。」
「たぶん?」
「解けたからと言って、すぐに老けないと思う。」
本当は、確かめようがないから、はっきり言って分からないのが現状だ。ただ、私が暗黒面に手を出さなかったから、どうなるか予測できない。奴は死んだから、解けたと信じたい。
解けていなかったら、大問題だ。
「………分かった。ルード議員を呼んでくる。」
ルークは、折れてくれた。
「先生、幸運を。」
「ありがとう、ルーク。」
弟子は、フォースと共に、とは言わなかった。一個人として、私の幸運を願ってくれたんだ。その願いに応えなければ。
ルークは反乱軍の下へ戻り、私は燃え尽きた親友の傍に寄る。
フォースに繋がり、私は感覚を研ぎ澄ませる。
その時、背後から誰かに肩を叩かれる。
『アリス』
振り向かずに、返事をする。
懐かしいその気配に、私はようやく振り向いた。そこにはアナキンが霊体で、ジェダイとしてのの姿で立っていて、穏やかな表情をしていた。親友の笑みに、私も笑みを返す。
『巣立ったのは、僕の息子ではなく君のようだ。』
「可愛い弟子と離れるのは寂しいよ。」
『アリス、頼むからその表情はやめてくれ。』
「え?どんな表情?」
『親離れされた母親みたいな表情だ。』
可愛いんだから仕方ない。
子供の頃から知っているんだから、そう思っても仕方ないよね。よく考えたら、レイアがハンとくっつくのも寂しい。やだ、考えがおばさんだわ。
「とても良い子達だよ。」
『ああ、僕の子供達だからな。』
「………アナキン、ありがとう。」
『フォースと共にあらんことを、アリス。』
アナキンはそう言って、姿を消した。
感謝を伝えられたから、私は満足だ。アナキンの為にも、生きなければならない。救われたのは、私の命だけではないのだから。
「アリス!!」
聞きたかった声に、私はその声の主に笑顔を見せる。
ダンタムが駆けてきて、私を抱き締めた。
「良かった…アリス………!」
しばらくした後、ダンタムは私を離して、今度は問い詰めてくる。
「スカイウォーカーに聞いたぞ。一度は自害した、と。」
「ごめんなさい………」
「生きて戻ると言っただろう。二度と嘘は吐かないでくれ。」
「………待っててくれてありがとう。」
また私を抱き締め、ダンタムはキスをしてくる。
唇が離れた後、彼は私の肩を抱いて歩き出す。その行き先は、反乱軍のシャトルの一つ。それに乗り込んで、私は座標を入力した。
「どこへ向かう?」
「着いてからのお楽しみ。」
エンジンを立ち上げると、バイナリーが聴こえた。ダンタムと2人で振り向けば、よく知るドロイドがそこにいた。R7-D4は付いていくと言い張り、ソケットで船と接続する。
「R7、何をしている?」
「え?ルークに言われてきた?」
R7-D4を送り込んだのは、ルークだと言う。
ハッチが閉まり、シャトルは大気圏へと出る。
軌道上に出た頃、R7は私といると言って、ダンタムに許可を求める。なぜ私ではないのかと問えば、反対するのは分かっているからだと言われた。ドロイドと云えど、我儘を言うなら2人きりにしてほしかった。
私がそう返したら、R7にアームで叩かれた。
「分かった分かった、叩かないで。いいよ、一緒に行こう。」
「アリス、R7に信頼されているんだな。」
「30年来の仲だから。でも、時間は関係ないよ。」
レバーを押して、ハイパースペースへと入る。
目的地に着くまでの間、私は幸せを噛み締めていた。やっと静かに過ごせるんだ。戦いもない。私は、ついに安息を手に入れたんだ。
隣には、最愛の人がいる。
この幸運が続くことを祈ろう。
────────
その頃、イウォークの村では、宴が開かれていた。
ルークはその輪に加わり、レイアやソロと再会する。その様子をフォースの霊体のオビ=ワン、ヨーダ、アナキンが見守っていた。ルークは3人に笑みを見せて、また宴へ戻っていった。
そんな中、レイアがアリスの不在に気付き、ルークに尋ねる。
「アリスはどこです?」
その言葉に、ルークは気まずそうに口を開く。
「アリスは……行ってしまったよ。」
「なんですって!?」
更に、ルードがいないことにも気付く。アリスとルードの2人がいないということに、レイアは何かを察する。アリスが去った理由を理解し、ルークに詰め寄った。
「ルーク、貴方はそれでいいの?」
「アリスは皇帝から解放されて、シスの術も解けたんだ。見送ってあげよう。」
「そうね……」
本人が良いのならと、レイアは納得した。
ルークはこれから、新しいジェダイ・オーダーを立ち上げる。それも一人で。アリスも必要とされたが、彼女はジェダイではなく、一人の人間として生きることを選んだ。
「大丈夫だ。R7-D4を向かわせた。何かあれば、R7が呼んでくるさ。」
この先、何があるか分からない。だからルークは、アリスにドロイドを寄越した。皇帝は死んだが、ルークは親友を失った彼女を心配していた。
「ルーク、ルード議員を知らねぇか?アクバー提督が探してたんだ。」
アクバー提督がルードを探していたのは、モスマ含む司令部に呼ぶ為だった。反乱同盟軍には、まだやることが残されている。将軍であるソロも、司令部に顔を出す予定だった。
「ちょっと待て、アリスもいねぇじゃねぇか。」
「ハン、2人はもう去ったよ。」
「はぁ!?俺達の結婚式に来るんじゃなかったのか!?」
「あー……その時だけ来ると思う、アリスだから。」
ソロは心の底から呆れていた。それと同時に、アリスはそういう人だったと思い出す。しかし、ソロもアリス達を見送ることにしたのだった。
アリスとルードはそんなこと知らずに、どこかへと去っていった。
その後、彼女が姿を見せたのは数年後の、ハン・ソロとレイア・オーガナの結婚式だけだった。アリスは2人を祝福し、再び去っていく。
人々は言った。結婚式でのアリス・レインは、とても幸せそうだった、と。また、こうも言われた。彼女は、ジェダイの騎士だ、と。
アリス・レインの長い物語は、これからも紡がれていく。
昔々、一人の少女がジェダイになりました────