1週間後、私は爆睡しているところをダンタムに起こされた。
突然起こされた理由は、訪問者のせいだった。
「久しぶりね、アリス。探すのに苦労したわ。」
サビーヌと、彼女と同年代の青年がダントゥインに訪れた。2人の後ろにはチョッパーもいる。何かの任務で来たことは明らかだった。
「元気そうだね、サビーヌ。」
「ええ、ありがとう。彼はウェッジ・アンティリーズ。ウェッジ、彼女がアリスよ。」
「レイン将軍、お噂は聞いています。」
「良い噂?」
「お喋りしている暇はないわ。アリス、隠遁しているところ申し訳ないけど、事態は深刻よ。」
隠れ家で向かい合って座り、サビーヌは本題に入る。
ダンタムも交え、2人から話を聞くことにした。2人が私を探しに来たのは、任務と、警告の為だった。チョッパーがホログラムで、赤い服を着たドロイドを映し、私はそのドロイドに声を上げる。
「このドロイドは、センチネルと呼ばれるものよ。センチネルは帝国の提督や艦長、そして貴女に送られた。」
「このドロイドの目的は?」
「皇帝は自分が死んだ場合に備えて、司令を残していたんだ。全てを滅ぼす終末司令を。」
アンティリーズは、アキヴァで帝国未来議会の緊急サミットを見たと言う。
その事実に、私は頭を抱える。
未だに記憶を思い出せないが、想定していたより最悪だ。私の暗殺ならまだしも、帝国は銀河を滅ぼそうとしている。戦いは、泥沼化していくだろう。
「なぜアリスにまでドロイドを送る?」
「まさか、知らないんですか!?」
「アリス、メッセージ見てないの?」
「メッセージを見る前に、アリスが壊してしまったんだ。」
サビーヌとアンティリーズは、同時に溜め息を吐く。
私、何も悪いことしてないぞ。
「将校達にセンチネルが送られたのは分かるよ。なんで私?」
「一言でまとめると、貴女を道連れにする為よ。」
「うわぁ……」
あいつ、こうなると予見してたな。
私が自決して戻ってくることを予期した上で、シディアスはこの司令を残したのか。しかも、自分も死ぬ前提で。死んでも私に迷惑をかけるなんて、本当に嫌な奴だ。
「死んでも私を闇に落とそうって魂胆か。なんかムカついてきた。」
「3日前、ナブーがシンダー作戦の標的にされたわ。」
「待って、シンダー作戦?」
「終末司令を含めた、帝国の作戦よ。」
帝国の気候操作網が、ナブーを攻撃したという。レイアやベイ中尉が防衛したけど、シンダー作戦はまだ続いているそうだ。あらゆる星が攻撃されて、終結は遠いことが分かる。
「貴女の力を借りたいの。」
「サビーヌ、」
「ここにいたいのは分かるわ。」
「将軍、俺達の任務は貴女への警告と、救援の依頼です。新しい共和国に、力を貸してください。」
2人の言葉に、ダンタムを見る。彼と2人で静かに暮らすという願いが、こうも簡単に破られるなんて悲しかった。戦場から離れていても、戦火は私を追ってくるようだ。
「けど……」
「私達はもう行くわ。断ってもいい。でも、助けてくれるなら連絡して。………巻き込んでごめんなさい。」
そう言って、サビーヌとアンティリーズは隠れ家から出て行く。
違う。銀河を巻き込んだのはジェダイとシスだ。ジェダイが滅ぼされて、シスの台頭を許してしまったのがいけないんだ。
「アリス……」
「私は、ここにいたい。」
帝国との戦いで、自分の望みがはっきりと分かった。ジェダイとしての自分ではなく、私はダンタムの妻としての自分を選んだんだ。戦場には戻りたくない。
「行ってもいいんだぞ。」
「止めないの?」
「君は戻ってくると分かっている。アリスはジェダイである前に、私の妻なんだ。」
無茶はしないと分かっているから、彼はもう止めてこない。今ではダンタムが送り出そうとしている。数年前とは大違いだ。
「そう、私は貴方の妻なの。だから行くべきじゃない。」
「君らしくないな。」
「どちらを取るかなんて、考えるまでもない。私は戦いより、貴方を取る。」
フォースとの絆を断つことも考えた。しかし、それでは解決しない。お互いを助け合うのが夫婦なのだから。
それからしばらくは、帝国軍の残党についての話はしなかった。考えたくないし、私が不安に思っていることをダンタムに知られたくない。
私がジェダイじゃなければ、ダンタムを危険に曝すことはなかったのに。
悶々とした気持ちで、また何もなく1週間が過ぎていった。
『えぇ…またかよ。』
隠れ家近くの湖畔でうとうとしていたら、眠ってしまったらしい。夢だと分かっているけど、どうにもできなかった。私は砂漠に立っていて、振り向けばどこかの寺院にジャンプした。
問題は、それがシス寺院だということ。
辺り一面にシスの古代文字が刻まれていて、気分が悪くなってくる。壁一面の文字は、第二デス・スターにあった監禁室を思い出させた。それくらいオールド・タングがトラウマだった。
『────────』
誰かが、シスの古代文字を読み上げる。
この寺院の羅列は遺物を操作するもので、人を操るものじゃない。だからと言って、放置できるものでもない。これが未来なら、止めなくてはならない。
『お前ごときに止められるものか、愚か者め。』
シディアスの声が響く。
奴は死んだと、頭では理解している。シスの古代文字を聞いて、私は恐怖が甦っていた。皇帝は死んだはずなのに、未だに奴が怖いんだ。
『アリス!』
夫の声に呼び戻され、目を覚ます。
木の幹を背にして眠っていた私に、ダンタムが心配そうに私の顔を覗き込む。背中には寒気が走り、顔には汗が流れていた。悪夢に魘されていたらしい。
起こしてくれたダンタムに感謝しなきゃ。
「アリス、魘されていたが大丈夫か?」
「………大丈夫。」
「何を見た?」
そう聞かれて、夢を思い出す。
あれは、どこかの惑星で起きる未来だ。私がここに留まれば、最悪の未来が訪れるという警告だ。フォースの意志を感じたのが、その証拠だ。
「嫌な夢だった……帝国が、何か目論んでる。」
「未来を見たのか。」
「うん……行かなきゃ。」
私の言葉に、ダンタムは笑みを浮かべる。
「そうか…行くのか……」
ただ、どこか寂しそうだった。いつもダンタムを置いていってしまう。今回も、私一人で行くことになる。
彼を一人にするのは辛い。
「ダンタム、ごめんなさい。」
「気にするな。だが、必ず戻ってきてくれ。」
「約束する。」
「今度は嘘もなし、破るのもなしだ。」
「戻ると誓うよ。ジェダイの名にかけて。」
ダンタムは私にキスをして、送り出してくれた。
「R7、ちょっと付き合って。どこにって、帝国との戦いだよ。」
R7-D4を伴って、私はシャトルに乗り込む。エンジンを立ち上げた後、R7はシャトルに接続して、サビーヌがR7に教えていった座標を入力する。そこに反乱艦隊がいるはずだ。
軌道上に出た後、シャトルはハイパースペースに入る。
あの夢が現実にならないように、できることをやろう。大それたことはできないけど、変えられるものは変えていきたい。
そう、帝国軍の残党を止めることだってできる。
ジェダイとして、可能な限り手を尽くそう。