俺達の状況を説明した後、BB-8がスカイウォーカーの地図を映す。
だが、それは完全な地図じゃない。
「これは地図の一部だな。」
ソロの言う通りだった。どの星図にも当てはまらないものだ。俺にもどの星系なのか分からない。
「おい小僧、アリスはどこにいるんだ?」
「分からない。」
「分からないだと?指示されたとか言ってただろ。いつの話だ?」
「つい最近だ。マスターとは、村が襲われてから会っていない。」
本当の話だ。
マスターとルード議員が隠遁していた村がファースト・オーダーに襲われて、議員は軽傷、マスターは行方不明になった。俺はルード議員と共にマスターに逃がされ、今に至る。あれから、マスターを感知できなくなった。
そう話す俺に、レイがさっきの夢の話をする。
「彼女、ファースト・オーダーに拘束されてたわ。」
「ただの夢だろ。」
「フィン、ただの夢ならマスターが夢に現れるはずがない。フォースの意志によるものだ。」
「そんな魔法みたいなことができるのか?」
今の時代、フォースを信じる者は少ない。自らの目で見た者はいない。だからこそ、マスターやルーク・スカイウォーカーは伝説になった。
「俺も最初はそう思っていたさ。だが、事実だ。善と悪、光と闇………全て本当だ。」
「ルーク・スカイウォーカーも……」
「ああ。」
俺は、彼に会ったことがない。マスターから話は聞いているが、実際に会ってはいない。俺も、ルーク・スカイウォーカーを伝説だと思っている。
「それで、彼は?」
レイがソロに問う。
反乱軍にいたソロは、彼を知っている。
「噂は聞いた、いろいろな。みんながルークを探した。ある者は、最初のジェダイ寺院を探しに行ったと言う。」
「なぜ?」
「ルークは、新しい世代を育てていた。だがある時、一人の少年によって全てなくなっちまったんだ。アリスも、それを知っているはずなんだがな……」
「ああ、マスターは知ってた。」
マスターは、悲鳴を聞いたという。予期できなかったとも言った。あの人は弟子が病んだと知って、とても悲しそうだった。
「一つ聞いていいか、小僧。」
「なんだ?」
「アリスとルード議員は、共和国領にいたはずだ。なんで領外にいた?」
マスターは取り決めで、共和国領に定住する約束をしていたそうだ。ところが、襲われた村は共和国の秩序が及ばぬ外縁部にあった。わざわざ外れた理由は、一つ。
「ファースト・オーダーの台頭を予期していたからだ。」
「なっ……知っていて何もしなかったのか!?」
「落ち着け、フィン。だからこうして俺がいる。行動する前にマスターが拘束されたから、俺が来たんだ。」
ソロは溜め息を吐く。
マスターの現状は最悪だ。俺一人じゃどうにもできない。レジスタンスの助けを得たいが、見ず知らずの俺では協力を得られるか分からない。ソロに橋渡ししてもらう為に、どうしてもこの男の協力が要る。
「分かった。手を貸そう。俺の古い友人に会いに行くぞ。」
「古い友人?」
「ああ。」
俺とフィン、レイは顔を見合わせる。
ソロの友人と言えばランド・カルリジアンだが、彼じゃなさそうだ。
ファルコンはハイパースペースを抜け、タコダナの軌道に出る。
確かタコダナには、女海賊のマズ・カナタの城があったはずだ。古い友人って、まさか海賊カナタなのか?
ソロはチューバッカに船の点検を任せ、俺達はマズ・カナタの城へ向かう。
「ビリー、行きましょう。」
「ああ。」
こうは言うが、レイの心に迷いが見えた。
彼女は、ジャクーで戻らない両親を待っていた。いつか戻ると信じて。本人も分かってはいるが、生きる為に希望を持ちたかったんだ。
「レイ、帰りたいか?」
「でも、BB-8をレジスタンスに届けないと……」
「それが終わったら、ジャクーに帰るのか?」
「ええ…帰るわ。貴方も、両親を探しているのね。」
「は……?」
レイの言っている意味が分からなかった。俺は、両親のことを一度も言っていない。間違いではないが、誰も知らないはずだ。
俺の存在は、イレギュラーなんだ。
「誰が言ったんだ?」
「貴方が言ったのよ。」
「俺は何も言ってねぇ。何のことだ?」
「それは……」
レイ本人にも分からないらしい。どうやら、無意識に心を読まれたようだ。彼女のフォース感応力の覚醒が、始まった。
すぐにマスターを助けないと、まずいことになる。
城に着き、門を潜る前にレイがソロに来訪目的を問う。
「なぜここに?」
「安全な船を探す。俺とチューイはスキャナーでファルコンを見つけた。奴らも見つけるさ。」
ソロの言う通りだ。ファルコンで届ければ、ファースト・オーダーに見つかる。BB-8を届けるには、その伝が必要だ。ここなら、船を持っている奴は多いだろう。
扉を開ける前に、ソロは注意事項を話す。
「いいか、マズをジロジロ見るなよ。嫌がるからな。」
「どういう意味です?」
フィンの疑問に、ソロは彼女は酒場を1000年経営していると言う。
1000年って、すげぇな。
「マズには俺が話す。」
そう言って、ソロは扉を開ける。
酒場に足を踏み入れると、一人の婦人が振り向き、声を張り上げる。
「ハン・ソロ!!!」
酒場は静まり返り、客全員がこちらを見る。
「全く………やぁ、マズ。」
マズと呼ばれた彼女は俺達の方へ来て、ソロにウーキーの居処を尋ねる。
「私の恋人はどこだい?」
「チューイは船の点検中だ。」
彼女の視線が俺に向き、今度は何者だと問われる。その目に敵意はなく、何かを思い出すような瞳だった。俺は素直に名乗り、それでも顔を見る彼女に何なんだと返す。
「ビリー、ラストネームはあるのかい?」
「教えられない。なぜだ?」
「あんたの目、アリスにそっくりだ。」
「え?」
「マズ、アリスと会ったのか?」
俺よりも、ソロが食いつく。
それより、俺は衝撃的だった。マスターと似ているなんて言われたのは、初めてだ。自分じゃ分からねぇけど。
「大昔の話さ。旦那とこの酒場に来たよ。」
「旦那って、ルード議員か?」
「ああ、そうだ。ハン、あんた何も思わなかったのかい?」
「ビリーはアリスとは正反対だろ。弟子だと言っているがな。」
「自称らしいわ。」
「ふぅん…?」
マズは納得してなさそうな目を向けてくる。
レイ、そういうのは言わなくていいんだぞ。
だが、今は俺に関心を向ける場合じゃない。BB-8をレジスタンスに届けるのが先決だ。その為に、ソロはここに来たんだ。
「マズ、」
「頼みがあって来たんだろう?早く言いな。」
俺達は奥のテーブルに通される。
席に座り、ソロが一通り説明して、彼女に届けるように頼む。マズもオーガナ将軍と面識はあるが、自分で届けるように言って拒否する。
「あんたは戦いから逃げてきた。やっと嵐の中に戻るのかい?」
「戦いって?」
「暗黒面との戦いさ。邪悪は遥か昔から形を変えて存在してきた。シス、帝国……」
マスターも、戦ってきた一人だ。マスター・レインが語ってくれた物語を思い出す。彼女も、闇の中で戦ったんだ。
「そして、今じゃファースト・オーダーだ。奴らの闇が銀河系を覆い尽くそうとしている。その現実に立ち向かい、戦わなきゃいけない。私達みんなでね。」
「奴らに勝てっこない。」
「フィン……?」
レイはフィンに怪訝な瞳を向ける。
当然だ。フィンはレイに、自分はレジスタンスのメンバーだと言っている。嘘はいつかバレるのにな。
「おや、どこへ行く?」
「外の空気を吸ってくる。」
「そんなに気分が悪くなったのかい?」
「そうだ。」
「気の短い坊やだ。」
「喧しい。」
イライラを抑えて、外へ出る。
知っていることは多くても、俺は経験がない。だから、戦おうとしないソロにも、ファースト・オーダーから逃げるフィンにも、苛立ちをぶつけてしまいそうだ。俺は、感情を抑えるのが下手なんだ。
自称アリス・レインの弟子が、自分で聞いて呆れるぜ。
俺はただのガキだ。
オマタセシマシタ!!
遅くなってごめんなさい泣