【完結】ジェダイ(仮)になりました。   作:夭嘉

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出口のない監獄

地に固まった雪が素足を凍らせ、水に濡れた身体は冷たくなる。体温と共に、体力も下がっていく。基地で盗んだ外套は、役に立っているのか立っていないのか分からない。

 

雪が積もる森を、私は必死に走る。

 

 

「はぁ…はぁ……!」

 

 

ほんの一瞬の隙だった。

 

タンクの水が抜かれて、私は眠りから起こされた。

 

理由なんてどうでも良い。逃げる隙ができて、鎖を底から外すトルーパー2人を殴り倒し、脱走した。トルーパーのブラスターを剥ぎ取り、私は少ない体力で基地から逃げ出した。

 

首輪は取ろうとすると電流が走り、自力で外すことはできない。フォース感応力を奪われた今、肉体強化もできず、痛覚のコントロールもできない。ただの人間に、首輪は外すことは不可能だった。

 

私ができるのは、走ることだけ。

 

基地の外は雪が降り積もる森で、自分がどこに囚われていたかすら分からなかった。

 

追ってくるトルーパーをブラスターで撃ち、肺の痛みに耐えながら逃げる。私を生かしているのは経験だけ。聴覚と視覚しかない私は、見えない敵を倒すことはできない。

 

音がしなくなり、私は樹木を背に座り込む。

 

冷たい空気のせいで、呼吸が辛い。服の胸元を掴み、痛みに耐えようと皮膚に爪を食い込ませる。痛みは紛れず、結局痛みが増しただけだった。

 

 

「っ……!」

 

 

追ってきたトルーパーがブラスターを撃ってきて、私は木の陰に隠れる。また走り、行き先も考えずに逃げ続けた。羽織っていた外套が枝に引っかかって、数秒だけ止まってしまう。

 

トルーパーは止まらず、仕方なく外套は放置して走ることにした。

 

傾斜した場所に差し掛かった時、私は何かに躓くわけでもなく転んだ。立ち上がろうとするけど、身体が言うことを聞かず立てない。それでも無理矢理立って、近くの岩にしがみつく。

 

 

「フォースさえっ……感じられればっ……」

 

 

フォース感応力がないのは、痛手だ。目の前の敵しか対処できない。普通の人達ができることが、私にはできていない。

 

ジェダイである自分が、フォースを使えないことがもどかしい。

 

私は普通の人間ではなく、フォースを使えないジェダイだ。ずっと虚しさを感じていたけど、その正体はフォースを使えないからだった。フォースを使えないジェダイは、ジェダイじゃない。私はジェダイなのに。

 

その時、強烈なフォース・プッシュを食らい、私は木に背中を打って崩れ落ちた。

 

倒れた私を、カイロ・レンが首を掴み上げてくる。

 

 

「逃げ場はない。無駄なことはするな。」

 

 

ただの人間である私に、レンに抗う力はなかった。

 

外套に気にせず走れば、まだチャンスはあったかもしれなかったのに、そんな余裕すらなかった。

 

掴み上げるレンの手を解こうとするが敵わず、彼は私を笑う。

 

 

「体力を残す必要はなかったようだ。タンクに戻す必要があるらしい。」

「嫌…戻りたくない……!」

 

 

あの空間に戻りたくない。

 

ずっと一人であの空間にいたら、気が狂う。最初こそプレイガスがいたから良いけど、一人であの空間にいるのは拷問と変わらない。だけど、ファースト・オーダーに捕まっているのも嫌だ。

 

 

「なら、戻りたくなるようにしてやる。」

 

 

レンはそう言って、赤いライトセーバーで私の右肩を貫く。

 

 

「ああああああっ……!」

 

 

絶叫して、痛みに悶える。フォース感応力がないから、想像以上の痛みが私を襲った。デス・スターで受けた拷問より苦しい。

 

今度は腕を踏み付け、左手の平を貫く。

 

 

「っ…あああああああ!!!」

 

 

受け流せない苦痛に呻き、喉に刺さるような痛みを感じた。乾いた喉を少し切ったようで、口の中に鉄の味がする。血を吐いても、痛みが消えることはなかった。

 

 

「許し…て………」

 

 

誰に言っているのか、自分でも分からない。掠れた声に、レンは私を離す。しかし、フォース・チョークをかけられ、反射的に喉元に手を伸ばした。

 

 

「どれだけ許しを乞おうと、お前を逃がす気はない。」

 

 

痛みで動けないまま、私は雪の上を引き摺られていく。

 

 

「タンクに戻せ。」

 

 

基地に近付き、トルーパーが私を連行して元いた部屋に戻される。

 

僅かに残った体力で暴れるも、押さえ付けられて、沈静剤を打たれた。完全に身体の自由が利かなくなり、私はタンクに引き摺られていく。トルーパーに枷をかけられ、タンクの底に鎖が繋がれた。

 

 

「やだ…!」

「黙れ!」

 

 

トルーパーが、私に呼吸マスクを着けていないのに水を落とし始める。

 

 

「っ、」

 

 

水が入れられ、枷のせいで浮き上がれない私は、あっという間に水に沈んでしまった。肺活量が足りず、すぐに酸素が足りなくなる。トルーパーは、苦しむ私を見ても態度を変えなかった。

 

 

「呼吸マスクを取り付けろ。」

 

 

トルーパーの指示で、医療ドロイドがようやく呼吸マスクを取り付ける。

 

呼吸ができるようになり、私はトルーパーを睨み上げた。だが、トルーパーは気にすることなく、ドロイドに指示を出す。

 

タンクが満水になり、マスクの酸素量が減らされた。呼吸はできるのに、息が苦しい。肺が乾いているせいで、余計に痛かった。

 

心の中で悲鳴を上げながら、家族の名を叫ぶ。

 

村が襲われた夜の、あの時の自分を怒鳴りたい。なぜ一緒に逃げなかったんだ、と。夫を傷付けられた私は、周りが見えていなかった。ダンタムの隣にいるという誓いを破り、突き放した報いかもしれない。

 

そして、私の意識は強制的に肉体から切り離された。

 

 

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