シャトルに連行される前、私は何もない空間で頭を膝に乗せて蹲っていた。
何も考えたくない。
ここからでは、外の様子が分からない。そうでなくても、首輪のせいで見ることもできない。家族の安否が分からないことが、痛いくらいに辛い。
家族の身に何かあったらと思うと怖くなる。そう思うと、何も考えたくなかった。怖くて、気がどうにかなりそうだった。
『時間は限りなくあるではないか。』
『うるさい!!』
無理だと分かっていても、私は蹲ったまま耳を塞ぐ。
あれから、シディアスはずっと消えない。
私達の周りには、物が散乱している。私が投げ付け、シディアスが弾く。弾かれた物は散乱し、誰も片付けることはない。
穏やかなシディアスに対して、私の心は荒んでいた。
『ふむ……そうか。“あの者”に残された時間は少ないのか。』
『心を読むな!あんたに読む権利はない!』
なぜ私が荒んでいるのか、心を読んだシディアスは分かるだろう。
『アリス、だから殺せば良かったのだ。愛する男が苦しむ姿を見ることになる。其方の苦痛が増すだけぞ。………既に苦痛を感じているか。』
奴の顔の横を通って、後ろにジェダイ・ホロクロンが転がる。投げたのは私だ。膝を抱えたまま、ホロクロンを投げ付けた。
奴の言う通り、ダンタムを殺せば良かった?嫌だ、殺したくない。なぜ彼を手に掛けなければならない?
そんなこと、絶対に嫌だ。
『では、どうする?あの男が死んだら、其方も後を追うか?』
シディアスはあり得ないと思っているだろうけど、私は捕まる前にずっと考えていた。
術は解けていない。夫だけが老いていく。私は老けることなく、ダンタムが死んだ後も生きる。私は、一人取り残されるんだ。
『………それもいいかもね。』
『何だと……?』
『後を追えば、彼の隣にいられる。』
間違った解釈だと、ダンタムは怒るだろう。後を追うことも、当然怒るはずだ。彼が死んだ時、私はその喪失に耐えられるか分からない。
『愚かな……!』
愚かでいい。私は家族を愛している。愚かさを捨てる為に家族を殺さなければならないのなら、私は愚か者でいい。
『人の死に無頓着なあんたとは違う。』
『余が許すと思うか!?其方が死ぬなど、許さん!』
『許しなんて必要ない。』
ふと、何かが外れる音が聴こえた。
音のした方を見ると、ジェダイ・ホロクロンが勝手に開き、ホログラムを映していた。ホログラムに映っているのは、結婚したばかりの私とダンタムだった。
ホロクロンを投げ捨てたということは、家族を捨てたも同然という意味でもある。
投げられたホロクロンは、私にそう伝えようとしている。
『其方は死を選べぬのだ。』
それはシディアスも見ていて、奴は幸せそうな私が気に入らないみたいだった。私は家族を心の支えだと思っているが、シディアスは枷のようなものだと捉えているらしい。ダンタムを殺せと唆すのも、枷を外す為だ。
シディアスに、家族の存在は理解できない。
『あんたの手を取るくらいなら、私は死を選ぶ。』
『だが、其方は身動きできまい。』
『分かってるよ。でも、それが可能だとしたら?』
そう、現実の私は水牢タンクにいる。ダンタムは、それを知らない。私は彼の知らない場所で死ぬことになる。
『シディアス、私の寿命を伸ばしたところで、死ぬことは止められない。』
『一人の男の為に、力を拒むのか?』
『いらない。』
その時、空間が歪み始めた。私の意識が、現実に引き戻されようとしている。私は抵抗せず、身を委ねた。
『アリス、一つ忠告しよう。』
消えかけているのに、シディアスの声がはっきり聴こえる。
『忠告?あんたに忠告されることなんてない。』
『其方は余を見誤っている。なぜ其方を暗黒面に招くと思う?術の為だけではない。術の本当の意味を理解せん限り、余は生き続ける。』
『本当の意味……?』
『時間切れのようだ。さらばだ、アリス。』
罵言を吐こうとしたところで、私は現実に戻ってきた。
タンクの底で咳き込み、胸の痛みに蹲る。痛みに悶える暇もなく、トルーパーに立たされ、タンクから降ろされる。私は部屋から出され、両脇を抱えられて基地内を引き摺られていく。
自力では動けず、シディアスの言葉が頭に残っていて、何かしようとは思えなかった。
家族への愛だけが、私の中に残っている。
シャトルの独房に放り込まれ、鎖は床に繋がれた。トルーパーに離された私は、自立できず倒れ込む。床に倒れた私は、ここにいない人を呆然と思い浮かべた。
「ダン…タム………」
扉は無情にも閉められ、一人にされた。
時間の感覚など、既になかった。
ドアが閉められてすぐ、外でトルーパーの呻き声が聴こえた。人が倒れた音も聴こえたが、どうでも良かった。希望は、とっくに失っているから。
「母さん!!」
ビリーが独房に入って、倒れた私を起こす。
渇いた感情が戻ってきたかのように、ビリーの姿を見て安心感に襲われる。息子に会えたと分かった途端、涙が出てきた。ウィリアムの懐で、嗚咽を漏らしてしまっていた。
息子に抱き締められ、私はようやく恐怖から解放されたのだった。
一種の依存みたいになってしまった……orz
あれ、これって執着してる……?
やばいかなこれw