また目を覚ますと、状況がかなり変わっていた。
スターキラー基地は破壊され、レジスタンスの勝利となった。その代わり、失ったものも大きい。ハンが、死んでしまった。
記憶を早く思い出していれば、もっと変えられたこともあったはずだ。
後悔しかない。
「アリス」
薬による眠気に逆らって、私はダンタムに手を伸ばす。彼は手を取り、休むように言って頭を撫でてくる。医療カプセルが良いと言ったのは私だけど、薬の副作用が酷い。
でも、タンクには入りたくない。
もうあの空間に戻ることはないけど、トラウマに近いものを感じている。ビリーと再会して泣いたのが、その証拠だ。本当に大人気ないが、本当に恐怖だった。
息子が来てくれなければ、完全に気が狂っていたかもしれない。
最悪の場合、暗黒面に堕ちていた。
「ビリーは?」
「司令部で姫と話している。アリス、ビリーに訓練を付けてやれ。」
「え……」
「ビリーはもう子供じゃない。いつまでも守られるような存在でもない。分かるだろう?」
分かっている。ウィリアムは、私とダンタムに追い付いている。私達にとってはずっと子供だけど、今は一人の大人だ。
「分かった。完治したら訓練を付けるよ。」
「ああ。アリス、もう少し休むんだ。」
「眠りたくない……」
私は充分眠った。あの水牢タンクで。ビリーが来てくれなければ、私は気がどうにかなりそうだった。
ダンタムが握る手だって、本当は離したくない。
「休まないと、治るものも治らないぞ。」
「治らなくていい。」
「それはダメだ。さぁ、休むんだ。君が起きるまで、ここから出ないと約束する。安心してくれ。」
彼の手を握ったまま、私はゆっくり意識を手放す。
「ダンタム、愛してる………」
「私も愛している。おやすみ、アリス。」
完全に意識が落ちて、私は夢も見ずに眠った。
ファースト・オーダーが幻影ならと、何度も思うようになった。
奴らが、スノークがいなければ、ハッピーエンドだったのに。エピソード8まで観てその存在を知っていても、信じたくなかった。スノークさえいなければ、ハンが死ぬこともなかったんだ。
何年も前から準備してきたのに、何も上手くいかない。
薬が減り、ようやく目が覚めたのは2日後のことだった。ダンタムは約束通り、起きた時も傍らにいてくれた。彼の隣にはビリーもいて、やっと家族に会えたのだと実感した。
眠り続けたお陰で動けるようになったけど、まだ本調子じゃない。
だが、ファースト・オーダーは待ってくれない。レジスタンスはディカーの基地から脱出することになった。司令部のレイアの下へ行き、今後の話をする。
「アリス、時が来ました。」
「分かってる。」
レイアの言う“時”とは、私が予期したことだ。
ルークの居処を示す地図の残りを、R2-D2が持っていた。BB-8の地図と合わせて、ルークがいる場所の星図が完成したという。ルークの下には、レイとチューバッカ、R2-D2が向かったそうだ。
実を言えば、私はルークを感知できない。弟子は、フォースから自らを閉ざしている。ベンとのことが原因だけど、乗り越えてもらわなければならない。
私の計画には、ルークも必要なのだから。
未来を変えるには、まだ遅くない。
「アリス、ルークを責めないでね。」
「そんなことしないよ。ルークとベンの問題だから。」
「私も残れたら良いのだけれど……」
「いいの、行って。艦隊にはオーガナ将軍が必要だから。アクバー元帥によろしく言っておいて。」
「ええ……フォースと共にあらんことを、アリス。」
「フォースと共に、レイア。」
私を残し、レイアは艦隊と一足先に軌道へ向かう。艦隊は、輸送船を逃がす為の退路を確保しなければならない。私は将軍の命令で、輸送船に乗るように言われたから、何もできない。
私“達”の計画が上手くいくことを祈ろう。
「アリス」
夫の声に、私は振り向く。
「準備は良いか?」
「うん、できてるよ。」
「では、行こう。」
レジスタンスの輸送船に乗り込み、ビリーとフィンに声をかける。
幸いフィンは私よりも先に目を覚まし、怪我もなくレジスタンスの任務をこなしていた。彼にお礼を言われたけど、私はあの後倒れたから言われる立場じゃない。感謝すべきは、レイだ。
私も、レイがいなければ危なかった。
「さて、ウィリアム。」
「俺?」
「うん。訓練を付けるよ。」
喜ぶビリーとは裏腹に、ダンタムは心配そうに声をかけてくる。
「アリス、無理はしないでくれ。」
「平気だよ。やる気はビリー以上にあるから。」
「それはそれで困るんだが。」
「何か問題でも?」
「大有りだ……」
年相応じゃないと、ダンタムに言われた。おかしい。見た目は20歳後半なのに。
「あんた、本当に80歳か?」
「27歳ダヨ。」
『やめろ。』
フィンの問いにふざけた私に、ビリー達からブーイングを食らう。
こんな会話が幸せに感じてしまう。
しかし平穏は長く続かないと、後々知ることになるのだった。