メディカルルームの前に着くと、R7が私の邪魔をしてきた。命令口調で退くように告げれば、相棒も命令を受けていると返してくる。話が全く進まない。
「R7-D4、誰の命令?………へぇ、ウィリアム・ルード、ふぅん?で?あんたの持ち主は誰だっけ?」
私の笑顔に、R7は後退る。
「マスターじゃないでしょ。今は私だよ。」
持ち主は、私のマスターであるプロ・クーンだと言い張る。
それなら、R7がビリーに従う道理はない。
「R7、御託はいいからそこを退いて。」
R7-D4は渋々道を開ける。
ドアを開けると、ダメロン大尉は何かを隠す。無言で見れば、驚く程のスピードで敬礼された。私が知りたいのは敬意じゃなくて、ビリー達の行き先だ。
「大尉、私に敬礼は必要ないって知ってるよね?」
「もちろん知っていますよ。貴女が来た目的も。」
「じゃあ教えて。ウィリアム達はどこに行ったの?」
「教えられない。」
「教えられない?そう、教えたくないんだ?」
大尉に近付き、口元に弧を描いて肩を抱く。
触れた瞬間、腕を叩き払われ突き飛ばされた。病み上がり同然の私は椅子に座り込み、大尉に同じ質問をする。もうその必要はないけど、あえて同じことを聞いた。
「で、どうするの?教える?」
「………提督に報告するのか?」
「私は言わない。けど、あんたが自分で教えてくれたらの話。まだ間に合う。これが最後だよ。息子達はどこにいるの?」
私の問いに、大尉は拳を握り締める。昔の私のように、彼は最近独断行動が多い。意図せず情報が漏れるかもしれないから、提督は大尉に作戦を教えなかった。
皮肉なことに、ポー・ダメロンの状況だけは私の記憶と同じだ。
「教えたらどうする?」
「私に答える義理があると思う?」
「………」
「まぁ言うなれば、少し疲れることをするだけ。」
少し覗くだけだ。それから、ビリーの意識に呼びかける。たったそれだけ。
離れた地にいる人に呼びかけるのは、フォースの幻影同様に疲れるんだ。
「………カント・バイトだ。」
「やっぱりあそこか。」
「やはりだって?どういう意味だ?」
「ジェダイは未来を見るの。さっきあんたに触った時に確信したよ。さて大尉、これ以上動き回らないでね?」
レイアの手に触れ、その手の甲を額に待っていく。
眠っているレイアに、短いメッセージを残した。“オーガナ将軍”が目覚めた時、すぐに行動できるように。ビリーの後、私はルークに呼びかけなければならない。愛弟子がいなければ、私の計画は破綻する。
「レイン将軍、」
「通信機、あるでしょう?ビリー達に引き返すように言って。」
「だが、」
「異論は認めない。言われた通りにして。」
メディカルルームを後にして、一人個室に篭る。
フォースと繋がり、意識を底深く落としていく。やがて、霧の中で意識が鮮明になったかのように、感覚が研ぎ澄まされていく。冴えた感覚で、たった一人の息子を見つけ出した。
息子の名前を呼ぶと、ウィリアムは何かに気付いたようで、カント・カジノで振り向く。
ところが、ビリーは聴こえているのに、何もなかったふりをする。声は届いている。なのに、本人は聴く耳を持たない。
どうしても、トラッカーを切りに行くらしい。
終いには、ウィリアムは私を拒絶していた。
「あの子……!」
訓練を求めてきたのはビリーなのに、その訓練を蔑ろにしている。これではレンは愚か、スノークにも太刀打ちできない。こんなところまで私に似なくてもいいのに。
私はビリーの説得を中断して、計画の大役を担うルークに呼びかけた。
ルークはレイを拒み、フォースとの絆を断っていた。
『ルーク』
フォースの絆を断っていても、師弟の絆は切れない。強引に意識を繋ぎ、何度もルークに呼びかけた。彼は顔を上げ、私の視線に合わせる。
『マスター・レイン…』
私の弟子は、苦しげに言葉を返す。
『ルーク、戻るのが嫌ならレイを鍛えて。昔の私と同じように。』
『………私にはできない。』
『あんたの訓練をする前、私もそう言った。けど、私もあんたも責任がある。その責任を投げ出す気?』
教える側には、責任がある。私も、ルークも、師となった時に責任が生まれた。私にはルークを弟子とした責任が、ルークはベンを教え子とした責任が、それぞれ生まれた。
マスターとして、その責任を果たすのが義務だ。
それなのに、ルークはベンを手放した。
『“先生”……』
『ルーク、私だって同じ立場にいたんだよ。アナキン・スカイウォーカーの息子を鍛え、守る責任。あんたは、どれか一つでも果たした?』
『だが、貴女は偉大なジェダイだ。』
『はぁっ!?』
元弟子の言葉に、ついイラッとしてしまった。
映画でも思ったけど、ルークは若い頃のままだ。外見ではなく、中身があの頃のままなんだ。いつまでも受け身でいては、何も成長しない。
『あのねぇ!私が偉大なジェダイなら、マスター・ヨーダは大木だよ!大木!寧ろ森、いや大地だから!私なんかその辺の雑草だからね!!』
私は、ルークに全てを叩き込んだつもりだ。自分の弱さも隠さず、弟子に見せてきた。それに対して、ルークはベンに多くのことを隠した。
そんなの、弟子に対する裏切りだ。
『ここまで言って戻らないなら、それでもいい。ただ、最後の責任は果たして。レイを鍛えて。』
そこで限界が来て、私はルークとの繋がりが切れてしまった。
いくら20代の身体とは言っても、さすがにきつい。少しどころじゃなかった。かなりきつい。
私にしては珍しく、ボッコボコに言ってしまった。ここまで辛口で言ったことは、初めてだ。皇帝、もといシディアスにはボロクソに言ったことはあるけど。
これで“ジェダイの”ルークが戻ることを祈ろう。