ブリッジで提督と話し合い、輸送船の整備を手配する。その最中、ダメロン大尉がブリッジへ来て、作戦を公明かさない提督を問い詰めていた。逃げている理由を理解しない彼は、その憤りを露にする。
逃げるだけの艦隊に、若者達は痺れを切らし始めていた。
「レイン将軍、貴女も提督と同じ意見ですか?」
「何度も言ってるでしょう?大人しくしててって。まだその時じゃない。」
「その時?」
「ファースト・オーダーとの戦い。」
「戦いだって!?今がその時だろ!なぜ今じゃないんだ!?いつまでも逃げられないぞ!」
声を張り上げる大尉を、提督が咎める。
「ダメロン大尉、これは命令です。待機してなさい。」
「待機だと!?あんた達…は……」
大尉の視線が、私と提督の後ろに注がれる。その後ろには、輸送船とラダスが映っていた。輸送船への燃料供給は、整備と共にもうすぐ終わる。そのパネルを見て、大尉は私達に反論する。
「輸送船……?このクルーザーを捨てる気か!?」
予期していたよりも、脱出計画が早く知られてしまった。私達の計画では、もっと後に知らせる予定だったのに。やっぱりズレが生じている。
「あんた達正気か!?輸送船には武器もなければ、シールドもない!撃ち落とされたら終わりなんだぞ!!」
「言葉を慎みなさい、大尉。私達はレジスタンスと未来の為に、」
「何が未来だ!あんたはジェダイだろ!!なぜ戦わないんだ!?」
司令部にいる者達の視線が、一斉に私に向く。
計画を言い出したのは私だ。戦うべきではないと判断したのも私。しかし、計画を知るのはホルド提督とダーシー中佐だけだ。
それに、ジェダイは戦う為だけに存在するわけじゃない。
「大尉、ジェダイの使命は何だと思う?」
「は……?」
「今回は私が教えてあげるよ。ジェダイは騎士であって、兵士じゃない。私達ジェダイは守護の為に存在する。戦う為じゃない。」
「それなら、」
「ジェダイが滅んだ理由の一つが、戦いなんだよ。私が今スノークとぶつかっても、何も変わらない。クローン戦争のように、銀河は混沌と化す。同じことは繰り返さない。」
戦いを避けるように、この計画を進めてきた。ジェダイだけが戦う為に。人々の希望が、自ら混乱を招いてはならない。それがルールだ。
クローン戦争と、反乱軍の中で、私はそれを学んだ。
ジェダイの在り方を学んだのは、帝国が倒れた後だけど。
「だが、ファースト・オーダーはそう思っていない。俺達を潰すだけだ。」
「そうだね。だから、大人しくしててほしかった。」
「っ!おい!よせ!」
フォース・プッシュで、大尉をブリッジから押し出した。ドア向こうに倒れたダメロン大尉を一瞥し、私はフォースでシャッターのスイッチを押して閉じる。ロックをかけてはいないけど、彼はドアを叩いて怒鳴ってくる。
「戦わずに逃げ切るなんて無茶だ!!」
「勝機のない戦いの為に、レジスタンスを危険に曝せない。無益な戦いを止めるのも、ジェダイの役割だよ。」
それだけ返すと、大尉がブリッジから離れるのを感じた。だけど、彼の心の中は不満だらけなのが見える。このまま黙ってはいないだろう。
「レイン将軍、燃料供給が完了しました。」
「分かった。提督、命令を。」
「全員輸送船に乗りなさい。」
アナウンスが艦内に響き、提督の命令で輸送船への搭乗が開始される。
私は、最後の一人が乗り込むまで見届ければ。
「アリス、辛いのは分かるが、大尉達の為だ。」
「分かってるよ……」
本当は私も戦いたい。ジェダイの役割は、私もよく分かっている。ダメロン大尉にあんなことを言ったけど、心の内では私も戦いたいと思っている。
何も構わずに私がここで戦えば、密かに立てた計画が崩れ去る。
大尉の気持ちは痛い程分かるんだ。ただ、炎を大きくするには早すぎる。まだ戦ってはダメだ。
不本意な選択をした私に、ダンタムは正しい判断だと言ってくれる。
「っ…!」
その時、レイの怒りを感じた。
師に対する失望と、怒りだ。
ルークはまた、弟子に真実を隠した。レイはレンから直接聞き、真実を知った。その原因が、ルークの慢心によるものということも。
「ルーク……」
スカイウォーカーは、同じ過ちをしている。
「レイン将軍……?」
私の呟きに、ダーシー中佐が心配してくる。一人ブリッジを出ていき、私は通路の片隅に踞った。レイの怒りが、胸に刺さるようだった。
あの子の怒りが、ひどく痛い。
『お前は相変わらずだ。』
よく知る声に振り向くと、霊体のオビ=ワンが立っていた。青く透ける身体で、彼は私を見下ろす。その目は私が知る、昔と変わらないオビ=ワンのままだった。
私は立ち上がり、オビ=ワンの目を真っ直ぐ見る。
「オビ=ワン……」
『ルークはその性を継がなかったようだ。アリス、お前は焦っているな?』
「仕方ないでしょう!事態は悪化してる!計画だって失敗しそうなのに!」
オビ=ワンに、そう吐き捨てる。
計画に必要なルークは戻らない。私とルークがいて、初めて成り立つ希望なのに、弟子は戻らないと諦めかけている。さっき感じたルークの拒絶で、ダメかもしれないと思っていた。
『弟子が変わってしまったことに、戸惑っているのか。』
「皇帝と戦った時のルークは、希望に満ち溢れていた。何が大切なのか、しっかり分かってた。でも、今は違う。」
『アリス、人とは変わるものだ。』
「そんなことは……」
『愚か者が賢者になるように、賢者も愚かになる。お前も、昔は未熟だった。だが、今や伝説のジェダイだ。お前が変わったように、ルークも変わったのだ。』
人は変わる、それが人間だとオビ=ワンは言う。変わらないのは、暗黒面だけだ。
『アリス、ルークやお前だけが希望ではない。一人になるな。希望も行き過ぎれば、欲望に変わる。気を付けろ。』
古い友人は、私を信じると言って消えた。
欲望は、元を辿れば希望から始まるものだ。自分が一番分かっていたはずだった。なぜシディアスが私に執着したのかも、理由を知っていたのに。スノークのことも、何も分かっていないかもしれない。
それをオビ=ワンに教わるなんて、私は馬鹿だ。
まだ遅くはない、希望は残っている。
「アリス!」
ダンタムが私の下へ来て、輸送船への搭乗が間もなく終わると知らせてくれる。
ブリッジへ行って、次の予定を進めなきゃ。
「それと、問題が起きた。」
「え?」
ダメロン大尉の通信機で、ビリーとフィン達がファースト・オーダーに見つかり、捕まってしまったという。最悪なことに、ハックス、更にはスノークに息子がいるとバレた。息子がいると知られたら、奴にウィリアムを利用される。
血の気を引かせながらも、私は格納庫へ走る。ダンタムが私の後ろを追い、格納庫へ駆け込む。何事も起きないでほしいと、願うしかなかった。
避けたはずの戦いが、すぐそこに迫っていた。