ラダスが囮になり、輸送船は順調にクレイトへ向かっていた。
ただ、一つだけ問題があった。
さっきから、耳鳴りがしている。すぐ隣にドロイドがいるのに、C-3POのお喋りが聴こえない。頭が痛くて、私は両手で目元を覆う。
「アリス、大丈夫か?」
それなのに、ダンタムの声だけははっきり聴こえた。彼は手を握ってくれて、私を抱き抱える。頭痛は和らいだものの、耳鳴りは未だに消えない。
耳鳴りは、フォースによるものだと分かっている。
フォースの意志が、何かを警告している。私は強引に未来を変えた。未来を変えたことによって、何かが起こる。そう言われているような気がした。
「耳鳴りがする。」
ファースト・オーダーがクレイトまで追ってきたら、戦うしかない。レジスタンスにいるジェダイは私しかいない。ルークが戻らない今、私が戦うしかないんだ。
「っ!」
突然、嫌なあの視線が消えて、スプレマシーがある方に振り向く。
何年も感じてきたスノークの意識が消えた。私を悩ませてきた元凶だから、すぐに分かった。スノークは、弟子に潰されたんだ。
スプレマシーを凝視していると、ダンタムがその視線に気付く。
「どうしたんだ?」
「………スノークが死んだ。」
殺したのは、カイロ・レンだ。
この計画が始まって、レンがスノークを殺すことはないと思っていた。でも、劇中と同じようにスノークを殺した。“ベン”は、暗黒面に呑まれてしまったんだ。
レイアも感じたようで、私に同意する。
「ええ、スノークは死んだわ。アリス、これは予期していたの?」
「してない。やっぱり、何かがおかしい……」
レイアにそう答える。
スノークは、あのシディアスと似たような干渉をしてきていた。間違えるはずがない。スノークは確かに死んだ。
「レイア、未来を変えられるか分からなくなってきた……」
「諦めてはいけないわ、アリス。」
「………ごめん。」
元のあらすじに戻りかけているのかもしれない。私にできることが、時と共に減っている。これ以上は、良くないことを迎えたくない。
「まずいぞ!」
大尉の声に、私とダンタムは窓から外を覗く。
スプレマシーが、輸送船を攻撃し始めていた。シールドがないから、他の輸送船は次々に撃ち落とされていく。大尉はコックピットに走り、全速力でクレイトへ降りるように言う。
私も耳鳴りに構っている場合じゃない。
「全機、クローキングを不規則に作動させて!」
「どういうことですか?」
「いいから!!」
ハックスが目で見ていても、砲撃はセンサーで狙っているはずだ。クローキング装置を不規則に入れれば、センサーを誤魔化せる。少なくとも、本来の数より撃墜される機は減るだろう。
「全員衝撃に備えてください!」
操縦するパイロットが、何かに掴まるように叫ぶ。私も壁にしがみつき、砲弾が当たって船体が大きく揺れた。ふらつくダンタムを支えた後、モニターを見てあることに気付き、通信機に向かってまた声を張り上げる。
通信先は、ラダスだ。
「提督!やめて!!」
ラダスのハイパードライブが、作動し始めていた。
向きを変え、スプレマシーを正面に、ラダスがハイパージャンプに入ろうとしている。劇中の内容を覚えている私は、何をしようとしているのかすぐに分かった。分かっているから、提督を止めようと叫んだ。
「アミリン!お願い!引き返して!」
私は、比較的新しい記憶であるエピソード8のあらすじを覚えている。細かいことは覚えていなくても、大まかな流れは知っている。それを避ける為に今まで計画を立ててきた。“ホルド機動”と呼ばれるものも、その大まかな事象に入る。これでは本来のあらすじと変わらない。
ホルド提督は私の声を拒むように、通信を切断した。
「アリス!よせ!」
フォースの幻影を飛ばそうとすると、ダンタムにビンタされた。
想定外の痛みに、夫を見返す。
「何すんの!?」
「私の台詞だ!提督の覚悟を無駄にするのか!?今は君が行動すべきじゃない!アリスの計画だろう!」
「でも…あれは自殺行為なんだよ…!」
「君も同じことを過去にしたんだ!なぜ分からない!?」
突然の夫婦喧嘩に、輸送船の中は静かになる。聴こえてくるのは砲弾の音と、撃ち落とされるシャトルの撃墜音だけだった。
拳を強く握り過ぎたのか、爪が手の平に食い込んで血が流れていた。
レイアにその拳を優しく解かれ、ベンチに座らされる。
「アリス…計画を知った時、提督は何て言ったと思う?」
「………分からない。」
「希望の為に。そう言って賛同してくれたのよ。提督の想いを無下にしないで。」
「ごめんなさい……」
その時、窓の向こうでスプレマシーがラダスに分断された。周りにあるスターデストロイヤーも何隻か被害を受け、輸送船への攻撃は大幅に減った。輸送船はそのままクレイトへ向かい続ける。
ようやく通じ合える仲間ができたのに、ホルド提督は逝ってしまった。
私はレイアの隣で項垂れる。
「アリス、まだ終わりじゃない。」
「分かってる。ダンタム……!」
夫は何も言わないでいてくれた。
彼の懐に顔を突っ伏して、声を押し殺した。何もかもが上手くいかず、もどかしさが募る。その悔しさに、涙が止まらなかった。
ダンタムはそれを知ってるから、私を抱き締める。
それでも悲しみの方が大きいのは、まだ希望があったからだと信じたい。
遅くなってすみません!
ビンタはやり過ぎたかな、と後悔w