【完結】ジェダイ(仮)になりました。   作:夭嘉

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川は氾濫する

ラダスが囮になり、輸送船は順調にクレイトへ向かっていた。

 

ただ、一つだけ問題があった。

 

さっきから、耳鳴りがしている。すぐ隣にドロイドがいるのに、C-3POのお喋りが聴こえない。頭が痛くて、私は両手で目元を覆う。

 

 

「アリス、大丈夫か?」

 

 

それなのに、ダンタムの声だけははっきり聴こえた。彼は手を握ってくれて、私を抱き抱える。頭痛は和らいだものの、耳鳴りは未だに消えない。

 

耳鳴りは、フォースによるものだと分かっている。

 

フォースの意志が、何かを警告している。私は強引に未来を変えた。未来を変えたことによって、何かが起こる。そう言われているような気がした。

 

 

「耳鳴りがする。」

 

 

ファースト・オーダーがクレイトまで追ってきたら、戦うしかない。レジスタンスにいるジェダイは私しかいない。ルークが戻らない今、私が戦うしかないんだ。

 

 

「っ!」

 

 

突然、嫌なあの視線が消えて、スプレマシーがある方に振り向く。

 

何年も感じてきたスノークの意識が消えた。私を悩ませてきた元凶だから、すぐに分かった。スノークは、弟子に潰されたんだ。

 

スプレマシーを凝視していると、ダンタムがその視線に気付く。

 

 

「どうしたんだ?」

「………スノークが死んだ。」

 

 

殺したのは、カイロ・レンだ。

 

この計画が始まって、レンがスノークを殺すことはないと思っていた。でも、劇中と同じようにスノークを殺した。“ベン”は、暗黒面に呑まれてしまったんだ。

 

レイアも感じたようで、私に同意する。

 

 

「ええ、スノークは死んだわ。アリス、これは予期していたの?」

「してない。やっぱり、何かがおかしい……」

 

 

レイアにそう答える。

 

スノークは、あのシディアスと似たような干渉をしてきていた。間違えるはずがない。スノークは確かに死んだ。

 

 

「レイア、未来を変えられるか分からなくなってきた……」

「諦めてはいけないわ、アリス。」

「………ごめん。」

 

 

元のあらすじに戻りかけているのかもしれない。私にできることが、時と共に減っている。これ以上は、良くないことを迎えたくない。

 

 

「まずいぞ!」

 

 

大尉の声に、私とダンタムは窓から外を覗く。

 

スプレマシーが、輸送船を攻撃し始めていた。シールドがないから、他の輸送船は次々に撃ち落とされていく。大尉はコックピットに走り、全速力でクレイトへ降りるように言う。

 

私も耳鳴りに構っている場合じゃない。

 

 

「全機、クローキングを不規則に作動させて!」

「どういうことですか?」

「いいから!!」

 

 

ハックスが目で見ていても、砲撃はセンサーで狙っているはずだ。クローキング装置を不規則に入れれば、センサーを誤魔化せる。少なくとも、本来の数より撃墜される機は減るだろう。

 

 

「全員衝撃に備えてください!」

 

 

操縦するパイロットが、何かに掴まるように叫ぶ。私も壁にしがみつき、砲弾が当たって船体が大きく揺れた。ふらつくダンタムを支えた後、モニターを見てあることに気付き、通信機に向かってまた声を張り上げる。

 

通信先は、ラダスだ。

 

 

「提督!やめて!!」

 

 

ラダスのハイパードライブが、作動し始めていた。

 

向きを変え、スプレマシーを正面に、ラダスがハイパージャンプに入ろうとしている。劇中の内容を覚えている私は、何をしようとしているのかすぐに分かった。分かっているから、提督を止めようと叫んだ。

 

 

「アミリン!お願い!引き返して!」

 

 

私は、比較的新しい記憶であるエピソード8のあらすじを覚えている。細かいことは覚えていなくても、大まかな流れは知っている。それを避ける為に今まで計画を立ててきた。“ホルド機動”と呼ばれるものも、その大まかな事象に入る。これでは本来のあらすじと変わらない。

 

ホルド提督は私の声を拒むように、通信を切断した。

 

 

「アリス!よせ!」

 

 

フォースの幻影を飛ばそうとすると、ダンタムにビンタされた。

 

想定外の痛みに、夫を見返す。

 

 

「何すんの!?」

「私の台詞だ!提督の覚悟を無駄にするのか!?今は君が行動すべきじゃない!アリスの計画だろう!」

「でも…あれは自殺行為なんだよ…!」

「君も同じことを過去にしたんだ!なぜ分からない!?」

 

 

突然の夫婦喧嘩に、輸送船の中は静かになる。聴こえてくるのは砲弾の音と、撃ち落とされるシャトルの撃墜音だけだった。

 

拳を強く握り過ぎたのか、爪が手の平に食い込んで血が流れていた。

 

レイアにその拳を優しく解かれ、ベンチに座らされる。

 

 

「アリス…計画を知った時、提督は何て言ったと思う?」

「………分からない。」

「希望の為に。そう言って賛同してくれたのよ。提督の想いを無下にしないで。」

「ごめんなさい……」

 

 

その時、窓の向こうでスプレマシーがラダスに分断された。周りにあるスターデストロイヤーも何隻か被害を受け、輸送船への攻撃は大幅に減った。輸送船はそのままクレイトへ向かい続ける。

 

ようやく通じ合える仲間ができたのに、ホルド提督は逝ってしまった。

 

私はレイアの隣で項垂れる。

 

 

「アリス、まだ終わりじゃない。」

「分かってる。ダンタム……!」

 

 

夫は何も言わないでいてくれた。

 

彼の懐に顔を突っ伏して、声を押し殺した。何もかもが上手くいかず、もどかしさが募る。その悔しさに、涙が止まらなかった。

 

ダンタムはそれを知ってるから、私を抱き締める。

 

それでも悲しみの方が大きいのは、まだ希望があったからだと信じたい。

 

 






遅くなってすみません!
ビンタはやり過ぎたかな、と後悔w
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