戦いは、すぐに始まった。
ポー・ダメロン率いるスピーダー部隊が出て行き、残りは防護扉から一歩先の塹壕でブラスターを構える。塹壕の兵を指揮するのは、イーマット将軍。私は、レイアの命令で戦場に立てず、見守るしかない。
「TIEファイターです!」
ダーシー中佐の声に窓から見上げると、スピーダーがTIEファイターに攻撃されていた。地上部隊は、ウォーカーを狙い砲弾を放つ。キャノンを叩くのは、スピーダー部隊だ。
この戦いは生き残る為のもので、助けが来るまでの時間稼ぎだ。最後の希望を信じて、レジスタンスは武器を手に取る。その武器は、生き残る為に握られている。
スピーダー部隊は、徐々に近付いていく。
「ウォーカーは脚を狙って。」
その言葉に、司令部全員の視線が私に向く。
「私にできることはないから……」
「アリス……」
「1本でも崩せれば、ウォーカーは自重で潰れる。」
強化されていても、元は帝国軍のものだ。構造は同じ。装甲は破れなくても、脚は叩ける。どんな兵器も、無敵じゃない。
「クローン戦争じゃ、こんなことはあり得なかった。」
「相手はドロイドではなく、人間よ。」
「違う。あの時は、私も戦ってた。戦争とは言っても、守る為の戦いだから。」
「君は正しい選択をしてきた。間違いはない。」
ダンタムはそう言うけど、私はそう思ってない。そもそも、ジェダイが政治に介入したのが間違いだった。あの戦争は、ジェダイとシスが元凶と言っても過言じゃない。
強いて言えば、シスの台頭に気付けなかったジェダイ・オーダーが原因だった。
私は、その生き残りだ。
「間違いだらけの人生だよ、ダンタム。貴方とビリー以外はね。」
「そんなはずは……」
「もっと早く、未来を変えるべきだった。」
ローズのスピーダーを狙ったTIEファイターを、駆け付けたファルコンが撃ち落として、空はこちらが制した。
だけど、戦い自体は制していない。
スピーダー部隊がキャノンを目掛けて向かっていく。
「被害は甚大です。」
既に、スピーダー部隊は半分がやられていた。
駆け付けたファルコンに、弟子は乗っていない。それだけで、ルークは来ないと私の中で決まってしまった。何より、私は一つだけ教えなかったことがある。
私は弟子に、フォースの幻影を教えていない。
未来を変える為に、私は意図的に教えなかった。ルークが幻影を使えば、あらすじ通りになる。計画では、ルーク本人が戻ることが前提だった。
幻影も使わず、本人も来ない。
未来は、最悪な状況に進んでしまった。
「スピーダー部隊は撤退します!」
「オーガナ将軍!フィンが……!」
誰かの悲鳴のような声に、顔を上げる。
フィンの機体が、あらすじ通りにキャノンへ突っ込もうとしていた。ポーの命令も無視して、真っ直ぐ向かっていく。彼はビリーの懇願すら無視した。
「ダメ!ローズ!!」
声を張り上げないわけにはいかなかった。
ローズがフィンを止めようと、キャノンの方へ向きを変える。
「アリス!行くな!」
フィン達の無謀な真似を見て、無線機を外した。
ダンタムの手を振り払うが、他の隊員にも止められる。羽交い締めにされ、行かないように押さえられた。2人掛かりで来ても、諦めなかった。
「このままじゃ2人共……!」
次の瞬間、ビリーのスピーダーが2人に突っ込んでいた。
認識範囲を広げて、息子は2人を確実に助けた。2人は生きている。だけど、今回はローズではなくてフィンが倒れてしまった。
未来が変わって、フィンが怪我をしてしまった。
私はその場に座り込み、呆然となる。
「っ……」
事態は、酷くなる一方だ。
防護扉はキャノンで破られ、レジスタンスは壊滅寸前。何もかも、最悪だ。私ができることは、何も残されていない。
「信号は複数箇所で受信されましたが、応答はありません……」
コニックス中尉が、静かに報告する。
「悲鳴は聞こえても、助けには来ない………」
ダーシー中佐の言う通りだった。
人々は救難信号に気付いているけど、誰も返そうとはしない。状況を知ろうとすらしない。帝国が誕生した時と同じだ。
誰もが恐怖に目を背けている。
司令部は、レイアに視線を向ける。
「私達は最後まで戦いました。」
レイアですら、全てを諦めていた。
レジスタンスという光は、闇に消されてしまった。かつての反乱軍のようにはいかない。希望の光は、霞んで消えていく。
「銀河は、全ての希望を失ってしまった。火花は……消えていく………」
フォースの意志は、私達を助けてくれない。
いや、私は助けなくていい。
レジスタンスも助けてくれない。銀河の光を守ってくれないなら、従う意味もない。助けてくれないのに、従いたくない。
「希望は、ない………」
「アリス!」
ダンタムの視線の先にある、基地の奥から人影が現れた。
マントを着て、フードを深く被っている。衰えはしたけど、昔と変わらないその人物を見上げた。親友と同じ青い目を真っ直ぐ見て、その人の名前を呟く。
「ルーク……!」
“ジェダイのルーク”が戻ってきた。
ルークは私を立たせて、片膝を折った。マスター、師の私に対する礼に、やめるように言う。それでもルークは頭を下げ、謝罪する。何の謝罪か、私はすぐに理解した。
目の前の現実を信じたくなくて、何度も拒んだ。
弟子が戻ってきて嬉しいはずなのに、素直に喜べなかった。
ルーク本人は、ここにいない。