私は、確かに教えなかった。
フォースの幻影を教えていないのに、なぜ使える?
私と違って、肉体が老いたルークが使えば、命を削って死ぬことになる。だから、ルーク本人と私の2人が戦う計画を立てた。なのに、弟子は幻影を使っている。
「どういうこと?」
私の詰問に、ルークは立ち上がる。
その表情は、昔のルークそのままだった。あの頃のルークと同じ目をしている。それが一層、私の悲しみを引き立てた。
「泣かないでくれ、アリス。」
視界が霞み、言いたいことがはっきり言えなかった。
言えたのは、たった一言。
「なんで、それを……」
「オビ=ワンから教わったんだ。」
霊体のオビ=ワンからと、ルークは付け足す。
「“マスター”、師より先立つ弟子を許してほしい。」
「こんなことなら、可愛がるんじゃなかった……」
「感謝しています、先生。」
次いで、ルークはレイアの前に座る。レイアも、感じているはずだ。兄はこの場にいない、と。
「何が言いたいか分かるわ。」
レイアの言葉に、ルークは口を閉じる。
「髪型を変えたの。髪留めはアリスからの贈り物よ。」
「………よく似合っているよ。」
2人は他愛ない会話をする。
30年前のルークとレイア、私が信じた希望そのものだ。希望は今も生きている。2人は、親友の子なんだ。
アナキン、2人は強くなったよ。
「レイア……悪かった。」
「いいえ、最後には戻ってくれたわ。」
「彼と対決しに来た。」
ルークは、静かに告げる。
彼とは、ベンのことだ。ルークが彼を見放したことで、ベンはカイロ・レンになってしまった。ルークには、昔の教え子を救えない。
弟子は、そのけじめをつけにきたんだ。
「アリス、計画を狂わせてすまない。」
「もういい。戻ってくれただけでも嬉しいから。喜べないけど……」
「希望が失せたわけじゃない。我々が最後のジェダイではないのだから。希望は受け継がれるものだ。それを貴女が教えてくれた。」
希望は、新しい世代へ受け継がれる。私がルークに伝えたように、ルークはレイやビリーに伝えていく。未来は、絶望だけじゃない。
「ルーク、私を信じてくれてありがとう。」
「貴女はレジスタンスと共に。反乱軍が立ち上がる時だ。」
ルークは私達を見回すと、キャノンで破られた防護扉へ歩いていく。
「ルーク様……」
C-3POの呟きに、ルークはウインクする。
そして外へ出ていき、レジスタンスは彼を見つめる。伝説のジェダイが目の前にいる。その事実が、レジスタンスを奮い立たせていた。
私は背を向けるルークを、ダンタムに肩を抱かれながら静かに見送った。
「っ!!」
ルークが出て行った途端、ファースト・オーダーは集中砲火を浴びせてくる。
でも、幻影のルークは無傷だ。幻影にレーザー弾な無意味だから、砂埃が消えた頃もルークは変わらず立っている。憎き元マスターの無事を知ったレンは、コマンド・シャトルを降りてくる。
「救急パック!救急パックをちょうだい!」
ローズの悲鳴のような声に、私は我に返る。ビリーがフィンを抱えて、基地内に戻ってきた。重傷のフィンに、ローズは動揺している。
「母さん!フィンが!!」
フィンに駆け寄ると、彼は墜落の衝撃で頭から血を流していた。急いで処置をして、ローズに離れないように指示する。ビリーも腕を切っていて、すぐに処置を施す。
「あれが、マスター・スカイウォーカー………」
ビリーがルークを見て、小さく口にする。
「そう。あれが………私の弟子。」
アナキンとパドメの息子で、親友の忘れ形見。
「ルークこそ、ジェダイだよ。」
「………母さんもジェダイだ。俺だって、いってぇ!やめろよ!」
「生意気言わないで。あんたはまだ訓練不足。レイを見習いなさい。」
ビリーの処置した腕を思いっきり叩いた。
大尉はクワッドノキュラー越しに見たレンの名を呟き、ビリーが手を貸すと言い出す。
「援護は許さない。」
「けど、一人なんて、」
「ルークは大丈夫。」
気付けば、自分に言い聞かせるように言っていた。
ルークの図らいを無駄にする前に、誰も援護するなと指示した。援護すれば、未来はまた悪い方へ向かってしまう。今は、生き残ることを考えるんだ。
「そうだ、ビリー。俺達はファースト・オーダーを燃やし尽くす為の火花だ。俺達の為に、時間稼ぎをしているんだ。彼はどこから入ってきた?」
「失礼します!概略図にない出口がありそうです!しかし、我々が脱出できる確率は、」
「3PO、口を閉じて。」
「どうするんだ?」
ダンタムの言葉に、大尉は私を見る。
「あの動物はなんだ?」
「ヴァルプティシーズ。」
大尉に、その動物の名前を教えてあげた。
結晶の白い毛を持つキツネが、綺麗な音を立てて奥へ走っていく。大尉はヴァルプティシーズが去るのを見て、何かに気付いたようだった。この私も、ヴァルプティシーズの存在を今まで思い出さなかった。
「彼らを追おう。動物の勘に間違いはない。」
レジスタンスは、最高指揮官であるレイアに視線を集中させる。
「なぜ私を見るのです?彼に続いて。アリス、貴女も若者に任せきりにしないで。」
「すみません、姫。」
「貴女も変わらないわね、レイン将軍。」
大尉に続き、私達はヴァルプティシーズを追って基地の奥へと進む。
私達が生き残る為に、ルークは身を張ってくれている。私も、その覚悟に応えなければならない。レジスタンスを逃がして、彼らと共に戦い、ジェダイとしての役割を全うする。それが私にできることだ。
無駄なことなんて、何一つなかった。
あと2、3話でエピソード9に入りたいと思います!