目を覚ますと、酷い寒気を感じていた。寒気を感じているのに、冷や汗が流れる。背中に流れる嫌な汗に、私は膝を抱え顔を埋めた。
暗黒面に対する恐怖というより、シディアスに対する恐怖だった。奴が目の前にいるかのように、背筋が凍った。あの心臓が握り潰されるような感覚は、未だに忘れられない。
今は、この平穏に安堵するしかない。
ファルコンはハイパースペースへ入り、何とかファースト・オーダーから逃げることができた。レジスタンスは最後の希望を懸け、クレイトを去り、次なる基地を求めた。
現在、ファルコンは惑星ホスに潜伏している。少しの間なら、ファースト・オーダーをやり過ごせる。奴らも、封鎖されたエコー基地にいるとは思わないだろう。
そして、私は1ヶ月かけて療養して完治した後、レイとビリーに訓練を付けることになった。
ただし、今回はレイアも巻き込んだ。
「私が……?」
「うん。ベンの為に、訓練をやめたのは知ってる。ルークに聞いたから。」
「だったら、」
「主軸は私でも良い。計画通りだから。けど、私がベンを連れ戻すことはできない。」
私はファルコンのコックピットで、レイとビリーの訓練についてレイアと話し合う。
基本的には私が訓練を付けるけど、レイアも巻き込むことになる。
私がこの世界のあらすじに組み込まれたことで、ルークのマスターは私になった。そのルークは逝ってしまい、現存するジェダイは私だけだ。レイアもジェダイと呼べるけど、途中で訓練をやめている。
未来を確実に変えるには、レイアというジェダイの存在も必要だ。
「あんたもフォースとの絆を結び直す時だよ。フォースが、レイアとベンを結ぶ。私が繋ぐことはできないの。」
「アリス……」
「私がアシストする。レジスタンスとレイア、レイやビリーの為に。」
「………分かったわ。」
コックピットを出て、私は船から降りていく。
このまま何もしない選択をしたら、レイアが死ぬ未来が見えた。訓練を終えていないレイアがフォースと繋がれば、否応なく彼女の命が尽きる。我が子と会う前に、レイアを死なせたくない。
もう一つの懸念が、シディアスの存在だ。
ヴィジョンでシディアスの存在を感じた後、奴の意識は消えないと悟った。そうなれば、シスは何度でも復活する。レイとビリーはその脅威に曝されることになる。
そんなことは、絶対にさせない。
「母さん、R7に連れてこられたんだが、何なんだ?」
ビリーはレイと一緒に、R7に連れられてくる。
浮かない顔をする私に、2人は顔を見合わせた。
「アリス……?」
「どうしたんだ、母さん?」
「明日からあんた達に、本格的に訓練を付ける。ビリーの難関も突破したみたいだし。」
「本当に!?」
「やっと……!」
喜ぶ2人とは裏腹に、私は言葉を続ける。
「私も昔、ろくでもないジェダイだった。明日って言ったのは、考える時間を作る為。無理に訓練する必要はない。訓練するかしないかは、あんた達が選んで。」
私の問いに、レイとビリーはショックを受けたような顔をする。2人には、敷かれたレールを歩くのではなく、自分でレールを敷いてほしい。私がイニシエイトだった時とは違って、選択肢があるのだから。
だけど、2人の答えは決まっていたみたいだった。
「訓練を受けます。」
「俺も受ける。母さん、もう休んでくれよ。」
「え、休む……?」
「ずっと戦い続けてきただろ?どんな人生なのか父さんから聞いてるし、伝説が残るくらいだ。いい加減、休んだっていいはずだ。」
ダンタムの言う通り、ウィリアムはもう大人だ。私のことをよく見ている。息子の言葉を否定できなかった。
「本当にいいの?」
「ええ。」
「もちろんだ。」
「寧ろ今日から訓練を受けるわ。マスター・レイン、お願い。」
「分かった。ランチが済んだら始めるよ。R7、ルークを鍛えたあの場所を開けておいて。」
ルークを鍛え始めた頃、よく使っていた場所があった。今のエコー基地は格納庫が閉鎖されていて、かつての帝国軍が封印している。直接オーバーライドしなければ開かない。
R7-D4ならお手の物だ。
2人が基地に戻った後、積み入れを指示する夫に声をかける。ダンタムが中佐と代わった後、彼は話を聞いてくれた。崩壊した旧司令センターに入り、若者2人の本格的な訓練を付けると話す。
「そうか……」
「ビリーに休んでほしいって言われたよ…」
「何に怯えている?」
何かに気付いたのか、ダンタムは怪訝な表情で問う。
「ルークが死んだ時、あいつの気配を感じた。」
「あいつ……?」
「………シディアス」
「アリス、皇帝は死んだはずだ。」
「本当に死んだなら、術は解除される。私の予感が的中した。ダンタム、今はシディアスが怖い…!」
全てを奪われるかもしれないと考えてしまい、不安しかなかった。
私の記憶も、エピソード8止まりだ。この先がどうなるのか、予知することしかできない。何をしてもシディアスに先を越されそうで、恐怖を切り離すことができなかった。
「ビリーが殺されたら、私は自分を呪う……」
「アリス、やめるんだ。ウィリアムは心配ない。逆に私達を守ろうとしている。大人しく守られるんだ。」
「息子に守られるなんて……!」
「親孝行だと思えばいい。」
ダンタムの言葉に、静かに頷く。
闇が、すぐそこに迫っていた。
私ができるのは、若者2人を鍛えることだけ。船の整備をしたところで、恐怖は紛れない。一人になれば、暗黒面に呑まれそうだった。
一人にはなりたくない。
ダンタムすら遠ざけていた、昔の私とは大違いだ。今は、誰も離れてほしくない。近くに夫がいないと不安な程に。
暗黒面の力は、日に日に強くなっていく。
次回より、エピソード9に入ります!
その前に、小話何か書きたいですw