霧の中を進め
ファースト・オーダーから隠れ続けて約1年。
レジスタンスは、エイジャン・クロスに身を潜めていた。
私もレジスタンスと行動を共にしていて、最優先でレイとビリーを鍛えている。2人は競い合うように成長して、今や見違える程だった。あのツタミニスも覚えて、レイに至ってはフォース・ヒーリングも習得した。
レイの成長に驚きながらも、私は2人に持てる全てを教えた。
そして現在、締めとも言うべき訓練をしている。
「共にあれ……」
こちらから宇宙のフォースに呼びかけ、先人ジェダイに通じる技だ。通じれば、彼らとコンタクトが取れる。交信できた暁には、彼らの言葉を聞くことができる。
旧ジェダイ・オーダーのマスター達では、為し得なかった技だ。
私も、先人ジェダイと交信できるまで何十年も費やした。
「共にあれ……」
レイとビリーは背中合わせで浮かび、宇宙のフォースに語りかける。フォースで辺りの石も浮かび上がり、2人は感覚が研ぎ澄まされていく。教え子達のフォースに、私は明後日の方を向く。
私には、そこにオビ=ワンの姿を捉えていた。
オビ=ワンは頷き、私も目で頷く。
そうしている内に、レイとビリーはほぼ同時にギブアップした。
「共にない。」
「無理だ。」
そんな2人に、レイアが優しく宥める。
「2人共、焦ってはダメよ。」
「どう考えても不可能です、将軍。」
「私も……本当にできるとは思えません。」
オビ=ワンから視線を外し、私は瞑想をやめてレイアと2人に声をかける。
「フォースに不可能はないよ。」
「母さんだからだ。ジェダイ・マスターの母さんができないはずないだろ。」
「アリスができないことなんてあるの?」
「もちろんあるって。料理できないし。」
「ふふっ、アリスの手料理は本当に残念よね。」
「レイア、変なこと言わないでよ。」
「事実でしょう?」
30年経った今でも、料理の腕は上達しません。
おかしいよね。同じものしか作ってないはずなのに、毎回失敗するんだもの。鍋の買い替え回数は減ったけど、ちゃんとした料理が出来上がったことはない。
え?誰が作るって?
夫のダンタムです!!
「いつかはできるようになる。最初からできる人はいないんだから。テレキネシスだって、あんた達はできなかったでしょう?」
「………」
「………」
「アリスの言う通りよ。誰しも、最初から上手くいくわけではないわ。」
『はい。』
ビリーとレイを訓練コースに行かせて、私とレイアはファルコンを心配する。
ミレニアム・ファルコンは敵の情報を得る為に、ファースト・オーダーの目を掻い潜ってスパイに会いに行った。乗組員はポーとフィン、クラウド、チューバッカとR2-D2だ。
そのファルコンが、まだ戻っていない。
「もし罠だったら……」
「罠の心配はないわ。心配なのは、スパイと共に捕まることよ。ファルコンが無事に戻ることを祈りましょう。」
「うん……」
頷いたものの、やはり心配だった。
私の記憶に、クレイトの戦い以降の情報はない。だから、今後は瞑想の中で予知するしかない。未来が分からないことが、とてつもなく不安に感じる。
それから、一つ解せないことがあった。
1年前から感じるシディアスの意識が、まだ私に向いている。未来の記憶がないのに、なぜ未だに執着されているのか分からない。暗黒面に堕とすなら、レイやビリーが狙われてもおかしくはない。
教え子達が許容外なわけではないけど、まだ執着されているなんて理解できなかった。
「アリス、怖れてはいけないわ。それがシディアス卿の力になるのよ。」
「分かってる。でも、自分の中の闇が怖ろしい。」
近い未来、暗黒面に踏み込む日が来るんじゃないかと怯えている。長年守ってきたダンタムとの約束を、ある日突然破ってしまいそうだ。手を伸ばしたら、後戻りできなくなるというのに。
「貴女なら大丈夫。ルード氏がいるのよ。彼と自分を信じて。」
「ありがとう、レイア。」
そう、大丈夫。私は大丈夫だ。ダンタムさえいれば、私は大丈夫だ。
怖れてはいけない。
タナヴィーⅣに入り、私はダンタムがいるブリッジへと向かう。
彼の視線の先には、付近の星系が戦況パネルに映っていた。いくつかの星は赤くなっていて、ファースト・オーダーの支配下だと示している。
ファースト・オーダーは、疫病のようだった。
「また一つ……星系がファースト・オーダーの手に落ちたぞ。」
「支配域が広がってる。」
「ああ。」
戦況パネルから目を逸らし、私とダンタムはブリッジを出る。
ファルコンが戻っていないことを言うと、彼はあの船なら心配ないと断言する。
「君がポンコツ船と称するもの程、危機を乗り越える。だから心配ない。」
「それ褒めてる?」
「いや、皮肉だ。だが、ファルコン然り、ゴースト然りだろう?」
「やめて、ヘラに殺される。」
ゴーストをポンコツ船なんて言ったら、ヘラを怒らせかねない。それに、あの船はとても優秀だ。そんな船をポンコツだなんて言えない。
ファルコンだって、優秀な船だ。
その時、中隊長の一人がブリッジに駆け込んでくる。
「御二方!ファルコンが戻りました!!」
彼はそう言って、またブリッジから走って出て行った。
ダンタムを見ると、頷いてくれた。
「アリス、行こう。」
「うん。」
2人でタナヴィーを降りて、煙を上げるファルコンへ向かった。
彼らが持ち帰った情報に、良い話なんて何一つないだろう。もっと言えば、悪夢のような話しかないかもしれない。
噂だけは、銀河のあちこちから聞こえる。
良い噂も、悪い噂も。
悪い噂は、ファースト・オーダーに関することが多い。その中に、認めたくないものもあった。裏付けがない噂ほど、信じられないものはない。
30年前の悪夢が、再び甦る。
エピソード9編\(^ω^)/