レイには、ポーとフィン、ビリーが同行した。BB-8とチューバッカも一緒だった。危険な船旅なのは、ポー達も承知済みだ。
遠ざかるファルコンを見上げて、私とレイアは彼らの無事を祈るしかなかった。
「行くのね……」
「許して、レイア。」
「止めても、行くのでしょう?」
「ごめん……」
私自身を知る為、今まで以上に闇へ沈む必要がある。
レイアにやろうとしていることを話すと、当然反対された。それは愚かで、浅はかな所業だからだ。愚行だと分かっていて、私はその道へ進もうとしている。
「ルード氏は?」
「もう話してある。ダンタムと2人で発つの。これからは、私と彼の問題でもあるから。」
「そう…」
レイアは、悲しそうな顔をする。
ダンタムが同行するということは、2人で決めた覚悟は固いということだ。それがどんなに惨い選択でも、曲げたりしない。レイアは、その想いに嘆いている。
「必ず戻ってきて。」
「今回は約束できない。」
「アリス、」
「信じて待ってて。」
小型シャトルへ向かい、コックピットのダンタムの隣に座る。
夫はエンジンを既にかけていて、行き先を問う。目的地は、もう決まっている。長年避けてきた、シスの聖地だ。
「モラバンドへ。」
「分かった。」
シャトルが軌道に出た後、私はレバーを押す。ハイパースペースへ入り、操縦をオートパイロットに切り替えた。コックピットから出ようとすると、ダンタムが私を引き止める。
「考え直す気はないのか?」
「………うん。」
「アリス、」
「もう決めたの。シディアスを完全に葬るには、ジェダイだけでは不可能。シスの力も必要になる。」
一から十まで、ダンタムに全てを話してきた。私が転生した意味、概念、記憶、全てを。だけど、一つだけ言っていないことがある。
これから私が何を選ぶのか、彼に言っていなかった。
「シスになる。奴の望み通りに。」
暗黒面に手を出すことに、ダンタムは反対した。彼と夫婦になってから守り続けた誓いを、破るということだ。それもシス卿と同等の力を得る為に。
「戻れないかもしれないんだぞ。」
「分かってる。」
「シスを倒す為に、シスになるつもりか?本末転倒だ。スカイウォーカーのように、今度は君が脅威になる。」
「その為に、貴方がいる。」
「………よせ。」
考えていることを悟ったダンタムは、私から離れる。
「私が貴方を殺す前に殺して。」
「それがアリスの計画か?最悪の計画だ。」
「何もかもが消える前に、そうするしかない。」
「まるで悪夢だな。」
「ふざけないで。」
「ふざけているのは君だ。アリスが暗黒面に踏み込めば、レイやビリーはどうなる?」
彼は、今にも泣きそうな表情で私を見る。その表情が、ムスタファーのパドメに重なって見えた。私もアナキンのように、暗黒面に侵され始めている。
「例え暗黒面に呑まれても、貴方の元には帰る。」
「変わり果てた君を見たくない。」
「ダンタム、恨まないで。」
コックピットを出て、私は格納庫に引き篭る。
力に固執しているから、私は暗黒面に侵されている。そんな私から、彼は目を逸らしていた。シディアスを倒そうと思えば思うほど、ダンタムが離れていく。
婚儀の日、苦しみも受け入れると言ってくれたダンタムは、私を拒みはしない。それが返って辛かった。
心が押し潰されそうだった。
「アナキンは、これを………」
アナキンも同じ苦しみを味わったんだと気付き、親友をどれだけ傷付けたのか理解した。今はお互い許し合ったけど、あの頃の自分がとんでもない馬鹿だったと思い知った。
「っ……」
これが裏切りの苦痛だ。
気付けば、私は意識を手放していた。
深い眠りの中、懐かしい夢を見た。
アナキンとパドメ、オビ=ワンがいて、シャトルのコックピットで笑っている。アナキンがオビ=ワンを揶揄って叱られて、パドメが宥める。それを私が追い打ちをかけて、オビ=ワンに説教される。
でも、私はそれを遠くから眺めているだけだった。
『アナキン!何度言えば分かる!?アリス!お前もアナキンを止めろ!』
『やだよ!楽しいじゃん!』
『僕のお陰で生き残れているようなものですよ!』
『こんな無茶な操縦が楽しいわけあるか!』
『オビ=ワンの言う通りです!貴方達は無茶苦茶すぎます!』
あの頃に戻りたい。
賑やかだけど、穏やかだったあの頃に……
『西にヴァルチャー・ドロイド3機来てる!』
『任せろ!』
『無茶だ!アナキン!』
『アリス!お願いだから操縦代わってあげて!』
『無理⭐︎』
パドメ達といると、シディアスやジェダイのことなんか忘れられた。柵なんてどうでもいい。アナキンは親友で、パドメとオビ=ワンは友人だ。
私にはもう、ダンタムとビリーしかいない。
全て奪われる前に、私が戦わなきゃいけない。
『返して……』
応答はないと分かっていても、フォースの意志に訴えてしまう。
私を呼んだのは、フォースの意志。フォースの意志に従うのが、私の役割だ。それなのに、助けてくれないなら従う意味はない。
フォースの意志に逆らって、暗黒面に踏み込んでやる。