身を震わせる私に、プレイガスは立てと冷たく言い放つ。
プレイガスは、私に復讐をさせる程だ。それ程、シディアスを恨み妬んでいる。私がどうなろうと関係ない。
『ようやく理解したか。』
その言葉を肯定すれば、プレイガスは私を臆病者と罵る。
「今すぐ術を解けば、」
『彼奴も言ったはずだろう。手遅れだ。最後の手段を取れ。それがお前に残された道だ。』
ダンタムは殺せない。
でも忠誠を誓った以上、シスを裏切れない。裏切れば、報いを受ける。私だけでなく、私が関わる者全ての者に、火の粉は降りかかる。
分かっているのに、出てくる言葉は拒絶だった。
「嫌だ……!」
その時、ブラスターが撃たれて、プレイガスを貫通する。
プレイガスは幻影だ。レーザー弾では消えない。貫通した箇所はすぐに修復される。
『そら来たぞ。お前の愛する男だ。』
振り返ると、ダンタムが立っていた。
私の目を見て、彼は悲しそうな表情をする。ダンタムの目に映っているのは、暗黒面に歪められた金色の虹彩だ。それは、私が暗黒面に身を置くことを示している。
「アリス……」
神殿に踏み込んできた彼は、プレイガスを睨み付ける。
「アリスを闇に堕としたのはお前か。」
『勘違いするな。レインは自ら手を出したのだ。』
「ダンタム、本当だよ。私から暗黒面に手を出した。」
奴の言うことが本当だと知り、ダンタムは苦しそうな顔をする。
銀河の為に、彼の為にしたことが、余計に彼を苦しませてしまった。ダンタムから、計り知れない悲しみを感じる。こんなはずじゃなかったのに。
「アリス、まだ間に合う。復讐心を捨てろ。」
「できない。シスに復讐心は不可欠。暗黒面の力がなければ、シディアスは殺せない。」
「それは君の復讐じゃないだろう!ジェダイは報復しないはずだ!」
「………もうジェダイじゃない。」
私の決意に、彼は涙を流す。そして今度は私にブラスターを向け、安全装置を外す。ダンタムのやろうとしていることが分かり、無言でそれを眺めた。
プレイガスは、私達のやりとりを見て口を開く。
『実に愉快だ!レイン、最愛の者と袂を別つとはな!それこそがシスよ!』
「うるさい!」
私の怒号に、プレイガスは霧散する。
ダンタムはブラスターを向けたまま、私から目を逸さなかった。
殺してくれる。
そう思って、私はライトセーバーに手を伸ばさなかった。シディアスに肉体を乗っ取られるくらいなら、殺された方がマシだ。抵抗してシディアスに殺されることになるなら、ダンタムに殺されたい。
残酷な選択を彼にさせてしまうと、胸が痛かった。
「頼む、戻ってくれ。」
その声が、酷く心に刺さった。
帰りたいと思う私を暗黒面に引き止めるのは、皮肉にも理性だった。
「自分が憎い……」
「アリス…」
「あいつを殺せない自分が憎いっ……」
今の私は、ジェダイとは正反対だ。それなのに、シディアスを殺せない。奴に近付くことすらできない。
私が奴を殺すことは不可能。
迎えた結末は、私が暗黒面に堕ちただけ。
「アリス、愛している。」
「………」
同じように、愛していると言えなかった。
私は彼に、暗黒面に手を出さないと約束していた。約束を破った私に、そんなことを言う資格はない。愛していても、私が言ってはいけないんだ。
「だが、私が愛したアリスは死んでしまった。終わりにしよう。」
「っ!」
ブラスターで撃たれ、私はスタン・ビームで祭壇に背を打つ。今の状態では気絶できず、背中の痛みに呻くことしかできなかった。殺してくれると思っていたのに、スタン・ビームを撃ったダンタムに苛立ちが湧く。
彼は私の傍らに寄り、屈み込む。
私はスタン・ビームを受けて動けず、視線だけ上げた。
「なんで……!」
「誓い合っただろう。私は君の苦しみを受け入れ、君も私の隣にいると。」
「許してほしいなんて言ってない!」
「なら、なぜ泣いている?」
今更泣いていることに気付き、視線を逸らす。
「どうして助けを求めない?」
「もう手遅れだよ……」
「例え手遅れでも、変えられるものはあるだろう。」
「変えられない。私が暗黒面に堕ちたことは、っ!?」
レイの悲しみを感じた。自分の出自を知ったらしい。あの子も、自分に怯えている。
私がレイとビリーを守らなくてはいけない。
その為には、まだ暗黒面から戻るわけにはいかない。
「………まだ戻れない。」
「アリス!」
「私はジェダイのアリス・レインじゃない。シスのアリス・レイン。シディアスを殺すまで、帰ることはできない。」
「君は馬鹿だ……」
「ごめんなさい。」
そう返すと、2度目のスタン・ビームを撃たれる。
私がダンタムを殺せないように、ダンタムも私を殺せない。一見彼に支えられているようにも見えるけど、彼も私の存在が光だった。ダンタムの心を読んだことで、それを自覚してしまった。
私達はまだ、互いを愛している。
今度こそ気絶して、私は意識を手放した。
気が付くと、真っ白い空間に立っていた。
『また……』
違うのは、懐かしい気配があること。
『アリス』
声の方へ向き直ると、親友がいた。
『アナキン』
私が暗黒面に身を置いている為か、アナキンは光明面にいた。
ジェダイだった頃の姿で、アナキンは私の前に歩み寄る。
『久しぶり。』
『嬉しくない再会だ。』
『なぜ?』
『親友が暗黒面に堕ちたんだ。喜べるわけがないだろ。』
アナキンの言葉に、口を噤む。
ムスタファーの時とは逆の状況に、私は唇を噛んだ。あの時はアナキンが暗黒面にいて、パドメの懇願を拒んだ。だけど今回は真逆で、私が暗黒面にいて、ダンタムを拒んでいる。
『僕はパドメを傷付けた。君もルード議員を傷付けるのか?』
『やめて。』
『何をやめる?傷口を抉ることをか?アリス、逃げればダース・シディアスの思惑に乗せられるぞ。』
『どうしたらいいの……?』
これ以上、どうすればいいのか分からなかった。
立ち尽くす私を、親友は抱き締めてくれた。私の中の闇を浄めるような抱擁に、後悔を覚えた。今までの行動が、愚かしい程に。
その気持ちに応えるように、アナキンは私を離して口を開く。
『逃げるな。暗黒面からもだ。僕と同じ末路を辿る必要はない。』
『アナキン、』
『フォースと共にあらんことを、アリス。』
『待って!!!』
声は届かず、私は現実に引き戻される。
親友の笑顔が頭から離れない。身体の痛みと寒気なんかどうでも良くなる。ただ、虚しかった。
逃げるなと言われても、暗黒面が恐ろしい。