目を覚ましてまず目に入ったのは、夫のダンタムだった。
私はエイジャン・クロスに連れ戻されていて、タナヴィーの一室にいた。部屋のドアはロックがかけられ、スタンカフも着けられている。私が危険人物だと言われているみたいだ。
起き上がって、手首のスタンカフを掲げダンタムに問い掛ける。
「何これ。」
「見たままだ。」
「見たままって……」
「姫の命令だ。拘束させてもらった。」
レイアは、私が暗黒面にいると感じている。
拘束したのは正しい判断だ。拘束されていなければ、私は我を失っていた。今でも、シディアスへの憎しみが消えていないのだから。
「最悪……」
「話し相手がいるだけマシだろう。」
「分かってるよ。貴方は監視役でしょう?」
「随分刺々しいな。」
「当然だと思うけど?」
殺してくれなかった上に、私をスタンしたんだ。多少刺々しくても仕方ない。これでも抑えている方なのに。
私はまだ、暗黒面から抜け出せていない。
「まだ戻ってくれないのか。」
「何度も言わせないで。シスは裏切れない。今も私の背後に……」
「………君は変わってしまった。」
「戻ると期待してるなら、待つだけ無駄だよ。何も変えられない。私がシスになったから、レイとビリーは無事でいられる。」
私が暗黒面を受け入れない限り、2人は暗黒面に誘われ続ける。不甲斐ないジェダイ・マスターだ。こんなとこでしか、教え子を守れない。
「ファルコンは?」
「まだ戻っていない。だが、君は暗黒面から離れることに専念するんだ。」
「だから……できないって言ってるでしょう!」
「………今の自分に何とも思わないのか?」
何も思わないはずがない。
今の私は暗黒面に侵食されて、醜い表情をしているだろう。憎しみと怒りに囚われて、その感情が消えてくれない。何より、自覚していても断ち切れない。
見るに耐えないのか、ダンタムが目を合わせようとしない。
「目を逸らすなら一人にして。」
「ダメだ。君を一人にしたら、何をするか分からない。」
「それなら、私を見て。」
そう言うと、ダンタムはようやく目を合わせる。私を見るその目は酷く悲しげで、彼の心が泣いているのを感じた。直に感じたその感情に、私まで泣いてしまいそうだった。
だけど、ダンタムの方が辛いはずだ。
「レイアを呼んで。」
膝を抱えて、彼に頼んだ。
私が暗黒面にいる今、レイアはレイとビリーの唯一の師だ。何もできないから彼女に託すしかない。私が教え子に顔を合わせたら、良くない影響を生む。それだけは避けたい。
「暗黒面に堕ちたジェダイを、“オーガナ将軍”に会わせるわけにはいかない。会うなら、君が戻ってからだ。」
「頑固者……」
「それは君だ。」
顔を上げると、ダンタムが抱き締めてきた。
この状況で優しさを受けるのは、重く苦しい。彼を傷付けるかもしれないと思い、手錠された手でダンタムを押し返す。もし私が負の感情に負ければ、最愛の人に手を掛けてしまう。
耳元で囁く暗黒面に、私は必死に抵抗した。
心地良いのに、戻ろうとすると私を苦しませる。
「近付かないで。」
「君の気持ちを聞かせてくれ。」
「そんなものはない。」
「いいや、ある。モラバンドで私を殺さなかったのが、その証拠だ。」
殺さなかったんじゃない。殺したくなかったんだ。婚儀を挙げた日のように、一線を越えたくない。
本来なら、シス卿として手を下すべきだったのに。
私は臆病者だ。
「昔から何一つ変わってない。私達も、フォースも。」
「………」
「私は昔から臆病だった。失うことを怖れて、逃げた。暗黒面に囚われているのも、その報いなんだよ……」
膝の上で、手を握り締める。
ジェダイ・オーダーがあった頃も、帝国が君臨していた頃も、ずっと逃げていた。シディアスに正々堂々と向き合ったのは、第二デス・スターの戦いだけ。奴が死んだ後だって、信じたくなくて真実から逃げた。
シディアスに、居場所を奪われるのが怖かったんだ。
暗黒面から逃げるな?そんなの無理だ。
「君はただ守ろうとしただけだろう。」
「それが良くなかった。守るものがなければ、私はシディアスを倒せていた。」
「違う。守るものがあったから、君は生きている。」
「もうやめて……!」
「アリス!!!」
スタンされてから、彼は一度も名前を呼ばなかった。本当に、私が別人だと認識しているようだった。暗黒面に堕ちても、何も変わっていないのに。
それが今、痛々しい程の感情を滲ませて、私の名を口にした。
「自分を許すんだ!君が暗黒面から抜け出せないのは、君自身を恨んでいるからだ!」
「許す……?私が何を恨んでいるか分からないくせに!放っておいてよ!!」
2人の人生で、初めて拒絶した。
初めて夫を拒絶した私に、ダンタムは絶句する。暗黒面に呑まれ、彼の優しさが苦痛でしかなかった。それに気付いたのか、夫は唇を噛む。
やがて、ダンタムは静かに口を開いた。
「気付いているか?君は………スカイウォーカーと同じ道を歩んでいる。」
「アナキンは光に戻れたけど、私は違う。」
「アリス………私はどうしたらいい?」
絶望とも言える彼のその表情に、答えられなかった。
信じて、なんて言えない。
突き放しておいて、信じてほしいなんて烏滸がましい。彼の言う通り、私は馬鹿だ。助けてほしいのに、救いを求めることができない。
暗黒面は、絶えず私に囁いている。
“彼を殺せ”と。
闇の声に、負けそうだ。
「落ちぶれたものですね、マスター・レイン。」
その声に、私は振り返る。
開かないはずのドアから、一人の男が姿を現した。その男の登場に、ダンタムも驚く。なぜなら男は、本来なら現れるはずがない存在だからだ。
あり得ない状況に、私とダンタムは唖然となるしかなかった。
予想外の来客は、私達に微笑む。
間に合ったので投稿しました!
コロコロ変えてすみませんm(_ _)m