男はまた来ると言って、現状を確認して姿を消した。
彼はダンタムに何かを言っていた。その一言で、夫の表情が変わった。何が夫の気持ちを変えたのか、それが何か私には分からなかった。
男が去った後、異変を感じた。レイアのフォースが弱々しい。その理由は、私のせいでもあった。
暗黒面に手を出した私が、レイアを蝕んでいる。
それだけでも良くないことなのに、“あの子”はベンを呼び戻そうとしている。
ベンも私と同様、暗黒面に呑まれた者だ。
「レイア……やめて………」
その呟きに対して、ダンタムがドア横の通信機で状況を問う。彼が聞いて返ってきた答えは、レイアが倒れたという報せだった。間違いなく、私が元凶だ。
こうなることは分かっていたはずなのに、レイアの首を絞めてしまった。
私の謝罪に応えるように、フォースを通じてレイアの言葉が聴こえてくる。
『それと、オーガナ将軍がマスター・レインを解放するように、と……』
「今の状況では、」
『これはレイアの命令よ。』
ダーシー中佐がダンタムに有無を言わせず、そう告げる。
「………了解した。」
ダンタムは通信を切ると、私のスタンカフを外す。そして部屋のロックが解かれ、夫に連れ出された。タナヴィーの隊員達は、誰一人として目を合わせようとしない。
私はそれに反論する権利はない。
同じ立場なら、私でも目を合わせない。
彼らの目が語っている感情は、恐怖。
「貴方の言ったことは間違ってない。今の私はレジスタンスにとって、脅威でしかない。」
「君がこの状況を招いたんだ。」
「………否定はしない。」
オーガナ将軍が控えるエリアに入ると、レイアは寝台に横になっていた。ダンタムに背を押されて傍に寄ると、レイアは私に視線を向ける。冷えた手を握ると、優しく握り返された。
その冷たさが、私の心を刺す。
「レイア、ごめんなさい……!」
「アリス、怖れないで。貴女はジェダイよ。」
「もう違う。私は暗黒面に手を出した。シスを裏切れない。」
「いいえ。貴女が忠誠を誓ったのは、貴女の中の暗黒面。シディアスやプレイガスではないわ。誰も裏切ることはないのよ。」
そうだとしても、私は自分を騙すことになる。
他者を騙すのは簡単だけど、自分を騙すのはもっと簡単だ。容易く騙した己を解放するのは、比例して難しくなる。私は、その沼から抜け出せないんだ。
沈むのは楽だが、這い上がるのは困難を極める。
それが暗黒面だ。
「最後に、助けを求めて。貴女には手を伸ばしてくれる人がいるわ。苦しい時に救ってくれるのが、愛する人よ。」
レイアは私の後ろに視線を移す。
私の後ろには、ダンタムがいる。彼には、何度も助けられてきた。私を受け入れてくれた時から、ずっと。
夫は、小さく私を呼ぶ。
「ダンタム……」
彼は私の言葉を、黙って聞く。
「助けて……!」
「アリス、君の痛みを分けてくれ。誓い合った日のように……」
ダンタムが私を抱き締めて、全てを捨てろと言う。
彼にとって、ジェダイやシスなど関係ない。私自身の心を見ている。暗黒面に堕ちていようと、私を私として見てくれている。
幸せと同じように、苦痛も分かち合う。
それが夫婦なのだと、レイアが後押しする。
「私のことは守らなくていい。だが、共に戦わせてほしい。一人で戦わないでくれ。」
「それは……」
「ジェダイではないソロ将軍が、守られたことがあったか?」
「ない……」
「だったら拒むな。私が隣に立つ。だから、逃げてはダメだ。」
私がただの人間、フォース感応力がなければ、最初から彼の隣にいた。
フォースの絆さえ無ければ、暗黒面に堕ちることもなかったのだから。
そう思ってしまう自分が、ひどく恨めしかった。そんな自分を許さない限り、暗黒面からは抜け出せない。許さなければ、私はずっと一人のままだと気付いた。
「アリス、愛している。」
「私も……愛してる。」
ようやく戻れた、夫の下へ。
いつの間にか、暗黒面の囁き声は消えていた。
でも、まだ終わっていない。私には、やり残したことがある。シディアスの野望を終わらせる時だ。
終わりが、静かに近付いている。
────────
同時刻、第二デス・スターの残骸の中で、レイとビリーが、カイロ・レンと向き合っていた。
2人はライトセーバーを握り、レンを睨む。
「お前の負けだ。母さんは暗黒面から抜け出した。もう闇に堕ちることはない。」
ビリーは、母の感情を読み取っていた。
ダンタムがアリスを取り戻し、ビリーは安堵する。
アリスがプレイガスに唆され暗黒面に手を出したことで、シディアスとレンはシスの望みを果たそうとしていた。しかし母が打ち勝ってシディアスの野望は叶わなくなり、レンも望みを挫かれた。
そんなレンに、レイは更に言葉を続ける。
「アリスは、私達のマスターよ。もう暗黒面に囚われないわ。そのウェイファインダーを渡して。」
レンの手には、レイとビリーが手に入れたはずのウェイファインダーがあった。レイは衝動的にフォースを使い、それを取り返そうとする。だが、レンは返す気などない。
レンはフォースを操り、ウェイファインダーを破壊する。
「お前……!」
「お前達が俺と共に来るだけでいい。そうすれば、アリス・レインも自ずと来るはずだ。」
「アリスは来ないわ!!」
レイとビリーは、ライトセーバーでレンに切りかかる。
2人の連携に、レンは徐々に圧され始めていく。
ビリーが正面から刃を振り下ろし、レイが下から振り上げる。そこへ、3人の往来など構うことなく、大波が彼らの上に襲った。ビリーがフォースで波を割り、レイがレンと戦い続ける。
次の瞬間、若者3人に凛とした声がかけられた。
「もうやめなさい。」
3人一斉に振り向いた先には、アリスが立っていた。
“フォースの幻影”
彼らの頭にその技が浮かぶ。使えるのは亡きルークと、アリスだけ。目の前に立つアリスは、本物のアリスだった。
「レイ、ウィリアム、迷惑をかけてごめんなさい。」
「いいえ、寧ろ感謝してます。」
「母さん、まさか……」
「ビリー、信じてくれてありがとう。」
その後、アリスは視線をレンに向ける。
「2人を利用しなくても、私はその内シディアスに会うよ。」
「何だと?」
「言葉のままよ。」
その声は、アリスのものではなかった。
アリスの後ろから、レイアが姿を見せる。
レイアもまた、フォースの幻影を使うことができた。幻影を教えたのは、アリスだ。幻影のレイアは、息子に手を伸ばす。
「ベン」
その一言に込められた想いに、ベンは浄化されていく。
「なぜだ…?」
「息子の為だからよ。アリスが叶えてくれたの。貴方と会えるように。」
「どういうことだ?」
「私の意識を共有してるの。レイア一人では死んでしまう。この意味が分かる?」
レイアはアリスの覚悟を受け入れ、息子に会うことを決めたのだった。アリスはその決意に、手を貸した。もう誰も失わないように。
「レイアはあんたの為に命を懸けて、私も息子とレイの為に命を懸ける。あんたは何の為に戦うの?」
「俺は……」
「レイ、ビリー」
突然2人に声がかけられ、レイとビリーは我に返る。
「ウェイファインダーはもう一つある。」
「っ!」
「レンのTIEか!」
「レイ、やりたいようにやっていい。あいつに教えてやって。」
「………ええ。」
「ビリー、スカイウォーカーを守って。」
ビリーの知る残ったスカイウォーカーは、レイアとベンだけだった。何を言っているか分からないビリーは、首を傾げる。レイアはともかく、ベンを守る理由はない。
そんな息子に、アリスは言葉を続ける。
「私には違う役割がある。だから、スカイウォーカーを守るのはあんた、ビリーに任せる。」
「何をすれば……」
「答えはすぐに分かる。信じて。」
そう言って、アリスとレイアの幻影が消える。
残された3人は、ただ呆然となる。
最初に動いたのは、レイだった。レイはレンのTIEに乗り込み、ビリーも慌てて同乗する。ベンは2人を見ていることしかできず、クロスガード・ライトセーバーを握り締める。
光明面に帰還したベンは、一人覚悟を決める。
若者達は、まだフォースに導かれている。
あと数話……!
どうしよう、終わっちゃう。
次の作品とか何も考えてないwww