幻影を使った後、私とレイアは同時に倒れる。
レイアはともかく、私は2人分のエネルギーを使った。疲労が大きかった。だけど、休んではいられない。
「アリス、行こう。」
「うん。」
ダンタムに支えられて、私は小さなシャトルへ向かう。私達の後ろには、R7-D4が付き従う。最後の任務だと言って、相棒に助けを求めた。
私の…私達の最後にR7は、必要不可欠だ。
私とダンタムの始まりを見届けたように。
「ちょいと待ちな、レディー。」
懐かしい声に、私達は振り返る。
「カルリジアン将軍!」
「カルリジアン、遅かったね。」
「あんたは相変わらずだ。」
「あんたもね。私はもうレディーじゃない。でも、最後に会えて良かったよ。」
最後という言葉に、カルリジアンは寂しげな表情をする。
彼も、共に反乱軍として戦った仲間だ。カルリジアンが寂しいように、私も少し寂しく思ってしまう。彼は、良き友だった。
いや、今も友人だ。
「レイアを頼んだよ。」
「任せな。」
「ありがとう。」
「………武運を祈る。」
カルリジアンに頷き、続いてマズ・カナタを見る。
レイアを介抱するマズに声をかけ、感謝の言葉を伝えた。
「感謝される覚えはないよ。」
「いいえ、ある。友人になってくれた。貴女は偉大な海賊です。」
「あんたも偉大なジェダイだろう。」
「ありがとう、マズ。」
ダンタムに連れられて、私達はシャトルに乗り込む。
エンジンを立ち上げた時、ファルコンがエイジャン・クロスに戻ってくる。だけど、ここで降りるつもりはない。ファルコンのハッチが下りたと同時に、ダンタムがシャトルを発進させる。
焦って駆け寄るポーを尻目に、シャトルは空へ向かっていく。
そして、シャトルは軌道へ出た。
「心の準備はできているか?」
「一応。でも、これで貴方の隣にいられる。」
「正直、不安だ。」
「うん、私もだよ。」
ランプの一つが点滅し、接近する機体があることを教えてくれる。私の見た限りでは、敵ではない。恐らく、あの男だ。
「ついに、か。」
接近してきたシャトルは、荷物を落としてすぐにハイパースペースへと入っていく。私達はその荷を回収して、貨物室へと降りる。操縦をR7に任せて、私はその荷を開ける。
中には、小さな箱が入っているだけだった。
ダンタムと2人で、顔を見合わせる。
「箱の中に箱……?」
「マトリョシカみたい。」
「なんだそれは?」
「前の世界の人形。木彫りの人形の中に、一回り小さい同じような人形が入ってるの。」
「何が面白いんだ……」
「さぁ?」
前世のことはさて置き、私はその小さな箱を開ける。中に入っていたものに、ダンタムはギョッとする。私は想定したけど、彼には刺激が強かったみたいだ。
手に取って、その小瓶を傾ける。
「血か……?」
「うん、そうだね。」
「何に使うんだ?」
「秘儀に使う。」
秘儀と言えば、ダンタムは察しがついたようだった。
「ついに……」
『シディアス卿との戦いを終わらせる時が来たんだ。』
忘れることのない親友の声に、私は笑みを見せる。
アナキンが姿を現して、私達の前に立つ。
「スカイウォーカー将軍」
『ルード議員、アリスを救っていただき感謝します。』
「私は当然のことをしただけだ。」
「アナキン、私も貴方のように役割を果たすよ。」
『もう果たしている。やることは分かっているんだろ?』
「もちろん。」
そう言って、私は29年前を思い出す。
準備は、その日から始まった。
────────
遡ること29年前、ナブーの片田舎にいた私の下へ、ある男性が訪ねてきた。
面識はないが、私がよく知る男だった。
彼も未来を変える為に、行動することを誓っていた。私に直接コンタクトを取れば、未来は悪い方向へ進んでしまう。だから始めに、夫であるダンタムへ接触してきたのだった。
夫を介して会いに来た男は、私に頭を下げる。
「アリス・レイン、貴女の助けが必要です。」
その男の姿に、私はダンタムに訝しげな視線を向ける。
「ダンタム、どういうこと?」
「見ての通りだ。君は彼を知っているだろう?」
「知ってるも何も……」
できれば会いたくなかった。
ファースト・オーダーが台頭することは分かっている。それを、再認識したくなかったのに。彼の来訪のせいで、私の平穏はあっという間に終わった。
「私の存在が不快なのは分かります。しかし、時は一刻を争うのです。」
「信用できる証拠は?」
「貴女は心が読めるはず。」
「心なんて、いくらでも偽れる。」
ジェダイやシスに関係なく、気持ちは誤魔化せるものだ。それがどんなに禍々しい感情だろうと隠せる。私が彼の心を読んだところで、分かるものでもない。
重要なのは、信じるか信じないか、だ。
「私が信じられるように、証拠を見せて。」
「見せることはできませんが、貴女に信じてもらうことはできます。」
「ふぅん?」
「貴女がかけられたその秘術、解けた確証はありますか?」
男の言葉に、ダンタムは私を見る。
一番疑っているのは私だ。解けた確証もなければ、確かめる術もない。時間をかけて確認するしかない。
男は、それを分かっている。
信じることを決めて、私は彼に続きを促す。
「続けて。」
「私には、解けているかどうか分かります。」
「そりゃそうだろうね。けど、教える気はないんでしょう?」
「はい。今教えれば、未来は変わってしまいます。しかし、保険をかけることはできる。貴女は解き方を知っているはずです。」
確かに、知っている。
解き方を知っているけど、私は初めからその方法を選ぶつもりはない。シディアスが死んだこともあるが、何より代償が大きい。しかもシディアスが死んだ為に、必要なものが手に入らない。
彼の言葉を肯定して、私は頷く。
「保険って、何?」
「手に入るはずがないものを、貴女にお渡しします。」
「今じゃないんだね。」
「その時が来たら、必ず渡します。」
彼は、誓ってもいいと宣言する。
その言葉に、未来を彼に託すことにした。彼が行動すると決めたんだ。私も行動しなければならない。
遠い未来に起こり得る、ファースト・オーダーの台頭に備えて。
男が去った後、私はダンタムに相談した。
未来を変える為に、どうすべきか。
「ずっと先で、帝国の後継組織が立ち上がる。」
「新共和国は何もしないのか?」
「何もしないわけじゃない。手に負えなくなるの。だけど、帝国の時みたいに人々は希望を信じる。」
話してしまえば、未来は変わってしまう。
遠回しにしか言えないけど、ダンタムは何かを察しているだろう。
「それなら反乱軍のように、その人々が生き延びるように動こう。」
「どうやって?」
「君の記憶に頼る時だ。」
私の記憶の中にエピソード7と8があり、この2本は比較的新しい記憶に入る。転生する前、立て続けに公開されたくらいだ。重要なシーンくらいは覚えている。
懸念要素があるとすれば、エピソード9くらいだった。
「反乱組織が大打撃を受けるのは、いつだ?」
「それは──────」
一つ一つ思い出して、私は壮大な計画を立てた。
全てを変える為に。
「ダンタム……危険な未来だとしても、私を愛してくれる?」
「当然だ。」
戦いに備えて、私達は静かに準備を始めた。
私とダンタム、レイアとルークだけの計画だ。誰にも知られてはいけない。知られれば、未来は闇に染まってしまう。
誰も本当の闇に気付かないまま、時は過ぎていった。
たった一人を除いて。
分かる人は分かると思います。
アリスはその男を無意識に嫌悪してますのでw