グレンはアリスを見上げる。
彼は、連れ出すのを止めたアリスを理解できなかった。自分は罪を犯したのに、なぜ引き止めるのか。答えは一向に出なかった。
「アリス……?」
レイの呼びかけに、アリスはウィリアム達に微笑む。
『ビリー』
「俺…?」
『あんたがグレンに訓練をつけて。』
少しの間が空いた後、グレンとウィリアムの声が同時に重なる。
「「はあぁぁぁっ!?」」
これには、レイやベンも驚いた。
グレンに訓練をつけるなど、ウィリアム達にはあり得ないことだった。
ダンタムは、アリスの様子を黙って見守っていた。
「母さん!!」
『ビリーがグレンにフォースを教えればいい。フォースを知れば、彼も変わる。』
「そんな無理難題を……」
『やる前からできないと決めつけてはダメ。それから、あんたには一言物申したいことがある。』
迫る母に、ビリーは幼い頃の記憶を思い出す。
間違ったことをしたら、アリスは真面目に叱った。例え小さな悪戯だろうと、やってはいけないことをしたら息子を諭した。何がいけないのか理由を本人に考えさせ、分からなければきちんと説明した。
ウィリアムにとって、目の前のアリスは正に母親そのものだった。
「な、なんだ?」
『ビリー、後を託したけど、あんたは間違った道を進んでる。』
「何を、」
『私の意志を継いだけど、それはあんたの選択じゃない。私の選択。私ならどうするか、出た答えは私の答えであって、あんたの答えじゃない。』
「………」
ウィリアムは今まで、母ならどうするのか考えてきた。
しかしアリスの言う通り、それはウィリアム自身の選択ではない。焦る余り、彼は自分で選ぶことをしなくなった。ウィリアムは、母を追いかけていたのだった。
『私の選択が、必ずしも正しいとは限らない。あんたは確かに私の息子で、私はあんたの母親だよ。けど、ビリーも一人の人間。あんたはあんたなの。私に成りきることはない。』
「っ!」
『私はグレンを訓練できない。だから、ビリーが彼を鍛えて。フォースは拒みはしない。』
アリスは振り返ると、最愛の夫の前に歩み寄る。
2人はしばらく言葉を発さなかったが、長い沈黙の後にアリスが先に口を開いた。
『ダンタム、』
「いいんだ、分かってる。」
遮るように、ダンタムはアリスの言葉を止める。
「愛している。」
『ダンタム……会いに来なくてごめんなさい。』
「だが、会いに来てくれた。違うか?」
『違わない。でも、貴方を待たせてしまった。誓いを守れなかった………』
アリスとダンタムは、結婚式で互いに誓い合っていた。
ダンタムは妻の全てを受け入れる、と。例えアリスが暗黒面に堕ちようと、拒まないと誓った。アリスも、いつ如何なる時も夫の隣にいると誓った。健やかなる時も病める時も、互いに誓いを交わしたのだった。
「君を失うよりはいい。本当の意味で愛した人を失うことより辛いものはない。おかえり、アリス。」
『ただいま、ダンタム。』
ダンタムは、アリスに彼女のライトセーバーを差し出す。
ウィリアム達はその意味が分からず、困惑する。
『グレン』
「俺か……?」
『そう、あんた。これから先、戸惑うこともあると思う。だけど、フォースを信じて。』
「フォースを……」
『私達はフォースと共にある。』
アリスはそう言うと、自分のライトセーバーをテレキネシスで分解する。
ジェダイの証であるライトセーバーを、アリスは自ら分解する。それは自身が、ジェダイでもありシスでもあることを示していた。両方の系譜を断ち切ったアリスは、既に最大の役割を終えていた。
アリスが中心のカイバークリスタルを手に取ると、他のパーツは全て床に落ちる。
『私にライトセーバーはもう必要ない。これはグレン、あんたに譲る。砕くも良し、ブリーディングも良し。好きなようにして。ただ、絶対に凶器にはしないで。』
アリスは武器とは言わず、凶器と表現した。
凶器とは、他者を傷付けるものだ。物理的にも、精神的にも。アリスの願いは、フォース感応者同士の争いを無くすこと。その争いの凶器にしてほしくなかったのだ。
グレンは頷くと、手錠された手でクリスタルを受け取った。
「そういえば、アリス」
レイが不思議そうに、アリスに問いかける。
『どうしたのレイ?』
「私達の声は聴こえてたのよね?」
『………』
「アリス!?」
「まさかとは思うが……」
ベンの訝しげな目に、アリスは視線を逸らす。
「聴こえてはいたんだな?」
「なんでだよ母さん!」
『その……ね?アナキンに止められてたんだよね。』
間違いではない。
ただし、理由はとてもつまらないものだった。
『だーってぇ……アナキンが人◯ゲームやりたいって………』
「なんだか馬鹿馬鹿しくなってきたな。」
『グーレーンー?失礼だよー?』
「俺はゲームの為に現れないお前に憤っていたってことだろ!!」
『すみませんでした。』
実際その理由は1割だが、9割の理由は別だった。
『それは別として、主な理由は私情。ダンタムと会ったら、私が寂しくなりそうで……ダンタムと会ったら、必然的にウィリアム達と会うことになるから……』
「アリス、私は大丈夫だ。心配しなくていい。」
『うん、ありがとう………そろそろお別れだよ。』
アリスの視線を追って、一同の視線が玉座の間のドアに注がれる。ドアの向こう側からは、レジスタンスの声が聴こえていた。
ふとレイが振り向き、小さな声をあげた。
「アリス……?」
レイの声にウィリアム達が振り向くと、アリスの姿は消えていた。
ダンタムだけが、彼女がいた場所から目を逸らさず、ずっと見つめていた。名残惜しげに、彼は寂しそうな表情をする。そんな父を見て、ウィリアムはダンタムの傍に寄る。
「父さん。俺、自分の意思で旅をする。」
「ああ。気を付けて行け。」
「グレン、必ず迎えに行く。だから罪を償え。お前が罪を償ったら、訓練をつける。」
「仕方ねぇ、待っててやるよ。」
「お前、どこまでも上から目線だな。」
そこへレジスタンスの部隊が到着し、グレンは連行されていく。
戦いは終わり、銀河はようやく平穏を迎えた。
ダンタムはレジスタンスで怪我の治療を受け、彼が事の顛末を伝えた。アリスのことも、全て。それを聞いたレイアは、彼女の為にグレンの待遇を考え直すのだった。
その後、レイとベンは2人で小さな寺院を建てた。
寺院は目印のような役目を持ち、多くのフォース感応者がその寺院を訪れた。フォースを知る為、彼らは学びに来た。彼らが口を揃えて言ったのは、ウィリアムの名だった。
ウィリアムは自らの役割を考えた。
彼は銀河を旅して、出会ったフォース感応者を“スカイウォーカー”の寺院へ導いた。争いを無くす為、迷わないように。ウィリアム自身も、旅先でフォースを教えた。
ここから、銀河は大きく変わった。
数年後、ダンタム・ルードが死の床についた。
その死は、穏やかだった。ダンタムは眠るように亡くなり、ドクターとR7-D4が看取った。彼は自身の危篤を直前に息子にだけ知らせて、静かに息を引き取った。
ウィリアムは父の死に間に合わず、シャトルのコックピットで一人涙を流した。
その姿は、かつて妻を失ったダンタムのようだった。
ダンタムの死に顔は、幸せそうだったという。
彼を看取ったドクターは、息を引き取るダンタムの傍らに、一人の女性を見ていた。
その女性はジェダイの格好をしていて瞳は金色に染まり、黒髪を揺らして、青く透けた姿だったと、ドクターは後に語った。
女性の名は、アリス・レイン。
ジェダイであり、名も無きシス卿である。
fin...
【あとがき2】
皆さんこんばんは。
夭嘉です。
突然新章を始めてしまいまして、閲覧数がエグいことになってて、いろいろ変わりました。
ビリー君の出番を作ろうと思って、書き始めました。
一度完結させた作品でしたが、続きが書けないなんて誰も決めてませんから!
そんなこんなで、今度こそ終わりです。
皆様、お付き合いありがとうございましたm(_ _)m
宣伝ぽくなってしまいますが、他の長編は連載中です。
スーパー亀更新ですが………
では、またお会いしましょう。
フォースと共にあらんことを。