風の噂というのは、よくある。それが自分の耳に届くということも、よくあることだ。そう、本人に事実確認されるのも、よくあることだと思う。
「レイン将軍、隠し子がいるって本当ですか?」
めっちゃあり得ない噂が流れているのも、よくあることだよね、うん。
エンデュアランスから惑星コルサントへのハイパースペースの中、クルーザーのブリッジでのことだ。報告に来たトルーパーから話を振られた。
「誰に聞いたの?」
「いえ、誰にというか、噂なので……」
トルーパーに笑顔で問うと、引き攣った表情で後退られた。まぁ、本人が知らないし聞き返されたら怖いよね。
「私ジェダイだよ?結婚はもちろん、子作りなんてできるわけないじゃん。」
子供は可愛いし、好きだけど。掟に背くことになる。ジェダイじゃなかったら婚活してました、はい。
「レイン将軍、ジェダイ評議会からの通信です。」
噂は評議会にまで届いたらしい。
溜め息を吐き、提督とプロジェクターの前に立つ。ホログラムが映し出され、マスター・ヨーダが現れた。
何回も言うが、私は何もしてない、潔白だ。
『アリス、お前の噂が流れているのは知っているじゃろう。』
「ええ。念の為言っておきますが、ルード議員とは何もありませんよ。」
ルード議員の件は、オビ=ワンが評議会に報告している。ルード議員自身も、元老院に説明をした。その問題は終わったんだ。
『分かっておる。お前に偽りはない。しかし、不確かな噂が流れているのも事実。自分で確かめてみるか?』
「どういうことでしょう?」
『外縁部の惑星タコーボに、お前の息子がいるそうじゃ。』
「いやいや、まさか……」
『あり得んじゃろう。間違いを正せ、アリス。』
マスター・ヨーダは、そう言って通信を切る。
残された私と提督は、顔を見合わせる。提督はこちらに目を向けてきて、私は無言で首を横に振った。提督、絶対疑ってるだろ。
「その……将軍、タコーボに向かいますか?」
「聞かなくても分かるよね?」
「はい、承知しております。」
提督はクルーザーを、惑星タコーボに向けさせた。
ブリッジから出ていき、個室で正座をして目を閉じる。瞑想に入る為に、心を無にする。
………瞑想したいんだけど、邪念が消えませんでした。
「将軍、問題が………レイン将軍!?」
個室に来たトルーパーの声が、壁越しにいるように聴こえていた。
立ち上がった瞬間、自分の意思と関係なく倒れていく。倒れると同時に、次第に意識も遠退く。床に倒れた時、私の意識は完全に肉体から切り離された。
意識が沈み、私はジオノーシスのアリーナに立っていた。
多くのジェダイが、バトル・ドロイドへと向かっていく。レーザー弾とライトセーバーが交わり、アリーナは混沌と化す。確かなことは、ジェダイの方が減りが早いこと。一人、また一人と倒れる。
これは、いつもの夢だ。
『ジェダイの歴史に名を留める、見事な戦いだ。だが、もう終わりだ。降伏しろ。命だけは助けてやる。』
ドゥークー伯爵の姿が霞となり、次は燃え盛るジェダイ聖堂に立っていた。
辺りにはジェダイ・ナイトだけでなく、イニシエイトも倒れている。遺体には、ライトセーバーの刃傷がある。見ているだけで、心が苦しくなる。
『これは夢ではない、アリス。』
どこからか聴こえた声に振り向くと、次に立っていたのは、ガンレイ達が倒れているムスタファーだった。外では、オビ=ワンがアナキンと戦っている。
何が起きているのか、未だに理解できていない。
『アリス』
今度こそはっきり聴こえ振り向くと、死んだはずのクワイ=ガンが立っていた。
『マスター・クワイ=ガン……?』
『これは夢ではない。』
さっきと同じことを言われ、私はクワイ=ガンに問う。
『これは……?』
『実際に未来で起こることだ。お前はその歴史の中に立っている。』
『どういうことですか?』
『噂が流れたのも、コルサントから離す為だ。』
『何を言っているんですか、あれは任務で、』
『お前は、フォースの意志に呼ばれた存在だ。』
そんなのあり得ない。
フォースの集中、申し子はアナキンだ。彼は選ばれし者で、フォースにバランスをもたらす。
『アリス、日に日にフォースが強くなるのは分かっているだろう。』
『分かりたくない。』
『いずれ分かる。宇宙のフォースは、お前を許さない。目を逸らすな。為すべきことを成せ。』
次の瞬間、私はアナキンの目の前にいた。
『裏切り者め!!』
ライトセーバーで腹を貫かれ、私はマグマへと落下する。
落ちたと思えば、私はジェダイ聖堂のメディカルルームにいた。
点滴に繋がれて、ハッとして起き上がるが、なぜか筋力がなくて寝台から落ちる。蹲る私に気付いたリグ・ネマが、慌てて駆け寄ってきた。
「ナイト・レイン!」
「た、立てない………」
肩を借りて寝台に座り、待つように言われる。それからすぐ、通信機でマスター達を呼んだ。私はただ、座って待つしかなかった。
現実で何が起こっているのか、理解が追い付かない。
「アリス!目が覚めたか!」
「なんでか歩けない。」
オビ=ワンとマスター・ヨーダが、メディカルルームに入ってくる。
二人の様子を見ると、私が倒れたのは大事だったみたいだ。
「ごめん、頭が追い付かないんだけど。」
「アリス、お前は1ヶ月も眠っておったのじゃ。」
1ヶ月!?!?そりゃあ筋力落ちるわ!
「ドクター、説明してもらえるか?」
「はい。ナイト・レイン、貴女が眠っている間、身体に異常はありませんでした。脳波も正常、脈も正常、フォースも正常です。」
身体は本当に眠っていただけらしい。正常ではなかったのは、夢だけだ。フォースに、夢を見せられたんだ。
他者の言葉は聞かないと分かって、クワイ=ガンの意識を引っ張ってきたんだ。
「私、クルーザーから記憶がないわ。」
「だろうな。クルーザーで倒れ、コルサントに戻ってすぐここに運ばれたんだ。」
「ご迷惑をおかけしました。」
「お前が謝るなんて只事ではないな。何かヴィジョンでも見たのか?」
3人の視線に、私は首を振る。
「何も見てない。ただの夢。」
嘘を吐いた。
マスター・ヨーダだけは納得していない様子だったけど、話したくない。これは、私に出された課題なのだから。解く気はないが、いつか答えを出さなければならない時が来る。答えは、その時になってから考えよう。
それ以降、あの悪夢は見なくなった。
考えが変わったと、そうフォースが受け取ったようだ。良い考えではないけど。