ベインのスターファイターに乗せられ、ハイパースペースをかれこれ2時間。
ずっと会話がなかった。
何が言いたいかと言えば、ベインに無視されている。
「雇い主くらい教えてよ。」
「………」
「あっそ、もういいよ。」
あと何が文句あるかと言えば、改造されて2人乗りとはいえ狭い。
アラートが鳴り、ようやくハイパースペースから抜けた。
出た先は、まさかのコルサントだった。訳が分からなくてベインを見るけど、また無視された。
「あのさ、私にも知る権利あると思うけど?」
「少しは黙ってられねぇのか?」
「黙らせてみれば?」
そう返すと、ベインは溜め息を吐く。
「雇い主はシディアス卿だ。」
アホ面ってよく言うけど、私の今の表情はそれだと思う。
顎が外れそう。
「文字通り黙り込んだな。」
「喧しい。」
「そっくりそのまま返してやる。」
スターファイターは、ココ・タウンの外れに着陸する。人の入れ替わりが激しく、ダース・シディアスが潜んでいても不思議じゃない。
それよりも、ベインから離れなきゃ。
このまま奴に引き渡されたら、シスの暗示にかけられるかもしれない。私は黙ってシスに操られる気はない。生き人形なんて御免だ。
「降りろ。」
ベインに腕を引かれるが、私は降りなかった。
目を閉じ、フォースに集中する。
「おい、何をしている?」
「さぁ……?」
周囲のフォースを通じて、近くの燃料タンクに意識を向ける。念動力でタンクを壊し、燃料を漏れさせる。漏れた燃料に、付近の配線を切って、コードをその中へと落とした。
刹那、燃料タンクは爆発し、衝撃でスターファイターもベインも、当然私も吹っ飛ぶ。
吹っ飛んだ後、私はプラットフォームから落ち、途中で手錠を突起に引っ掛ける。落下が止まり、看板にぶら下がった状態になった。
一先ず安堵したけど、ここから先どうしよう。
「どうやって降りよう………」
後先考えてなかった。
落ちたのは私だけだ。その内、ベインが追ってくる。その前にここから逃げたい。
「………よし。」
手錠をズラして、また落下する。
今度は地面が見える直前で、フォース・プッシュして着地する。辺りの人達が驚いているが、構わず人混みを通り抜けた。
「すみません、通して。」
人混みから抜け、商店の通りを走る。
通りを出た先は、工場群だった。ひたすら走って、閉鎖された工場へと潜り込む。普通の者は、閉鎖されている建物には入らないだろう。
手錠を外していると、低く嫌な声が響いた。
「こんなところへ逃げ込むとは、其方らしい。」
やべぇ、例外が来た。
「自分から会いに来るなんて、余程暇なんだね、ダース・シディアス。」
例外、ダース・シディアスだ。
コンテナの間から現れたシディアスに、私は制御室の上へと跳んで距離を取る。
「其方の為に時間を割いたのだ。言ったはずだ。時間をやろう、と。時間切れだ。」
「生憎だけど、手を取る気はないよ。」
「答えは聞かずとも分かっている。では、取引をしないか?」
相手はシスだ。こちらが有利な取引なわけがない。信用してはいけない。
「シスと取引はしない。」
「其方にも有益な取引だと思うが?」
「断る。」
「そうか、残念だ。」
シディアスはそう言うと、工場の天井に手を向ける。そして、フォースを使い骨組の線を切る。その骨組は、制御室の上にいる私へと崩れてくる。
咄嗟に手を上げ、自分に降り掛かる骨組の破片をフォースで止める。
それを丁寧にお返ししてあげたが、シディアスは簡単に薙ぎ払いやがった。
「次は簡単にはいかんぞ。」
「望むところだよ。」
今度は辺りの重機を持ち上げ、飛ばしてくる。これは簡単に止められなかった。歯を食いしばって、脚に力を入れて踏ん張る。
女らしくないのはスルーでお願いします。
「いつまで保つかな?」
シディアスは不気味に笑い、さらにコンテナを飛ばしてきた。
いやこれ、シディアスと対面するの早すぎるでしょ。張り合ってる場合じゃない。私が潰されるのは確実。
やられる前に逃げる!
「………無理。」
フォースに集中するのをやめて、手を下ろす。重機やコンテナが落ちてくる前に、崩れた天井を目掛けてフォース・ジャンプする。屋根に乗り、下のシディアスを見下ろせば、奴は未だに笑ったままだった。
「敵に背を向けるのか?」
声にフォースを乗せているのか、聴こえないはずの声が届く。それとは反対に、私は声を張り上げる。
「戦略的撤退だ!二度と会わないことを願うよ!!」
そう叫び、懐からグレネードを取り出す。私はシディアスに投げつけ、奴はフォースで受け止める。だが、そんなのは想定済み。
大怪我はしないでしょ。
スイッチを押して爆発させ、そのまま逃げる。
あー、評議会になんて説明しようめんどくさい……
「砕けたの私じゃん!!!」
当たって砕けたの私だよ!!
シディアスと対峙したなんて評議会に言えない。ベインだけにしよう、うん。シディアスのことを私が話したところで、戦争は終わらないし、今解決したら戦争は終わらないままジェダイが滅びる。
徒歩でジェダイ聖堂に帰れば、すれ違いのジェダイ達に二度見された。
当然だ。こんなに煤だらけで戻れば、何かあったと思うだろう。しかもこんなに苛立っていれば、尚更だ。不快感が消えない。
「アリス!今までどこに……」
マスター・フィストーの問いかけを無視して、通り過ぎる。少し離れたところで立ち止まり、口を開く。
「賞金稼ぎの相手をしてました。」
「通信が繋がらなかったのはそのせいか?」
「はい。ご覧の通り。」
左腕を掲げ、割れた通信機を見せる。
また歩き出して、私は聖堂の中へと戻った。両肩を摩り、溜め息を吐く。背中がゾワゾワする。
強気で踏ん張ってたけど、実は震えていた。一瞬も笑みを消さないシディアスが、恐ろしい。恐怖は暗黒面に繋がるって言うけど、間違っていない。
二度と会いたくない。