更に1年が経った。
戦場にいると、1年があっという間だ。時間の感覚も麻痺するみたい。時間だけじゃなく、価値観も変わる。クローン戦争は、時間の経過と共に激化している。
そんな折に、ジェダイ聖堂で爆破事件があった。
格納庫で何かが爆発して、死傷者が多く出てしまったものだ。この捜査はアナキンとアソーカが担当して、その後嫌な展開になることを覚えている。
爆破事件の傍ら、私は自分の能力に気付いてしまった。
「気持ち悪いなぁ……」
瞑想を続けた結果、私は人を探せるようになった。
相手を知っていなければ不可能だが、探したい相手を見つけることができるようになった。ただし向こうがフォース感応者だと、探していることを気付かれる可能性はある。シスの暗黒卿を探すとなったら、その危険性は跳ね上がる。
私としても、暗黒卿なんか探したくない。
「すまない、アリス。頼みがある。」
「分かってるよ。話は聞いてる。」
聖堂に戻ってすぐ、私はプラットフォームの隅でアナキンと落ち合う。
なぜアナキンに呼び出されたかと言うと、例の爆破事件でパダワンのアソーカに疑いがかけられたからだ。
たまたま聖堂に戻っていた私は、帰還早々アナキンに呼び出され、真相解明の協力を求められた。私が協力しないわけがなく、アナキンに手を貸すことを約束した。
「僕が真犯人を探す間、アソーカを守ってほしい。」
「つまり、時間稼ぎ?」
「そうだ。何でもいい。」
「分かった。評議会は私に任せて。」
引っ掻き回すのは大好きだ。
アナキンに言った通り、私はまずマスター・ヨーダを呼び止める。聖堂の回廊で立ち止まり、裁判を引き延ばすように頼んだ。
「マスター、アソーカの裁判を引き延ばしてください。」
「なぜじゃ?」
「貴方は、アソーカが犯人だと思っているんですか?」
もちろん、聞いてくれるとは思っていない。
「アリス、お前は真実が見えておるのか?」
今こそ、切札を使う時だ。
「私の秘密を、一つだけ明かしましょう。」
「秘密じゃと?」
「はい。」
マスター・ヨーダは、ジェダイ粛清を生き残る。私のステータスの一つくらい、話しても問題ないだろう。
「もしジェダイをやめたいって言ったら、評議会は承認しますか?」
「なぜジェダイの道を嫌う?」
「簡単なことですよ。息が詰まるんです。」
元の世界の概念がある私には、ジェダイの生き方は息が詰まる。
だってさ、考えてみてよ。執着するな、結婚はダメ、他者の為に動け。他にもいろいろ。何が楽しいわけ?
シスは我欲の為に未来に見限られているけど、少し羨ましい部分もある。
そう考えると、息が詰まると言ってもおかしくはないでしょう?
「今回のことをどう捉えている?」
「アソーカが、非武装者を殺せるはずがありません。マスターのアナキンが違うと断言できるんですから、彼女じゃない。それと………」
「言うてみよ。」
「マスター、平和の守護者であるジェダイが、なぜ戦場に立っているんでしょうか?」
その問いに、マスター・ヨーダは答えなかった。簡単に答えられないだろう。私も、答えが分からない。
「良かろう。裁判の日程を変える。しかし、遠くはない。急ぐのじゃ。」
「ありがとうございます。」
頭を下げ、回廊を走り去る。
今頃、アナキンがヴェントレスを見つけた頃だ。時間稼ぎは充分できた。後は、アナキンがバリスを引き摺ってくるだけ。
「レイン将軍!」
「ルード…議員……」
聖堂の入口にいた議員に、呼び止められる。
求婚の件以来ちゃんと話していなくて、口籠ってしまった。
「レイン将軍、コマンダー・タノが逮捕されたと聞いた。ジェダイが殺人を犯すはずがない。私にも何か手伝わせてくれ。」
「議員、嬉しいお言葉ですが、アナキンが既に動いてます。」
「そうか。何か他にできることはないのか?」
しばらく考えて、あることを思い付いた。
「では、元老院でも裁判を引き延ばすように働きかけてください。アソーカの弁護は、アミダラ議員にやっていただいています。議員は、議長の足を引っ張ってください。」
「分かった。任せてくれ。」
お礼を言って去ろうとすると、また引き止められる。なかなか話し出さなくて、議員を促すとようやく口を開く。
「以前は求婚して申し訳なかった。」
「あぁ……」
「この戦争が終わったら、もう一度考え直してはもらえないか?」
ルード議員は、諦めていないらしい。
だけど、この戦争は最悪の形で終わる。終わるには終わるが、私が生きているか分からない。そのお願いに、頷くことはできない。
「分かりました。ただし、私が生きていればの話です。」
「貴女なら大丈夫だ。レイン将軍はとても強い。それならば、まずは友人となってはもらえないか?」
「そうですね。では、友達から始めましょう。では、また。」
今度こそ聖堂を後にして、アンダーワールドへと向かう。アナキンを回収しなければ。
ヴェントレスを半殺しにしてませんように。
「アナキン、今どこ?」
左腕のコム・リンクに声を吹き込むと、すぐに応答があった。
『アリス、手掛かりを掴めた。もしかしたら、本当の犯人はバリスかもしれない。アソーカはバリスと連絡を取っていたそうだ。』
「バリス・オフィー……」
『そうだ。理由は分からないが………』
「そのまま聖堂へ行って。私もすぐ戻る。」
通信を切り、私はその足でアンダーワールドへと向かう。
また独断行動?そんなの気にしない。気になることは自分で調べる。評議会への言い訳は後だ!!!
人探しスキルって、便利だと思うんだよね。
アンダーワールドに入ってすぐ立ち止まって、気配を探る。人の波の中にいるフォース感応者なら、すぐに見つけられる。
ヴェントレスを見つけるのは簡単だった。
彼女がいる通りに出て、ヴェントレスを目で探す。
「お前」
振り向いた瞬間、フォース・プッシュで押し飛ばされる。飛んだ私はスピーダーにぶつかり、受け身を取るのを忘れて倒れる。
私、ヴェントレスに何かしたっけ?
「何すんの!?」
「当然だろう!敵を目の前にして対処しない奴がいるか!」
「対処!?あのねぇ……」
ふと周りを見て、視線を集めていることに気付く。
ヴェントレスを引っ張り、私達は路地裏に避ける。嫌そうな顔をする彼女に、一言謝った。嫌そうな表情が、何となくドゥークーに似てる気がする。
そんなこと言ったら、ヴェントレスがキレそうだからやめておこう。
「あんた、アリス・レインだろう?」
「あ、知ってるんだ。」
「ドゥークーが相当嫌っていたからねぇ。気持ちは分からなくもないが。アタシもお前が嫌いだよ。」
初対面なのに、なんて言われ様だよ。
「それで、何の用だい?」
「アナキンに会ったでしょ?」
「嬉しくもない再会だったね。あの小娘の件なら、スカイウォーカーに話した。まだ何かあるってのかい?」
「ちょっとした好奇心だよ。アソーカを助けた理由が知りたくて。」
アニメを観た時も、不思議に思っていた。
暗黒面に囚われたヴェントレスが、どうしてアソーカを助けたのか分からなかった。利害の一致だとしても、あの状況で利があったのはアソーカだけだったのに。とても不思議だった。
この世界で本人に聞こうと、こうして直接聞いてみたんだ。
「お前には関係ないだろう。」
「そうだけど、教えたところで減るもんじゃないでしょ?」
「はぁ……レイン、お前は本当にジェダイなのかい?」
「一応?」
「ドゥークーがお前を嫌う理由がよく分かった。」
言いたいことは分かる。でも、これが私だ。ジェダイの道を歩いたことで、見たくないものも見てきた。逆を言えば、見たいものが見れなかったんだ。
当然捻くれるでしょ。
「それで、なんでなの?」
「フォースの意志に従ったのさ。」
「フォースに……」
「随分嫌そうな顔じゃないか。」
また、フォースの意志だ。
クワイ=ガンの声に言われたことが、脳裏に浮かぶ。私は呼ばれた存在で、何か役割があるらしい。あれもこれも、フォースの意志によるもの。
全てが支配されていると思うと、どうにも気に入らない。
「ヴェントレスは、フォース感知能力を持って良かったと思う?」
「さぁね?アタシとお前じゃ道のりが違う。比べるものじゃないだろう。」
「そうだね。教えてくれてありがとう。賞金稼ぎ、頑張って。」
裏路地を出ようとすると、ヴェントレスに呼び止められた。
「気が向いたら賞金稼ぎになるといい。アタシが手取り足取り教えてやろう。」
「遠慮しとく。」
ヴェントレスに仕事を教えられるなんて、明日のコルサントは天災が起こりそう。
聖堂に戻ると、裁判は終わり、バリスが逮捕された後だった。これで、アソーカの無実は確定された。問題は、その後の評議会の対応だ。評議会は間違いを認めなかった。実際に聞いても、評議会を批判したくなる。
私の気持ちは、胸糞悪いの一言だけだ。