オルデランでの任務が終わって、私はコルサントに帰還した。
戻って早々、聖堂が騒がしい。
聞いた話によれば、マスター・ヨーダがいなくなったという。何でも、アナキンが手引きしたとか。
その話を聞いて、フォースの女官編を思い出した。
「アリス!笑ってる場合じゃないだろう!」
「あ、笑ってた?」
「口の端が吊り上がってたぞ。」
オビ=ワンは怒るが、私は行き先を知ってるから宥める。
「大丈夫だって。ちゃんと帰ってくるよ。」
「何か知っているような口ぶりだな。」
「さぁ?まぁ、マスター・ヨーダが納得するなら、何も問題ないでしょ。」
後ろでオビ=ワンがとやかく言うけど、放置して回廊を出ていく。
なんか、オビ=ワンって昔に比べたら堅くなったよね。評議会に感化されたっていうか、真面目すぎる。不真面目な私とは、不釣り合いだ。
「アリス」
「はい、マスター。」
マスター・プロがこちらへ向かってくるのが見えて、くるりと方向転換したが、案の定呼び止められた。
公文書館に逃げようとしたけど、普段笑わないマスターが怖くて断念した。
プロ・クーンって、あんまり表情ないんだよね。せめてマスター・フィストーくらいスマイルを見せてくれたらいいのに。あ、でもあの顔で笑顔って怖いわ。
「最高議長が、お前を呼んでいる。」
「………」
「嫌そうな顔をしたな。」
そりゃあ嫌ですよ。
シディアスとドンパチしたことがあるんだから。あれから何も言ってこないと思ったら、直接来たか。
大人しくデスクワークしててよ……
「あの、内容は……」
「オルデランの防衛線についてだろう。」
絶対ただの口実だ!!!
「はい、すぐに行きます……」
ジェダイ聖堂を出て、議長のオフィスへ向かう。
表向きの話だけならいいなぁ。嫌な予感しかしないんだよねぇ〜。
バックれたい!!!
「レイン将軍!」
「フォックス、久しぶり。」
「ご健在で何よりです。」
通してもらい、元老院のオフィス・ビルに入る。
エレベーターに乗って、議長のオフィスの階で降り、ノックする。返事はすぐ返ってきて、中に踏み込む。私の姿を見た議長は、気持ち悪いくらいニコニコしていた。
これから会う相手は、“暗黒卿”だ。
心して対峙しなきゃ。
「待っていたよ、アリス。」
「ファーストネームはやめてくださいって、何度も言ってますよね?」
「遠慮することはない。あぁ、オルデランの任はよくやってくれた。」
「ありがとうございます。」
社交辞令だからね?遠慮じゃねぇからな?気持ち込めてなんかない。誰があの議長に心込めるか。
それから、議長は本題だと言う。
「私のことをよく知っているだろう?」
「はて、何のことでしょう?」
「廃工場、と言えば思い出すかな?」
「………ダース・シディアス」
議長の言葉に、私は笑顔を浮かべる。その表情の裏に、怒りを込めて。議長はそれをものともせず、会話を続ける。
「君は随分と興味深い。私なりに答えを出してみたよ。君はヴィジョンを見たのではなく、未来を知っているんじゃないかね?」
「未来を知ってるって、無理があると思いますよ。それなら、死んだジェダイだって死なずに済んだはずです。どう説明するんですか?」
クワイ=ガンだって、死を避けられたはずだ。それに加えて、シスの陰謀である戦争だって止めることもできたかもしれない。
未来を知っているからと言って、簡単に歴史は変えられない。
「もちろん考えた。君の性格を考慮すれば、逃げることは分かっている。その覚悟がなかったんだろう。」
怖い。ここまで当ててくるなんて、想定外だ。まるで、弱味を握られているような感覚だ。
「是非答えを聞かせてくれないか?」
「………ご名答です。」
「そうか、それが君の秘密か。」
唇を噛んで苛立ちを見せるが、議長はその反応を見て笑う。
「隠さなくていい。誰にでも秘密はある。」
「秘密は隠すものです。」
「そうだ。だが、秘密はいつか明かされるもの。君の秘密も、その内暴かれることになる。」
「議長、私を呼んだのはただの事実確認ですか?」
そう問えば、議長は笑みを消すことなく近付いてくる。椅子から立ち上がり、私の眼前に立つ。警戒しつつも、私は議長を睨んだ。
「アリス……暗黒面の魅力に気付いているだろう。」
「魅力?暗黒面に魅力なんてない。あるのは、力だけ。」
言い返したら、議長はまた一歩近付く。
「逃げ道がなくなった時を考えたことはあるかね?」
「道は一つじゃない。」
「左様。しかし選んだ道が間違いだったり、行き止まりの時もある。例えば、救える者がいるのに、見放したことでその者が暗黒面に堕ちるとか……」
「そんなことしない!」
感情的になったことで、議長の機嫌が良くなる。手の平で転がされているようで、不快極まりない。シスの思惑に乗せられている。
ここで感情的になって暴れたら、私の負けだ。
深呼吸して、心を穏やかにしよう。
「私は目の前の友達を見捨てない。」
「では、自分自身を見ているかな?」
「は?」
「己を救えぬ者に、他者を救うことはできない。」
議長は私の両肩を掴み、逃げられないように押さえる。あまりの迫力に腰を引くが、何かされようとしているのは分かってるから、抵抗する。
次の瞬間、目の前にいる“シディアス”の口から緑色の煙が吐き出された。
シスの秘術だと気付き、吸い込まないように息を止める。
「っ……!」
「無駄なことだ。この煙は吸い込ませる為ではない。」
ナンダト!?
息を止めた意味!!!
「うへっ………」
変な声出た!!!
煙を浴び、ようやく解放された私は咳き込む。
「大丈夫か、アリス?」
「大丈夫ですって!?誰のせいでっ………」
「私のせいだな。」
「分かってんのにやめてよ!!ほんとにムカつく!!」
久しぶりに素でキレた私は、議長に怒鳴る。
これと言った変化はない。毒でもなさそうだけど、良いものでもなさそう。一体何をされたんだ。
「何を企んでるの……?」
「企みなどない。君が逃げられないようにしただけだ。」
「回りくどい!何をしたの!?」
「そう荒ぶるな、友よ。」
友?誰がシスとお友達になるか!!
「どんな死に方がいい?」
「ふむ、死か。だが、まずは自身の身体を気にするべきだ。」
「逃げられないって何?」
議長と距離を取り、シャッターを背に問う。
「逃げられないと言っても、物理的なものではない。君が未来から目を背けられぬように、身体の老化を止めたのだ。」
「………はい?」
「つまり、君は死ぬまで老けることはない。」
議長、もといシディアスの思惑が分かった。
ジェダイの粛清を生き延びたら、フェードアウトしようと思っていた。なのに老けないとか、ずっと帝国に追われるようなもんじゃないか。
アナキンの子供が反乱軍に入る頃も、余裕で現役じゃん。
「何てことを………」
逃げられるものも逃げられない。
「逃げたいなら逃げればいい。だが、フォースの意志からは逃げられないぞ。」
「フォースの意志は関係ない!はっきりさせましょう、パルパティーン議長。私はあんたが嫌い。表の顔も、裏の顔もね!」
「どこへ行く気だ?」
「聖堂に戻るの!二度と呼び出さないで!」
シャッターを開け、ズカズカと議長のオフィスを出て行く。
そう叫んだが、また呼び出してくるだろう。その時は、私とシディアスは敵同士だ。裏表関係なく、奴に敵意を向けることになる。
程なくして、マスター・ヨーダは帰ってきた。
クワイ=ガンの導きで、生けるフォースを学んできたはずだ。死後も自我を保つ為の試練を越えただろう。
そして恐らく、シディアスの正体にも気付いた。
戦争が終わる日も、遠くはない。