失敗は成功の元
始めに言っておこう。万全と思われていたコルサントの防衛戦は、失敗した。正確には裏に回られたというべきだけど、気に食わない。
グリーヴァスの目的は、パルパティーン議長だ。
歴史通り、評議会が護衛していたはずだったのにマスター・コロブが殺され、議長はグリーヴァスに拐われた。艦隊にはドゥークー伯爵もいて、グリーヴァスはマグナガードを引き連れて自ら行政地区に攻撃してきたらしい。
何より、艦隊が防衛を失敗した理由は、コルサント本国防衛艦隊の実戦経験不足だ。惑星侵略を仮定した訓練すら受けていなかった。これでは艦隊は愚か、私の大隊とも連携は取れない。結果、議長は拐われてしまった。
そして現在、アナキンとオビ=ワンがイータ2のインターセプターでインヴィジブル・ハンドに乗り込んでいる。
議長の正体がシディアスとはいえ、グリーヴァスに大人しく拐われたことが腹立つ。
こういう時ばっかり年寄り面しやがって!!
「ウィンドゥ将軍からの通信です。」
「無視して。」
「そう言うと思い、自分が言付けを預かりました。レイン将軍、艦隊の指揮官は貴女に任ずるそうです。」
ヘクターの言葉に、私は溜め息を吐く。
「ヘクター、他の船は放っておいて。グリーヴァスの旗艦の守りを剥いて。」
「また無茶な指示を……」
「防衛線は防衛艦隊に任せればいいの。私達の任務は、議長の救出。アナキン達が議長を連れ出したら、まとめて叩けばいい。」
「了解しました、将軍。」
その時、ドゥークー伯爵が死んだのを感じた。殺したのは、アナキン。議長は、分かってて命令している。
ほんっとに胸糞悪い。
「将軍!インヴィジブル・ハンドが!」
共和国艦隊の攻撃が効きすぎて、インヴィジブル・ハンドが真っ二つになる。奴の旗艦の中には、議長がいる。艦隊の手前、助けなくてはならない。
正直、助けたくない。そのままくたばれ。
あー、ダメだ。アナキンとオビ=ワンまでお陀仏だわ。全部グリーヴァスのせいだ。
「コルサントの司令部に繋いで。」
「了解です。」
「これから、議長が乗った艦船が不時着する。場所を空けて。」
『了解しました、レイン将軍。』
インヴィジブル・ハンドは地上に任せる。私は、他の艦船を叩き落とそう。グリーヴァスが逃げた腹いせだ。
「全艦、シールド半分に落として、残りのエネルギーを攻撃に。インヴィジブル・ハンド以外を攻撃して。」
「了解。全ターボレーザー、発射。」
熱源を探知したのか、一部の艦船には逃げられた。残った船の司令官等は、逮捕なり何なりすることになるだろう。
「将軍、議長は無事です。不時着は成功ですね!」
「そう、良かった。」
「レイン将軍……?」
「え?何?」
「地上に降りますか?」
「うん。ガンシップ用意して。」
ブリッジから出ていき、コム・リンクが付いたアーマーを投げつける。完全なる八つ当たりだけど、こうでもしないと怒りが収まらない。
何なの、あの茶番!?
非常時大権を手放さないんだから、自業自得で分離派へサヨナラすればよかったのに!何も知らないガンレイにやられてほしかったわ!
「将軍、クルーザーで暴れないでください。」
「っ!」
ヘクターが、私を宥める。
いつから見ていたのか、困ったように私を見る。
彼が他のクローンと違うのは、私をジェダイではなく、一人の人間として見ているから。だから他のクローンと積極的に話さないし、他のクローンを兵として見ていない。
それはそれで良くはないけど、その性格もヘクターの個性だ。
私もヘクターも、互いを対等の存在として見ている。形式上、ヘクターは私を将軍と呼ぶが、人目のないところでは遠慮なく意見してくる。
「気に入らないことでも?」
「何も。」
「レイン将軍、仮にもジェダイが怒りを露わにしてはいけませんよ。」
「仮にもって……」
「実際にジェダイだということは、分かってて言っています。しかし、最近の貴女はジェダイと呼ばれる度に嫌な顔をする。」
さすがコマンダーだ。私のことをしっかり見ている。良いことも嫌なことも、全部。
「ヘクター、自分が気に入らない場合はどうすればいいと思う?」
「自身に憤るということですか?」
「そう。でも、どうしようもない。何もかも。」
これから起こる悲劇に比べたら、私の苛立ちなんて大したものじゃない。
ハンガーベイのガンシップに乗り込み、ハッチが閉まる。
クルーザーから離れ、ジェダイ聖堂のプラットフォームに着陸する。同じタイミングで、オビ=ワンがエアバスで戻ってきていた。
「アリス、インヴィジブル・ハンドを攻撃させたのはお前か?」
「そうだよ。」
呆気らかんと答えれば、オビ=ワンは呆れた表情をする。
「議長がいるって分かってたのか?」
「分かってる。でも、救出は成功でしょ?」
「全く……アナキンに感謝だな。」
「………アナキン、ドゥークーを殺したよね。」
そう聞くと、オビ=ワンは表情を翳らせる。
議長の命令のままに、ドゥークーの首を落としたらしい。歴史通りで、この戦いでドゥークー伯爵が死ぬことも変わらなかった。
そして、議長の関心がアナキンにも向いていることも変わらない。
「いつから議長が、ジェダイに命令できるようになったの?」
「アリス、議長は危険だ。」
オビ=ワンの言葉は正しい。
ただ、オビ=ワン、強いては評議会がどんな行動を取るかで、ジェダイの運命は決まる。
「そっちは聖堂の外だぞ。」
オビ=ワンと反対方向に歩き出すと、戻る方向と違うと指摘される。
「知ってる。外の空気が吸いたくてね。」
「ここも外だぞ。」
「揚げ足を取らなくても分かってるよ!聖堂から離れたいだけだから!」
階段を降りて、聖堂から離れる。
向かう先は一つ。
どんなに忙しかろうが、奴の口から聞いてやる。アナキンとパドメを守る為に。それから、グリーヴァスをボッコボコにしよう。
今回の元凶も、全部あいつのせいだ。