ノックもなしに、勝手にオフィスへ入る。
「このっ………クソジジイ!!!」
開口一番、そう叫んだ。後から考えれば、誰もいなくて良かったと思う。ジェダイが誰かを罵しるなんて、あってはならない。
でも、怒鳴らずにはいられなかった。
「突然そんな言葉を言われたところで、何のことか分からんぞ、アリス。」
「へぇ、自覚あるのにすっとぼけるんだ?あと、ファーストネームはやめろって言ったよね。何度目?」
こっちの苛立ちなんてお構いなしに、四度目だと言うパルパティーン議長。
ていうか!一々数えなくていいんだけど!?
「アナキンにドゥークーを殺させやがって。あんたに命令権はないから。」
「だが、ジェダイ・オーダーは共和国に属している。私の指示に従うべきではないのかね?」
「もし私が言われたら、あんたの命令なんか聞かずにドゥークー伯爵を引き摺ってたね。」
そう、物理的にな!!
そもそも、私が大人しく命令に従うわけがない。
「それに何?あの茶番?みっともない。」
「言いたいことはそれだけか?」
「まだ何か言ってほしい?」
「いや、構わん。一つ、良いことを教えてやろう。アリス、君は暗黒面に踏み込もうとしている。」
あり得ない。
もし私が暗黒面に踏み込もうとしているなら、周りも気付くし、私自身も自覚する。サティール・シャンに言われ、警戒もしているし、手を出さないようにしている。
暗黒面に踏み込めば、待っているのは破滅だ。
「私が誘惑に乗ると思った?無駄だから。あんた自身も分かってるでしょう?私は未来を予期してるんじゃなくて、知ってるんだって。」
「自分の未来は予期できているのか?」
「必要ない。」
嫌というほど、フォースに見せられた。悪魔として、何度も何度も。あれは、避けられない未来。
「アナキンはジェダイだよ。絶対に、暗黒面に堕ちたりしない。」
「諦めろと言いたいのかね?」
「そういうこと。返り討ちに遭うのは自分だから。」
アナキンが暗黒面に堕ちるのは、悪夢が原因だ。冷静さを欠いて、パドメを愛した故に堕ちたんだ。だったら、彼の感情の矛先を分散させればいい。
オビ=ワンとパドメだけではなく、私にも。
特定のものを変えるんじゃなくて、私は時間をかけることを選んだ。クローン戦争で、アナキンとは友情を育んできた。歴史を変えるわけじゃないのだから、アナキンと親しくなるのは問題ないだろう。
「君は物事を楽観視している。仮に何かを変えようとしているなら、あまりに甘い考えだ。」
「甘いかどうかは、その時が来れば分かる。おっと、評議会からの呼び出しが来てる。」
左腕のコム・リンクが点滅している。この光り方は、ジェダイ最高評議会からだ。議長救出作戦についてだと思われる。
「応答した方がいいぞ。」
「あぁ、いいの。いつものことだから。」
「そんなだから、評議会は君を注視すると思うのだが?」
今回も、かれこれ4時間は無視してる。
評議会を気にしない私に、シディアスは何かを考え込む。
「実に面白い。アリス、提案があるんだが、」
「却下。」
「アナキンのことは諦めてもいい。」
思わぬ言葉に、私はシディアスを凝視する。
「何年も前から狙ってたのに、あっさり諦めてくれるの?」
「もちろん、タダではない。代償は君の忠誠だ。」
「は?」
「君が忠誠を誓うなら、アナキンは諦めてもいい。」
意味が分からない。
欲しいのはアナキンなのに、諦める代わりに私の忠誠?
「その前に、ジェダイ・オーダーへの忠誠が薄い私が、大人しく従うはずないでしょ?」
手元にあった、議長のオフィスの飾りをつい折ってしまう。
なんでこんな簡単に壊れるんだ。
「この取引は2度目だ。3度目が最後だ。次に問う時、君の忠誠が私に向くことを祈るよ。」
シディアスはそう言って、笑みを浮かべる。
腹が立って、オフィスを鼻息荒く出て行く私に、シディアスは後ろから言い忘れたと言う。
「君をジェダイ評議会に加えるように、進言しておいたよ。」
「ありがた迷惑!!!」
中指を立ててから、議長のオフィスを出て行く。
無礼?そんな言葉、私の辞書にはない!!特にシディアスに対しては!!
「アリス!!」
ジェダイ聖堂に戻ると、真っ先にアナキンが声をかけてきた。
アナキンは、心此処に在らずといった表情をしていた。何がそうさせたのか、私は知ってる。とても素晴らしいことなのに。
「どこにいたんだ?評議会の通信も無視してたそうじゃないか。」
「あぁ、文句を言ってきたの。」
「文句?誰に?」
「秘密。で?どうしたの?」
ここでは話せないと言われ、私とアナキンは道場へ向かう。
私達が聞かれたくない話をする時、道場で鍛練をしながら話をするのが定番になっていた。評議会のマスター達は、早々来ない。いい話場所だ。
道場へ入り、互いのライトセーバーを胸元に立て、順調に刃を交える。
「パドメが妊娠した。」
「待って、それ私に言ったらまずくない?」
「なぜ?僕はアリスを信じてる。だから話しているんだ。」
「それはありがとう。パドメが妊娠して、どうしたいの?」
「まだ分からない。」
だから上の空だったのか。どうしたらいいのか分からず、考えがまとまってない。パドメの妊娠は嬉しいはずなのに。
「アナキン、一旦鍛練止めて。」
「アリス?」
「怖がっちゃダメだよ。暗黒面に繋がる。」
「………分かってる。」
コム・リンクがまた点滅して、評議会の通信だと私に知らせる。
それを見たアナキンは、出るように言う。
「どうして応答しないんだ?」
「用件が分かってるから。議長がいるのに、インヴィジブル・ハンドを撃ちまくったことを責められると思う。」
「アリスはしっかり務めを果たしただろ。心配ない。議長は無事なんだ。」
無事じゃなくても良かったけどね!
アナキンに背突かれ、仕方なく評議会の塔へと行く。5時間ほど無視したから、オビ=ワンが煩そう。
エレベーターを降りて、最高評議会室に入室する。
「レイン、遅い出頭だな。」
「瞑想に集中してたんですよ。」
笑って誤魔化すが、マスター達にはいつものことだと呆れられる。
「グリーヴァスの旗艦に、議長がいたのは分かっていたのか?」
「もちろんです。ですが、マスター・ケノービとアナキンがいたので、問題はないでしょう?」
「判断基準が危うい。失敗していたら、取り返しのつかないことになるんだ。」
マスター・ウィンドゥは、少し怒っている。寧ろ失敗しても良かったなんて、口が裂けても言えない。まだ議長の本性を知らないから、言ったら叱責される。
「結果良ければ全て良しでしょう。」
「それは我々の台詞だ。当事者のお前が吐く言葉じゃない。」
はっきり言って、今の評議会が一番面倒臭い。前はあんなにちょろかったのに、戦争が始まって今まで以上に堅物になってしまった。
「アリス、その議長からお前の評議会入りを推された。お前はどうしたい?」
「嫌です。」
即答。
そりゃ嫌でしょ。責任が義務付けられるんだから。それに、議長の駒になるつもりはない。当然、評議会の駒にもならない。
「私より適任のジェダイはたくさんいますよ?」
「そうか。下がって良い。」
「失礼します。」
マスター・プロの視線が気になったけど、気付かないふりをした。
マスターは、私の苛立ちを感じ取っている。何に対して憤っているのかも知っているし、評議会のことを敬遠する私のことも知っているから、あの場で口にはしなかった。でも弟子のことは案じているのか、出頭した時にジッと見られていた。
最高評議会室を出て、エレベーターに乗り込む。ドアが閉まり、私は罵言を吐く。
「うっざ。」
きっと今の私は、嫌な顔をしているだろう。仕方ない。本当に嫌なんだから。
ジェダイ評議会、下手したらブラック企業より悪くね?