着きました、惑星コリバン。
いや、だってねぇ?言ったからには来なきゃ。オビ=ワンに嘘は吐けない。
アナキンやクローン戦争を放り出して、何やってんだって話だけど、仕方ない。シスの術を解く方法を探させてください。
私にツタミニスを叩き込んだあのサティール・シャンが、カオ・セン・ダラックと宇宙ステーションでシスと戦った地だ。このコリバンで、私がツタミニスを使わされる可能性がある。ツタミニス習得はもしかしたら、私がコリバンに赴くことを想定してのことかもしれない。
フォースの意志には、何もかもお見通しだ。
「空気悪っ。」
シャトルを適当に着陸させ、コックピットから出て降りていく。嫌ーな空気に、私は身を震わせながら岩棚を登る。暗黒面のフォースが強くて、下手にフォースを使えなくて面倒だ。
曲がりくねった谷を歩いた後、薄気味悪い巨大な寺院に辿り着いた。
公文書館でも見たけど、シスの寺院なだけあって、本当に不気味。これ、大昔の暗黒卿達が眠るネクロポリスなんだって。要は集団墓地。
あれ?ジェダイ版肝試し?誰得?
「………」
寺院の入り口に、オーラベッシュではない文字が刻まれている。古い文字だ。語学もしっかりやれば良かった。
『手を貸してやろうか?』
振り向くと、マントを被った男が私を見下ろしていた。男の声は遠く、姿も朧げだった。フードの中を覗いても、その中は靄だけ。
「あんた誰?」
『名はない。我々はシス。』
男がそう告げると、私を囲うようにシスが増える。マスター・ヨーダがモラバンドへ行った時のように。
『そして暗黒面だ。』
『なぜここへ来たのか、知っているぞ。ジェダイの騎士、アリス・レイン。』
「だったら話は早いね。シスの知識を借りたい。」
私を囲うシスは、低く笑う。
『ジェダイがシスの何を学ぶ?』
「学ぶんじゃない。私は知識を得るだけ。この呪われた術を解く為に。使うのも、一度きり。」
『愚かな娘だ。我々は既に滅んでいる。知識を与えることはできん。』
ですよねー。
と、言うと思ったか。ここまで来て手ぶらで帰るつもりはない。何かヒントくらい欲しい。
「私がジェダイだから?」
『お前に覚悟があるならば、暗黒面に身を落とせ。さすれば、望む知識を得られよう。』
「暗黒面?そんなのお断り!!!」
その瞬間、シスの亡霊は次々に私に向かってきて、寺院の入り口に押し込む。中に入って何とか踏ん張ったものの、今度は崖の下に突き落とされる。
絶叫アトラクションより趣味が悪い。
暗闇で何も見えず、私は泉に落ちた。地面にぶつからずに済んで、思わず安堵する。泉から上がるが、出口は上しかなく行き止まりだった。
登ろうにも、壁はツルツルで掴めるものがない。
今度こそ詰んだかもしれない。
『ここから抜け出す方法はある。』
「あんたら………」
『抜け出す為には、暗黒面の力が求められる。お前なら、使い方は分かるだろう。』
「全っ然分からないね。」
暗黒面の誘惑を突っ撥ねた結果、奴らは私を追い詰めようとしてきた。ここで私が暗黒面に手を伸ばしたら、シディアスが喜ぶだけ。誰がシディアスを喜ばせるか。
考えろ、私。
『時間の無駄だ。お前に勝機はない。』
「まだ決まってない。」
目の前の亡霊を、私は知っている。
ようやく分かった。私の目の前に現れたシス達は、実際には一人だけ。あれは惑わしに過ぎない。
「お前は、ダース・プレイガス。アプレンティスに寝首を掻かれた暗黒卿が、ジェダイを誘惑?笑えないジョークだよ。」
『合格だ。その感情こそが、お前をジェダイではないと否定する。』
「胸糞悪い。」
『その言葉もな。だがここから出るには、それだけの感情では足りん。』
ここで、プレイガスからフォース・ライトニングが放たれた。
今こそ、ツタミニスを使う時だ。
フォースに集中し、受け止めようと手の平をライトニングに向ける。だけど受け止め切れず、勢い余って背中を壁にぶつけた。身体に受けなかったが、気圧された。
暗黒面に対抗できていない自分が、恨めしい。
『怖気付いたか、愚か者め。』
「喧しい。」
『結構。お前の望みに応えてやろう。我がアプレンティスがかけたその術は、シディアスでなければ解けぬ。』
今の私は、正に間抜けだ。
『シディアスはフォースの探究者だ。力を求め、新たな秘術を生んでいる。その術はシスの秘術であって、シスの秘術ではない。』
「てことは、シディアスが新たに練った新術ってこと?」
『左様。』
シディアスが作った術だから、シディアスしか解けないということらしい。もう不老は解けなくていいから、あいつボコボコにさせてください。ちょっとくらい仕返しても、私に非はないでしょ。
『そしてもう一つ、お前の記憶についてだ。』
「記憶?何の話?」
『シディアスも求めるお前の記憶と知識、なぜ薄れゆくのか分からないか?』
驚いた。何か理由があるとは思わなかった。時間に比例して、多少は仕方ないものだと思っていた。
「なんで?」
『それはお前が、選ばれし者に近付いたからだ。』
「どういうこと?」
『選ばれし者は、いわばフォースの集中だ。フォースの権化に近付けば、それだけ記憶は薄れてゆく。更に彼の者と親しくなった今、記憶の風化は加速し、止まることはない。』
私は、自分で首を絞めていた。道理で悪夢を拒めないし、シディアスが忠誠を迫ったわけだ。奴は、私の記憶の仕組みを、予期して分かっていた。
どう足掻いても、絶対にシディアスが上で悔しい。
『ここまで来ても、暗黒面を拒むか?』
「アナキンはもう友人だから、裏切りたくない。」
『残念だ。』
プレイガスがそう呟くと、壁の一部に向かって突っ込む。プレイガスがぶつかった壁は穴が空き、道が現れる。奴はもう現れず、私は通路を抜けた。
出た先は、シャトルが着陸した岩棚の前だった。
「帰ろ………」
結局、術は解けなかった。
シャトルに戻って、コックピットで頭を抱える。記憶は風化して、不老は解けない。何もかも、最悪だ。知りたくなかった話まで聞いてしまった。
何の為にコリバンまで来たんだろ……