コルサントへ帰ると、オビ=ワンが私を出迎えた。怒っている様子はなく、難しい表情をしている。怒ってないのが逆に怖い。
シャトルを降りると、ボロボロのジェダイ・ローブに眉間を寄せられた。
「今度は何をやらかしたんだ?」
「何もやらかしてない。シス寺院に入ったら、しっぺ返しを食らっただけ。」
「全くお前は……期待を裏切らないな。」
「ありがとう。」
「褒めてないぞ。」
プラットフォームから出ながら、オビ=ワンと喋る。
「アナキンは?」
「議長のオフィスだ。」
「また?」
「アリス、議長が嫌いなのは分かるが、議員達の前ではその表情をするなよ。」
「分かってるよ。」
嘘だ。ルード議員やパドメの前ではその表情を既に出してしまっている。2人は何も言わないけどね。
「マスター!……と、アリス?」
議長との話が終わったのか、アナキンがオビ=ワンを探しに来た。私のジェダイ・ローブの汚さに、アナキンも目を見張る。
「何をどうしたら、そんなに汚れるんだ?」
「頼むから突っ込まないで……」
「気にするな、アナキン。これがいつものアリスだ。」
「ちょっとオビ=ワン、どういう意味?」
「議長と何を話していた?」
「え、無視?」
「ジェダイ評議会を招集してください、マスター。議長からの“提案”があります。」
議長の提案とは恐らく、アナキンの評議会入りの件だ。議長の代理人として、アナキンをジェダイ評議会に加えるように命じてきたということだ。直接干渉してくるなんて、歴史上においてもあり得ない。
最高評議会は、議長の依頼を受け入れるだろうか?
「アリス、お前も評議会に来るんだ。」
「え?私も?」
「そうだ。お前を待っていたのは、その為でもある。」
「何かあるんですか、マスター?」
「評議会で話す。後で会おう。」
オビ=ワンは、先にプラットフォームを出て行く。
私とアナキンも後を追うように、プラットフォームを後にする。エレベーターに乗る最中、アナキンは私に話を振る。
「なぜ議長が嫌いなんだ?」
「なぜって……」
「素晴らしい方じゃないか。どうしてそこまで嫌うのか、僕は不思議で仕方ない。」
この会話で、アナキンがどれ程議長を信頼しているのか分かった。
あいつは、アナキンの望む答えを差し出す。悪夢のことも、相談しているはずだ。パドメが苦しむ夢も、私を刺す夢も。どちらも否定したいアナキンは、望んだ答えを聞き、議長を更に信頼する。
私や評議会は、違う。
「アナキン、議長を信頼するのはいいけど、よく考えて。」
「考えるまでもないだろ。議長の言っていることは正しいんだ。アリスこそ、疑い過ぎるんじゃないのか?」
丁度エレベーターが開き、私とアナキンは降りる。
一人ずつと言われ、まず私が評議会会議場に入った。マスター達を前に、頭を下げる。汚れたジェダイ・ローブへの反応は、まぁお察しだ。
そして、マスター・ウィンドゥが話し始めた。
「レイン、戦場での功績を考慮し、マスターの称号を与える。」
「は……?」
久しぶりに素が出てしまった。
「功績?どの戦いのことですか?」
「………」
「あぁ、建前ですか。なぜ私をマスターに?」
「アリス、ちと消極的すぎんか?」
「ではマスター・ヨーダ、実力もない私にマスターの称号を与える理由を教えていただけますか?」
私はずっと、勝手なことばかりしてきた。評議会はそれを止めもせず、咎めなかった。戦争に消極的な態度を取っているのも、評議会は知っているはずだ。
ここまで実力がないのに、なんでマスターの称号を与えるのか分からない。
「言えませんか。」
「評議会の決定に逆らう気か?」
「当てましょうか?議長の関心を私に向けたいんですよね?」
私とアナキンを同時に呼んだのが、その証拠。
私がマスターになれば、今以上に高難易度な任務を充ててくる。その中には、この後アナキンが指示されるような、記録に残せない任務なども入ってくるだろう。
記録に残せない任務に、元老院を監視しろと言われる可能性もある。そんなこと、ジェダイがやることじゃない。ジェダイ・オーダーは、ジェダイの道から逸れ始めている。
もっと言えば、私がマスターになることで、議長は私を使いたがる。あれだけ人目を避けずに、元老院やジェダイ評議会に株上げしてくるんだ。個人的な依頼は確実に増す。言い方を悪くすれば、私は餌だ。評議会は、議長に餌を与えたがっている。
今の評議会は、気に食わない。
「アリス、聞くんだ。」
「従えません、マスター。」
「待て!レイン!」
マスター・プロを拒み、マスター・ウィンドゥの制止も無視して退室する。
子供のようだと言われても仕方がない。私は評議会に従える程、ジェダイ・オーダーに忠実じゃない。ドゥークーがオーダーを去ったのも理解できる。
冷めた表情で退室した私に、アナキンが呼び止めようとする。
「どうしたんだ?」
「ほっといて。」
アナキンも無視して、エレベーターに逃げ込む。
こんなに腸が煮え返っているのは初めてだ。
認めてもいないのに、マスターの称号?ふざけてる。侮辱されているような気分だわ。
「………ムカつく。」
どす黒い感情と同時に、暗黒面が私を誘う。その感情に反して、深呼吸をする。憤りを抑えて、拳を握り締めた。
聖堂の外に出たものの、行く先が思い浮かばず、像の土台の陰に座り込む。
「アリス」
顔を上げると、マスター・プロが立っていた。立ち上がって逃げようとすれば、また名前を呼ばれる。
「評議会の決定が気に入らないか?」
「………はい。」
「すまない。だが、必要なのだ。議長の狙いを探る為に、お前が必要だ。」
「マスターも同じ意見ですか?」
私の問いに、マスターは何も答えなかった。
「心は読めなくても、私達ジェダイは感情を読めるんですよ。」
「アリス、お前は変わった。」
「変わったのは私ではなく、ジェダイ・オーダーです。」
マスターに背を向け、階段を駆け下りる。背中に刺さる視線が痛くて、気にしないように走り続けた。
とにかく今は、一人になりたい。このままだと、冷静さを欠きそうで怖い。頭を冷やさなきゃいけない。
ジェダイ聖堂を出ていった後、私は旧市街に向かった。
自棄酒したのは言うまでもない。