ぼやける意識の中、ノイズ音が響く。
誰の声かすら分からない。ホログラムに映った人影が、必死に通信を繋げようとしている。気力がない私は、ただそれを眺めるだけだった。
『─────……!』
外で轟音が響いて、段々と意識がはっきりしてくる。
勢いよく起き上がってシャトルの中を見渡すと、何もかもが使い物にならない状態だった。
「やっぱそうなるよね……」
そういえば、さっきの轟音は何だろう。
壊れたハッチを蹴り開けて、シャトルから転がり落ちる。地面とキスする寸前で、ギリギリ受け身を取った。
ギャグじゃないからね?マジでフラフラだからね?
「─────……!」
どこからか声が聴こえて、ライトセーバーに手をかける。
この声がクローンだったら面倒だ。
「いました!こちらです!」
目の前に出てきたのは、クローンじゃなかった。警戒を解いたせいか、膝をついてしまった。見覚えのある男が、私を支える。
「誰だっけ……?」
「ルード議員の元側近です!」
道理で見たことがあるわけだ。婚約騒動の少し前に、一度会っている。いつの間に辞めていたらしい。
そのすぐ後に、ルード議員本人が走ってきた。
「レイン将軍!無事で良かった!」
「えっと……どういうことでしょうか?」
「話は後だ。ここを離れよう。」
元側近さんが肩を貸してくれて、コルベットに搭乗する。
コルベットはケイト・ニモーディアを離れ、すぐハイパースペースへと入る。
元側近さんに連れられてきたのは、まず医務室だった。医療ドロイドが私を診察しようとするが、断った。記録に残したくないのもあるけど、フラフラなこと以外はどこも悪くないからだ。
「大丈夫だって。」
「墜落の衝撃で身体が弱ってます。議員の為に、診察させてください。」
「でも、」
「記録には残しません。約束します。」
仕方なく、スキャンを受け入れる。
医療ドロイドが一通りデータを分析して、なぜか私の頭部を再スキャンする。更に分析して、ドロイドはようやく話し出した。
嫌な予感しかない。
「軽度の脳震盪を起こしています。ふらつくのは、そのせいかと思われます。しかし、あの墜落で軽度なのは不思議です。」
「あぁ、シャトルのシールドを起動させたからだよ。」
「それでも、脳震盪を起こしているのは変わりません。安静にしてください。」
「できない。休んでる暇はないの。」
診台から起き上がろうとすると、ルード議員が医務室に入ってくる。側近が私を止めるように頼むが、議員はそれを断った。彼は、私のことをよく分かっている。
「レイン将軍、いや、マスター・レイン。とりあえず座ってくれないか?」
議員に言われて、大人しく診台に座る。
「信用してもらえるように、説明させてほしい。」
「何の説明ですか?議員を疑ってなんかいませんよ。」
「やはり、言葉は必要だ。」
ルード議員の話を聞くことにした。
元より、ルード議員が私を捕まえに来るとは思っていない。一度は想いを伝えてきた相手だ。その彼が、パルパティーンの話を信じるわけがない。
「貴女を助けに来たのは、コマンダー・ウォルフの頼みだからだ。」
「ウォルフが……?逃がしたのに………」
「だからこそ、だ。コマンダーは立場上、貴女を助けに戻れない。」
ウォルフが助けを寄越すって、なんて危ない真似をしたんだろう。追われるのは私なんだから、危険を冒してまでルード議員に連絡する必要ないのに。
「私は、今も気持ちは変わらない。貴女さえ良ければ、このまま私の故郷で、」
「議員、それはいけません。」
「そう言うと思った。貴女はそういう人だ。どこへ向かえばいい?」
「外縁部まで運んで、」
そこまで言うと、コルベットの隊員が議員を呼びに来た。
「議員、申し訳ありません。ブリッジまでお越しいただけますか?」
「分かった。少し待っていてくれ、マスター・レイン。」
「もうマスターはいりません。ただのアリス・レインです。」
「そうか。アリス、待っていてくれ。」
「はい。」
議員が出ていった後、医療ドロイドに治療をしてもらう。米神の擦り傷をバクタ・スプレーをかけて、静かに座っている。
「もう一つ、懸念材料があります。」
「何?」
「貴女が死んだと見せかけなければ、クローン部隊は探しに来る。」
「必要ない。生死不明のままでいい。どの道、フォース感応者には分かるから。」
特に、シディアスはすぐに気付く。私が生きていると、分かるだろう。どうせバレるなら、無駄な工作はしない。
「待たせてすまない。」
戻ってきたルード議員が、私の傍らに屈む。
「アリス、一緒にブリッジまで来てくれないか?」
「何かありましたか?」
「貴女宛ての通信があるんだ。」
パルパティーンじゃないよね?
居場所が筒抜けとか、さすがにそれはない、はず。
「肩貸してくれる?」
「はい、もちろんです。」
自力で立てないから、元側近さんに肩を借りた。
脳震盪、洒落にならないくらいヤバイと思った。今回の墜落は、本当に反省してます。マスターごめん、旗艦潰しちゃったよ。
「時間が経てば、自力で歩けるようになるでしょう。」
「ありがとう、ドロイド。」
途中で医療ドロイドと別れ、議員に連れられてブリッジに入る。
プロジェクターの前に行くと、ホログラムが現れる。映ったのは、オーガナ議員だった。
『マスター・レイン!よくぞご無事で!』
「オーガナ議員、他に助かったジェダイは?」
『先程、マスター・ヨーダを助けたところだ。マスター・ケノービとも連絡が取れた。』
「他は?」
『残念ながら……』
オーガナ議員は言葉を濁す。その先は言うまでもない。多くのジェダイが粛清された。
「オーガナ議員、座標を教えてください。私も合流します。」
『構わないが、』
「ダメだ!彼女は本調子じゃない!」
「全てが終わったわけではありません。私やオビ=ワンには、まだできることがあります。」
『ルード議員、我々元老院はジェダイに頼り過ぎたんだ。今は、私達に為せることをやるべきだ。』
「分かった……」
オーガナ議員に諭され、ルード議員はコルベットを送られた座標に向けさせる。
ホロ通信を切った後、瞑想する為に人気のない個室を借りた。
フォースを通して、生き残ったジェダイを探してみる。マスター・ヨーダとオビ=ワン以外で生きているジェダイは、とても少なかった。何人かのマスターは弟子を逃がして、殺されている。
いや、もうこれ以上探すのはやめよう。
シディアスに知られたら、未来はない。私の知る未来さえ危うくなる。“双子”の存在を知られるわけにはいかない。
「アリス、邪魔してすまない。」
「構いません。」
目を開き、個室のロックを解いてルード議員を招き入れる。
ルード議員は、何かの箱を持ってきていた。小さな箱で、彼はそれを私に差し出す。既視感を覚え、議員を二度見した。
「貴女の為に、作り直したんだ。」
開けられた箱の中には、スターバードが象られたアームカフが入っていた。見覚えがあるから、更に既視感が増す。
「これって……」
「以前、貴女に贈ろうとしたアームレットをアームカフに作り直したんだ。もう婚約は迫らない。受け取ってもらえないか?」
悩んだ末に、受け取ることにした。
もうジェダイ・オーダーはない。掟を守る理由もない。小さな贈り物くらい、気にしない。
「受け取らせてください。」
「ありがとう、アリス。私はこれからも、議員を続ける。人々の為に。」
「賢明な判断です。人々はジェダイより、貴方のような議員を求めます。」
「どうか無事でいてくれ。ジェダイが帰還できる日を願っている。」
遠い未来の話だ。それこそ、20年以上も先の話。どれだけのジェダイが生き残っているか、予想も付かない。
その時、アラートが鳴って、目標に着いたことを報せる。
恐れ多くも、議員の肩を借りて接続部へと向かう。出迎えたのはマスター・ヨーダと、オーガナ議員だった。タナヴィーⅣと呼ばれるコルベットに乗り込み、オーガナ議員の補佐官に支えられて会議室へと入る。
「アリス、よくぞ生き残った。」
「粛清は予期していました。残る問題は、オビ=ワンが来てからです。」
補佐官が何か通信を受けて、私達に振り向く。
「マスター・ケノービが到着しました。」
彼の言葉に、私は貨物ベイに走る。
ようやく、一人で動けるようになってきた。怠さを気にしてる場合じゃない。死なないと分かっていても、オビ=ワンが無事で安堵する。
「オビ=ワン!」
「お前の顔を見れて、なぜだかホッとしたよ。無事で良かった。オーガナ議員に助けられたのか?」
「その話は追々、ね。オーガナ議員も呼んで、話はそれから。」
オビ=ワンと会議室に入り、彼はマスター・ヨーダに礼をする。
生き残ることはできた。ルード議員やオーガナ議員のお陰でもある。あとは何が起きたかを、一つ一つ確認しなくてはならない。
まず、ジェダイ粛清の真実からだ。
ライトセーバー、どうする?
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クリスタルまで壊す。
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クリスタルだけ所持して、パーツはポイ。
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一応持っておく。