アナキンのライトセーバーが、私の左肩を貫く。なぜ腹を貫かれなかったのか、分からなかった。その答えは、すぐに出た。
「なぜ避けなかったんだ!?」
「っ…言ったでしょう……殺してもいいって………」
いっそのこと、一思いに殺してほしかった。
あまりの痛みに、思わず踞る。左肩を押さえながらアナキンを見上げると、彼は私を軽蔑の眼差しで見る。死を受け入れようとした私を、心から嫌悪している。
「アリスっ……」
「パドメ、離れて……!」
駆け寄るパドメの手を払う。
「議長の言う通りだ。あんたはまた逃げようとしている。」
「本当にそうか?」
突然響いたオビ=ワンの声に、アナキンはパドメと私を睨む。
「あんたの企みか、オビ=ワン。」
「お前が自ら招いた結果だ。アリスに手を掛けたのは、お前自身だ、アナキン。」
「僕を殺しに来たのか?」
「………私は義務を果たしに来たんだ。」
オビ=ワンはNOとも言わなかった。アナキンが暗黒面に呑まれた姿を目の当たりにして、否定できなかったんだ。劇中のパドメが言うように、アナキンは別人の様だった。
だが、本当に別人なんだ。彼はダース・ヴェイダーであって、アナキン・スカイウォーカーじゃない。
パドメは、ショックで気を失ってしまった。
「オビ=ワン、」
「アリス、手を出すな。これは私の役目だ。」
オビ=ワンを引き止められなかった。
暗黒面と自分を優先した結果が、これだ。アナキンの代わりに、私が手を汚せば良かったんだ。私がシディアスの操り人形になるとしても、アナキンが暗黒面に堕ちることは防げていたかもしれない。
分かっていたのに、私は逃げた。
「アナキン……」
「逃げればいい。あんたはどうせ逃げられないんだ。」
オビ=ワンはライトセーバーを取り出し、アナキンと距離を取り合う。
そして、アナキンが飛び上がり、落下の勢いでオビ=ワンに切りかかる。二人のライトセーバーが交わり、硬直状態に陥った。
アナキンはオビ=ワンをフォースで押し飛ばし、かつて分離派の所有物だった施設に入っていく。
その間に、パドメに駆け寄って脈を確認する。
まだ生きている。ただ、映画と同じく、アナキンの変わり様にショックを受け、生きたいという気力が感じられなかった。
「パドメ……」
彼女を横抱きにして、シャトルの中に運び込んで、ベンチに寝かせる。3POに毛布を出させて、それをパドメに掛けた。
「マスター・レイン、パドメ様は、」
「分かってるよ。3PO、あんたはシャトルの離陸用意を。」
「畏まりました。」
アナキンは、オビ=ワンに倒される。だけど、彼はアナキンを殺さない。いや、違う、殺せない。弟も同然のアナキンを殺せるはずがない。
「マスター・レイン、シャトルの準備が整いました。」
「ありがとう。」
「貴女も、手当てしなければ。」
「バクタ・パッチだけ出して。他はいい。」
「どうぞ、マスター・レイン。」
バクタ・パッチを受け取って、肩の傷に貼り付ける。
ライトセーバーが貫通した傷って、バクタ・パッチだけで大丈夫かな……?
その時、施設と船の両方でアラートが鳴り響く。施設のシールド・システムが消えて、溶岩に沈み始めていた。私がいるエリアはまだ大丈夫だけど、オビ=ワンとアナキンがいるエリアは、崩壊が始まっていた。
「早く脱出した方が良いのでは……?」
「ダメ。まだオビ=ワンが戻ってない。」
「しかし、」
「3PO、ちょっと黙って。」
二の腕に鎮痛剤を打って、壁に寄り掛かる。
これだけ離れていても、フォースのぶつかり合いを感じる。禍々しい程のアナキンのフォースに、身を震わせる。
「戦いが長引いてる……」
目を閉じて、二人の戦いをフォースで見る。
オビ=ワンとアナキンの戦い方は、正反対だ。アナキンが攻めの型に対して、オビ=ワンは守りの型。フォースの流れが変わらない限り、戦いは終わらない。
でも次の瞬間、何かが変わった。
オビ=ワンのフォースが一気に鮮明になった。
「3PO、船にいて。」
「どこへ行くんです!?」
ハッチを駆け下り、オビ=ワンの下へと走る。
走っている間、アナキンのフォースが弱くなっていくのを感じた。フォースが弱くなるのと同時に、彼の苦痛と憎しみが強くなる。
オビ=ワンが戦いを終わらせたんだ。
心が痛いけど、立ち止まってはいられない。
「オビ=ワン……」
ようやく見つけたオビ=ワンは、とても苦しそうだった。
アナキンの怒りの矛先を私にも、と思ったが、私が彼と親しくなったことで、オビ=ワンに向く刃が鋭くなっただけだった。親しくなることでアナキンに言葉を届けるはずだったのに、状況を悪化させただけだった。
プレイガスの“彼に近付いたから”という言葉も、強ち間違いじゃなかった。
「アナキンは……?」
「………」
「………踏み止まったんだね。」
「アリス、すまない。」
「何のこと?」
私の問いに、オビ=ワンは答えなかった。
アナキンはまだ生きている。業火に焼かれても、暗黒面が彼を生かす。否応無く、再び私の前に現れるはずだ。
「………議員は?」
「シャトルにいる。ただ……」
その先が言えなかった。死にかけてるなんて、私自身が受け入れたくない。パドメが死にそうなのは、私が逃げたからだ。
「ここを離れよう。お前も、治療が必要だ。」
「うん……」
スキッフに戻り、私がコックピットに入る。オビ=ワンにパドメの隣にいてもらい、来た時と同様に3POに操縦させた。ハイパースペースへジャンプした後、私は椅子から降りてパドメの下へ向かう。
「お前とアナキンを案じていた。」
「私まで……」
「アリス、アナキンが言っていたのは本当か?」
「聞いてたの?」
「聞こえてきたんだ。」
アナキンが言っていたというのは、パドメとシミ・スカイウォーカーのことだ。死ぬと知っていた、それを知りたいんだろう。聞かれていたとは思わなかった。
「アナキンがパダワンになる前、ヴィジョンを見た。」
2度目の人生とは、言えない。
この世界に、輪廻の概念はないに等しい。ジェダイの概念では、人は死んだら宇宙のフォースの一部になるとされている。多くの人は信じられないと思う。
「ヴィジョンは抗ってはならない、そうでしょう?」
「戦争も予期していたのか?シスの陰謀だということも。」
「………知ってた。」
オビ=ワンが私を嫌う理由には、充分すぎる材料だ。
「お前を責めるつもりはない。」
「え……?アナキンに何を言われたの?」
「本来なら、お前はオーダーにいなかった、戦場にも立ってなかったと。」
「否定は……しない。戦争からも、逃げようと思ったことがある。」
「そうか。納得がいったよ。アリス、残ることでアナキンを暗黒面から遠ざけようとしたんだな。」
「でも、失敗した。」
3度目はない。人生はやり直せないんだ。アナキンが暗黒面に呑まれたのは、偶然じゃない。
次にアナキンと……ヴェイダーと対峙するのが怖い。